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ニュース・アナリシス

写真 日本企業のIT支出予測:2013年−日本のユーザー企業は、何に投資し、何に投資しないのか

2013年2月14日
片山 博之
Note Number:NA-0013-0001

日本のユーザー企業におけるIT支出額は、2009年から始まった減少傾向が2011年で終わり、2012年にようやく増加に転じたが、その伸び率は0.4%と微増にとどまる見通しである。2013年以降も増加傾向は続くものの、多くのユーザー企業は投資に慎重で、維持コストを削減しながら新規投資を行う企業が多く、全体の予算額は大きく増えない。そのような中でも投資を強化する分野は存在する。

概要

 ガートナーは、2013年1月16日に「Forecast: Enterprise IT Spending by Vertical Industry Market, Worldwide, 2010-2016, 4Q12 Update」を発表した。その中で、日本企業におけるIT支出の2012〜2016年の年平均成長率 (CAGR) を0.6%と予測している。2009年のリーマン・ショック以降、東日本大震災が発生した2011年までIT支出規模は減少してきたが、2012年にようやく減少傾向に歯止めが掛かり増加傾向が見え始めた。しかしながら、新規投資 (開発) は行っても維持 (運用) コストを削減する意欲は強く、IT支出全体では0.4%と微増にとどまっている。以降、2016年までのCAGRは0.6%になると予測している。ユーザー企業のITリーダーには、限られた予算の中でビジネス上の価値が高い投資と低い投資を見極め、投資の取捨選択をしていくことが求められるであろう。

2012年以降IT支出は増加するが、その伸び率は平均0.6%

 日本の企業における社内人件費 (IT部門人件費) を除いた、ハードウェア、ソフトウェア、ITサービス、テレコミュニケーション (ネットワーク機器およびネットワーク・サービス) への支出額の予測値 (図1参照) は、2012年1月時点と大きく変わらず、2012年以降の伸び率は微増である。2013年から2014年にかけても前年比伸び率は1%を下回るとみている。一度削減してそれでしのぐことができた維持に掛かるコスト (総IT予算額の平均8割弱) を再度上げることは考えにくい。さらに、仮想化やクラウドなどの低価格ソリューションの台頭、リーマン・ショックに始まり、東日本大震災、異常な円高、そして欧州危機などで経済の先行きが不透明なことによる経営者からの継続的なコスト削減圧力の高まりが、強く影響を及ぼしている。したがって、たとえビジネス強化のための新規投資 (総IT予算額の平均2割強、従業員数1,000人以上の大企業では27%:2012年11月調査) が増えたとしても、運用コストを下げる方向での圧力が強いため、予算額全体は大きく増えない。

 2012年末には日本で新政権が発足した。主要なエコノミストや調査機関が答えたESPフォーキャスト調査 (日本経済研究センター、2013年1月/回答期間:12月26日〜1月8日、回答数:39件) によると、2013年度のGDP伸び率は、新政権の施策により2012年12月調査よりもわずかではあるが上方修正され、前年比プラス1.61% (回答者の平均値) であった。一方で、2014年度からの消費増税による景気への負の影響は小さくはなく、前年比プラス0.23%と低水準の成長が見込まれている。企業のIT支出は、景気が多少上昇しても先行きに不透明感があるうちはすぐには増加しない。2014年以降は2013年の景気上昇によりIT支出も回復することを見込んでいたが、消費増税による経済成長の抑制により大きくは上昇せず、前年比0.8%程度の伸びにとどまると予測している。

 ユーザー企業のITリーダーには、増えないIT予算の中で、投資案件の取捨選択の決断がより強く求められる。そのためには、ITのコスト (総合保有コスト) と投資効果の両方を「見える化」する必要がある。一方、ITベンダーには、ITコストと投資効果を「見える化」するためのサポートを提供すること、およびユーザーが投資を強化する分野を見極めることが必要になる。

図1 日本企業のIT支出額予測値
図1 出典:ガートナー (2013年2月)

2013年の新規・追加投資分野はどのような変化を見せるのか

 IT支出全体が微増にとどまる中、ユーザー企業の投資案件において、コスト削減のための投資と、成長のための投資のバランスを取ることが重要になる。以下、ガートナーITデマンド・リサーチがユーザー企業のIT部門向けに実施したアンケート調査における、「新規・追加・更新投資の主要な分野」の結果から、変化の大きかった分野や業界での注目分野について分析する。ユーザー企業にとっては、自社以外の他の企業がどのような分野に投資しようとしているのかを把握でき、ITベンダーにとってはユーザー企業の投資分野の変化を把握できる。

 図2は、従業員数1,000人以上の企業に、新規・追加・更新投資の主要な分野を選んでもらった結果である。数値は選択率を表し、数値が大きいほど、その年に多くの企業が投資を予定している分野であることを示している。

  • 「サーバ仮想化」の投資を計画する企業は2010年投資計画あたりから急激に増え始め、2013年投資計画でさらにその数が増えた。「サーバ仮想化」の採用率 (1システムでも導入すれば導入済みと換算) は、従業員数1,000〜1,999人の企業で75%、2,000人以上の企業になると91%にもなる (2012年11月調査)。従業員数2,000人以上の企業では新規投資を含めると、数年後には利用率100%近くになる勢いである。一方で、これは、まったくの新規投資としている企業が少ないことを意味し、図2で示した数値のほとんどは、試験的に導入した企業による追加ニーズということになる。「サーバ仮想化」のコスト削減効果を享受した企業による本格的導入がこれから始まる可能性がある。実際に、「サーバ仮想化」を導入して、何らかのコスト削減効果があったと回答した企業は7割以上にも上る。

  • 企業でのモバイル (タブレット端末やスマートフォン) の利用率は大きく高まり、新規や追加で投資する企業は急速に増えている。2012年11月実施の調査では、特にタブレット端末に投資する企業が大きく増加している。「モバイル環境の整備」にはモバイル端末の導入だけでなく、アプリケーションの開発も含めているが、既に何らかの形でモバイル端末を導入した企業が多い大企業での導入意欲がとりわけ高まっており、今後は、1部門での導入から企業全体での導入に進んだり、単なる電子メールやプレゼンテーション、カタログの管理といった簡易的な使い方から、さらにビジネス効果を出すためにどのようなアプリケーションを利用・開発するか (業種特有の使い方も含む) にフォーカスが当てられるとみている。

  • 従業員数1,000人以上の企業の2013年投資計画において、「海外拠点向け/海外事業展開用投資」を計画する企業は17%と比較的大きい数値を示しているが、2012年と比較するとその比率は大きく減少した。従業員数1,000人未満の中堅・中小企業の海外進出に期待するベンダーも存在するが、従業員数1,000人以上の企業に比べてその比率は極端に小さく (2013年投資計画でわずか2.0%)、しかも2012年の4.0%から大きく減少している。これは既にインフラ設備投資 (特にネットワーク系) や一部アプリケーション投資の対応を終えた企業が増えたこと、および昨今の中国をはじめとする「国」に対するリスク管理の必要性が高まったことも背景にあるとみている。さらにこの調査後の円安傾向は、海外投資意欲を一層減少させるかもしれない。それでも数字を見る限りでは、2013年も投資をする企業は従業員数1,000人以上の企業で17%は存在し、ITベンダーにとっては、ピークは過ぎたとはいえ、そこにはまだアプリケーション投資 (パッケージや開発) などに大きなビジネス機会が存在するとみている。

  • 「事業継続計画・管理/災害復旧対策」に投資の計画があると回答した企業の割合は、東日本大震災前の調査では10%程度しかなかったのが (図2の2010年11月調査の2011年投資計画)、2012年の投資計画では一気に4倍近くに増えた。震災後8カ月が経過した調査時点でも、各地で大地震が起きる可能性が高くなったとの報道が頻繁にあり、それが後押しをしたとみている。一方で、その1年後の調査 (2013年の新規・追加投資案件) では、一気に13ポイントも減少した。災害への対応の仕方は企業によってさまざまであるが (単なるルール策定から、地震や津波が発生しにくい地域にあるデータセンターへの移設など)、震災直後に比べてかなり落ち着いた印象である。それでも数値は、全調査対象分野の上位に位置付けられている。

  • 「サービスとしてのソフトウェア (SaaS)」については、2010年の投資計画から2011年の投資計画にかけて投資を計画する企業が大きく増えたが、それ以降は少しずつ増えている。一方、SaaSの採用率の変化を見ると、2011年11月調査から2012年11月調査では22%から26%に増加している。これらの数値だけを見ると、この4ポイントの増加分よりも、2012年計画の新規・追加での選択率の方が11%と大きいことから、その差である7ポイントは追加での採用ということになる。追加採用をしている企業は、SaaSのメリットとデメリットの双方を理解し、メリットの多い採用領域 (アプリケーション) を決定できる企業といえる。一方、SaaS事業のみから利益を得ているITベンダーは現時点では非常に少ないとみている。SaaSは、ユーザー企業にとっては使い方によってデメリットよりメリットの方が大きい場合が多く利用も徐々に進んでいるが、特にシステム・インテグレーター (SIer) においてはSaaS事業のみで利益を稼ぎ出している事例はまだ少ない。ただ、周辺ビジネスに対するビジネス機会は存在することから、顧客数を増やすことで、その周辺のビジネス機会をどれだけ増やせるかがSIerにとっての今後の課題であろう。

図2 新規・追加投資の主要な分野 (複数選択可)
図2 出典:ガートナー (ITデマンド・リサーチ)

 

 

 

Topics: ICT支出、投資動向

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