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2023年12月13日

Gartner、2024年に向けて獲得すべきマインドセットを発表

すべての企業、組織、人はテクノロジを駆使して時代の変化に対応するための備えとして新たなマインドセットを持つことが不可欠である

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、開催中の「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス」において、2024年に向けて獲得すべきマインドセットを発表しました。

ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀 忠明は次のように述べています。「産業革命クラスの変化が起こっている中、テクノロジを駆使できる企業、組織、人と、そうでない人たちに二極化してきています。こうしたかつてない時代変化に対応するためには、従来とは違う新たなマインドセットを獲得することが求められます」

2024年に向けて獲得すべき新たなマインドセットは、次の通りです。

産業革命のマインドセット:新たなテクノロジの台頭による新たな産業革命が起こっています。ここで、企業には、デジタルが前提のビジネスへと業態を再定義し、また戦略的に転換することが求められています。例えば、先進の自動車企業では、デジタルを前提としたモノづくりが進められ、自動車そのものもデジタルを前提としたモノとして進化中です。亦賀は次のように述べています。「これは、自動車会社がITベンダーになるレベルの変化です。クラウドやAIの利用は当たり前になっており、生成AIによって、このトレンドは加速しています」

ツールとスーパーパワー:ITには、ツールとしての側面とスーパーパワー (想像を絶するテクノロジ) としての側面がありますが、これからの時代はスーパーパワーを使いこなせる人、組織が生き残る時代です。これからのビジネスを推進するには、クラウド・コンピューティング、ジェネレーティブAI (生成AI) を含む人工知能 (AI)/アルゴリスム、データ、セキュリティ、プライバシーなどの要件やそれらに備える人材が極めて重要です。企業や人はスーパーパワーを駆使できるように、新しい基本を身に付ける必要があります。

作業者からクリエーター、アーティストへ:テクノロジの進化により日常的な作業は、AIやハイパーオートメーションへの置き換えが可能になりつつあります。その結果、事務的・作業的な業務に従事する人や作業者的なエンジニアの役割は時間とともに低下していきます。逆に、エンジニアやビジネス・パーソンは、新しいスタイルをもたらすクリエーターやアーティストになり新たな活躍の場が拡大していきます。亦賀は次のように述べています。「『テクノロジ』が使えるのかではなく、『人 (あなた)』がテクノロジを使えるのかが問われています。前向きに新たなテクノロジを駆使しようとする人々を大事にし、元気にし、活躍できるワークプレースを作ることが、企業がこれからの産業革命を生き残るための必須要件となります」

ハードウェア中心からサービス・スタックへ:製造業の多い日本においては、従来ハードウェアを中心としたビジネスが考えられてきました。しかし、これからを生き残るためには、ハードウェア中心からPeople Centric (人間中心) を中心としたマインドセットへの転換が必要です。このことはハードウェアを軽視するということではありません。ハードウェアも重要ですが、その大前提としての人の体験そのものを起点とした意思決定と実践が重要であることを意味しています。その実践には、多くのクリエーター的なソフトウェア・エンジニアが必須であり、ほとんどの日本企業では、その実践は相当にハードルが高いものとなります。

妄想からリアリティへ:先進テクノロジが登場すると、すぐに「すごい」ことができると思いがちです。しかし、仮に「すごい」ものがあってもすぐに「使える人」がいるわけではありません。まずは、リアリティを大事にし、今できることとできないことを明確にした上で、必要となるスキルの獲得を開始することが重要です。

業務とビジネス:テクノロジが進化し、人でなくてもできる業務が増えている中、いつまでも業務を中心としたマインドセットで、従来の業務を変えずに進めることはもはや通用しません。Gartnerは、2030年までに、事務的な業務の80%はハイパーオートメーションによって置き換えられるとみています。これからは、テクノロジにできることはテクノロジにやらせて、人は「より人間らしい」仕事をする時代です。こうした、真のPeople-Centricのビジネスへの転換が必要になります。

人工知能の進化の影響を考える:2023年の生成AIの急速な浸透は目覚ましく、ビジネスに大きな影響を与えています。今後も生成AIをはじめとしたAIの進化は留まることはなく、ますます破壊的なインパクトをもたらすでしょう。亦賀は次のように述べています。「AIが進化していくように、人間も進化していく必要があります。それには時代に合った個々のリテラシー、スキル、マインドセットを獲得し、継続的に学び、組織としても共に高みを目指していくことが重要です。AIが進化している今こそ人間力を取り戻し、時代の変化に対応できるよう自ら進化させるチャンスです」

「何でも松」から「松竹梅」へ:すべての業務を「松竹梅」の「松」のように捉えるのではなく、優先順位を付けてどこまでのコスト、時間、エネルギーをかけるか、棚卸し、仕分ける必要があります。これは、クラウド・サービスなどの稼働率要件だけではなく、仕事の仕方を含めたすべてに当てはまります。自社の要件や仕事の仕方が過剰な松になっていないかを点検し、時に断捨離することが必要です。このことは少子高齢化が進む昨今、特に重要なテーマとなっています。メリハリなくすべてを完璧にしようとすると、現場に無理が発生し、それがシステム停止につながったりするため、何でも完璧にしようとする癖を止める必要があります。

「完璧」、「継続的改善」、「産業革命」:従来のIT部門の業務はしっかり作って、きっちり運用する完璧を目指すものでした (モード1)。現在は、クラウド、アナリティクス、モノのインターネット (IoT) などのテクノロジを採用し、継続的に改善し (モード2)、さらに破壊的なテクノロジであるスーパーパワーを駆使して産業革命レベルの新しい時代 (New World) 変化に対応することも同時に求められています。企業はそれぞれの違いや対応する人を理解し、リスペクトするマインドセットを持つことが重要です。

「丸投げ」から「自分で運転」へ:IT部門は会社内のITのプロとして、クラウドや新しいテクノロジの導入などを外部に「丸投げ」せずに「自分で運転」するマインドセットが必要です。新しいテクノロジは、自分で運転して継続的に改善し、割り切って使うことで、コスト抑制などのメリットにつながります。IT部門には、新しいスキルを身に付けて、2030年までにクリエーター集団に進化していくことが求められています。このことは、企業や組織だけでなく、個々人が大きな時代変化の中で生き残るための重要な要件となります。

成功か失敗よりも、経験を積むこと:新しいことを始める時は、誰もが最初からできるわけではありません。何事も新しい取り組みをする際は、まずは経験を積むことが重要です。経験の際にうまくいかないことを恐れて何もできない「大失敗」にならないようにする必要があります。時代が大きく変わりつつある中、企業、組織、個々人には、成功と失敗とは何かを再定義することが求められています。

スキルを適切に評価する:人口減少やテクノロジ人材の不足が顕著になりつつあり、グローバルでも人材競争が激しくなっています。企業はスキルを持った優秀な人材の獲得、定着に向けて、人事部門 (HR) と共に、早期にスキルを適切に評価し、適正な対価を支払うなどの対策を検討する必要があります。スキルを適切に評価するためには評価者にも学ぶ姿勢と努力が求められています。

人材育成と人材投資:企業は、従業員にトレーニングをするなどして人を育てる人材育成だけでなく、積極的な投資対象としての人材投資を強める必要があります。投資なので回収を期待しますが、これは長期的な取り組みとなります。企業には、People-Centricなマインドセットを持って、じっくりと新たな時代に対応できる人材と組織作りを粘り強く展開することが求められています。こうした人材投資は、短期的かつ直接的なP/L上の効果よりもむしろ従業員を元気にし、組織を活性化させる効果があることに注目すべきです。

「議論」から「決めて実行」へ:例えば「クラウドは使えるのか」といったように、10年以上も同じ議論をしている企業や組織が見られます。亦賀は次のように述べています。「時代が大きく動く中、同じ議論を繰り返すことは、企業や組織が時間とともに時代に取り残されることを意味します。議論はほどほどにして、まずは試すことが重要です。それには普段からの言葉遣いも見直すことが推奨されます。リーダーは、『もうかるのか』『できるのか』『誰がやるのか』『事例はあるのか』などの言葉ではなく、自分事として自分で戦略を描き、実行する、勉強する、調べるなど、自分で『する』ことが重要です」

短期オペレーションから中長期戦略へ:日本では四半期決算に相当フォーカスする企業は多いですが、投資家は継続的な企業価値向上と持続性も重視しています。さらに企業には、産業革命時代を生き残るための中長期戦略を策定、推進する必要性が高まっています。江戸時代が明治時代になるくらいの大変化の中で、短期オペレーションだけにフォーカスすれば、時代変化に従い、企業自体が衰退、消滅するリスクが来ているとすべての企業が認識し、New Worldに対応すべく抜本的に戦略を見直す必要があります。

大量情報時代のマインドセット:大量に情報がある時代においては、偏向した情報やフェイク/詐欺情報、倫理を考慮しない、時代錯誤的で過剰に宣伝的な情報などに惑わされないだけなく、そういった情報を自らも発信しないことが重要です。それには、ファクト・ベース、倫理的、People-Centricなマインドセットが必要です。

時代に合わせて変える:時代変化とともに求められる役割も変化します。企業や個人が変化に対応していくには、時代に合わせた新しいスタイルとアプローチが必要です。特に経営者は、中長期視点で戦略を考え、実行することが求められます。経営者自らアンテナを高くし、「自分事」として日々勉強し、人材への投資やマインドセットの獲得をリードする必要があります。

亦賀は次のように述べています。「産業革命クラスの時代変化に備えるために、すべての人は新たなマインドセットを獲得し、スキルやスタイルを身に付けるべきです。人間ならではの創造を楽しみ、テクノロジと『知恵』を駆使してすべてを『より良く』しようとする企業に人が集まります。そこで人が大事にされ、元気になり、活躍することで、顧客を呼び、ビジネスの好循環を生むことになるでしょう。デジタルの時代とは、デジタルによって人間力が増幅される時代です。この原理をうまく理解し実践できた企業が生き残れるようになります。逆に、そうでない企業は、衰退、消滅していく可能性があります。日本企業がこうした生き残りをかけた歴史的な時代変化に対応するために、チーフ産業革命オフィサーを設ける動きが2024年に確実に高まるでしょう」

Gartnerのサービスをご利用のお客様は、リサーチノート「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」ならびに「2023年の展望:『産業革命』による破棄的トレンドに備える」で関連する内容をご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、こちらよりご参照ください。https://www.gartner.co.jp/ja/products

開催中のガートナー ITインフラストラクャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス (12月12~13日) では、インフラ戦略およびイノベーションを率いるITリーダーに向けて押さえておくべきトップ・トレンド、ベスト・プラクティス、知見やガイダンスを提供します。コンファレンスのニュースと最新情報は、X (旧Twitter) でご覧いただけます (#GartnerIO)。

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