ガートナー ジャパン
メインメニュー ホーム リサーチ コンサルティング ベンチマーク エグゼクティブ プログラム イベント 会社情報 メインメニュー
SAMPLE RESEARCH

サンプル・リサーチ

イメージ 「ゲーミフィケーション」の面白さと革新によって人々の参加を促す
アプリケーション (APP) /APP-12-24
Research Note
B. Burke
掲載日:2012年6月26日/発行日:2012年3月19日

本リサーチ分析レポートのテーマに関心をお持ちの方は、2012年7月12日(木)・13日(金)に開催する 「ビジネス・インテリジェンス&情報活用 サミット 2012」 のページを是非ご覧ください。(イベント終了後も開催実績としてご覧いただけます)

 

ゲーミフィケーション (ゲーム・デザイナーから学ぶ技法を用いて多くのアプリケーションをゲーム化すること) は、人々の参加を増やしたり、行動の変化を刺激したりすることができる。この動向は急速に拡大しており、積極的な企業は採用に乗り出すべきであるが、一方でリスクもあり、慎重さが求められる。

要約

「ゲーミフィケーション」とは、ゲームの仕組みを非エンタテイメント環境に応用することで、ユーザーの行動を変化させ、参加を促すことである。その目的は、より深くより積極的な関係を喚起し、行動の変化を刺激することである。ゲーミフィケーションによって人々の参加が著しく増えたことが、多くの企業から報告されている。ただし、リスクも多いため、企業は採用に関する戦略を慎重に検討すべきである。

主要な所見

    ● 企業は、行動の変化を刺激し、社内外の関係者を参加させるために、次第にゲーミフィケーションに頼り始めている。

    ● ゲーミフィケーションの目下の成功を牽引するのは、目新しさとハイプである。

    ● ゲームの設計は容易な作業ではない。40年間のビデオ・ゲーム開発において、多くのゲームは、開発者の最善の意思を持ってしても失敗している。
推奨事項
    ● ゲーミフィケーション推進活動の指揮は、事業部門のマネージャーが執るようにする。なぜならゲーミフィケーションとは、テクノロジ対応ソリューションを必要とする、事業部門の課題であるからである。

    ● 確実な成功のためには、具体的な目標を重視する。ゲーミフィケーション手法のアプリケーションは、極めて多様である。

    ● 設計段階において動機付け、勢い、意義を適切に盛り込むことで、関係者の参加を持続させ、好ましい行動を促す。

    ● リスクをいとわない企業は、すぐにこの動向を活用する。ただし忘れてならないのは、どのようなゲーミフィケーションであっても、適切に実施するには慎重な計画や反復を通じた改善が必要になることである。リスク許容度が比較的低い企業は、この動向の発展を注視するか、さもなければリスクを限定した状況で、小規模なパイロット・アプリケーションのテストに着手する。

目次
    戦略的プランニングの仮説事項

    分析
     イノベーションの定義と解説
     影響を受けるビジネス領域
     革新の好機
      ITへの影響
       ゲーム層の付加
       アクティビティをゲーム的環境に変える
       企業はスキル不足を克服しなければならない
      採用速度
     リスク
     主要なテクノロジ/サービス・プロバイダー

    推奨リサーチ
表目次
    表1 ゲーミフィケーションによるビジネスモデルへの潜在的影響
図目次
    図1 ゲーミフィケーションに向けた革新の好機

戦略的プランニングの仮説事項

● 2014年までに、Global 2000企業の70%以上が、ゲーム化されたアプリケーションを少なくとも1つは持つようになる。


分析

イノベーションの定義と解説
ゲーミフィケーションとは、ゲームの仕組みを非エンタテイメント環境に応用することで、ユーザーの行動の変化を刺激し、参加を促すことである。その具体的な目的とは、ゲームに見られる親しみのある、楽しい、刺激的なメカニズムを活用し、対象グループに一層の参加を奨励することである。人間は生来ゲームを楽しむものであるし、自然な傾向として面白いと感じるものにはより長い期間かかわりを持つ (根拠1参照)。ゲーミフィケーションは、チャレンジ、ルール、チャンス、報酬、レベルといったゲームの仕組みを利用して、日常の作業を遊びのある活動に変える (「Gamification Primer: Life Becomes a Game」参照)。

ゲーミフィケーションは新しいものではない。顧客ロイヤリティやマーケティングのプログラムでは、数十年にわたりポイントやレベルといったゲームの仕組みが用いられている。しかし、こうしたプログラムの大半では、単純なゲームの仕組みと添えもの的な報酬が使用されているにすぎない。ゲーミフィケーションにおける相違点は、ゲームの仕組みの応用範囲が幅広く、より高度であること、そして参加を促すに当たって本質的な報酬がより重視されていることである。

企業は、求人、研修、社員のパフォーマンス向上に社内的にゲーミフィケーションを利用しつつある。また、革新を推進し、知識を共有し、従業員の健康を増進することにも使用している。ゲーミフィケーションは、社外関係者を顧客ロイヤリティ、マーケティング、教育、革新の活動に参加させる目的にも有用である。顧客、社員、Web利用者など、どのような関係者グループでも、ゲーミフィケーションの対象になり得る。

ゲーミフィケーションには多様な応用例があるが、その1つに、革新を引き出し発展させるためのマーケット・ゲームを創り出した英国の雇用年金局の例がある。このゲームでは、組織全体の人々がアイデアを投稿したり、他人が出したアイデアを発展させたり、最高のアイデアに自らのポイントを投じたりすることができる (「Case Study: Innovation Squared: The Department for Work and Pensions Turns Innovation Into a Game」参照)。

影響を受けるビジネス領域
企業は、テクノロジ、製品、サービスに関連した広範なシナリオにゲーミフィケーション技法を活用し、製品やサービスに関する戦略を向上させることができる。これらの利用は、特にマーケティング・マネージャー、製品デザイナー、カスタマー・サービス・マネージャー、財務マネージャー、人事 (HR) スタッフにとって重要である。それは彼らの目的が、顧客、社員、または一般の人々とのより持続性のある有意義な関係を築くことにあるからである。顧客をファンに変え、仕事を楽しみに変え、学習を喜びにすることが目標であるならば、その潜在的影響は計り知れない。一方で、失敗のリスクも存在する。それはプロジェクト・コストの問題だけでなく、ブランドを傷付け、関係者との関係を悪化させる場合もある。

基本的にゲームの仕組みを業務に取り入れることは企業にとって好ましい行動を促すことができるため、慎重に計画されたシナリオと製品戦略がそこに加われば、ユーザーの参加を増やし、製品とブランドへのロイヤリティを高め、対象者との持続的で有益な関係を築くことができる。

しかし、その貢献度は中程度と認識すべきである。ゲーミフィケーションのアプリケーションの大半は、製品またはサービスの提供に二次的な影響しか与えないからである。つまり、ゲーム化されたアプリケーションの大半は、関係者のコミュニティへの参加を高めることを目的としており、以下の面では直接的な影響をもたらさない。
    ● 顧客に提供する製品またはサービス

    ● 取引先から提供されるサービス

    ● 社員の契約上の義務

ただし、通常は影響が二次的であるとはいえ、行動を変え、参加を増やすことのメリットは絶大なものになり得る。表1では、ゲーミフィケーションの潜在的なビジネス影響度を評価している。ビジネス影響度モデルの詳しい説明については「Communicating How Technology Leads to Competitive Advantage and Innovation」を参照されたい。

表1 ゲーミフィケーションによるビジネスモデルへの潜在的影響


影響度:4=優 (期待どおりまたはそれ以上の影響)、3=良 (影響はある)、2=可 (若干の影響はある)
出典:ガートナー (2011年12月)

革新の好機

図1 ゲーミフィケーションに向けた革新の好機

 


産業種別の定義:
重産業 - 鉱業、エンジニアリング、建設、エネルギーおよび公共事業、軍事、自動車、製造業
混合産業 - 消費財、物流、小売り、医薬品、地方政府、教育、医療
軽産業 - 保険、メディア、銀行、広告、情報
出典:ガートナー (2011年12月)

ゲーミフィケーションは応用範囲が広いため、すべての産業に影響がある (図1参照)。ただし、大規模な関係者 (顧客、社員、またはWeb利用者) 集団を擁する産業において最も影響が大きい。なぜならゲーミフィケーションが重視するのは、より大規模な対象集団の参加を増やすことであるからである。比較的小規模な顧客層を持つ企業は、参加を増やすためにより個人的な手段を用いる。例えば60件の顧客を擁するエンジニアリング企業は、ゲームを作ろうとするよりも、ゴルフコースでの方がおそらく良い仕事ができるであろう。逆に数十万人の顧客がいる消費財企業は、顧客との対話をゲーム化することにより適している。

ガートナーは、超大手 (Global 2000) 企業が早期にゲーミフィケーションを採用すると予想する。中〜大規模の企業における採用はそれよりも遅い。採用の拡大は比較的遅いペースで進行し、2021年までにピークに達し、その時点で中〜大規模企業の約60%が少なくとも1つのゲーム化されたアプリケーションを導入するとガートナーでは予測している。

ゲーミフィケーションはまだ幼年期にあるが、ハイプはかなり高まっており、それに後押しされる形で2015年には「過度な期待」のピーク期に達する。

軽産業、あるいは大規模な関係者集団を抱えるいずれの企業も、ゲーミフィケーションの採用機会を今すぐ調査し、2012年中にパイロット・プロジェクトを開始すべきである。ほかの産業もこの動向に準じて、各社の採用特性に合った採用時期を選定すべきである。

採用しない場合の現在のリスクは中程度である。なぜなら、ゲーミフィケーションは比較的新しく、そのメリットには一貫した実績がまだないからである。アーリー・アダプターは、リスクと利益のバランスに配慮しながら、自社が採用しない場合のリスクを判断する必要がある。

ITへの影響
ゲーミフィケーションは、消費財、アプリケーション、サービスを含め、多くのテクノロジ領域に影響する。ゲーミフィケーションのテクノロジには、次の3つの形態がある。すなわち、ゲーム化されたプラットフォーム、カスタム開発アプリケーションが統合されたソフトウェア・サービス (通常はサービスとしてのソフトウェアまたはセルフサービス製品として提供される)、純粋なカスタム実装である。

しかし、ゲーミフィケーションは主として、テクノロジによって実現されるビジネス・トレンドである。ゲーミフィケーションには以下の2つの主要カテゴリがある。

    ● 既存アクティビティの上にゲーム層を付加したもの

    ● アクティビティをゲーム的環境に変化させたもの
ゲーム層の付加
これは現在のところ、最も一般的なゲーミフィケーションの手法である。この場合、ポイント、バッジ、投票、順位表といったゲームの仕組みを既存アクティビティに付加し、参加を促す。ゲーム層を構築して参加を増やそうとした1つの例は、USA Networkのテレビ番組「Psych」である。この番組ではWebサイト「Club Psych」にゲームの仕組みを付加し、ユーザー・ポイントが加算される課題やアクティビティを盛り込んで、それらを順位表にして掲載した。これらのポイントは後日、実際の商品に引き換えることができた。導入後にはユーザーのサイト滞在時間が延び (平均14分から22分に)、ページ・ビュー数が上昇し (前シーズンの900万から1,600万に)、平均サイト訪問数も増加した (1カ月2回から約4.5回に)。

この手法は技術的にはそれほど複雑ではないが、設計が難しい。適切なゲームの仕組みを適用して成功するゲームを作ることは難しく、大半のIT部門は外部の専門家を雇わなければならない。USA Networkはこのアプリケーションを開発するためにBunchballと契約し、同社の専門知識とNitroゲーミフィケーション・ソリューションを採用した (「Marketing Essentials: Strategic Alternatives for Increased Engagement Using Gamification」参照)。

アクティビティをゲーム的環境に変える
これはゲーミフィケーションの手法としてはあまり一般的ではない。企業は既存アクティビティを取り上げ、それにグラフィック、アニメーション、ストーリー、シミュレーション、その他のゲームの仕組みを付加し、そのアクティビティをビデオ・ゲームに変える。

これらは、「アドバゲーム」(監訳者注:商品などの広告を目的として提供されるコンピュータ・ゲームである。ゲーム・ソフト自体の宣伝を目的として提供される体験版とは異なる。出典:Wikipedia) の形態を取る場合がある。例えば、米国陸軍は新兵募集を強化するためにビデオ・ゲーム「America's Army」を制作した。また、高度なシミュレーションの形態を取る場合もある。例えば、ワシントン大学はタンパク質の折り畳みをモデル化するために「FoldIt」というシミュレーション・ゲームを制作した。ビデオ・ゲーム制作は、アクティビティに単にゲーム層を追加するよりもはるかに複雑である。大半のIT部門は、ビデオ・ゲーム設計の経験がわずかであるか、または皆無であり、この手法を採用する場合はビデオ・ゲーム開発の専門知識を社外から調達しなければならない。

企業はスキル不足を克服しなければならない
ゲーム化されたアプリケーションを設計するためには、IT部門には一般に見られないスキルが必要である。ゲームの仕組みを既存アクティビティに盛り込む (ゲーム層を構築する) ために必要な技術的スキルについては、IT部門の社員は容易に習得できる可能性があるが、ゲーム設計で大きな部分を占める動機付けの心理に関しては、一般的に研修または経験が不十分である。計画中のプロジェクトがアクティビティをゲーム的環境に転換しようとするものである場合、アニメーション、シミュレーション、高度なグラフィックを設計し、開発するためのビデオ・ゲーム開発スキルが必要である。大半のIT部門はこうしたスキルをすぐには用意できない。いずれにせよ、アプリケーションをゲーム化することになったIT部門の大半は、社外にスキルを求める必要がある。

採用速度
企業は、例えば革新、教育、社員のパフォーマンス、健康管理、社会変革、ビジネス、業務計画に関連した多様な課題にゲーミフィケーションを採用しようとしている。現時点では、優れた商品デザインの重要な側面としても、またマーケティングや顧客ロイヤリティ・プログラムにおいても、「スイート・スポット」は消費者市場にある。

ガートナーは、ゲーミフィケーションの市場への浸透度は低いと見積もっている。対象集団においてこの手法を採用しているユーザーはわずか1〜5%であり、5〜10年以内に生産性の安定期に達することはないと予想する。

しかし、ゲーミフィケーションの採用は今後数年間で大幅に増加し、2014年までにGlobal 2000企業の70%が少なくとも1つのアプリケーションをゲーム化する。革新プロセスのゲーミフィケーションは、有意な採用が予測される領域の1つであり、2015年までに企業の50%以上が管理型革新プロセスにゲーミフィケーションを採用する。

リスク
大半の企業はゲーム化されたアプリケーションの実装に成功したと報告しているが、ゲーム化されたアプリケーションの対象集団は、ゲーミフィケーションの目新しさによって刺激される。そうした刺激は、ユーザーに倦怠感が芽生えるとすぐに弱まり、参加の持続性が問題になる。「Maverick* Research: Motivation, Momentum and Meaning: How Gamification Can Inspire Engagement」には、こうしたことにならないアプリケーションを、どうすれば開発できるのかが示されている。

参加の維持に失敗するリスクはかなり高いが、その影響は中程度である。とはいえ、以下に示すように、ゲーム化されたアプリケーションを採用する前に検討すべきリスクと課題はほかにも多数ある。
    ゲーム設計関連の経験不足:企業は2つのハードルに直面している。つまり見習うべき成功モデルの不在とゲーム設計を熟知する人材の不足である。

    成功するゲームを制作する難しさ:ゲームの世界で唯一動機付けとなるのは遊びであり、成功以上に数多くの失敗がある。遊び以外を目的とするアクティビティに楽しみを付加しようとすれば、難しいのはなおさらである。単にポイント、バッジ、順位表を付加するだけでは、企業とのかかわりがより面白くなることはない。

    すべての関係者にとって魅力的なゲームはない:一般的に、ほとんどの人にとってゲームは魅力的である。しかし、それぞれのゲームは個々の理由によって、それぞれの人々を魅了する (根拠2参照)。あるアクティビティをゲーム化することで、関係者の一部を取り込むことができたとしても、それがすべての関係者にとって魅力的であることはおそらくはない。

    企業文化との不一致:多くの企業環境では、何らかのアクティビティに「面白さ」を盛り込むという考えは働かない。面白さという概念は非常に軽薄なものに受け取られかねず、こうした企業においてゲーミフィケーションを売り込むことは困難である。

    ユーザーがシステムを操作する:アクティビティをゲームに変えると、参加者がシステムを操作しようとすることがあり、意図せぬ結果をもたらす場合がある。
主要なテクノロジ/サービス・プロバイダー
    ● Badgeville

    ● BigDoor

    ● Bunchball

    ● Foursquare

    ● Scvngr


    推奨リサーチ
    ・ 「Maverick* Research: Motivation, Momentum and Meaning: How Gamification Can Inspire Engagement」
    ・ 「Hype Cycle for Emerging Technologies, 2011」
    ・ 「Gamification Primer: Life Becomes a Game」
    ・ 「Play to Win: Crowdsourcing Innovative Future-State Enterprise Architecture Models Through Game Play」
    ・ 「Case Study: Innovation Squared: The Department for Work and Pensions Turns Innovation Into a Game」
    ・ 「Marketing Essentials: Strategic Alternatives for Increased Engagement Using Gamification」
    ・ 「Market Insight: Combine Social Networks and Gaming to Boost Engagement」
    ・ 「Communicating How Technology Leads to Competitive Advantage and Innovation」
    ・ 「Predicts 2012: Opportunities for EA to Lead Business Transformation in Turbulent Times」

    根拠
    1. Steven Johnson著『This is Your Brain on Video Games』(Discover Magazine、2007年7月)
    2. Richard Bartle著『Hearts, Clubs, Diamonds, Spades: Players Who Suit MUDS』(1996年)

    (監訳:志賀 嘉津士)

APP: APP-12-24

※本レポートの無断転載を禁じます。

←INDEXに戻る

 

gartner.com
TOP OF PAGE
Copyright