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2011年3月11日14時46分に発生した三陸沖を震源地とする東北地方太平洋沖地震 (以降、東日本大震災) に関し、現時点で国内外ICT市場/産業に及ぼす影響について分析する。 概要 2011年3月11日14時46分に発生した三陸沖を震源地とする東日本大震災は、国内外にさまざまな影響を及ぼしている。ICT市場/産業もその例外ではない。ICT産業にとっては、素材、半導体、製品、サービスといったサプライチェーンにおける震災の直接的影響に加え、その需要先である一般消費者や企業の消費/投資動向の変化、さらにはビジネス拠点としての地政学的リスク認識の変化など、考慮すべき多くの要素が存在する。ここでは、東日本大震災が現時点 (2011年3月19日) で国内外のICT市場/産業に与える影響について分析する。 分析 考慮すべき要素 ICT市場/産業は、大きくハードウェア、ソフトウェア、ITサービス、通信の4つのセグメントから構成される。また、半導体はこれらの基盤となる産業であり、ICT市場/産業全体に大きな影響力を持つ。各セグメントはそれぞれ異なる特性や構造を有しつつ、サプライチェーンやバリューチェーンの中で相互に関連付いている上、本震災がもたらす影響の範囲は一様ではなく、状況も時々刻々と変化している。そうしたことから、その全体像が明らかになるには今しばらく時間を要するであろう。 しかしながら、以下の要素は市場/産業の今後にマイナスの影響を及ぼすものとして継続的に精査していく必要がある。
これらは、比較的長期的な影響となる4つ目の項目を除けば、その程度の差はあるものの、2011年を通じ、2008年末以降の景気後退から回復へと転じつつあった市場の勢いを削ぐ要因として確実に存在することになる。 一方、復興へのプロセスにおいてICT市場/産業における需要を高める要素も存在する。
これらは、2つ目の項目を除き、ネガティブな要素に比べ、中長期の時間をかけ徐々に効果をもたらすたぐいのものといえ、需要が顕在化するのは早くても2011年後半以降であろう。 国内におけるユーザー企業のICT投資動向は直前の景気動向に強く影響され、特に景気後退の兆候が表れるとその投資抑制効果が即座に表れることが、ガートナーの過去の調査結果から明らかになっている。一方で、景気回復時の相関は大きな遅れを持って表面化する (備考1参照)。被災した福島第一、第二原子力発電所 (以降、原発) と電力供給の問題、円高、原油高騰の影響が日本経済全体に大きな影を落とすのは必至であり、ユーザー企業のICT投資をマイナスの方向に向かわせる。多くのユーザー企業は、リーマン・ショック後に大きなITコスト削減策を施したばかりであるため、短期的にはコスト削減の対象は維持費ではなく復活しかけた新規投資となるであろう。一方で、事業継続計画 (BCP) 対策により、クラウド・サービスの利用あるいは利用検討を前倒しするユーザー企業も増えると考えられるが、これも企業におけるICT投資 (社内人件費を含む) を鈍化させる方向に働く可能性がある。ガートナーでは企業における2011年の国内ICT投資動向に関し、震災前は微増を見込んでいたが、上記の理由により微減に修正した。震災前に予定していた新規ICT投資の復活は、原発や電力供給問題の解決時期に影響されるが、企業活動が正常な状態に戻った後半年〜1年と見積もっている。 直近で問題となるサプライチェーンにおけるボトルネックは、製造、物流、受注処理それぞれにおいてさまざまなレベルで発生している。しかし、最も懸念される半導体デバイス供給の観点では相対的に軽微なものにとどまるとみられ、現時点 (2011年3月19日) ではやや時期尚早ではあるが、その影響の範囲や度合いは限定的となる可能性が高いと考えられる。むしろ、2011年以降において、半導体デバイスの供給逼迫をグローバルに引き起こしかねない潜在的な問題に留意する必要がある。 主要セグメントにおける震災の影響 サーバ市場 国内サーバ市場の四半期出荷台数の成長率は、内閣府と経済産業省から四半期ごとに発表されるGDPや情報化投資指標の傾向とほぼ連動することが、過去の調査結果から明らかとなっている。このため、日本経済全体に広がる大きな影は、国内サーバ市場の成長を失速させるものとみられる。 地震による被害を受けた開発・生産拠点には、国内外向けサーバ生産の主要拠点も一部含まれているほか、ビジネス活動における制約もあるため、サーバ製品の出荷が大幅に遅延する可能性が高い。さらに以下のような影響が想定される。
パソコン市場 短期的に見て、国内に組み立て・製造拠点を持つ一部の大手ベンダーの直接的被害と間接的影響、国内生産のPC主要部材および関連素材の供給不足、物流の遅延、需要低下などが、国内外のPC市場に影を落とすことは必至である。今後市場では、以下に挙げる順に、動きがあることが想定される。
機能・操作性に優れるPCは、利用者にとって「恵まれた環境で威力を発揮する有能な補佐役」であり、機能は劣るが機動性がより高いその他のモバイル情報機器を補完するものであるという意識が生まれてきている。震災はこの意識の広がりを加速させるきっかけとなった可能性があり、これを前提とすると、PCの潜在市場規模の縮小も想定の範囲内となってくる。しかしこれは視点を変えると、機能・操作の優位性を持ちつつも「いざ」という時に活用できる機動性の強化が、今後PCの市場性を高めていくためには必要不可欠な要件となりつつあることを意味する。今回の震災はこの点を明らかにしたといえるであろう。 複写機/複合機・プリンタ市場 多くのベンダーが中国をはじめとするアジアの国々に機器の生産を移しているため、生産そのものへの影響は短期的には軽微と考えられる。しかし、ビジネス全体においてさまざまな影響が想定される。
将来的には、オフィス市場において、機器を資産として所有せずに印刷枚数に応じて支払いを行うサービスへの関心が高まることが予想される。また、企業内印刷についても機器を所有する必要があるかどうかを検討するユーザー企業が増加すると考えられる。 携帯電話端末市場 国内における主要部材の生産と物流の停止、遅延は、国内外の携帯電話端末の供給にネガティブな影響をもたらすことが必至である。これには、メディア・タブレット等のデバイスも含まれる。また、国内市場にフォーカスすると、一般にスマートフォンと呼ばれる端末の成長が期待されていたものの、冒頭の供給懸念とそれに伴う販売機会損失に加えて、ユーザー企業におけるICT投資、一般消費者の消費意欲低迷、購買品目の優先度の変化による端末購入先送りといった要因により、2011年の販売台数規模は従来の予測よりも低い水準にとどまる可能性がある。 より中長期的な視点では、スマートフォンについては、エンタテイメント/ビジネスの両面でより一層の活用が進むことを想定しているため、従来の成長シナリオを大きく見直すことは現時点では考えていない。さらに、今回の地震および計画停電では、消費電力/バッテリ等に関する課題が再認識された一方で、情報発信/収集ツール、およびオフィス外での部分的なビジネス・ツールとしての有効性も改めて認識されたものと考えられる。したがって、短期的には下方修正の可能性があるものの、本セグメントの潜在市場規模は従来予測と大きく変わらないものとガートナーではみている。 ITサービス市場 このたびの震災が日本国内のITサービス市場へ与える影響は、次のような観点から、短期的にマイナス要素が大きいとみている。
とはいえ、今後事態が復興へと向かえば、中期的には、データセンター・サービスの需要が新たに喚起されるとみている。ビジネス継続を目的とするセカンダリ・サイトや分散型データセンターへの顧客の関心が一層高まるであろう。一部のプロバイダーでは、自然災害が少ない海外地域にセンターを設置する動きが加速する可能性もある。 通信市場 通信市場は企業ネットワーク機器、通信事業者インフラストラクチャ機器、固定および移動通信サービスの各サブセグメントから成る。それぞれに震災の影響を受けはするが、市場規模という観点での大きな変化は短期的には想定していない。
半導体市場 電子機器の重要部品である半導体を製造するメーカーは、東北地方にも半導体デバイス製造拠点 (前工程Fab) および半導体デバイス組み立て拠点 (後工程Fab) を有しているが、東日本大震災が半導体市場全体 (デバイス供給) に及ぼす影響は相対的に軽微であると考えられる。一部の半導体デバイス製造設備に深刻な損傷が報告されているものの、NANDフラッシュ、DRAMのような大規模な市場を形成している半導体デバイスの製造拠点は、東北地方より遠隔地にあるためである。ただし、半導体材料であるウェハの製造ラインが損傷を受けたと報告されており、この点は留意すべきである。日本は世界的なウェハの供給拠点であり、2011年以降、日本および世界の半導体デバイスの製造にネガティブな影響を及ぼすことが考えられ、供給逼迫などによりICT市場全体にも影響が波及する可能性がある (半導体関連については「Japan's Earthquake Creates Risks and Opportunities for Electronics and Semiconductor Companies」および続報を参照されたい)。 推奨事項 以上のような状況を踏まえ、ベンダーは次のような行動を取る必要がある。
備考1 景気動向とICT投資動向の相関について リサーチノート、ITD-10-13、2010年6月15日付「日本企業のIT投資展望 (2010年度上半期版):2010年度はベンダーにとって今後の成長に向けた転換期」を参照されたい。
Topics: ICT市場、震災 本記事は著作権法により保護されています。無断転載、複製、複写は損害賠償の対象となることがあります。本記事の内容は信頼し得る情報源によるものですが、事象・出来事の極めて初動段階にあるものが含まれています。このため、結論、予測、推薦などにつきましては、ガートナーの初期分析に相当します。したがい、本記事における見解は、その後の情報収集や詳細な分析により調整や変更が生じることがあります。ガートナーの解釈、分析に基づいて表現されたものですが、その正確度・完璧性に関しては免責とさせていただきます。なお、本報告書に記載されている会社名および製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。
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