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2018年5月22日

ガートナー、全社員のIT活用力強化に向けた3つの施策を発表

企業がデジタル・トランスフォーメーションを実現するには、組織における「個」と「組織」の双方の力を高める施策が必要不可欠に

ガートナー ジャパン株式会社 (所在地:東京都港区、代表取締役社長:日高 信彦) は本日、デジタル・トランスフォーメーションを実現するために必要となる全社員のIT活用力強化に向けた3つの施策を発表しました。

デジタル・トランスフォーメーションの実現には、全社員が自主的かつ積極的にテクノロジを活用することが求められます。そのためには、全社員が電子メール、スケジュール管理、コミュニケーションなど、日常的に接するワークプレースのソリューションを自在に使いこなしていることが前提となります。最も身近な業務にITを駆使できて初めて、組織全体で、より高度なテクノロジによる新たなビジネスモデルの創出やビジネス機会の獲得に取り組むことが可能になります。企業にとっては、組織における「個」の力を高める施策と、「組織」の力を高める施策の両輪で進めることが重要です。

しかし現実には、経営層の関心は、新たなデジタル推進組織の設置やオープン・イノベーションの導入など、組織全体の取り組みに集中しがちで、「個」の力を高める施策が後手に回っているケースが散見されます。これは、ガートナーが先日発表した主要先進国のワークプレースに関する実態調査において、業務用途のデジタル・テクノロジのスキルに関する日本の自己評価が、調査した7カ国の中で最も低い結果であったことからもうかがえます。

さまざまな要因や国民性の違いなどはあるものの、ガートナーは、日本の企業に共通する課題として次の3点を挙げています。

  • エンドユーザーが教育されないまま、放置されている。
  • 慣れ親しんだIT環境を変えたくないエンドユーザーが存在する。
  • そもそも、業務ITが使いにくい。

ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門 バイス プレジデント兼最上級アナリストの足立 祐子ならびに同部門 バイス プレジデントの志賀 嘉津士は、これらの課題に対して、調査結果も踏まえて次の3つの施策を提示しています。 

IT部門は、ワークプレース・テクノロジに関するエンドユーザー教育を新たなミッションに据える 

IT活用力が上がらない第1の理由としては、エンドユーザーのITリテラシの低さが挙げられます。ガートナーの調査では、先進的な技術分野はもとより、ワークプレースにおけるソリューションについても、知識とスキルの習得はエンドユーザー個人やユーザー部門に一任されており、その結果、スキル習得に課題を持つエンドユーザーが放置されているという結果が出ています。ガートナーが2017年12月に日本で実施した調査では、ワークプレースのソリューションについて、企業としての公式な教育機会があるという回答は全体の19.1~23.4%で、大多数は「同じ部門やグループの先輩や同僚が教えている」状況であることが明らかになりました。さらに、ワークプレース・ソリューションのスキル習得に関しては、約5割が個人で「何となく」習得しており、IT担当者に聞きながらの習得は全体の1~3%と、極めて少数派であるという結果になりました (図1参照)。

この背景としては、一般的なIT部門にとって、業務のゴールは「ユーザーが求めるシステムの『導入』」や「普及 (利用者数)」であり、「ITを活用した企業競争力の向上」とはなっていないことが挙げられます。

前出の足立は、次のように述べています。

「IT活用力の強化がエンドユーザーの自助努力に委ねられている状況を打破するには、IT部門が、ITの導入までで任務完了とせず、教育とエンドユーザーによるIT活用まで責任を持って支援する体制を構築することが肝要です。IT部門のヘルプデスク化によって、業務量が増加する、あるいは戦略的領域への集中が阻害されるという懸念も聞かれますが、こうしたサポート体制を実際に導入している企業では、IT部門員の認知度の向上やエンドユーザーとの緊密な関係の構築など、従来得られなかった効果を獲得しています」

ITリーダーは、ビジネス部門リーダーと共同で、ビジネス現場に新規IT利用推進の核となるチームをつくり、成功実例を示して全社員の意識を変える

IT活用が進まない第2の理由としては、慣れ親しんだIT環境を変えたくない組織やエンドユーザーの存在が挙げられます。コラボレーション・コミュニケーション領域においては、ワークストリーム・コラボレーション、AI型のスケジューラ、ビデオ会議システム、ストーリーテリング・ツール、ピープル・アナリティクスなど、個人や組織の生産性を飛躍的に向上させるツールが続々と登場しています。しかし、慣れ親しんだ電子メール、ファイル・サーバしか使わず、生産性が向上する革新的なツールを敬遠する組織やエンドユーザーも多く存在しています。特にシニア層、上級職は慣れ親しんだ環境を変えることを好まない傾向があります。

プライベートで使うITと業務で使うITの使いやすさを年代別に尋ねた結果 (図2参照) について、前出の志賀は、次のように述べています。

「電子メールの歴史は30年近くあり、コラボレーション・コミュニケーションの中核を長く担ってきました。今回の調査結果は、若い人たちが使いにくいと感じている業務ITも、年齢が上になるほど、慣れてしまうと不便だと思わなくなるユーザーの特性を示しています。一方で、IT部門の要員が、ユーザーに画期的なツールの価値をうまく伝えられていない現状も多く見受けられます。もっとも、彼らのミッションは受動的で、ビジネス部門からの要求への対応にとどまっており、IT部門が生産性の向上に貢献するまでに至っていないことも多々あります。革新的なITを取り入れるには、まずはIT部門が主導的に動き、社内で影響力のある人物やチームを前面に据えて、ITの活用による実際の成功例を示し、次第に全体を巻き込むことなどが有効であると考えています」

IT部門はシャドーITの背景にある自発性に着目することによって、ワークプレースにおけるユーザーの自主性を引き出す

IT活用が進まない第3の理由としては、そもそも企業が提供している業務ITが使いにくいということが挙げられます。2005年の個人情報保護法の施行の頃より、コンプライアンスとガバナンスが重視され、業務システムについても、その背後のセキュリティに重きが置かれ、使いやすさは軽視されがちになりました。

一方、エンドユーザーは使いやすいプライベート用のテクノロジをビジネスでも使いたがる傾向が強くなっています。特に若い世代にこの傾向が強く見られ、個人のスマートフォンの普及と相まって、LINE、Dropbox、宅ふぁいる便、Skypeなどが水面下で使われ、ワークプレース領域にシャドーITが多発している企業は少なくありません。

前出の志賀は次のように述べています。

「シャドーITはIT管理者から見ると基本的には『負』の側面が強いですが、実は極めてユーザー目線の選択であり、自主性を伴っており、おのずと生産性も高くなります。また、仲間同士で教え合うピア・サポートも期待できることから、IT部門の手を煩わせず、教育コストも節約できるほか、従業員同士のエンゲージメントにも役立ちます。ITリーダーは、シャドーITの背景にあるテクノロジ需要を正しく捉え、エンドユーザーのIT活用意欲を引き出すための施策を実行することが大事です。例えば、安全で使いやすい環境を整備する、代替となる正規ITを提案する、使いやすいITに関する情報発信センターとなる、などの施策も効果的でしょう」

ガートナーは来る8月31日、『ガートナー ITソーシング、プロキュアメント&アセット・マネジメントサミット 2018』を開催します。本サミットでは、ガートナーの国内外のアナリストが、デジタル時代のIT人材を中心テーマに据えつつ、背景にあるさまざまな問題をつまびらかにし、ITリーダーが今すぐにでも行動に移すべき「解決の突破口」を、最新の調査結果や事例を基に探っていきます。

本サミットの詳細については下記Webサイトをご覧ください。http://www.gartner.co.jp/event/ss/


調査手法
ガートナーは、2017年12月に、企業におけるIT活用状況の実態調査として、日本のビジネス・ワーカー (IT部門員以外) を対象にWebアンケートを実施しました (有効回答数620)。

その他の調査項目や詳細なデータ、推奨事項などは、ガートナーのリサーチノート「全社員のIT活用力をいかに高めるか」(ITM-18-18、2018年5月18日付) に記載されています。同リサーチノートは、以下のWebサイトのサービスをご契約いただいているお客様に提供されています。 
http://www.gartner.co.jp/research/jcor/ 

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