ガートナー ジャパン株式会社 (所在地:東京都港区、代表取締役社長:日高 信彦) は本日、5月23~24日に開催する『ガートナー データ&アナリティクス サミット 2017』に向けて、企業が機械学習に取り組む際の留意点を以下のとおり発表しました。
データおよびアナリティクスを担当するリーダーは、ジレンマに直面しています。データ・サイエンティストがいなければ、機械学習などを駆使したデータ・サイエンスに踏み出すことが難しい一方で、パイロット・プロジェクトの実施とその成功がなければ、データ・サイエンティストの雇用について会社側を納得させることも難しい、いわば「ニワトリが先か、卵が先か」という状況に陥っているのです。
ガートナーのリサーチ バイス プレジデントであるアレクサンダー・リンデン (Alexander Linden) は、次のように述べています。「多くの企業は、データ・サイエンスへの道のりにおいてまだ初期段階にあり、機械学習やデータ・サイエンスによって何がもたらされるのかを模索しています。どの企業も必要なスキルを正確には把握しておらず、データ・サイエンティストの雇用は簡単ではありません」
データ・サイエンティストの雇用が困難な要因
高度なアナリティクスを実践している企業の40%以上が、「適切なスキルの不足」が課題であると述べています。経験豊富なデータ・サイエンティストの雇用が非常に難しいのは、以下のような理由があるからです。
- 経験豊富なデータ・サイエンティストは、自分がその企業で最初に雇用されるデータ・サイエンティストになることを避けようとする。
- 単にデータにアクセスし、それらを統合して当初の機械学習モデルを社内展開するだけでも、膨大な労力が必要となり得る。
- 候補となる人材プール自体が限られている。
また、優秀なデータ・サイエンティストを自社に引き留め続けるのも困難な状況です。現在、こうしたデータ・サイエンティストは、職務経験を (理想的には業種の垣根を超えて) 積み重ねるために、自ら好んで転職を繰り返しています。
機械学習のメリットを得るために、企業が大規模なデータ・サイエンス・ラボを持つ必要はありません。ガートナーは、スキル確保の課題への対処法として、まずは小さく難易度の低い取り組みから始めて、必要なコンピテンシを進化させていくことを推奨しています。
スキル確保の課題への対処法:
1. 現有のスタッフを (市民) データ・サイエンティストに育てる
多くの企業には、数学のスキルを有する従業員が、認識はされていないものの存在しています。これらの従業員は、高校生の頃から「数学オタク」であったり、定量分析のスキルを他の業務で使用していたりするかもしれません。
特に、下記のような資質を備えている従業員は有望と考えられます。
- 好奇心と、起業家精神にあふれた心構えを持っている。
- データ収集から分析結果の提供に至るデータ・サイエンスの一連の流れを、俯瞰的に調査し、分析することができる。
- 適度な数学の知識。データはノイズの混入により処理が煩雑化していることが多く、データ・サイエンティストが扱う状況には不確実性と高次元性が伴うため、その知識を生かして事象を見極める必要がある。
2. 大学と提携する
現在、多くの大学がデータ・サイエンスに関連する学位を授与しています。具体的なプロジェクトで大学と協力することで、企業は、有能な人材の獲得と、学生に対する実地での学習経験の提供という2つの目的を達成できます。
主な提携手法としては、インターンシップ、クラスのプロジェクト、イノベーション・ラボ、ハッカソンという4つの形式があります。
自社が属する業界のビジネス・プロセスと利用可能な定量分析手法を熟知しているベテランの研究者の協力を仰ぐことが最適です。これにより、研究者側は企業と実務的なやりとりを経験でき、企業側は研究者や学生の知識からメリットを得られます。
3. 外部のプロフェッショナルを雇用する
機械学習のスキルが圧倒的に不足している現在、データ・サイエンス・プログラムを成功させ、これに弾みをつけるため、外部のプロフェッショナルを雇用することも有効です。プロジェクトのアイデア出し、初期パイロットの支援、経験が浅いスタッフへのコーチングおよびティーチングから本格的なマネージド・サービスまで、幅広いサービスを提供できるコンサルティング企業が数多く存在します。
自社における高度なアナリティクス能力について徹底的なアセスメントを行い、現在持ち合わせているスキル、資金、処理能力に照らし合わせて、どのサービス・プロバイダーの契約および価格モデルが自社の高度な総合アナリティクス・プロジェクトに最適であるかを判断することが重要です。
4. パッケージ・アプリケーションを利用する
特定のビジネス課題の解決にターゲットを絞ったソフトウェア・アプリケーションに、機械学習の能力が組み込まれ、パッケージ化されていることもあります。実際のところ、多くの開発済みソリューションが既に利用可能になっており、その数は絶えず増加しています。
多くの場合、これらのソリューションは費用・時間・リスクのトレードオフを実現しており、企業にとってはスキル面のハードルが大幅に引き下げられるとともに、ゼロからの構築よりも非常に短い期間で利用できるようになっています。たとえ大規模なデータ・サイエンス・チームを擁している企業であっても、特に生産性向上の観点から、パッケージ・アプリケーションは検討すべき重要事項です。
その他の詳細は、ガートナー・レポート「データ・サイエンティストを雇用せずに機械学習を運用する」に記載されており、ご契約いただいているお客様に提供されています。
ガートナーは5月23~24日、『ガートナー データ&アナリティクス サミット2017』を開催します。本サミットでは、前出のリンデンをはじめ、ガートナーの国内外のアナリストが、データおよびアナリティクスにおいてリーダーシップを取るために必要なトレンドに関して、さまざまな知見を提供いたします。 本サミットの詳細については下記Webサイトをご覧ください。
http://www.gartner.co.jp/event/data/