ガートナー ジャパン
メインメニュー ホーム リサーチ コンサルティング ベンチマーク エグゼクティブ プログラム イベント 会社情報 メインメニュー
SAMPLE RESEARCH

サンプル・リサーチ

プライベート・クラウドは成熟し、ハイブリッド・クラウドが注目を集める

インフラストラクチャ (INF)/INF-13-157
Research Note
T. Bittman
掲載日:2014年10月14日/発行日:2013年11月20日

本リサーチ分析レポートのテーマに関心をお持ちの方は、2014年10月28日(火)〜30日(木)に開催する 「Gartner Symposium/ITxpo 2014」 のページを是非ご覧ください。(イベント終了後も開催実績としてご覧いただけます)


ガートナーが調査を行った大企業の半数弱が既にプライベート・クラウド・サービスを展開しており、2014年末までに展開する計画のない企業は11%にすぎない。ハイブリッド・クラウド・コンピューティングの展開については、事例はわずかであるが、大企業の半数弱は2015年までにハイブリッド・クラウドを展開すると予想される。


要約

主要な所見

  • プライベート・クラウド・コンピューティング展開の動機付けとなっている最も重要な推進要因は、俊敏性(プロビジョニングのスピードや実験的展開の可能性など) である。
  • プライベート・クラウドを展開するにためは、プロセスと組織変更の課題に対する注力度を大幅に引き上げる必要がある。テクノロジ自体は大きな阻害要因にはならない。
  • 大企業の半数弱が既にプライベート・クラウド・サービスを展開しており、4分の3近くの企業が2014年までにプライベート・クラウドを展開すると予想される。
  • ハイブリッド・クラウド・コンピューティングは現在、プライベート・クラウドが3年前に置かれていた状況にある。展開事例はごくわずかであるが、導入に向けた願望は強い。


推奨事項

インフラストラクチャとオペレーション (I&O) を担当するITリーダーは、以下の作業を行う。

  • IT部門の顧客との緊密な協力を通して、俊敏性のメリットが得られる現行サービスと、俊敏性を理由として導入可能な新たなサービスを特定する。
  • プライベート・クラウド・プロジェクトの迅速な立ち上げに注力する (できる限り専任の) 小規模なチームを編成し、当初は簡素なプロジェクトとする。
  • サービスの多様性と将来におけるハイブリッド・クラウドの相互運用性の両方に関して、拡張の余地がある基礎的テクノロジを選択する。変更はいつでも可能であるが、最初から正しい選択を行う方が容易である。
  • パブリック・クラウド・サービスとのハイブリッド型相互運用性を重要な要件の1つとしてプライベート・クラウド展開を設計し、将来を見据えたサービス・ブローカ機能を中心としてクラウド管理プラットフォーム・アーキテクチャを構築する。


分析

過去3年間に、プライベート・クラウド・コンピューティングは、高嶺の花から大企業の半数弱が試用できるものへと変化している。その主な推進要因となっているのは俊敏性であり、最も手強い課題は引き続きプロセスと社内文化の変革である。ハイブリッド・クラウド・コンピューティングは現在、3年前にプライベート・クラウドが置かれていた状況にあり、実際の展開は低調である一方で導入に向けた願望は強い。2017年末までには、大企業の4分の3がハイブリッド・クラウドを展開する可能性が高い。

プライベート・クラウド・プロジェクトはメインストリームとなる方向にあり、ガートナーの顧客から寄せられたインクワイアリと調査の結果には、次のステップであるハイブリッド・クラウド・コンピューティングに関心の的が移っていることが示されている。プライベート・クラウド・コンピューティングは、当初の数年間はコスト削減が最大の推進要因であったが、市場の成熟に伴って数年前からは俊敏性が最大の推進要因となっている。その一方で、主な阻害要因がテクノロジ以外の問題であることに変わりはない。これは、企業が新たな運用プロセス、資金調達モデル、組織の役割、IT部門の顧客との共同作業に向けた手法を導入しているためである。こうした課題が存在するものの、ガートナーが調査を行った大企業の44%は「プライベート・クラウド・サービスのパイロット運用や本稼働運用を既に実施している」と回答している。

こうした動きを受けて、企業は必要となる変更の把握や、プライベート・クラウド・モデルに適するサービスと適さないサービスの判断をし始めているため、ガートナーのハイプ・サイクルにおいて、プライベート・クラウドは多くの意味で幻滅期に向かっている。

プライベート・クラウド・コンピューティングの推進要因

ガートナーが2012年12月に開催したデータセンター・コンファレンスにおいて、126社の参加企業が「プライベート・クラウドに移行する最大の要因は何か」という質問に回答した (図1参照)。




図1  ガートナーのデータセンター・コンファレンスで実施したプライベート・クラウド・コンピューティングの推進要因に関する調査



出典:ガートナー (2013年9月)



回答者の16%がコスト削減をプライベート・クラウド・コンピューティングの最大の推進要因と考えている一方、大半が俊敏性を最大のメリットと見なしている。

分析:コストは常に重要であるが、プライベート・クラウドのビジネスケース作成時に、採用を正当化する理由としてコスト削減のみに依拠することはできない。仮想化を行えば設備投資の削減可能性が高まり、標準化と自動化を行えば運用コストを削減できる可能性が高まる。次のステップとして使用量測定、セルフサービス、自動プロビジョニングを追加するにはテクノロジに投資する必要があり、運用コストの大幅な削減にはつながらない。この (セルフサービスに至る)次のステップに進むための主な推進要因として考えられるのは、俊敏性である。

多くのインクワイアリの内容から判断すると、先進的なユーザーは、俊敏性が単に旧来の成果物を迅速に提供できるようにするだけではないことを理解している。プライベート・クラウドを導入すると、新たなサービスへの参入とサービスからの撤退が容易になる。迅速な展開(および展開解除)が可能になれば、ユーザー側で実験できるようになる。プライベート・クラウド・サービスのビジネスケースでは、特定のサービスにおいてスピードから得られるビジネス価値を理解することと、IT部門の顧客と良好なコミュニケーションを維持することが必要になる。また、提供されるサービスは必ずしも従来の手法で提供されていたサービスではない。リソース、予算、インフラストラクチャへの長期的なコミットメントを要するサービスの場合は、まったく利用されなくなるものもある。しかし、クラウド・コンピューティングが実現するレンタル・モデルでは、それまで以上に多様なタイプのサービスが利用可能になる。Amazonなどのプロバイダーが提供しているサービスとしてのインフラストラクチャ(IaaS)のアーリー・アダプターは、かつてオンプレミスで実行していた作業と同じ作業をIaaSで実行しているのではない。参入障壁が低いため、ITの新たな用途が生まれている。

アクション項目:プライベート・クラウド・コンピューティングの最大の推進要因は俊敏性であるため、IT部門は現行サービスで俊敏性が決め手になる分野を調査し、俊敏性が高く有用な新サービスのタイプを確認し、IT部門の顧客と緊密に協力して一連の判断を行う。



プライベート・クラウド・コンピューティングの課題

ガートナーが2012年12月に開催したデータセンター・コンファレンスにおいて、127社の参加企業が「プライベート・クラウド・コンピューティング・サービスの開発時に直面する上位3つの課題は何か」という質問に回答した。ガートナーは、回答企業が1位、2位、3位として挙げた選択肢を追跡した (図2参照)。




図2  プライベート・クラウド・コンピューティングの課題に関する調査



出典:ガートナー (2013年9月)



管理/運用プロセスを最大の課題として挙げた企業が群を抜いて多かった。

分析:インクワイアリの内容から判断する限り、プライベート・クラウド・プロジェクトを大きく進捗させている企業がテクノロジを大問題と見なしている例はまれである。プライベート・クラウドを提供するテクノロジは相対的に成熟度が低く、発展途上であることは確かであり、多くの企業が社内のニーズを満たす際に独自の作業が必要になることに気付いている。しかし、それよりも難度が大幅に高いのは、テクノロジを利用する際に必要になるまったく新たな調整作業である。クラウド・サービスでは、迅速化を念頭に設計され、提供するサービスに合わせてカスタマイズされた (少なくとも、それらのサービスで必要になるもののみに絞った) 運用プロセスが必要になる。テクニカル・スキルと「ITヒーロー (自己を犠牲にしてトラブルの解決に奔走する個人)」を称賛するIT部門内の文化は、サービス指向のチーム・アプローチを必要とする全自動のセルフサービス・モデルとは相反するものである。一部の顧客は、「最適なスキルを有する人材を社内外で確保することが困難である」と述べている。また、ビジネス関係を (資金調達 [従量制モデル] とサービスの定義/設計の両方において) 変更する作業は、困難を極める場合がある。

アクション項目:プライベート・クラウド・プロジェクトはテクノロジの選定からスタートする例が極めて多いが、テクノロジ自体では人とプロセスの変更に関する問題を解決できない。最初は、それらの変更を実現するためのアプローチに注力する方がはるかに良い。その場合は、従来のITプロセスの外部で (少なくともそのようなプロジェクトの計画策定に向けた) 別組織を編成し、当初はIT部門とその顧客から支持される簡素なプロジェクトに注力する。



プライベート・クラウド・コンピューティングの進捗

2012年12月のデータセンター・コンファレンスにおいて、125社の参加企業が「プライベート・クラウド・コンピューティング戦略に関して、どの程度の進捗状況にあるか」という質問に回答した (図3参照)。




図3  プライベート・クラウド・コンピューティングの進捗状況に関する調査



出典:ガートナー (2013年9月)



回答企業の44%は、プライベート・クラウド・サービスを (少なくともパイロット・プロジェクトとして) 展開済みであった。

分析:プライベート・クラウドのトレンドは、変化が速い。回答企業の72%は、プライベート・クラウド・サービスを既に展開しているか、または2014年末までに展開する計画を策定済みであった。展開する計画がまったくないと回答した企業は、11%にすぎない。

比較のために紹介すると、2009年12月の調査では106社の企業が「2012年までにプライベート・クラウド・コンピューティング戦略を追求するか」という質問に回答し、その結果「はい」と回答した企業は76%、「いいえ」はわずか4%であった。「おそらく」と回答した企業の3分の2は、現在なら「プライベート・クラウド戦略を追求している」と回答するはずである。

プライベート・クラウド展開の大半は、機能の範囲を絞った小規模な環境からスタートする。ただし、こうしたプライベート・クラウドのポートフォリオは次第に規模が拡大し、結果的に生まれるクラウド・インフラストラクチャはパイロット・プロジェクトで選択したテクノロジをベースにしたものになる可能性が高い。市場シェアをめぐって多数のベンダーが競合する市場では、勝者と敗者がすぐに決まる。クラウド管理プラットフォーム全体の統合が重要であるため、中小規模のプレーヤーは数年後までに買収されるか、または廃業する可能性が高い (「How the Cloud Management Platform Market Shakeout Will Affect Buying Decisions」参照)。

ベンダーは、プライベート・クラウド・コンピューティングをI&Oの「次の一手」として売り込んでいる。確かに次の一手ではあるが、それは適切なサービスの場合に限られる。仮想化は水平方向に広がる極めて広範なトレンドであり、ITインフラストラクチャの多くに影響を及ぼす。プライベート・クラウドは仮想化を活用するコンピューティング・スタイルであるが、あらゆるサービスに適するわけではない。中規模企業と大企業の大半は今後数年のうちにプライベート・クラウド・サービスを開発し展開するが、プライベート・クラウドの利用は特定の適切なサービスに限られる。企業は、社内サービスの平均10〜30%をプライベート・クラウド・アーキテクチャ経由で展開する可能性がある。

アクション項目:テクノロジの選択が重要である。パイロット・プロジェクトは、機能を絞った小規模な環境からスタートする傾向があるが、サービスの多様性と将来におけるハイブリッド・クラウドの相互運用性の両方で拡張の余地がある基礎的テクノロジを選択する。あるいは、将来テクノロジを変更する可能性を念頭に、投資収益率 (ROI) を短期間 (2年後など) に達成できるテクノロジを選択してもよい。



ハイブリッド・クラウド・コンピューティングに対する関心

2012年12月のデータセンター・コンファレンスにおいて、参加企業129社が「2015年末までにハイブリッド・クラウド・コンピューティング戦略を追求するか」という質問に回答した (図4参照)。




図4  ハイブリッド・クラウド・コンピューティングへの関心に関する調査




出典:ガートナー (2013年9月)



回答企業の70%が、2015年までにハイブリッド・クラウド・コンピューティングを追求すると回答している。

分析:調査対象企業の大半がハイブリッド・クラウド・コンピューティングを追求したいと考えている一方、ハイブリッド・クラウド・サービスを展開済みの企業はごく一部にすぎない。この結果は、先述の2009年12月にプライベート・クラウド・コンピューティングに関して実施した調査とほぼ同様である。後者の調査では、「2012年までにプライベート・クラウド戦略を追求するか」という質問に対して76%が「はい」と回答し、「いいえ」と回答した企業はわずか4%であった。プライベート・クラウド・サービスは、実質的にはほとんど導入されていなかった。プライベート・クラウドをめぐる目標と実際の進捗状況が目安になるとすれば、大企業の半数弱が2015年までにハイブリッド・クラウド・サービスを導入する可能性がある (「ハイブリッド・クラウド・コンピューティングをめぐる混乱を解消し、準備を開始する」INF-12-78、2012年12月28日付参照)。

アクション項目:ハイブリッド・クラウドの相互運用性を念頭に、プライベート・クラウド展開を計画し、クラウド管理プラットフォーム・アーキテクチャの中心を、将来を見据えたサービス・ブローカ機能に合わせる。クラウド管理アーキテクチャを複数採用し、クラウド・サービス・ブローカ・テクノロジで調整する計画を立ててもよい。



ガートナーの結論

プライベート・クラウドは急速にメインストリームとなりつつあり、大企業の半数弱が展開を済ませ、その割合は2014年末までには4分の3近くに増える見込みである。大半の企業はプライベート・クラウドの最大の推進要因が俊敏性であることに気付いているため、俊敏性を要件とするサービスを中心としてビジネスケースが作成される。ただし、俊敏性はテクノロジのみでは実現できないため、企業は変革を迫られ、特定のサービスに合わせたカスタマイズやスピードを実現するためのプロセス設計と、新たなスキルが必要となる。プライベート・クラウドの展開が困難なのは、こうした変更が必要になるためである。ただし、プライベート・クラウドをめぐるテクノロジに関して今すぐ行う選択が、本市場で競合する多数のベンダーの勝敗を分けることになり、市場内で淘汰が起きる。そのため企業は、ROIを短期間に達成する一方で数年後には新技術をベースに再開発する必要に迫られる可能性を想定することによって、こうした淘汰の影響から自社を保護する必要がある。プライベート・クラウド・サービスの大半は、今後数年間にハイブリッド型に移行する。ハイブリッド・クラウド・コンピューティングの導入に向けた強い願望は、3年前に見られたプライベート・クラウドの導入に向けた強い願望と同じである。



推奨リサーチ

  • 「ハイブリッド・クラウド・コンピューティングをめぐる混乱を解消し、準備を開始する」 (INF-12-78、2012年12月28日付)
  • 「プライベート・クラウドをめぐる5つの誤解」(INF-12-68、2012年11月22日付)
  • 「Design Your Private Cloud With Hybrid in Mind」



(監訳:亦賀 忠明)
INF: INF-13-157


※本レポートの無断転載を禁じます。

←INDEXに戻る

 

gartner.com
TOP OF PAGE
Copyright