ガートナー ジャパン
メインメニュー ホーム リサーチ コンサルティング ベンチマーク エグゼクティブ プログラム イベント 会社情報 メインメニュー
SAMPLE RESEARCH

サンプル・リサーチ

イメージ

IT投資対効果を明らかにするために押さえるべきポイント:
評価プロセスとKPI

ITマネジメント (ITM)/ITM-13-45
Research Note
H. Katayama
掲載日:2014年4月15日/発行日:2013年12月20日

本リサーチ分析レポートのテーマに関心をお持ちの方は、2014年6月11日(水)に開催する 「ガートナー アウトソーシング & ITマネジメント サミット 2014」 のページを是非ご覧ください。(イベント終了後も開催実績としてご覧いただけます)


ROIを含む投資効果の測定は、IT投資戦略に不可欠なプロセスであるものの、その効果の多くはIT部門ではなくビジネス部門側に現れるため、実際に測定を行うのは容易ではない。しかも、その効果を金額だけで表すことは難くなっており、KPIのような新しい手法も必要となる。しかしながら、システムの分類に応じた指標を使い、投資に優先順位をつけることは可能である。

要約

主要な課題

  • ガートナーITデマンド・リサーチの調査によると、2013年5月の調査時点で、従業員数2,000人以上の大企業において、投資効果を事前と事後の両方で評価している企業は3割程度しか存在しない。「(開発実行前の) 事前評価のみ」と回答した企業が52%であり、これらの企業は、投資の意思決定の際には効果の予測をしているが、実現されたかどうかの (稼働後の) 事後評価は行っていないことになる。
  • 従業員数500〜1,999人の中堅規模以上の企業においては、何の評価も行っていない企業が2割も存在しており、これらの企業では、これまでのIT投資に多くの無駄が生じていた可能性がある。
  • また、従業員数500人以上の企業 (500〜1,999人と2,000人以上の両方のカテゴリ) で、事前と事後に投資評価を行っている企業 (それぞれ34%と31%) のうち、「多くを定量的に評価している」と回答した企業は2割しか存在せず、これまでのIT投資全体に対する有効性を評価できている企業は、1割未満 (3割強のうちの2割強) ということになる。

推奨事項

  • 事前評価 (投資の優先順位を付けるための目標値設定) と事後評価 (目標値達成の確認とシステムの資産としての評価) の両方を行う
  • 投資プロジェクトの便益者の代表者をシステム・オーナーとし、効果について説明責任を持たせる。
  • プロジェクトを「運営 (Run)」「成長 (Grow)」「変革 (Transform)」に分類し、プロジェクトの内容と自社の環境に応じて適切な主要パフォーマンス指標 (KPI) を定める。ただし、実効性を高めるために、KPIは売り上げやコスト削減に最も大きな影響を及ぼす上位3〜4項目にとどめる。
  • 成長と変革に分類されるプロジェクトに対しては、システム・オーナーとIT部門が協力し、ガートナー・ビジネス・バリュー・モデル (GBVM) を参照して適切なKPIを設定する。


目次

 はじめに

 分析
  投資効果の評価は投資の事前と事後の両方で実施し、システム・オーナーを
  評価の責任者とする
  プロジェクト/システムが影響を及ぼすビジネス領域にひも付いたKPIで評価する
  投資内容を分類し、適切なKPIを決める

図目次

 図1 日本の企業におけるIT投資の効果測定状況
 図2 IT投資の評価プロセス (例)
 図3 ガートナー・ビジネス・バリュー・モデル (GBVM)
 図4 日本におけるIT支出の分類比率
 図5 投資内容の分類とKPIの例


はじめに
多くの企業において、IT投資を適正化するための効果測定は、必要であるとは分かっていても簡単に実行できるものではない。特にシステムを要望した利用部門において、ビジネス効果を生み出すプロセスに、システムだけではなく人や組織、そして外部環境などが絡んでくるため、システムに対する効果の測定はさらに難しくなる。一方で、IT投資を決める前の効果目標と、投資した後の実際の効果の両方を測定できないと、投資の優先順位や稼働したシステムに対する今後の方向性 (機能追加や更改、廃棄など) を決めるといった、投資の適正化が実現できない。投資効果は金額で測定するのがベストであるが、それが難しい場合が多くあるため、通常はビジネス効果としてのKPIを使う。

図1は、従業員数2,000人以上の大企業においても、事前と事後の両方で投資効果を測定している企業がわずか34%しかないことを示している。従業員数500人以上 (500〜1,999人と2,000人以上の両方のカテゴリ) にセグメントを広げてみると、事前と事後の両方で効果測定を行っていると回答した企業 (それぞれ34%と31%) のうち、「多くを定量的に測定している」と答えた企業は22%のみである。すなわち、IT投資を適正化する上で必要な、事前と事後で多くのシステムに対して定量的に効果測定を行っている企業は、従業員数500人以上の企業では1割にも満たない (3割強のうちの2割強) ということになる。この調査結果は、多くの企業において、多額の投資をしてきたシステムの中に、自社の経営に貢献していないシステムが多く存在している可能性を示唆している。本リサーチノートでは、IT投資の適正化を実現するために最低限押さえておくべきポイントを紹介する。



図1 日本の企業におけるIT投資の効果測定状況



出典:ガートナー (ITデマンド・リサーチ)/調査:2013年5月


分析

投資効果の評価は投資の事前と事後の両方で実施し、システム・オーナーを評価の責任者とする
投資評価は、事前と事後の両方で実施されなければならない。投資プロセスは大きく3つのフェーズ、「計画策定」「プロジェクト実行」「効果の刈り取り」に分かれるが、事前評価は「計画策定」フェーズで行い、事後評価は「効果の刈り取り」フェーズで行う。

図2に投資サイクルの標準的な例を示している。経営戦略やIT投資中期計画の下、まず、ビジネス上の便益を受けるためにシステムを利用したい部門からプロジェクト案が出される。「事前評価」として、そのプロジェクトから受けるビジネス上の便益や、プロジェクトを実行することにより生じるリスク、さらにプロジェクトを実行・運用することによるITコスト (年次コストとIT総合保有コスト [TCO]) を見積もる。この便益の見積り責任者は、プロジェクト案を出した部門の責任者とし、この責任者をシステム・オーナーとする。リスクとITコストは、IT部門とシステム・オーナーが協働して見積もる。見積もった便益、リスク、コストを経営者や財務部門に提出し稟議にかけ、プロジェクトの経営上の重要度も考慮した上で承認の可否を決定する。ここでは、便益からコストやリスクを差し引いた、システムから得られる利益が大きい順に投資の優先順位を決める。利益が明らかにマイナスであれば投資は行われない。なお、この「事前評価」の段階で、稼働後何年で利益が出せるかも想定しておき (長くても3年以内)、「事後評価」をどのくらいの期間ごと (半年や1年など) に行うかも計画しておく。承認後、要件定義に移る。ここまでが「計画策定」のフェーズである。

システム・オーナーや利用部門とIT部門とで要件定義を終えた後、プロジェクトの具体的な実現方法を決め、実装フェーズに入る。このフェーズでは、ITベンダーやITコンサルティング企業がかかわる場合も多い。「設計」「開発」「テスト」「展開」と進み、「運用」を開始する。ここまでが「プロジェクト実行」フェーズである。

「事後評価」は大きく2つのフェーズに分かれる。1つ目のフェーズでは、事前評価で設定した便益の達成度を評価する。プロジェクトで開発されたシステムの稼働後、半年ごと、あるいは1年ごとに、事前評価段階で見積もったビジネス便益がどの程度達成されたかを調査し、「事前評価」で設定した目標値達成時期までそれを継続する。評価の調査先はシステムを実際に利用している利用部門であり、その評価に説明責任を負うのはシステム・オーナーとなる。見積もりどおりの効果が出ない場合は、システム・オーナーがその原因を追究し、改善案を提出する義務が生じる。また、特別に大きなコストを必要としたプロジェクト/システムの場合、例えば、稼働から3年後に、システム・オーナー以外の部門責任者、あるいは内部監査部門などにシステム効果の評価を行ってもらう場合もある。

2つ目のフェーズでは、1つ目の事後評価を終え、稼働から5年以上経過したシステムに対し、そのシステムの便益の大きさや、ビジネス環境の変化やテクノロジの成熟度を考慮して、当該システムの資産としての今後の在り方 (継続維持、機能追加、更改、廃棄など) を評価する。そのまま維持するという場合もあれば、改善や機能追加が必要であると判断される場合もある。その場合は要件を再定義し、実現方法策定の段階で追加予算の申請を行うことになる。一方、更改や廃棄とするのであれば、IT投資中期計画の段階から始めることになる。ここまでが「効果の刈り取り」フェーズである。

このサイクルの中で、「事前評価」は、提案されたプロジェクトの便益、リスク、そしてコストそれぞれの見積もりをベースにした投資優先順位を決める上で必要であり、「事後評価」はそれらの見積もりの達成度を評価し、プロジェクトによって開発されたシステムの、資産としての今後の在り方を決める上で必要となる。そして、その効果を見積もり、達成度に説明責任を負うのは、システムの利用部門の代表であるシステム・オーナーである。事前、事後の評価のどちらかが欠けると投資の適正化は実現できないし、責任を負う代表者が存在しないと、せっかくシステム評価を行っても絵に描いた餅になる。

仮に、この「事前評価」を行い、プロジェクトの優先順位に応じて投資が実施され、システムが稼働したとしても、事前に見積もった便益やリスク、そしてコストの再評価をしないままシステムを使い続けると、事前評価の段階で見積もった効果がまったく出ていない場合、あるいは想定外に大きな運用コストが必要になっている場合でも、システムをそのまま使い続けることになりかねない。実際に、この「事後評価」プロセスを実施していなかった企業において、しばらくしてから外部コンサルタントの提案による評価手法を使ってシステムごとに「事後評価」 (システムの資産としての評価) を行ったところ、「事前評価」実施時点 (プロジェクト案が出された時点) には必要であると判断されたシステムであっても、2つ目のフェーズの「事後評価」実施時点では多くのシステムが不必要であると判断され、それらを廃棄することで、システムの運用コストを大きく削減できたという事例が存在する。



図2 IT投資の評価プロセス (例)



出典:ガートナー (2013年12月)


プロジェクト/システムが影響を及ぼすビジネス領域にひも付いたKPIで評価する
IT投資プロジェクト評価の必要性を理解する企業は多いが、開発されたシステムの効果には、人や組織、外部環境も影響するため、システム単独での効果を測定できない企業も多い。しかし、システム利用者による優先順位付けのための定量的な評価は不可能ではない。事前評価の段階で、新しいプロジェクト/システムが影響を及ぼすであろうビジネス領域にひも付いた定量的な指標 (KPI) を決め、そのKPIの現時点の値を把握した上でシステム稼働後の目標値を設定しておく。この時点では、システム・オーナー、利用部門、そしてIT部門が決定したKPIをシステムを利用して改善する、という目標を持つことが重要である。そして、事後評価においてその目標値がどの程度達成されたかを評価できれば、システムによるビジネス貢献度もおよそ把握できる。

このKPIに対する達成度については、システム以外の要素が影響することは否めず、純粋なシステムによる評価とはならない場合もあるが、システムによる貢献度が大きいと予測されるKPIを選択できれば、システム以外の要素の影響を最小限に抑えられる。ガートナーでは、IT投資が強く影響を及ぼすであろうメトリクス・モデルの1つとして、「ガートナー・ビジネス・バリュー・モデル (Gartner Business Value Model: GBVM)」の利用を推奨している (図3参照)。これは、IT投資によって改善される可能性があるビジネス側面にひも付くKPIの例を提供するフレームワークである。このモデルは、バランス・スコアカードやダッシュボードなどと競合するものではなく、企業の環境に応じてそれぞれ使い分けができる補完関係にある。以下、GBVMの概要を説明する (「The Gartner Business Value Model: A Framework for Measuring Business Performance」参照)。

GBVMとは、IT投資が影響を与えるビジネス側面を大きく3つに分類し、さらにその側面をそれぞれ3つのサブビジネス側面 (総括メトリクス) に細分化し、個別のメトリクスをひも付けし、そのメトリクスをIT投資評価のKPIとするものである。この分類に従えば、IT投資が影響を与えるビジネス上の特に重要なKPIにたどり着きやすくなり、重要なKPIの漏れを減らせる。さらに、GBVMは、IT部門とビジネス部門の連携、ITとビジネスへの価値貢献を結び付けるイニシアティブ、優先順位付け、部門間コミュニケーション (各KPIが他のKPIにも関係する) にも対処できるよう設計されている。



図3 ガートナー・ビジネス・バリュー・モデル (GBVM)

図3(クリックすると拡大)

SLA:サービス・レベル合意
出典:ガートナー (2013年12月)



需要管理
需要管理は、市場や顧客のニーズとその大きさを管理し、売り上げに直接結び付くプロセスを評価するビジネス側面である。需要管理は、「市場への対応力」「営業の有効性」「製品開発の有効性」という3つの総括メトリクスから成る。「市場への対応力」は、ターゲット市場への浸透度、注力する製品の市場シェア、製品ポートフォリオ指標 (適切な製品が、適切な市場で、適切な利幅で、競争優位性を保った形で販売されているか) などがKPIとなる。「営業の有効性」は営業プロセスを評価・管理するメトリクスで、販売サイクル期間、販売成約率、顧客維持率などがKPIとなる。そして「製品開発の有効性」は、製品開発プロセスを評価・管理するメトリクスで、新製品の売上比率、製品化所要期間 (新商品発案から発売までに要する期間) などがKPIとなる。



供給管理
供給管理は、製品/サービスのデリバリ・プロセスを管理し、業務の効率化を評価するビジネス側面である。供給管理は「顧客への対応力」「サプライヤーの有効性」「業務の効率性」という3つの総括メトリクスから成る。「顧客への対応力」は、顧客への製品やサービスのデリバリを評価・管理するメトリクスで、納期遵守率、納品数量の正確性、SLA遵守率、注文処理率などがKPIとなる。「サプライヤーの有効性」は、調達管理に最も深く関係し、サプライヤーによるデリバリ・プロセスを評価し管理するメトリクスである。KPIは「顧客への対応力」と同じで、例えば、サプライヤーの納期遵守率となる。「業務の効率性」は、社内におけるビジネスのオペレーションや企業リソースが全社的に効率良く活用されているかを評価するメトリクスで、現金循環化日数 (Cash Conversion Cycle:企業の仕入れから販売に伴う現金回収までの日数)、資産回転率 (事業に投資した総資産がどれだけ有効に活用されたかを示す指標)、シグマ値 (種々のプロセスや製造された製品などの欠陥率)、原価率 (売り上げに占める原価の比率) などがKPIとなる。



サポート・サービス管理
サポート・サービス管理は、上述した2つのビジネス側面を間接的にサポートするビジネス側面である。サポート・サービス管理は「人事の対応力」「ITの対応力」「財務・法務の対応力」という3つの総括メトリクスから成る。「人事の対応力」は人事部門の業務が対象で、新規人材採用の有効性 (欲しい人材を外部から迅速に低コストで獲得する能力を示す指標:1人の人材獲得期間の平均値×人材獲得に掛かったコストの平均値)、福利厚生費比率、スキル充足率 (必要なスキルを持つ人材が適材適所に配置されているか) などがKPIとなる。「ITの対応力」はIT部門のビジネス部門への貢献度を評価する指標で、システムの可用性/応答時間、ITサポート・サービスのユーザー満足度、IT総コスト売上比率などがKPIとなる。「財務・法務の対応力」は財務部門や法務部門の業務が対象で、(財務部門や法務部門の) サービス・コスト売上比率、財務情報の正確性などがKPIとなる。

ただし、ここで述べた、あるいは図3に示した指標は、多くの企業において共通して利用できると思われるメトリクスやKPIを挙げただけであり、GBVMは、各社のビジネス環境に合わせて変更することができる。すべての評価基準がすべての企業に当てはまるとは限らないし、同様に、公共部門または非営利団体の場合には改定が必要になるかもしれない。企業は、図3のGBVMを参考にして、自社に適したビジネス側面、総括メトリクス、そしてKPIを定義し、設定すべきである。

さらに最重要項目として留意すべきことは、これらのKPIの責任者は、プロジェクト/システムを提案したシステム・オーナーであるということである。これらの指標に対して目標値を設定し、その目標値に対する達成度に責任を持たなければならない。責任を持つというのは、目標どおりに各KPIが改善されない場合、その原因を探り、該当システムの効果をより高めるために機能追加をするのか、(低い) 効果に見合ったシステム運用プロセスに変更するのかなどの意思決定をすることである。



投資内容を分類し、適切なKPIを決める
ガートナーでは、IT支出を投資内容によって大きく3つに分類している。

  • 運営 (Run):継続的に既存ビジネスを滞りなく運営するための支出
  • 成長 (Grow):既存のビジネスの改善や拡張によって収益を拡大するための支出
  • 変革 (Transform):新たなビジネスモデル構築 (変革・革新) を実現するための支出

ガートナーITデマンド・リサーチが2012年11月に実施した調査によると、企業の総IT支出に占める「運営」「成長」「変革」それぞれの比率は、従業員数2,000人以上の企業の平均値でおよそ、70%、20%、10%という結果になっている (図4参照)。「運営」の比率が圧倒的に高いが、従業員数500〜1,999人では「運営」の比率がさらに高くなっている。そして、それぞれの投資分類の内容を例示したのが図5である。「運営」「成長」「変革」それぞれで利用する指標 (KPI) も異なり、さらに各個別の投資内容によっても選ぶKPIは異なってくる。図5では、個々の投資内容ごとに、システム・オーナーとなる可能性のある役職を例示し、さらにKPIの例と各指標に対する留意事項を示している。KPIの例はGBVMから引用したものもあるが、それ以外のものも示した。投資内容によって有効利用できるKPIは大きく異なる。



図4 日本におけるIT支出の分類比率



出典:ガートナー (ITデマンド・リサーチ)/調査:2012年11月




図5 投資内容の分類とKPIの例

図5(クリックすると拡大)

Nexus:力の結節 (Nexus of Forces:クラウド、インフォメーション、ソーシャル、モバイルという4つの力の強固な結び付き)
CSO:最高セキュリティ責任者、BCP:事業継続計画、SaaS:サービスとしてのソフトウェア
出典:ガートナー (2013年12月)


特に、図5で示した「運営」の欄の最初の2つの例は、GBVMでは示していない「リスク」(ここで言うリスクは、これまで述べてきたプロジェクト実行によって生じるリスクとは異なる) を指標とするものである。災害対応を中心としたBCPを実現するプロジェクトや、規制対応のためだけのプロジェクトにおいて、新しく生み出されるビジネス上の利益はほとんどない。導入しなかったときのビジネス機会損失がKPIとなる。特にBCP対応では、リスクをどの程度と想定するかによって投資額も変わってくる。規制への対応に関しては、ビジネス上は何の利益ももたらさないが実施せざるを得ない投資として、同じ機能を実現する案をいくつか出して、最も費用の低いプロジェクトを選ぶしかない。

一方、インフラ老朽化による更新に関しては、ダウンタイムの増大がもたらすビジネス機会損失というリスクのKPIと、システム更新によるパフォーマンス向上がもたらす、待ち時間や使えない時間の短縮(図2では「ITの対応力」におけるシステム応答時間やシステム可用性が関連する)がKPIとなる。インフラの最適化では、運用コスト削減額がKPIとなり、これは図3においては「ITの対応力」におけるIT総コスト売上比率が関係する。

「成長」と「変革」においては、図3のGBVMで例示したKPIを存分に利用できる。新規システムとしてのCRM構築であれば、売り上げ向上にかかわるKPIとしては、市場シェアや顧客維持率などが挙げられ、効率性に関しては販売サイクル日数や営業コスト売上比率などが対象となる。業務プロセス標準化のためのERP導入であれば、資産回転率やシグマ値などが対象になり、一方、パッケージを利用するという点で、これまでのスクラッチ開発と比べた運用コストの削減 (「ITの対応力」) も別の効果として見込める。「変革」は、ビジネス戦略との整合性を第一に考え、ITを使った新しいビジネスモデルを構築するプロジェクトであるため、試行的な戦略プロジェクトとして短期的にはある程度のコスト高 (効果の割に投資額が多いなど) は許容されるが、中長期的には改良を重ねて大きなビジネス効果を出すことが目標となる。したがって、KPIについては、よりピンポイントで選び、かつその中長期的な目標値を高く設定すべきである。ここでのシステム・オーナーは、CEOやCOO、利用部門の役員などの経営層とすべきである。

ただし、この評価対象となるKPIの数が多すぎると評価作業そのものが複雑になる。したがって、1つのプロジェクトで、最も影響が大きい上位の項目に絞り、最大で3〜4項目程度にとどめることが現実的であろう。あるいはアプリケーション開発プロジェクトの場合、機能範囲をいくつかに分類し (CRMであれば、営業支援 [SFA]、マーケティング、サポートなど) 、個々の機能ごとに1つのKPIを設定するというやり方もあろう。



ITM: ITM-13-45


※本レポートの無断転載を禁じます。

←INDEXに戻る

 

gartner.com
TOP OF PAGE
Copyright