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SAMPLE RESEARCH

サンプル・リサーチ

イメージ ハイブリッド・クラウド・コンピューティングをめぐる混乱を解消し、準備を開始する
インフラストラクチャ (INF)/INF-12-78
Research Note
T. Bittman, D. Cearley
掲載日:2013年3月7日/発行日:2012年12月28日

本リサーチ分析レポートのテーマに関心をお持ちの方は、2013年4月24日(水)・25日(木)・26日(金)に開催する 「ガートナー ITインフラストラクチャ & データセンター サミット 2013 | テクノロジ革新のとき:備え、実践を開始せよ」 のページを是非ご覧ください。
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(イベント終了後も開催実績としてご覧いただけます)

 

ガートナーでは、2012年のハイプ・サイクルにおいて、クラウド・コンピューティングのポジションを「過度な期待」のピーク期から幻滅期へと変更した。このようなクラウド・コンピューティングではあるが、昨今、ハイブリッド・クラウド・コンピューティングが注目を集めつつある。ITリーダーはハイブリッド・クラウド・コンピューティングと自社のロードマップの適合性を評価し、自社にとって重要なものとそうでないものを判断し、またその適用について準備を開始する必要がある。

要約

主要な所見

    ● ハイブリッド・クラウド・コンピューティングとは、パブリック/プライベート/コミュニティ・サービス・プロバイダー間、または内部/外部クラウド・サービス間のプロバイダー境界を越えて、隔離されたクラウド・サービスを連係させて利用することである。

    ● ハイブリッド・クラウド・サービスは、複数のサービスを組み合わせることで全体の対応能力 (ケイパビリティ) や容量 (キャパシティ) を高める。

    ● ハイブリッド・クラウド・コンピューティングは、コスト競争の状況改善、社内プライベート・クラウドの稼働率向上、低コストでバランスのとれた隔離、弾力性 (回復力) と災害復旧能力の向上を実現する。これらはクラウド・コンピューティングの利点を拡張するものである。

    ● ハイブリッド・クラウド・コンピューティングは複雑であるため、複数のプロバイダーにまたがるサービス・レベルの保証、規制要件の遵守、適切な隔離とセキュリティといった課題が生じるとともに、恐らくはハイブリッド・クラウド環境の全面活用に向けたアプリケーションを修正する必要性が生じる。

推奨事項

    ● パブリック・クラウド・サービスでは要件 (隔離やカスタマイズなど) を満たさず、プライベート・クラウド・サービスでは実現不可能 (規模など) な場合に、ハイブリッド・クラウド・サービス構成を検討する。

    ● プライベート・クラウド・サービスは、将来のハイブリッド化を念頭に置いて設計する。将来の統合や相互運用が可能となるよう確実を期する。

    ● 大企業は、自らがクラウド・サービス・ブローカー (CSB) となって、ハイブリッド・クラウド・サービスで必要となる統合と調整を引き受けることを予期しておく。


分析

ハイブリッド・クラウド・コンピューティングの定義
ハイブリッド・クラウド・コンピューティングとは「パブリック/プライベート/コミュニティ・サービス・プロバイダー間、または内部/外部クラウド・サービス間のプロバイダー境界を越えて、隔離されたクラウド・サービスを連係させて利用するクラウド・コンピューティングの一形態」とガートナーは定義している。クラウド・コンピューティング・サービスと同じく、ハイブリッド・クラウド・コンピューティング・サービスも「スケーラブルかつ弾力性のあるITによる能力」が「サービスとして」企業外もしくは企業内の顧客に提供される。しかしハイブリッド・クラウド・サービスは隔離された状態とプロバイダー境界を越えるため、プライベート、パブリックまたはコミュニティというクラウド・サービスのどれか1つのカテゴリには収まらない (「Hype Cycle for Cloud Computing, 2012」参照)。

これまで、ガートナーでは、ハイブリッド・クラウド・コンピューティングを「内部/外部プロバイダーの境界をまたがる構成に重点を置くもの」と定義していた。更新された新しい定義はよりオープンであり、各種ソーシング・オプションの拡大と、組み合わせてハイブリッド形態にできるプライベート/コミュニティ/パブリックの各クラウド・サービスの多様な隔離度を反映している。

ハイブリッド・クラウド・サービスが有効な理由
ハイブリッド・クラウド・サービスでは、サービスを組み合わせることによって、単一のサービスが提供する以上の対応能力 (サービスの集約、カスタマイズ、統合) や追加キャパシティ (集約) を実現する。同時に、ハイブリッド・クラウド・サービスは、隔離された状態をバランス良く制御する (「Cloud Services Brokerage Is Dominated by Three Primary Roles」参照)。

組み合わせるサービスの数は2つだけではないが、ハイブリッド・クラウド・サービスの例を以下に挙げる。

    内部プライベート・クラウド・サービスと外部プライベート・クラウド・サービスの組み合わせ:内部プライベート・クラウドを構築しながら、外部プロバイダーの提供するプライベート・クラウド・サービスにもアクセスできる。企業のIT部門が、プロバイダーの持つ対応能力は持たないが隔離は必要である場合、またはプロバイダーが効率性を目的として共有プールからリソースを確保しているがそれでも隔離を実現できる場合に有効である。災害復旧を目的とする場合に一般的なハイブリッド・モデルでもある。

    内部プライベート・クラウド・サービスとパブリック・クラウド・サービスの組み合わせ:内部プライベート・クラウドは設備投資を必要とし、高い稼働率の維持が重要になる。企業のIT部門は、社内クラウドの容量を利用できるときはプライベート・クラウド・サービスを利用し、利用できなくなればパブリック・クラウド・サービスを利用することで、資産の稼働率を高めることができる。さらに、プライベート・クラウド・サービスをパブリック・クラウド・サービスに統合して能力を拡充しながら、企業の要件に合わせてカスタマイズすることもできる。一例として、パブリック・データとプライベート・データの組み合わせに対するデータ分析を実行できる。

    内部プライベート・クラウド・サービスとコミュニティ・クラウド・サービスの組み合わせ:コミュニティ・クラウド・サービスは、類似した要件を持つ複数の企業のために存在するが、それでもプライベート・クラウド・サービスとの統合が必要になる場合がある。同様に、コミュニティ・クラウド・サービスは、コミュニティだけで共有され、プライベート・クラウドの容量と組み合わせ可能なキャパシティ・プールを保持することになる。

    コミュニティ・クラウド・サービスとパブリック・クラウド・サービスの組み合わせ:同様に、コミュニティ・クラウド・サービスは、特に共有資産の場合、パブリック・クラウド・サービスを容量の安全弁として利用できると便利である。ほかにも、パブリック・クラウドの能力のカスタマイズや、コミュニティ・クラウド・サービスとの統合によってコミュニティ独自の要件を満たすこともできる。

ハイブリッド・クラウド・サービスの構成方法
ハイブリッド・クラウド・サービスを構成する方法は、比較的静的なものから非常に動的なものまで多数あるが、以下の3種類に大別できる。

    静的:ハイブリッド・クラウド・サービスを、各サービスが常に同じ方法で連係して利用されるように設計する。この方法は、個々のクラウド・サービスの機能またはデータが相互に補完的である場合に便利である。

    展開時:ハイブリッド・クラウド・サービスを、要求されるたびに構成する。例えば仮想マシンが要求されると、展開ポリシーに基づいてプロバイダーを自動的に選択する。別の方法として、顧客がサービスを要求したときに、サービス側で以下のどちらかを実行する。(1) 利用できるソースの1つを利用して顧客へのサービス方法を選択する (例えば、プライベート・クラウドが満杯である場合に代替クラウドを利用する)、または (2) 2つのサービスを即座に組み合わせて顧客のニーズを満たす (例えば、処理しきれない分の計算要求を別のサービスに任せる)。

    動的:ハイブリッド・クラウド・サービスを、サービスの対応能力の変動、データ、コスト、稼働率、規模の要件、問題に基づいて実行時に変更し、利用するサービスを選択する。サービス・インスタンスを移動したり、別のサービスを組み合わせたりして、ハイブリッド・クラウド・サービスを動的に構成する。

この構成の管理は (特に展開時または動的に変更する場合)、サービスの集約、統合、カスタマイズを処理するCSBの役割を果たす組織の責任となる例が多い (「Cloud Services Brokerage Is Dominated by Three Primary Roles」参照)。プライベート・クラウド・サービスをハイブリッド・クラウド・サービスに拡張している企業は、CSBの役割を引き受けているといえる (「Internal CSB Role Is Emerging Within IT Organizations」参照)。

ハイブリッド・クラウド・コンピューティングで何が可能になるかを表現するために、「オーバードラフティング」や「クラウドバースティング」といった言葉がよく使われる。しかしハイブリッド・クラウド・サービスの大多数は、当初はそれほど動的ではない。初期のハイブリッド・クラウド・サービスは、より静的で巧みに組み合わせた構成となる可能性が高い (特定の機能またはデータのために内部プライベート・クラウドとパブリック・クラウド・サービスを統合するなど)。展開の要素が強い構成は、CSBの発展とともに登場する (例えば、ポリシーと稼働率に基づいて外部サービス・プロバイダーを活用できるプライベートIaaS [サービスとしてのインフラストラクチャ] など)。動的な要素が強い構成は、サービスの災害復旧またはフォークリフト型移行 (一括移行) 向けに限定されることになる。クラウド・コンピューティング向けに設計された新しいアプリケーションは、動的な構成を活用し、拡張性を実現して、独自の差別化につながる価値をもたらす。

市場にはハイブリッド・クラウド・サービスとは異なる多くの例があり、それぞれ意味はあるが、ハイブリッド・クラウド・サービスではないことに注意する必要がある。

    カタログ:これは、いくつかのクラウド・サービスの前面に存在するポータルまたはサービス・カタログである。各種クラウド・サービスの出発点となる場所であり、便利ではあるが、カタログの背後でサービスがハイブリッド方式で組み合わされていない限り、各サービス自体はハイブリッドではない。

    クラウド・サービスと非クラウド・サービスの組み合わせ:サービス・プロバイダーは既に、ホスティングしたワークロードからクラウド・コンピューティング・サービスへのアクセスやその逆が可能な混合型のサービスを提供している。これは便利で実際に役立つ展開方式であるが、ハイブリッド・クラウド・サービスではない。

    クラウド・サービスで実行されているアプリケーションを、別のクラウド・サービスで実行されている別のアプリケーションと統合:クラウド・サービス (この場合はアプリケーション) の利用者がその処理を調整・統合していても、クラウド・サービスが調整・統合されているとはいえない。

    サービスの固定レイヤ:サービスとしてのソフトウェア (SaaS) プロバイダーがソフトウェアをIaaSプロバイダーのサービス上でホスティングしていても、SaaSがハイブリッド・クラウド・サービスを提供しているとはいえない (つまり、対応能力や容量を増やしていない)。この場合は、SaaSプロバイダーの実装サプライチェーンの一部としてクラウド・サービスが利用されているにすぎない。ただし複数のIaaSベンダーを対象としてSaaSソリューションを調整するCSBを追加すると、ハイブリッド・クラウド・サービスとなる可能性がある。

ハイブリッド・クラウド・コンピューティングの利点と課題
ハイブリッド・クラウド・コンピューティングを利用すると、クラウド・コンピューティングの利点がさらに大きくなる。

    内部プライベート・クラウド・コンピューティングは、資産の稼働率の最大化に貢献する。ハイブリッド・クラウド・コンピューティングは、拡張性を高めつつ、価値を最大化し、内部資産と外部サービスのバランスを取ることができる (例えば、パブリック・クラウド・サービスと社内クラウドの両方にサービスを展開し、社内に余裕がなくなったときにパブリック・クラウドを利用する)。

    クラウド・コンピューティングはコスト効率の向上に役立つ。ハイブリッド・クラウド・コンピューティングは、競争と自動裁定によりコスト効率を最大化できる (おそらく金融市場ほど柔軟ではないが、手作業でプロバイダーを選択するよりは柔軟である)。

    プライベート・クラウド・コンピューティングは隔離性を保証する。ハイブリッド・クラウド・コンピューティングでは、隔離性、コスト、拡張性の各要件のバランスを確保できる。

    クラウド・コンピューティングは高可用性と弾力性を実現できる。ハイブリッド・クラウド・コンピューティングは、複数のプロバイダーを活用して弾力性と災害復旧能力を高めることができる。

    クラウド・コンピューティングは新機能を素早く導入できる。ハイブリッド・クラウド・コンピューティングでは、新機能を素早く俊敏に活用することが容易になる。

    クラウド・コンピューティングは導入のハードルが低い。ハイブリッド・クラウド・コンピューティングは、企業が出口戦略を組み込むのに役立つ。

ハイブリッド・クラウド・コンピューティングに関連した大きな課題も存在する。ハイブリッド・クラウド・コンピューティングは、隔離度や顧客管理のレベルがさまざまに異なるサービスを組み合わせるため、複雑性が増す。組み合わせたサービスで必要な性能、セキュリティ、コンプライアンス、全体的な統制を実現するのは簡単ではない。ハイブリッド・クラウド環境をフル活用するには、アプリケーションの大幅な変更が必要になることもある。

ガートナーの結論
ハイブリッド・クラウド・コンピューティングは成熟度の低いトレンドであり、今後5年にわたって動きが加速すると思われる。このトレンドを推進する要因はいくつかある。

    ● 提供される内部プライベート・クラウド・サービスと外部パブリック・クラウド・サービスの爆発的増加

    ● CSB機能を可能にするプロバイダー間の相互運用性 (内部プライベート・クラウド・サービスを含む)、ツール、技術の改善

    ● クラウドのオーケストレーション (調整) 機能を持つクラウド管理プラットフォーム

    ● 優れた弾力性と災害復旧能力を持つクラウド・サービスに対するニーズ

    ● 俊敏性と拡張性に対する需要の増大

    ● クラウド対応で規模が大きく変化する新しいワークロード

    ● 寿命が短いワークロードの増加

企業のIT部門は、ハイブリッド・クラウド・コンピューティング戦略を開発するに当たって、以下の3つの重要なステップを踏むべきである。

    1. 外部サービスとの統合と相互運用が可能になるようにプライベート・クラウド・サービスを設計する。

    2. ハイブリッド・クラウド・サービスを構築できる新しいCSBを調査する。

    3. 自らがCSBになることが正しい戦略か否かを判断する。


    推奨リサーチ
    ・ 「Cloud Services Brokerage Is Dominated by Three Primary Roles」
    ・ 「Hype Cycle for Cloud Computing, 2012」
    ・ 「Internal CSB Role Is Emerging Within IT Organizations」
    ・ 「Design Your Private Cloud With Hybrid in Mind」
    ・ 「Hybrid IaaS」
    ・ 「2012 Cloud Computing Planning Guide Executive Summary: From Hybrid IT to Hybrid Clouds」
    ・ 「Market Insight: Customers Need Hybrid Cloud Compute Infrastructure as a Service」

    (監訳:亦賀 忠明)

INF: INF-12-78
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