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ニュース・アナリシス

写真 再編が進むプリンティング市場:キヤノンがオランダOceを子会社化

2009年12月2日
三谷 智子
Note Number:NA-009-0007

キヤノンによるOceの子会社化で、両社の技術や製品の相乗効果による、顧客へのサービスのさらなる強化が期待される。さらにキヤノンは、Oceの買収により商業印刷市場に本格的に参入し、地歩を築くことができるであろう。キヤノンのこの動きは、プリンティング市場を取り巻く環境の厳しさと、生き残りを賭けて再編が進む市場の状況を表している。

 
概要

 2009年11月16日、キヤノンはオランダのOceとの間で、Oceの買収および連結子会社化で合意したと発表した。キヤノンは今後、市場を通じて株式の公開買い付けを行い、Oceの発行済株式の100%を取得、子会社とする。キヤノンの子会社になった後もOceは、引き続き本社をオランダのVenloに置き、事業活動を継続する。キヤノンとOceは、技術や製品の開発などを共同で行い、両社の顧客に幅広い製品とサービスを提供するといった相乗効果により、顧客へのサービスをより強化することが可能になる。またキヤノンは、商業印刷市場に本格的に参入し地歩を築くことが可能になる。
 

分析

 プリンティング市場では、オフィスにおけるコスト削減や環境への配慮の一環として印刷の減少が進んでおり、今後、これまでのようなアフターセールスの消耗品売上を想定したビジネスモデルが崩れていくことを視野に入れた買収や合併による再編が進んでいる。今回の買収により、コンシューマー/ビジネスから商業印刷まで市場全体にわたる製品とサービス・ラインナップを持つHP、Xerox/富士ゼロックス、リコーなど強豪プロバイダーの1社としてキヤノンが参入することになる。キヤノンの競合企業の1社であるリコーは、2007年にIBMのプリンタ部門を買収し、IBMとの合弁会社 InfoPrint Solutionsを設立して、高速商業印刷市場に参入した。さらにリコーは、2008年にIKON Office Solutionsを買収し、欧米でのビジネスを拡大しているが、その影響を受けたキヤノンは大幅に売り上げを減少させている。このような状況下、キヤノンは製品ラインナップの拡充と世界全体における売り上げ向上のための方策を採る必要に迫られていたといえる。

 Oceは、オフィス市場ではコニカミノルタから製品のOEM供給を受けて欧米市場で販売を行っている。商業印刷市場では、自社開発製品の販売を行うとともに、コニカミノルタに対して高速プリンタのOEM供給を行っている。さらに両社は技術開発面でも協力して新製品を開発しているが、今回の買収によってコニカミノルタとの関係は徐々に縮小していくことが予想されており、コニカミノルタにとって打撃となる可能性が高い。これまで、Oceとコニカミノルタの協業関係から、コニカミノルタがOceを買収する可能性が高いとみられていた。一方、キヤノンは技術開発の多くを自社で行っており、製品ラインナップや技術の拡充のために企業買収を行う可能性は低いと考えられていた。しかし、キヤノンにとってOceの買収は、技術・製品を補完し共同で研究開発が可能であること、さらにはサービス網の強化が可能であることからメリットが大きい。こうした意味でキヤノンは、プリンティング市場を取り巻く現在と将来の環境の厳しさを見据え、勝ち残っていくための施策を打ち出したということができる。

 ガートナーは、キヤノンのOce買収は補完的で相乗効果の期待できる組み合わせであると考えている。キヤノンはコンシューマー向け製品からオフィス用のページプリンタ、複写機/複合機 (Multi-Functional Products) まで幅広い製品を有しており、さらに2006年にimagePRESSブランドで商業印刷市場に参入した。一方Oceは、屋外ディスプレイ広告用の大判プリンタや帳票向け高速プリンタなどの業務用プリンタと、高速のカラープリンタなどの商業印刷用の製品を有している。両社が得意とするこれらの主要製品は自社技術によるものであり、また製品がほとんど重複していないため、両社はR&D、流通、販売、マーケティングおよびサービスの相乗効果を活用できるようになると考えられる。今回の買収は、両社の顧客に対して幅広い製品とサービスを提供できるというメリットをもたらすことになるであろう。さらにキヤノンはOce買収により、連続紙プリンタ市場への参入が可能になるとともに、次の3つの市場における地位も強化することが可能になると考えられる。

  • オフィス市場:キヤノンはOce (およびOceの買収したImagistics) の顧客にアクセスが可能となり、現在Oceのオフィス機器の主要なOEM供給元であるコニカミノルタに取って代わることが可能である。

  • マネージド・プリント・サービス (MPS) 市場:オフィス市場と同様、キヤノンはOceの顧客を取り込むことが可能になる。

  • 大判および商業印刷市場:キヤノンはカット紙の商業印刷市場への参入に注力しているが、大判市場へはあまり注力してこなかった。Oceの技術と経験によって、キヤノンはHP、リコー/InfoPrint SolutionsおよびXeroxに対抗する競争力を増すことができる。

 なお、日本市場への影響としては、Oceは日本ではオフィス機器の販売を行っていないため、高速商業印刷向けのプリンタ、大判のプリンタ、複写機、プロッタ市場のみとなる。Oceはこれらの製品をほぼ100%代理店経由で販売している。キヤノンとコニカミノルタの販売会社もこれらのOce製品の販売を行っている。Oceは、印刷会社や印刷アウトソーサーなどキヤノンが開拓できていない顧客基盤を持っているため、Oceが販売代理店との関係を継続する必要がある。
 

推奨事項

  • キヤノンとOceは製品の統合を早急かつ柔軟に進め、価値や相乗効果を明確にし、顧客の混乱を招かないようにする必要がある。

  • 商業印刷用のプリンタはオフィス機器と異なり、1日24時間/週7日の迅速な対応など、信頼と安心感のあるサービスの提供が必要であるため、キヤノンはこれまでOce製品を販売してきた代理店との関係を構築し、これまでと同様のサービスを提供する必要がある。

  • 商業印刷機器の購入者は、HP、富士ゼロックス、InfoPrint Solutionsの製品に加え、キヤノンとOceの製品を選択肢の1つとして検討する。

  • プリンティング市場におけるベンダーは、自社にない技術や製品、サービスを有する他社との業務提携を検討するか、あるいは特定市場に注力する (例えば、ある業種に特化した製品とサービスを提供するなど) かを検討すべきである。メガベンダーは、製品やサービスについて他社との差別化をどのように図っていくかを考慮すべきである。

 

関連リサーチ

  • 「SWOT: Canon, Business Machines, Worldwide」

  • 「Canon and Oce Print Powerhouse Will Benefit Customers」

 

Topics: Printing、商業印刷

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