AIを主軸としたテクノロジ経営戦略のために、CIOが最優先すべき5つの課題

ガートナーのエグゼクティブ パートナー (EP) の多くは、実務経験を持つ元CIOです。この実務経験により、現役のCIOが直面する課題や状況を深く理解し、直接お客様と協働しながら、具体的な戦略的イニシアティブや実行プランの策定/最適化に取り組みます。ガートナーのEPがCIOから最も頻繁に寄せられる5つの質問について、回答と共にご紹介いたします。

2025年5月27日

CIOの主要な課題はAIから人材まで多岐にわたる

ガートナーの「CIOレポート」は、正式なアンケート調査に依拠したものではなく、ガートナーのサービスをご利用いただいているCIOの皆様から日々寄せられる問い合わせのほか、アナリストやエグゼクティブ パートナー (EP) とのやりとりに基づいて作成されています。本レポートは、CIOにとって何が重要かを取りまとめたものであり、お客様が組織の課題を特定し、今後のステップを判断するのにお役立ていただけます。

本CIOレポートでは、2025年に多くのCIOが直面する可能性が高い、以下の5つの課題について焦点を当てています。

  • AI
  • データ/アナリティクス戦略
  • サイバーセキュリティ
  • テクノロジ購買調達
  • 人材戦略

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Gartner CIO レポート
特集「AI を主軸としたテクノロジ経営戦略」

CIO が取り組むべき 5 つの重点領域と戦略構築のフレームワーク

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CIOが直面する主要な5つの課題:AI、データ、サイバーセキュリティ、ビジネス価値、人材

ガートナーのエグゼクティブ パートナー (EP) の多くは、実務経験を持つ元CIOです。この実務経験により、現役のCIOが直面する課題や状況を深く理解し、直接お客様と協働しながら、具体的な戦略的イニシアティブや実行プランの策定/最適化に取り組みます。ガートナーのEPがCIOから最も頻繁に寄せられる5つの質問について、回答と共にご紹介いたします。

1. 初期段階の AI プロジェクトを、測定可能な価値を創出するフェーズへとどう拡大すればよいか?

2022年にはわずか20%だった「AIが自社業界に最も大きな影響を与えるテクノロジである」と答えたCEOの割合は、2023年には54%、2025年には74%に達しています。このような高まる経営層の期待により、CIOにはAI投資からの価値を明確に示すことが強く求められています。

しかしながら、AIにおける投資対効果(ROI)は見えづらく、明確な成果指標として示すことは困難です。加えて、AIのコスト構造は従来のITツールと大きく異なり、費用の変動性も高く予測が難しいため、過去の経験を頼りにすることができません。

それでもCIOは、経営陣や取締役会の期待値を適切に調整し、「短期的な数値成果は得られない」という現実を理解してもらう必要があります。そして、AIが企業にもたらす価値の本質を再定義し、経営陣が現在想定している「成果」とのギャップを埋めていく必要があります。

投資を正当化し、期待値を調整するためには、以下の3つのビジネスケースを作成することが有効です:

  • ROI(Return on Investment):投資対効果
  • ROE(Return on Employee):従業員の生産性や効率性向上
  • ROF(Return on Future):将来にわたる競争優位の確保

また、技術面では、多様なAIやデータの入力を受け入れられるテクノロジ・スタックと、整合性の取れたAI基盤(プラットフォーム)の整備が不可欠です。

2. 影響の大きい意思決定を支えるために、拡張性と統合性を備えたデータ・ドリブンの基盤をどのように構築すればよいか?

CEOおよび経営幹部の89%が、「ビジネスやテクノロジのイノベーション推進には、データ、分析、AIの効果的なガバナンス(管理体制)が不可欠である」と回答しています。しかし実際には、価値重視の戦略的なKPIを明確に定め、データやAIのガバナンスの方針と連動させている企業は46%にとどまっています。

さらに、「AI活用に対応可能なデータ基盤(AI-readyデータ)」を構築できていないために、AI投資が価値創出につながらないケースも少なくありません。 CIOの多くは、AI駆動型のビジネス成果を生み出すために必要な「信頼できるデータ基盤」(データ・ガバナンス、データ・リテラシー、部門間のデータ連携など)の整備に苦慮しています。

そのため、AI対応型のデータ基盤やガバナンス体制への新たな投資がなぜ必要なのかを示すためには、まずは具体的なAIユースケースを優先的に推進し、その価値を組織内に示すことが効果的です。

また、データ分析の活用はIT部門だけでは完結せず、組織を横断する「スポーツチーム」のような協力体制が求められます。CIOは、企業全体のAIリテラシーの向上を促しつつ、データ管理への現場の抵抗感を克服していくよう、積極的な働きかけを進める必要があります。

3. 組織を保護するために、サイバーセキュリティ・プログラムをどのように最適化すればよいか?

今後、自身の業務時間の中で最も重視する領域として、「サイバーセキュリティおよびテクノロジ・リスクの管理」を挙げるCIOは69%に達しています。これはIT部門主導ではなく、よりビジネスの視点でITを運用する「ビジネス主導型IT」を実現するために、CIOがCISO(最高情報セキュリティ責任者)とより緊密な連携を図り、サイバーセキュリティの運用モデルを進化させる必要があることを示しています。

具体的には、CIOとCISOは次のような取り組みを進める必要があります。

  • セキュリティ戦略と対策を、事業目標やリスク許容度に連動させる
    企業が掲げる経営目標や、許容可能なリスクレベルを踏まえて、セキュリティ施策を再設計
  • ビジネス成果を高め、企業全体のDX(デジタル変革)を支援する新技術を特定し導入する
    セキュリティを単なる「防御」ではなく、「ビジネス成果の促進」に寄与する技術として位置付ける
  • 経営幹部やステークホルダーと、組織として許容可能なリスク範囲を調整し、それらのリスクを適切に管理するための具体的な対応計画を策定するリスクに対する認識の齟齬を埋め、統一された危機管理体制を構築

CIOには、こうした取り組みを通じて、組織のセキュリティを高めつつビジネス価値を創出することが期待されています。

4.コスト交渉、コントロールの維持、サプライヤー・リスクの管理をどのように進めればよいか?

新しいテクノロジに投資するための新たな資金があまりないにもかかわらず、テクノロジの価格は上がり続けていることが、CIOにとって課題となっています。特に、AIを組み込んだSaaSや他のソリューションにより、ソフトウェア・ベンダーが年間最大30%の値上げを行っており、コストに対するプレッシャーは年々高まっています。

さらに、生成AIに関連する予算の超過が、年間IT予算全体の35%を占める恐れもあり、その費用見積もりの誤差は最大で500〜1,000%に達するという深刻なリスクも存在します。

経営層および企業全体がAIの導入と価値創出に注目する中、IT部門内外で起こる無計画な支出やコストの急騰に対して、CIOは十分な注意を払う必要があります。

支出管理を効果的に維持するために、CIOは次の対応が求められます:

  • 短期的なROI(投資対効果)が確かではなくても、AI技術導入のためのビジネスケースを構築する

  • 支出に対する直接的な統制が限定される状況下でも、AI導入の実行責任を主導する

  • 予測困難なコスト要因を特定・管理し、変動性に対応できる体制を整備する

CIOには、戦略的な意思決定と慎重な予算運用の両立という難題に対処しながら、企業全体のAI活用を牽引する役割が期待されています。

5. 先進テクノロジに対応するために、自社に必要なスキルと専門性をどう確保すればよいか?

2025年において、全社的にテクノロジ人材の強化を最優先事項として掲げているCIOはわずか16%にとどまります。しかし一方で、ビジネスの現場では、技術革新のスピードに対応し、それを競争力に転換できる人材へのニーズが確実に高まっています。

多くの組織では、「人材市場での競争激化」や「従来の人材育成モデルがもはや機能しない」という課題に直面しています。

こうした状況に対処し、将来を見据えたIT戦略を策定し、企業のデジタル能力を強化するために、CIOには以下のアクションが求められます:

  • 従業員のリスキリング(再教育)とアップスキリング(スキルの高度化)を、より迅速かつ継続的、かつ効果的に進める
  • 新たなスキルを持つ人材を市場から惹きつけ、同時に既存の高需要スキルを持つ人材の流出を防ぐ方法を確立する
  • 人事部門と連携し、適切な人材の配置/育成/リソース管理を行う
  • IT部門や他の業務部門のリーダーと協力し、社内に点在するテクノロジ人材の有効活用を推進する

テクノロジそのものへの投資だけでなく、それを活かせる人材基盤の整備がCIOの重要な責任領域となっています。将来の競争優位を支える鍵は、「人」への戦略的投資にあります。

CIOとITリーダーのための
IT戦略コンファレンス

年間20万件を超えるITリーダーとの対話と、継続的に収集・分析されたデータに基づくリサーチから得られた知見をもとに、CIOとITエグゼクティブが未来の戦略を描く世界クラスのコンファレンス、それが Gartner IT Symposium/Xpo™ です。

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  • 現地のエキスパートから直接得られる、最先端テクノロジに関する知見

  • 同業他社やサービス・プロバイダーとの、実務に直結するネットワーキング

  • ITの未来を方向づける、重要なテーマに関する戦略的な対話への参加

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