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ニュース・アナリシス

写真 日本のIT市場予測:2009年度に引き続き2010年度も縮小、本格回復は2013年度に

2010年2月3日
片山 博之
Note Number:NA-010-0001

日本のユーザー企業における2009年11月時点のIT投資動向調査によると、2010年度もIT投資の減少傾向がかなり強いことが判明した。景気の回復が2010年度に始まり、2011年度から2012年度にかけて本格化するとしても、過去の日本企業の投資姿勢をかんがみると、日本におけるIT市場の本格回復は2013年度以降になる可能性が高い。


概要

 ガートナー ITデマンド・リサーチの2009年11月調査によると、日本企業のIT投資意欲は依然として低く、2009年度のIT投資Trend Index (備考1参照) はマイナス0.35、2010年度には若干改善するもののマイナス0.20と、2010年度に至っても投資意欲の回復が見込めないことが判明した。日本のIT市場規模 (日本に拠点を置く法人のIT予算総額) (備考2参照) ベースでは、2009年度は前年度比マイナス5.2%、2010年度はマイナス1.2%と、2009年度に約1兆円強縮小した市場が2010年度はさらに縮小するとみている。さらに、仮に2010年度に経済成長率が1%半ばまで回復し、2011年度以降に2%代まで回復するとしても、日本のIT市場規模が前年度比で2%以上の成長を開始するのは2013年度以降であるとみている。
 

分析

 ガートナーでは、ITデマンド・リサーチによるユーザー企業側の投資意欲調査と、ベンダー側における出荷ベースの売り上げ調査を行っており、この両サイドからの調査結果をベースに、日本に拠点を置く法人のIT予算額 (IT Spending) の総額 (日本のIT市場規模) を推計している。以下、年度ベース
(4月から翌年3月まで) で2009年度以降の日本のIT市場規模に関して、予測・分析する。

2009年度の市場規模は5.2%減で1兆円縮小

  • 2009年11月調査時点での2009年度のIT投資Trend Indexはマイナス0.35で、2009年5月調査時点のマイナス0.53よりはマイナス幅が小さくなった。これは年度当初の大幅削減計画が結果的に実現できなかった企業が少なくなかったためとみている。しかしながら、従業員数1,000人以上の大企業における投資の減少傾向が特に強く、従業員数1,000人未満の企業のIT投資Trend Indexがマイナス0.28であるのに対し、マイナス0.77となった。大企業での減少傾向の強さは市場規模にも大きく影響し、結果的に2009年度のIT市場規模は、伸び率で前年度比マイナス5.2%となり、1兆円近く縮小するとみている。

2010年度も市場規模は拡大せず1.2%減

  • 過去の調査結果から、IT予算計画ベースのIT投資Trend Indexと前年度の経済成長率には相関があり、特に景気後退期には大きなラグがなくそのまま反映されることが明らかになっている (図1参照)。政府による2009年度経済成長率見込み値はマイナス3.3%と大きなマイナスであり、2010年度のIT投資Trend Indexはそれを反映した数値 (マイナス0.20) となった。これらの数値をそのまま用いてIT市場規模の伸び率を推定すると、2%以上のマイナスとなる。しかし、2009年度に予算額を限界まで落とした企業も少なくなく、さらに2010年度予算が決まる4〜5月時点では景気が少し回復し始める可能性も高く、プロジェクトを復活させる企業も出てくることを想定すると、減少幅はマイナス2%よりも小さくなる可能性が高い。したがって、2010年度のIT市場規模は前年度比でマイナス1.2%になると予測している。

  • 近年注目を集めているクラウドの影響は、2010年度はまだ限定的である。多くの企業においてクラウドに対する理解度は低く、クラウドによるコスト削減等への期待値は大きいものの、実際の投資に至る企業は少ないとみている。サービスとしてのソフトウェア (SaaS) に関しては、2009年11月調査によるとニーズは高まりつつあるが、それでも2009年度から2010年度にかけて新規投資を表明した企業は5%程度であり、市場への影響は大きくない。

  • 2009年11月調査によると、情報セキュリティ管理やディザスタ・リカバリ対策への2009年度から2010年度にかけての新規・追加ニーズは、2008年11月調査時 (2008年度から2009年度のニーズを調査) と比べて大きく減少している。これは、セキュリティ関連の投資が一段落した企業が増えたためとみている。一方でこれらの投資は、一時的にニーズが減退しても、中長期的にはクラウド関連でのセキュリティ対策ニーズが増える可能性もあり、さらにセキュリティ上の大きな事件や災害の発生で、今後復活する可能性もある。

  • 一方、サーバ仮想化に対する新規・追加ニーズは、2009年11月調査では大きく増えている。2008年11月調査と比べると、どの企業規模のセグメントでもサーバ仮想化のニーズは大きく高まっているが、特に従業員数2,000人以上の大企業におけるニーズが高く、回答企業の45%が2009年度から2010年度にかけて「新規投資あるいは追加投資する」と答えている。サーバ仮想化もコスト削減が主目的ではあるが、サーバ仮想化ソフトウェアや周辺サービスへのニーズが増大し、一時的に市場規模を押し上げる可能性はある。

日本のIT市場の本格回復は2013年度

  • 過去の調査結果から、IT予算の計画値 (IT投資Trend Index) と前年度の経済成長率には相関があり、特に景気後退期には大きなラグがなくそのまま反映されることが明らかになっている (図1参照)。しかし、「景気回復期には日本企業は2〜3年遅れてIT予算を復活し始める」という結果も存在する。今回の景気後退から回復期においても、同様の法則が当てはまるとみている。

  • 2009〜2010年度経済成長率の主要エコノミスト平均値のプラス1.3%をベースに推定すると、2011年度のIT投資Trend Indexはプラス0.06 (市場規模ではプラス1.1%)、2011年度以降の経済成長率をプラス2%前後と見込むと、2012年度のIT投資Trend Indexはプラス0.1 (市場規模ではプラス1.3%)、2013年度にようやくプラス0.2 (市場規模ではプラス2.1%) に回復すると予測している。すなわち、IT投資の本格回復 (プラス2%以上) は2013年度までずれ込む可能性が高い。

  • 2011年度以降、大企業ではプライベート・クラウド、全体ではSaaSのニーズが高まる可能性がある。ただし、市場規模全体には大きな影響は出ない。むしろSaaSは、短期的にはIT市場規模を縮小させる方向に動く可能性がある。また、サーバ仮想化のニーズが増大し、その周辺ソリューション (セキュリティや運用管理) のビジネス機会も出てくるが、仮想化そのものはコスト削減が主な目的である。またクラウドもコスト削減が主目的であるため、2013年度までにこれらがIT市場全体を大きくプラスに動かすことはない。

  • むしろ、IT市場規模を強く押し上げる要素は、景気回復期における、業務に直接影響するITソリューション (業務コストの削減や売り上げの増加をもたらすアプリケーション) と、安全性・安定性も含んだそれらソリューションのインフラに対するニーズ増大である。これらのニーズが増えなければ市場規模も拡大することはないであろう。2008年度の市場規模 (19兆8,000億円 [人件費含む]) に回復するのは、景気が安定する2014年度以降であるとみている。

 
図1 IT投資Trend Indexの経年変化と前年度経済成長率
図1
出典:ガートナー(ITデマンド・リサーチ)、1999〜2008年度の経済成長率は2009年12月時点の内閣府データ (2009年度は政府見通し)、2010年度は主要エコノミスト平均値 (2009年9月)
 

推奨事項

  • ユーザー企業は、ITコスト削減の機会を引き続き見つける努力をすると同時に、景気回復期に向けて、業務コスト削減と競争優位獲得のためのIT投資計画を立て、景気回復と同時に先行的に投資できるよう準備する。その際、どのようなITソリューションが自社の競争力を高めることができるのかを見つけるために、第三者 (同業他社、ITベンダー、コンサルタント、リサーチ会社など) の視点を取り込むことも重要である。

  • ベンダーは、ユーザー企業の投資行動を踏まえて、特に競合ベンダーのユーザー企業に対してITコスト削減策を引き続き提示し、一方で優良顧客に対しては、業務コスト削減と競争優位獲得のためのIT投資計画にビジネス・パートナーとして参画する。IT予算総額 (市場規模) が縮小する中、勝ち残るには、自社の強みをさらに強化するような差別化戦略を取ると同時に、弱みを補うためのエコシステムも採用するなど、バランスの取れた戦略策定行うことが不可欠である。
     

備考1 IT投資Trend Index

 ユーザー企業のIT予算額の前年度比増減率を7つ (20%以上減、10〜19.9%減、0.1〜9.9%減、不変、0.1〜9.9%増、10〜19.9%増、20%以上増) に分類し、それぞれに重み (-3, -2, -1, 0, +1, +2, +3) を付け、加重平均を取った数値。

備考2 IT予算

 情報システム部門が把握できる範囲の年間のIT関連予算額を指し、ハードウェア (購入費、年間レンタル/リース料)、ソフトウェア (ライセンス料、年間レンタル/リース料)、ハードウェア/ソフトウェアの保守・サポート費、外部委託費 (開発、運用管理、ベンダーの常駐要員人件費など)、ネットワーク利用料、内部 (IT管理担当社員) 人件費などが対象となる。キャッシュが中心で、減価償却費は含まない。


 

Topics: IT投資

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