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SAMPLE RESEARCH

サンプル・リサーチ

イメージ モバイルの戦略的ロードマップ:2012年版
インフラストラクチャ (INF)/INF-13-03
Research Note
K. Dulaney, L. Wallin
掲載日:2013年3月19日/発行日:2013年1月10日

本リサーチ分析レポートのテーマに関心をお持ちの方は、2013年4月24日(水)・25日(木)・26日(金)に開催する 「ガートナー ITインフラストラクチャ & データセンター サミット 2013 | テクノロジ革新のとき:備え、実践を開始せよ」 のページを是非ご覧ください。
本サミットでは、企業が、「モバイル」、「クラウド」、「ビッグ・データ」といった新たなテクノロジのインパクトを的確に捉え、かつ、これらを適切な時期に導入するために必要なインフラ戦略に関して議論します。
(イベント終了後も開催実績としてご覧いただけます)

 

モバイル戦略は孤立した文書であってはいけない。本ロードマップでは、モビリティを企業戦略、作業プロセス、ポリシーに組み込むため、およびビジネス目標に沿った投資を行うためのステップについて概略を述べる。

要約

主要な所見

    ● モバイル戦略を単独で立案して一時的に使用することもできるが、モビリティは最終的にはより広範な戦略、作業プロセス、ポリシーに組み込まれなくてはならない。その点については現在のWebテクノロジと同様である。

    ● IT部門とビジネス部門 (LOB) のリーダーはまだ連携が十分ではなく、業務の効率と効果を高めるというビジネス目標に合わせてモバイル・イニシアティブを調整することができていない。

    ● 企業は、変化し続けるデバイスとエンドユーザーの要求の渦中にあり、回復力 (レジリエンシ) を養うというプラクティスをまだ採用していない。

    ● モビリティはコスト・モデルの変化を引き起こしており、IT部門とユーザーがモバイル・デバイスの所有者として責任を分担し始めている。

推奨事項

    ● 企業全体がモビリティ・イニシアティブに集中できるようにするため、および意思決定を一元化するためにモバイル・センター・オブ・エクセレンス (MCOE) を設立する。

    ● 戦略の4つの基礎 (需要、供給、ガバナンス、リスクと問題) の観点からすべてのモビリティ活動を調査し、プランニングまたは再評価を行う。

    ● 一元的意思決定と標準的業務慣行を導入して、セキュリティ・ポリシー、モビリティ計画、ソーシング、アプリケーション設計、サポート、コスト管理に関する断片的な手法を排除する。

    ● ネットワーク、管理、セキュリティに関する戦略の再評価と、多様なネットワークの利用の容認により、事前対応的で回復力に富む企業の発展を支援する。


目次
    分析

     将来の状況
      需要
      供給
      ガバナンス
      リスクと問題

     現在の状況
      需要
      供給
      ガバナンス
      リスクと問題

     ギャップ分析と相互依存

     移行計画
      優先度:高
      優先度:中
      優先度:低

    推奨リサーチ
図目次
    図1 モビリティの戦略的ロードマップの概要
    図2 モビリティの戦略的ロードマップのタイムライン


分析
真の意味で長期的/戦略的、あるいはプロアクティブ (事前対応的) な取り組みとして、モビリティを計画し管理している企業はほとんどない。その代わりに、革新的なモビリティを企業に持ち込んでいるのは、エンドユーザー (顧客または従業員) である。IT部門と経営陣は、外部からの影響に反応して、短期的/戦術的な手法でモバイル・アプリを開発したり、イニシアティブを立案したりすることが多い。企業はビジネス目標、ビジネス・プロセス、業務慣行を結び付ける、より裾野の広い長期的なモバイル戦略を開発しなければならない。

戦略がなければ、未調整の、重複した、持続不可能なイニシアティブが多数生み出されるだけで、プログラムのコストが増加し、市場投入までに要する時間が長くなる可能性が高い。孤立したモバイル戦略文書は、包括的な解決策ではない。モビリティを取り込み、その影響を反映させてIT戦略を改訂することが最高の目標である。モビリティの価値を最大限に高めるには、IT部門が業績目標をサポートするためにどのようにモビリティに投資し、利用すればよいのかを包括的に見直すことで、企業全体をリードしなくてはならない。見直した結果は、モビリティを独自の異なるプラクティスとして扱うためではなく、現行のITプラクティスとビジネス・プラクティスを改善するために活用すべきである。

このプロセスの一環として、IT部門は、モビリティが企業にもたらす価値を損なう恐れがある社内の不備に対処しなければならない。ガートナーが見るところ、モビリティを導入することで、時代遅れとなり最適とはいえなくなったプランニング、設計、予算編成、サポートなどの業務に対する慣行が明るみに出る場合がある。以下に例を挙げる。

    ● ある企業では、エンドユーザーのデバイスが開発者のデバイスと同じ外観と機能であることを前提として、アプリケーションを開発している。スマートフォンなどに搭載されているピンチによるズーム表示のような機能は、どのデバイスでも使えるデバイスフリーのアプリケーション開発を犠牲にするほど革新的なものとはいえない。こうした応急処置的な対応を取ると、IT部門がこれまで対象デバイスを狭く定義していたことが明らかになる。

    ● ある企業のIT部門では、ネットワークを高帯域幅と低遅延の有線ネットワークに分類している。現実に、ネットワークには複数の特性がある。公的機関あるいは民間が運営するネットワーク、有線ネットワークと無線ネットワークがあり、帯域幅と遅延には大きなばらつきがある。こうした特性の違いは、ローミングのパフォーマンス、合理的に算定される期待帯域幅、セキュリティに影響する。これらはすべて、アプリケーションのパフォーマンスとユーザー・エクスペリエンスに影響を与える。

    ● IT部門の組織構造は、大手ベンダーのビジネスモデルに合わせていたり、製品タイプ別に専門の担当者を配置したりしているものが多い。これでは、一貫した (利益相反を招くことのない) 手法でテクノロジを管理することはできない。例えば通信部門は、PBXベンダーやキャリアからのトータル・ソリューションの購入には慣れているが、すべてのエンドポイント・デバイス (PCやノートブックなど) のほかに、独立したアイテムとしてのモバイル・デバイスについても一貫性のあるセキュリティと管理の容易性の評価を検討しない可能性がある。

    ● ITの領域以外の、例えば人事上のポリシーにおいても依然として「エンドユーザーは午前9時から午後5時まで勤務し、会社所有のコンピューティング・デバイスを持ち、企業データと同様に常時会社にいること」を前提として、デバイスの利用を管理している可能性がある。

    ● モビリティは、アプリケーションとビジネス・プロセスを変える。「いつでも」「どこでも」「どのデバイスでも」使用できることを前提とするモビリティは、PC以外のデバイスを数多く所有し、マルチチャンネルかつマルチメディア対応の設計を通して接続したいと考えている新しいタイプのユーザーが、どのようなアプリケーションを求めているかについて、新たな見方を要求する。モバイル端末経由でWebサービスを広範に使用すれば、より多くの多段階型ビジネス・プロセスを連続的に実行できる。

IT部門は、1件の戦略文書の作成に力を注ぐよりも、従来の業務慣行を新しい状況に適合させ、モビリティをすべてのビジネス戦略、業務プロセス、ポリシーに統合する方向で企業をリードしなくてはならない。その場合の目標は、テクノロジとビジネス要件が絶えず変化する中で企業の俊敏性と回復力を高めることである。

モビリティに対する企業のアプローチは、約15年前に始まったWebテクノロジやWeb戦略の採用に関するアプローチと同様の道をたどるべきである。企業はそれ以来、Web戦略を単独のものとして扱うアプローチ (別々の開発チームとツールを用いる) から、企業と緊密に統合されたものとして扱い、プランニングと管理にさまざまな利害関係者を関与させるアプローチにシフトしている。

そのためには、企業のあらゆる分野においてモビリティの影響が及ぶ範囲を認識すべきである。これは人事ポリシー、ガバナンス、規制 (企業ポリシーを含む)、監査、法務と保険、エンドポイント管理、アプリケーション提供手法、適応型アプリケーション設計、統合ネットワーク・アーキテクチャ、インフラストラクチャ・アプリケーション・アクセス管理、テクノロジの検討と採用、コスト管理計画などの主要な戦略的トピックを取り上げて検討することによって可能となる。

ガートナーでは、モビリティ中心型プランニングを企業全体に組み込むには約10年かかると予測している。IT部門の課題は、モビリティに対する総合的なアプローチにシフトするよう企業をリードしながら、俊敏性に関するビジネス部門とエンドユーザーの期待を満足させることである。過去に定められた短期的ビジョンへの対応に長時間を要することを理由として、慎重かつ十分なスピードをもって行動することをやめてはいけない。図1に企業として取り組むべきことの概要を示す。

図1 モビリティの戦略的ロードマップの概要
図1
出典:ガートナー (2012年6月)

将来の状況
今後モビリティは、すべての企業活動、戦略開発、アプリケーション開発、マーケティング、調達その他のビジネス機能において当たり前の存在になる。企業は、モビリティ機能単体への投資ではなく、モビリティ機能を含む戦略的投資を行う力を持つ。モビリティを費用対効果の大きい方法で利用してビジネス目標の達成を支援する。モビリティは関連する他のIT戦略や事業戦略と緊密にリンクされる。適切なシステム、業務プラクティス、ポリシーが導入されるため、IT部門は、企業の競争力を支える俊敏性を備えた新たな対応能力の開発を担う部門として位置付けられる。

どのような種類の戦略開発においても、企業独自のビジネス目標、予算、競争環境などの要因に合わせた意思決定が要求される。ただし、すべての戦略的意思決定において、同様のプラン二ング・フレームワークを利用できる (「Put an Integrated Mobile Strategy in Place, or Face Increased Costs Later」およびツールキット、ITIO-12-02、2012年11月5日付「ツールキット:モバイル戦略の策定」参照)。本リサーチノートにおいて、ガートナーは以下の4項目を戦略の重要な基礎として特定した。

    ● 需要:ビジネスの成果とエンドユーザー要件の定義方法

    ● 供給: ITによってニーズを満たす方法

    ● ガバナンス :意思決定の方法とポリシーの実施方法

    ● リスクと問題:外部の要因がプランニングと実行に及ぼす影響

IT部門とビジネス部門のリーダーは、戦略の基礎となる上記の分野において、今後数年にわたり、モビリティ・プログラムの開発と提供に影響する特定の戦略的な考慮事項に対処すべきである。

需要

目標:IT部門とビジネス部門のリーダーが、アプリケーションまたはサービスのモバイル化について、ビジネス要件とユーザー要件、ユーザーの対応能力、望ましいビジネスの成果を導き出し、それらについて合意できる。

モビリティ関連のイニシアティブでビジネス要件を定義する際は、モビリティがそれ自体では本来価値を生み出すものではないことを、関係者間で改めて確認することが重要である。ガートナーでは、モビリティと企業戦略との関係を説明するに当たって、「モビリティは名詞ではなく、形容詞である」と述べている。モビリティは目的を達成するための手段である。モビリティの価値は、各ユーザー・セグメントのコンテキスト (文化の違いなど) と新テクノロジが提起する可能性を調べることによってコア・ビジネス・プロセスを支援する際に、モビリティが果たす機能から生じる。

戦略的な考慮事項
IT部門とビジネス部門のリーダーは、ビジネスとユーザーの需要に関する戦略的意思決定をサポートするプラクティスを創出しなければならない。IT部門とビジネス部門のリーダーは、以下の要素に力を注ぐべきである。

    ビジネスへの影響:CIOとビジネス部門のリーダーは、次の目標を踏まえて、モビリティに関するビジネス要件とユーザー要件を特定する。

    - 効率化:モビリティを利用して、既存プロセスの実行をより効率的に支援したり、または一部の手順を廃止したりする方法。つまり、業務を適切に行う。
    - 有効性:モビリティを利用して、新しいプロセスまたは機会の創出に寄与する方法。つまり、適切な業務を行う。
    - エラー:モビリティを利用して、エラー件数の削減、データ品質の向上、シュリンケージへの対応を可能にする方法など。

 上記の方法がビジネスに与える影響に着目することによって、企業がモビリティへの投資に期待する投資収益率 (ROI) を実現できる。

    ユーザーのセグメント化:ビジネス要件を特定する際、IT部門はエンドユーザー・セグメンテーション・モデルを使ってモビリティのニーズを特定する。このモデルは、モバイル・テクノロジを利用して企業と対話する社内スタッフの役割、顧客、外部ユーザーに適用される。IT部門は、モビリティの程度、コストの制約、セキュリティ要件などの特徴を使って、エンドユーザーの単一ではあるが同質ではないコミュニティを、対象を絞ったアプリケーションを提供しやすい小規模かつ同質のコミュニティに分割する。エンドユーザーをセグメントして優先順位を設定することにより、IT部門はデバイスとアプリケーションのコストを制御しやすくなる。

    技術の有効化:新しい発展途上のテクノロジは、モバイル・エンドユーザーから新しいタイプの需要を生み出す。IT部門は、そうしたテクノロジがビジネスとユーザーの要求に与える影響に対して企業が準備できるよう、ガートナーのハイプ・サイクルのような戦略的レポートを駆使してそうしたテクノロジを評価する。企業は、ハイプ・サイクルなどのレポートとテクノロジ評価を活用して、ビジネス部門のリーダーにビジネスの成長機会とコスト削減の機会について説明する。

    新しいアプリケーションとビジネス・プロセス:モビリティは、無線テクノロジを使ってテクノロジの常時提供と常時接続を可能にすることにより、以前はばらばらであったビジネス・プロセスの統合を支援する。長年別々であったビジネス・プロセスがリンクされ、連続的な情報フローに支えられた連続的なプロセス・フローとなる。モビリティは、ビジネス・イベントの継続的な監視と捕捉を可能にする。新しいWebサービスとアプリ・ストアは、任意のプロセスのすべての重要なステップにエンドユーザーを接続する接着剤の役割を果たす。例えば、自動車事故の報告書を処理する場合、かつては自動車の所有者が事故の写真と書類を保険代理店にファクスで送る必要があり、代理店はそれらを受け取ってから車を修理するための手順を別途開始していた。今では、車の所有者と保険代理店が無線データ通信機能とカメラ、データ収集ソフトウェアを備えた携帯電話を使って必要な情報をデジタル形式で取得し、送信できる。

供給

目標:モビリティ・インフラストラクチャと運用、スタッフ、対応能力、業務慣行は、IT部門が費用対効果の高い方法でモビリティ・ソリューションとモビリティ・サービスを提供できるように配備されている。企業は、必要に応じて新たな対応能力を効率的に導入できるシステムを備えている。

IT部門は、企業内外の現在と将来のモビリティ・ニーズを満たす体制を整えておかなければならない。CIOとITリーダーは、戦略的に作業を進めるために、モバイル・アプリケーションとモバイル・サービスのライフサイクルを完全に制御しつつ、俊敏な動きを可能にするプランニングと業務慣行を導入すべきである。

戦略的な考慮事項
IT部門とビジネス部門のリーダーは、ビジネスとユーザーの需要に関する戦略的意思決定を支援するプラクティスを生み出さなくてはならない。IT部門とビジネス部門のリーダーは、次のような要素に力を注ぐべきである。

    サポート:すべてのデバイスとユーザーのサポートは、単一の計画と予算によって管理される。企業は、企業の責任と管理テクノロジを統合することによって、PC構成ライフサイクル管理 (PCLM) とモバイル・デバイス管理 (MDM) の統合に対する準備を整えている。目標は、使用されているすべてのデバイス・カテゴリにわたって一貫したポリシーとサービスを提供することである。

    ソーシング:通信サービス・プロバイダー (CSP)、アウトソーシング・サービス・プロバイダー、システム・インテグレーターによる企業モビリティ向けの製品と対応能力の構築は現在、さまざまな段階にある。小規模な特定市場向けベンダーへの依存は、可能であるが必要ではなくなる。大半の企業は、他のテクノロジと同様にどの対応能力を社内で構築し、どの対応能力を外部にアウトソースするかを判断する際に、引き続きモビリティ機能の戦略的性質を分析する。パートナーのタイプは、変わらないままとなる可能性が高い。

    ライフサイクル計画:IT部門は、すべてのエンドポイント・デバイスの完全なライフサイクル計画を重視して、デバイスの調達、展開、継続的サポート、廃止を1つのグループに集約する。これにより、費用対効果の高いユーザーごとのポートフォリオ管理、コスト制限、ITサポート・スキルの活用が可能になり、すべてのエンドポイント投資を最適に活用できる。

    ベンダー関係:ベンダー関係戦略は、ベンダーのビジネス戦略の違いに整合するよう調整される。Appleのような新しい消費者重視型ベンダーは、DellやHPのような従来の企業向けベンダーとは異なる手法を採用している。例えばAppleは 、発表前後にバランス良く対応するのではなく、製品発表後の対応に力を入れる。企業は、修正不可能な固定されたソリューションに注力し、アドオン・ベンダーを選択してカスタマイズに対応することが必要になる場合がある。

    アプリケーション設計:IT部門は、マン・マシン・インタフェースを見直すトレーニングや新テクノロジ (iPadなど) を開発者に提供して、使いやすさへのエンドユーザーの新たな期待に関するビジョンを提示し、設計スキルの継続的進化を促す。IT部門は、多くのデバイスに適応できるアプリケーションを開発しなければならない。さらに、エンド・アプリケーションの所有者が必ずしも所有または契約していないソフトウェア要素 (Webサービスなど) に基づいてアプリケーションが構築されることを認めなければならない。

    ネットワークの統合:IT部門は、多様なネットワーク (公営/民間、有線/無線) の利用が共通の認証方式を備えた1つのクラウドに統合され、非同期アプリケーションとストリーミング・アプリケーションをサポートする移行テクノロジによって、ネットワーク間の頻繁なローミングに対応可能となることを受け入れる。

ガバナンス

目標:モビリティに、標準およびポリシーの設定と進化に向けた仕組み、他のプロセスや企業の一部と統合するための仕組みが組み込まれている。

戦略的な考慮事項

    組織構造と責任の割り当て:修正後のIT組織構造は、絶えず変化する世界において、一貫した管理、利用、セキュリティを実現する。新たな組織に生まれ変わったIT部門は、企業資金の効率的で適切な利用を促進し、貴重なビジネス情報を守りつつ資産の最適な利用を促進する。エンドポイント管理が強化され、ばらばらなグループがそれぞれ他と無関係なニーズを追求する際に生まれる、偽善的なベスト・プラクティスが回避される。理想を言えば、目標はノートPC、スマートフォン、メディア・タブレットも含めてすべてのエンドポイント・デバイスに一律に適用されるポリシーを設定することである。すべてのエンドポイント・デバイスの管理責任を1つのチームに担当させれば、単一のプロセス (またはプロセス・セット) を使ってポリシーを配布し、適用することができる。当面このプロセスにはさまざまなツールが使用され、長期的には1つの統合型ツールが使用される可能性が高い。同様に、IT部門は、多くの技術分野にまたがって運用される総合ネットワーク部門を設立する。サーバ・グループには、トランザクション・システムだけではなく、通信対応ビジネス・プロセス (CEBP) を通じて業務の改善を可能にする相互依存型コラボレーション・システム (電子メールやテレフォニーなど) も含まれる。

    IT部門内では、モビリティに関する責任が従来の部署に完全に組み込まれ、エンタプライズ・アーキテクチャ (EA) チームがアーキテクチャという視点からモビリティに責任を持ち、アプリケーション開発チームが開発プロジェクトのモバイルに関する要素について責任を持ち、モビリティのソーシングは他のソーシング作業やベンダー管理作業と同じように処理される。

    デバイス・ポリシー:企業は、個人所有デバイスの業務利用 (BYOD: Bring Your Own Device) を含むモバイル勤務形態とリモート勤務形態のすべての側面を対象とした、あらゆるエンドポイント・デバイスを総合的にカバーする単一のポリシーを使用する。BYODの適格条件はエンドポイントにまたがって調整され、BYODプログラムの適用対象資格を持つ従業員は、雇用契約とは別のBYOD契約に署名する。

    管理された多様性:IT部門は、IT標準とユーザーの選択肢のトレードオフに関する評価にユーザーを参加させ、両者のバランスを取るオプション・フレームワークから合意可能なソリューションを選択させることによって、エンドポイント標準の強制という課題に決着をつける。この分野でのベスト・プラクティスは、「Use Managed Diversity to Support the Growing Variety of Endpoint Devices」で論じられている。

    新たなアプリケーション・デリバリ・モデル:IT部門は、Windowsの影響を受けたオフライン型アプリケーション・モデルから、オンライン・モードとオフライン・モードでブラウザが関与するアプリケーション・モデルに移行する。この新しいデリバリ・モデルは、多くの異なるデバイス・カテゴリにまたがって運用され、必要に応じてコンテンツを適応させる。Windows依存型アプリケーションは、段階的にサーバでホスティングされる端末サーバまたはホスト型仮想デスクトップ環境に移行し、エンドポイントへの依存性が低下する。

    従業員の行動規範:IT部門は、人事部門と共同でモビリティに関する従業員の行動規範を制定し、定期的に更新する。この行動規範には、ビジネス戦略とIT戦略の変化、新たに登場するテクノロジ、セキュリティ上の問題、予算の要件が反映されるべきである。

    セキュリティ・アプローチの合理化:IT部門はセキュリティ・アプローチを合理化し、ユーザーのコンテキスト依存型アイデンティティに応じてアプリケーションのアクセスを許可する。業務環境を消費者環境から分離する正式な手段として、企業情報のコンテナ化 (隔離) が標準的手段になる。IT部門は、どのセキュリティ・プラクティスもハッカーの侵入や情報漏洩をすべて防ぐことはできないことを認識し、ビジネス部門のリーダーと共同で事件発生後の影響緩和戦略を検討する。

リスクと問題

目標:IT部門とビジネス部門のリーダーは、戦略の順調な実施を脅かすセキュリティ、その他の内外の脅威を把握し、緩和するためのアプローチとプロセスを導入している。

企業が、モビリティの要素を含むIT戦略とビジネス戦略を計画どおり実行する能力に対する内外の要因の影響を、迅速に評価する手段を導入している。例えば、単一のポリシーを一貫して適用するというプラクティスを採用することによって、セキュリティの観点からすべてのエンドポイントにわたってリスクを評価し、緩和する方法を総合的に把握できる。このポリシーは、セキュリティと生産性の動的なバランスを反映させるよう絶えず進化する。

戦略的な考慮事項
企業の「将来の状況」への移行を妨げたり、戦略を放棄するよう仕向けたりするリスクは企業の内外で発生する可能性があり、以下のリスクが含まれる。

    ● 規制/コンプライアンス/税制によって新しい要件が生まれ、BYODのサポートが複雑化するか、または高コストになる。

    ● モバイル・エコシステムが (新テクノロジの登場などにより) 突然、劇的に変化し、投資に関する意思決定の再考を迫られたり、デバイスやアプリケーションの人気と実力に突然変化が生じたり、新しい形態のサポートが必要になったりする。

    ● モバイル通信事業者の勢力図が急変し、基本的な料金モデルとコストの前提が変わる。

    ● セキュリティ侵害事件がパートナーやベンダー側で発生する。または、モバイル・デバイスが大量にマルウェアに感染して、ソリューションやアーキテクチャの早急な再設計を迫られる。

    ● 未成熟な技術 (MDMなど) に投資したり、購入した製品の予定耐用期間が終わるまで存続していない可能性が高いベンダーに投資したりする。

    ● 財務システムの変更やビジネス・プラクティスの浮沈など、必ずしもモバイルではない外部要因によって新たな依存関係が生じる。

現在の状況

需要
ビジネス要件とユーザー要件の収集に関する現在のプラクティスは、事後対応的である例が多い。その結果、IT部門は予算を十分に管理できていない。エンドユーザー (社内外) の方が、モビリティに関する意思決定にIT部門よりも強い影響力を持つこともあり得る。そのため、IT部門は不安定な立場に置かれ、情報管理の多くの側面について責任を負うが、その責任を遂行するために必要となる従来のレベルのコントロールを失う。IT部門が評価し、パイロット・テストを実施し、予算を編成する前にユーザーが新しいタイプのデバイスを導入した場合、IT部門はその管理とサポートのために予定外のコストを負担する可能性がある。

何年もコスト削減を続けた結果、要件が変化して、ビジネス部門による収益増と採算性向上をIT部門が支援する必要が生じている。IT部門に対して、ビジネス部門からモバイルに関するサポートが一層求められている。多くの顧客向け (B2C) イニシアティブは、マーケティング部門によって指揮され、長期的な存続が疑問視される小規模ベンダーが採用される。このような取り組みは戦術的であり、他部門との調整が行われない。多くの場合、モバイル・アプリがもたらすメリットを強調することよりも、会社名とそのロゴをアプリ・ストアに表示させることに力が注がれる。

このような初期のプロジェクトは、ビジネス部門が事態の収拾を他の部門に期待し、要件が大きくなるにつれて従来のITコンピテンシに負担させたいと考えるため、最終的にIT部門の責任となるのが普通である。ほかにも、ユーザー・セグメントのニーズに注意を払わないために生じる問題もある。現在のアプローチの大半は、均質なデスクトップ・アプリケーション・モデルをモバイル・デバイスに拡張しているだけである。新しいテクノロジと、新しいテクノロジがビジネスをどのように変革できるかを理解していない企業は、自社が現代的で技術に精通しているように見せ掛けるために混乱を来すことになる。

ビジネス・プロセス向けの現在のアプリケーションは、使用する従業員のトレーニングと知識を通して初めて関連付けられる、複数の孤立した自動化アプリケーションとして機能する例が多い。

供給
IT部門によるモビリティのサポートは、従来のテクノロジ別の縦割り体制に基づいている。つまり、さまざまな種類のデバイス (電話、タブレット、PCなど) が、多様なグループによって調達されサポートされている。この場合も、統一された戦略と管理アプローチが存在しないために、予算に大きな影響が及んでいる。企業は、コストを抑制するためにPCの相対的な安定性を利用してベスト・プラクティスを標準化してきた。しかし、モバイル環境における変化のエネルギーによって、過去のアプローチは機能しなくなり、ビジネス・ニーズに対応できなくなっている。テクノロジとアイデアの供給は、もはやモビリティに対する大きな関心を追い風とする市場のニーズに適応できていない。

多くの場合、モバイル・プロジェクトのソーシングはその場限りのものであり、IT部門の手の届かないところで行われる。その結果多くの企業は、企業の存続可能性に関する通常のベンダー評価を実施すれば不合格になるような、小規模なシステム・インテグレーターやサービス・プロバイダーと取引関係を結んでいる。

他部門との調整や一元的な意思決定が行われていないために、必要以上に多くの孤立したツールとアーキテクチャが社内で使用されている可能性がある。その結果、ライセンス料金を払い過ぎていたり、製品の機能を十分に活用していなかったりする。また、そのようなツールやアーキテクチャに必要なIT開発スキルとサポート・スキルへの投資が最適化されていないことも考えられる。

このような断片的なアプローチは、バックエンド・システム内で複数のAPIが使用されるというAPIの無秩序な拡散を招く。多数のAPIが似たようなサービスを実行するため、その無秩序な拡散によってアプリケーション保守コストが増加し、再利用の可能性が減少する。

ガバナンス
多くの企業は、モビリティをめぐる責任の分担が不明確であるために悪影響を受けている。経営幹部の支持がなければ、モビリティに総合的に対処する計画を作成するための十分な権限が個人やチームに与えられることはない。

以下に、こうした実態の兆候の例を挙げる。

    ● 標準を設定する責任と権限の所在が不明確である。

    ● 特定のプロジェクトや状況に例外を設定するプロセスの存在が不明確である。

    ● 重複しているポリシーや矛盾しているポリシーが複数あるか、逆にポリシーがまったく存在しない。

    ● セキュリティ要件の実装がエンドポイント間で一貫していない。

    ● クラウド方式のファイル同期のような新しいテクノロジがサポートされておらず、エンドユーザーが独自に解釈する余地がある。企業品質のソリューションが利用できないか、またはポリシーが不明確、あるいは適切に伝達されていない場合、エンドユーザーが消費者品質の製品やサービスで間に合わせる。

    ● 個人が新しいモバイル・テクノロジを利用する場合 (特に個人が購入したデバイス [BYOD] を使う場合)、企業に対して負う責任が認識されていない。

リスクと問題
ガートナーの顧客からは、データ、正確性、規制、変化に関連するリスクの報告が寄せられている。大半の企業ではセキュリティ・ポリシーが断片化されており、レガシー・デバイスには有効でも、新しいタイプのコンシューマー・ベースのモバイル・デバイスに関してはセキュリティ・ポリシーの適用が放棄されているか、ポリシーの存在が無視されているか、またはポリシーの一貫性がない。モビリティを導入すると、個人の生産性向上を期待して、正式なセキュリティ要件が緩和される。セキュリティ要件の緩和を最も強く主張するのは、多くの場合、経営陣である。

ギャップ分析と相互依存
ギャップ分析は、各企業の現状とモビリティに対処するためのアプローチに応じて異なる。ギャップ分析は「需要」「供給」「ガバナンス」「リスクと問題」という戦略の基礎を成す各分野内で実施する。モビリティに関する意思決定と、内外の適切な推進要因との整合性が欠如している分野を探す。多くの企業において一般的な例を以下に示す。

    ● 意思決定の担当者が、モビリティ投資を望ましいビジネスの成果と主要パフォーマンス指標 (KPI) に直接結び付けていない。

    ● ビジネス部門とIT部門が、共通の方法、基準または目標がないまま予算、ソーシング、ユーザー要件に関する意思決定をそれぞれ無関係に行っている。

    ● IT部門が、アプリケーション開発/保守プログラムに関してエンドユーザーの期待に応えていない。

    ● ビジネス部門とIT部門が、モバイル・デバイスの利用とセキュリティに関するポリシーを策定しておらず、一貫性のある適用を行っていない。

    ● ビジネス・マネージャーが、モバイル・テクノロジを利用する連続的なデジタル・ビジネス・プロセス (プロセス内の非デジタル作業を排除できる) の開発に取り組んでいない。例えば、継続的なデジタル・プロセスが開発されていれば、従業員は紙の書類ではなくタブレットやスマートフォンを使ってデータを捕捉し、転送することができる。

移行計画
MCOE (モバイル・センター・オブ・エクセレンス、モバイルの中心的専門組織) を設立して企業変革の作業を管理する。MCOEはすべてのモビリティ活動の中心的な役割を果たす。短期的にはモビリティの課題を管理するが、長期的にはモビリティの問題とプラクティスを企業全体に組み込むという目標を定めて活動する。MCOEチームは一般に、EA、モバイル・デバイスの管理担当者、ネットワーキング・チーム、モバイル・アプリケーション開発チーム、セキュリティ・チームの代表者によって構成される。トピックによっては、MCOEはその範囲を拡大してビジネス部門、人事、法務、調達、財務などの分野の利害関係者を関与させることもできる。

MCOEは仮想チームとして活動することも可能であり、存続期間が明確に定められている (一般に18〜36カ月)。しかし、存続期間は企業のニーズに応じて異なる。MCOEは、その長期的目標を達成したら解散すべきである。その作業は、本リサーチノートの「将来の状況」の項に記述されているように、モビリティを戦略的かつ協力的に管理する有効なプラクティスとポリシーが、IT部門と適切なビジネス部門に導入された際に完了すると考えることができる。

移行計画で定めたプロジェクトを主導するほかに、MCOEの担う責任には、ポリシー案の提示、サポート対象デバイスとプラットフォームのポートフォリオの維持、ツール/ベンダー/アーキテクチャの選定などがある。MCOEは、短い存続期間中にモビリティ・サービスを提供するという比較的戦術的な日々の作業の管理を続けながら、戦略的意思決定に向けた動きを主導することに責任を持つべきである。

移行作業中は、多くの企業がセキュリティ・ポリシーを見直して、個人の生産性を高めるという企業要件の変化に合わせてセキュリティ・ポリシーを調整する。経営陣は、セキュリティ・ポリシーの見直しや調整を要求する圧力の源になることが多く、抵抗するのは困難である。その結果、IT部門は意識的にセキュリティ要件を緩和して、経営陣が価値を見いだしている個人の生産性の向上を可能にすることがある (この傾向は、その企業が世間で問題になるような深刻なセキュリティ侵害を経験するまで続くことが予想される)。

図2 モビリティの戦略的ロードマップのタイムライン
図2
出典:ガートナー (2012年6月)

優先度:高
MCOEは、モビリティの利用が増える状況において適切なフレームワークを提供するために必須である。この目的を達成するには、以下の手順に従う。

    ● MCOEを結成し、経営陣の中からMCOEを支持するスポンサー (後援者) を任命する。

    ● モビリティの問題に必要な注目を集め、モビリティが日常業務とIT戦略作業の一部となるまでギャップを埋めるため、 モバイル企業戦略を作成する (ツールキット、ITIO-12-02、2012年11月5日付「ツールキット:モバイル戦略の策定」参照)。

    ● 新たなモビリティの意思決定プラクティスの採用に関連する、組織と人事管理に関する変更を検討する。

    ● モバイル勤務とリモート勤務に使用されるすべてのエンドポイントで、エンド・ツー・エンドの使用ポリシーを適用する。

    ● さまざまな従業員向け (B2E) およびB2Cプロジェクトに適した複数のアーキテクチャを採用する。

    ● ハイブリッド・アプリケーションを通してHTML5への移行を管理する。

    ● アプリケーション・ストア戦略を開発する。

    ● モバイル・テクノロジとモバイル関連テクノロジの統合を通して、ビジネス・プロセスを改善する。

優先度:中
優先度が中程度のプロジェクトは、価値を生み出すまでにより多くの時間とリソースを必要とするため、MCOEは、実施ペースを遅くしたり、1〜2年後に延期する計画を立てたりすることができる。このようなプロジェクトには、以下の手順を含めるべきである。

    ● アプリケーションの設計変更に着手する。

    ● ネットワーク戦略を評価する。

    ● 管理とセキュリティの戦略を評価する。

    ● 評価によって得られた発見事項の裏付けを行う変更プロジェクトを開発する。発見事項を提出して優先順位を付ける。

優先度:低
優先度が低いプロジェクトを直ちに開始する必要はない。そのようなプロジェクトは、長期的に企業の競争力を高めるか、非常に狭い分野を対象としたものである。

    ● 技術イネーブルメント・レビュー・セッションを実施する。
     

    推奨リサーチ
    ・ 「Put an Integrated Mobile Strategy in Place, or Face Increased Costs Later」
    ・ 「ツールキット:モバイル戦略の策定」( ITIO-12-02、2012年11月5日付)

    (監訳:針生 恵理)

INF: INF-13-03
※本レポートの無断転載を禁じます。

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