IT戦略とは?DX戦略との違いやIT化を成功に導く手順を解説

IT戦略とは、3〜5年の視点でIT投資/人材/ガバナンスを事業目標に結びつける中長期の羅針盤です。DX戦略が「組織や事業そのものの変革」を狙うのに対し、IT戦略は「既存ITの最適化と安定運用」を軸に、成果指標と優先順位を明確化します。

ただし、戦略を持っていることと、戦略が成果を生んでいることは同じではありません。2026年CIO/テクノロジ・エグゼクティブ・サーベイでは、デジタル施策の成果が「期待以下」だったと回答した日本企業は64%に上り、米国の34%、世界全体の45%を大きく上回りました。

本記事では、IT戦略の定義と構成要素、DX戦略との違い、策定に使えるフレームワーク、そしてIT戦略文書そのものに共通する5つの間違いまでを解説します。

2026年9月11日更新

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戦略立案フレームでIT施策と経営目標を整合

本ガイドブックは、経営目標をITの施策に落とし込み、年間ロードマップ(四半期ごと)を1ページで示せるテンプレートと作成手順を提供します。部門横断の連携ポイント/KPIも同じスライドで可視化し、経営・事業・ITの合意形成を迅速に推進することができます。

【重要ポイント】

  • 目標から逆算する立案のフレームワーク
    収益性向上/顧客体験/オペレーション最適化/コンプライアンスといったビジネス目標を起点に、必要なビジネス/IT能力と具体アクション(例:API統合、RPA拡大、クラウド顧客データ・プラットフォーム、データ統制の更新など)へ展開する手順を示します。
  • 四半期をロードマップ
    四半期ごとに主要施策を割り付け、施策の並行/前後関係を視覚化します。レビューのたびにこのロードマップを更新することで、意思決定を加速します。
  • 他部門との連携要件、リスク、およびKPIの設定
    マーケティング・営業・財務・サプライチェーンなどの部門横断の連携ポイントを明示し、KPI(例:チャネル成長、コンプライアンス事案減、納期短縮、ERPコスト削減、クリックスルー率向上)で成果を測定します。

IT戦略とは?

ガートナーは、IT戦略を「情報技術への投資・人材・ガバナンスを企業や組織の事業目標の達成に結びつける、通常3〜5年を対象とした中長期的な計画」と定義しています。重要なのは、ITが事業目標の達成にいかに貢献するかを明確に示すことです。

また、IT戦略は「既存ITリソースを最適化し、事業戦略を安定的に支える」ことが中心で、これに対しDX戦略は「デジタルで組織の根本的な変革を実行する」ことが狙いです。DXには、テクノロジだけでなく事業戦略/組織文化/プロセスを一体で変える包括的な取り組みが求められます。両者の違いを理解し適切に使い分けることで、組織や企業はデジタル時代の競争環境で持続的な成長を実現できます。

ガートナーでは、IT戦略を次のような構成要素で定義しています:

IT戦略の主要な構成要素

  • ビジネスとの整合
    企業や組織の事業戦略と完全に連携し、ITの役割と貢献を明確化します。
  • 戦略的方向性と原則
    明確なビジョンと行動指針を定め、ITにおける意思決定の軸とします。
  • 重点施策と成果指標
    IT部門が実行すべき主要アクションと、進捗を測定するための定量的成果指標を明示します。
  • 状況の理解
    事業環境とテクノロジ・トレンドの双方を把握し、それに基づいた現実的な方針を打ち出します。
  • 長期的な意思決定の枠組み
    短期的な運用計画とは異なり、IT投資、リソース配分、組織設計の中核的な判断軸を提供します。

IT戦略は「何を」の文書であり、「どのように」の文書ではない

IT戦略が答えるべきなのは「ITは何を提供するのか」であり、「それをどう提供するのか」ではありません。この2つを1つの文書に混ぜると、ITの戦略的な価値が技術的な詳細や施策に埋もれ、意思決定者にとって関連性の薄い文書になります。

つまりIT戦略は、技術文書ではなく、社内の誰もが読んで理解できる非技術的な文書であるべきです。

IT戦略とIT戦略計画は、何が違うのか

IT戦略は「どこへ向かうか」を定めるものであり、IT戦略計画は「そこへどう到達するか」を具体化した文書です。戦略プランニングは、この2つに加えてオペレーション計画を含む3つの時間軸で構成されます。

文書

時間軸

主な読み手

記述する内容

IT戦略

3〜5年

経営層

ビジネス成果、能力ギャップ、ITが取るアクション。技術詳細は含めない

IT戦略計画

12〜24カ月

IT幹部・実装チーム

ロードマップ、アーキテクチャ、投資計画

IT運用計画

6〜12カ月

IT実行チーム

プロジェクト、予算、リソース計画

3つを区別することで、IT戦略は「どう提供するか」ではなく「ITが何を提供するか」に焦点を絞れます。同時に、すべてのステークホルダーが読んで理解できる非技術的な文書になります。

IT戦略とDX戦略の違いとは?

IT戦略は、情報技術が今後3〜5年で事業目標をどう支えるかを定めた計画です。ITが「何を提供するか」、つまり具体的なビジネス成果と、そのために必要な能力を定義します。技術的な実現方法には踏み込みません。

DX戦略の射程はこれより広く、価値の生み出し方、業務の組み立て方、競争の仕方そのものを見直します。対象はITにとどまらず、ビジネス・アーキテクチャ、バリューストリーム、組織文化、ビジネス能力にまで及ぶ、企業全体のオペレーティング・モデルの再構築です。

両者は対立するものではありません。射程が違います。DX戦略が描く変革を、IT戦略が「ITとして何を提供するか」に翻訳する。その関係にあります。

観点

IT戦略

DX戦略

射程

IT投資、リソース配分、技術に関する意思決定を事業目標に合わせる

ビジネス・アーキテクチャ、バリューストリーム、組織文化、ビジネス能力を含む企業全体

定義と焦点

既存の業務を支えるために、ITリソースをどう管理・最適化するかに主眼を置く。安定したサービス提供、コスト管理、運用効率の向上を重視する

デジタル技術を活用して、組織の価値提供の方法や事業の進め方そのものを変える。新しいビジネス・モデルの創出、顧客体験の向上、継続的なイノベーションを狙う

目標

既存のIT基盤やサービスの最適化/IT投資を経営目標に結びつけ成果を測る/運用・コンプライアンスのリスク管理

デジタル・イノベーションによる新たな収益源とビジネスモデル/部門横断でのデジタル組み込み/学習と適応の組織文化

変化への取り組み方

既存システムやプロセスを段階的・漸進的に改善する。プロジェクト管理やITガバナンスなど確立された枠組みを使う

役割や業務プロセス、テクノロジの位置づけを見直し、顧客中心で俊敏な事業モデルに作り替える

事業戦略との結びつき

既存の事業戦略の枠内で「ITがどう支えるか」を考える。多くの場合、事業戦略のサブセットとして扱われる

事業戦略とデジタル施策を一体で設計する。個別最適ではなく全体最適を目指す

DX戦略を掲げていても、それを支えるIT基盤、人材、ガバナンスの計画が伴わなければ、施策は構想の段階で止まります。DX戦略とIT戦略は、同じ事業目標から派生した2つの計画として接続させる必要があります。

IT戦略はなぜ重要なのか?

IT戦略が重要なのは、その有無が投資の説明責任と実行のスピードを決めるからです。そして日本企業にとって、その差はすでに数字に表れています。

2026年CIO/テクノロジ・エグゼクティブ・サーベイ*によると、日本企業のCEOがデジタル施策に期待する成果は、生産性の向上が89%、コスト削減が67%でした。一方で、実際の成果が「期待以下」だったと回答した日本企業は64%に上ります。同じ回答は、米国では34%、世界全体では45%でした。

*出典:ガートナー「2026年CIO/テクノロジ・エグゼクティブ・サーベイ」(2025年実施)

数字が示しているのは、戦略ではなく実行の課題

この差は、目標設定の高さでは説明できません。ガートナーのバイス プレジデント アナリスト 片山 博之は、次のように述べています。

「CEOがCIOやIT幹部に期待する成果として生産性向上やコスト削減を上位に挙げている点は、国/地域に関係なく世界で共通しています。しかしながら、日本企業のCEOは、『期待以下』と回答した割合(64%)が他の地域と比べて高く、成果を期待どおりに出せている企業は非常に少ないことがうかがえます」

期待の水準は各国と変わらず、差が出ているのは期待を成果に変える段階です。つまり日本企業の課題は、何を目指すかを描けないことではなく、描いたものを実行に落とし込む設計にあります。

では、その間で何が起きているのか。ガートナーは毎年、数百に及ぶIT戦略文書をレビューしています。そこから見えてくるのは、多くの戦略が同じ場所でつまずいているという事実です。

IT戦略が重要である5つの理由

1. 投資の説明責任が生まれる

IT戦略は、個々の施策を企業の戦略目標に結びつけます。多くのIT戦略は技術的な詳細や運用効率に寄り、その判断がなぜ事業にとって重要なのかを説明できていません。埋めるべき能力ギャップに直接対応する形でビジネス成果を定義できたとき、IT投資は「やってみる」ものから「説明できる」ものに変わります。

2. 優先順位を判断する基準ができる

「クラウドファースト」「データドリブン」といった戦略原則があると、日々の技術判断を場当たりに処理せずに済みます。競合する要求に順位をつけられ、戦略に結びつかない依頼に「やらない」と言える。原則がなければ、IT部門は声の大きい要望から順に対応する組織になります。

3. トレードオフを伝えられる

何を優先し、何を先送りするのか。その理由を語れないことが、IT部門が信頼を得られない一因です。予算を「この投資で何が可能になるのか」「どのリスクを減らすのか」「なければ何が遅れるのか」という形で組み立てると、コストの一覧ではなく、事業におけるITの役割の説明になります。

4. 成果を測る仕組みが入る

測れない戦略は理想論にとどまります。進捗の初期兆候を示す先行指標と、最終的な事業成果を示す遅行指標。両方を定義してはじめて、価値を提供できたことを示すことも、できていないときに軌道を修正することもできます。

5. 新しい技術との向き合い方が定まる

生成AIのような技術は、流行しているという理由で試すものではありません。どのユースケースが事業成果に結びつくのか、どのリスクを管理する必要があるのか、試行をどう評価するのか。戦略がそれを決めます。外部環境と自社の変化を継続的に見ていなければ、戦略は静かに現実とずれていきます。

戦略がないと、何が起きるか

パイロットは増えるのに、事業価値に結びつくものはわずかしか残りません。技術プロジェクトが事業目標と紐づかないまま増殖し、重複が生まれます。IT部門と事業部門が、パートナーではなく発注者と受注者として向き合うことになります。そしてITが、成長の原動力ではなく圧縮すべきコストとして扱われます。

IT戦略を経営目標の達成に不可欠な羅針盤とするには

IT戦略は、売上拡大、コスト削減、顧客満足の向上など、経営目標の達成に大きく関わります。以下は、IT戦略がこれらの目標をどう支えられるかの具体例です。

売上拡大

事業目標との整合

明確に設計されたIT戦略は、テクノロジ投資を事業目標に直結させます。たとえば、「収益成長の方針」を定め、その実現にCRM(営業支援)をどう使うかを示すことで、新規顧客獲得や既存顧客の維持につなげられます。

AIと自動化の活用

CRMにAIを組み込むと、定型作業を自動化して営業が高付加価値の活動に集中できます。AIによる示唆でクロスセルの機会を見つけやすくなり、販売量や顧客エンゲージメントの向上が期待できます。

コスト削減

戦略的なコスト最適化

IT戦略に基づくコスト管理は、ムダな支出を抑え、リソースの使い方を改善します。たとえば、不要なIT支出の削減やリソース配分の見直し、事業成果に直結するテクノロジへの重点投資で、予算を戦略目標に沿わせられます。

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ムダの排除

未使用のソフトウェア・ライセンスや過剰なリソースを棚卸し/整理することで、費用を大きく圧縮できます。資産の合理化やベンダー契約の再交渉で浮いた原資を、より戦略的な取り組みに活用できます。

顧客満足の向上

顧客体験の強化

顧客体験を優先するIT戦略は、満足度とロイヤルティを高めます。たとえば、顧客データ・プラットフォーム(CDP)を導入し、顧客接点と業務をつなげることで、より個別化されたサービス提供が可能になります。

プロセスの効率化

AIチャットボットなどで顧客対応を自動化すると、応答時間が短縮し、サービス品質も安定します。結果として、顧客満足度の向上につながります。

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IT戦略文書に共通する5つの間違い

ガートナーは毎年、数百に及ぶIT戦略文書をレビューしています。その大半は、内容と構造の両面で的を射たものになっていません。原因は、次の5つの間違いに集約されます。

1. 戦略に不適切なコンテンツが含まれている

アーキテクチャ図、予算、ガバナンス・フレームワーク、ベンダー一覧、運用指標。いずれもIT戦略の実行には欠かせませんが、戦略文書に入れると分量が膨らみ、肝心のメッセージ(ITが企業にもたらす価値)が技術的な詳細に埋もれます。

これらが属するのは戦略ではなく、戦略計画です。

2. IT戦略がビジネス戦略と結び付いていない

ビジネス戦略の要約がそもそも欠けているか、あってもITが各要素をどう実現・支援するのかが説明されていない。この曖昧さは、ステークホルダーにつながりを推測させることになります。

その結果は、CIOが説明を求められた場面で、支持の欠如、投資への消極姿勢、抵抗として表れます。

3. 汎用的でIT中心の「柱」で戦略が構成されている

「簡素化」「セキュア」「データ主導」といった柱は、どの企業にも当てはまります。IT内部の視点から立てられているため、望ましいビジネス成果ではなく、テクノロジの変更に焦点が移ります。

柱を中心に構成された戦略は、事実上、戦略ではなく戦略計画にレベルダウンしています。

4. 成果が汎用的、または技術的すぎる

「紙ベースのワークフローをデジタル・ツールに置き換える」といった成果は、総論として同意は得られても、ステークホルダーが積極的に支持できるほど具体的ではありません。技術的に具体的であっても、たとえば「アプリケーションを統合してIT環境を簡素化する」では、そのビジネス・インパクトは伝わりません。

どちらの場合も、ITが企業の成功に対して果たす貢献は不明確なままです。

5. ビジネス・インパクトを測る指標がない

指標がそもそも含まれていないか、システム可用性やネットワーク稼働時間といった運用・技術指標にとどまっている。これはITのビジネス価値を定量化する機会を失うことを意味します。指標がなければ、ITの戦略的な貢献は誤解され、異議を唱えられます。

この差は、実際の数字にも表れています。ガートナーが2026年1月から4月にかけて、2025年度の年間売上高5,000万ドル以上の企業に所属する1,303人を対象に実施した調査*では、AIを複数の事業部門にわたって本格的に展開できている組織は22%にとどまりました。 一方、AI投資のROIを継続的に追跡し、成果の低い施策には再配分または中止の判断を下している高パフォーマンス企業では、AI施策の81%がプラスのリターンを生んでいます。 低パフォーマンス企業では、29%の施策について投資対効果を把握できていません。

ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストでガートナー フェローのティナ・ヌノは、次のように述べています。「ビジネス成果に直接結び付いた厳格な測定基準がなければ、組織はリソースの無駄遣いや期待外れの結果に陥るリスクがあります」

*出典:ガートナー(2026年9月3日発表、2026年1〜4月実施、回答者数1,303人)

ここで挙げた5つの間違いは、ガートナーが毎年レビューしているIT戦略文書から抽出したものです。それぞれをどう回避するか、ビジネス・ケイパビリティのギャップから戦略的アクションをどう導くか、先行指標と遅行指標をどう設計するかは、リサーチ「5つのよくある間違いを回避して優れたIT戦略を策定する方法」(2026年7月発行)で、実例とともに解説しています。ガートナーのリサーチ・サービスをご契約のお客様は、全文をご覧いただけます。

IT戦略の立て方と役立つフレームワーク

IT戦略の策定に使える8つのフレームワーク

IT戦略を計画/実行するには、事業目標との整合を保ちつつ進められる枠組み(フレームワーク)が有効です。次に主なフレームワークをご紹介します。

1. OGSMフレームワーク

目的(Objectives)、目標(Goals)、戦略(Strategies)、指標(Measures)を明確にし、IT投資を事業の能力や目標に結びつけます。ステークホルダーとの対話を促し、IT戦略策定前に事業戦略の抜けやズレを見つけるのに役立ちます。

2. ITオペレーティングモデル・フレームワーク

組織内のITの形(提供するプロダクトやサービス、役割分担など)を定義/検証し、最適化します。ITを「信頼されるサービス提供者」として位置づけ、事業ニーズに沿った運営を実現します。

3. TIMEモデル

Tolerate(当面維持)/Invest(強化投資)/Migrate(移行)/Eliminate(廃止)の観点でアプリ群を評価。モダナイズや廃止の優先度を、事業価値やコスト影響に基づき判断し、戦略に沿った集中投資を可能にします。

4. オペレーティング・モデル再設計フレームワーク

業務の最適化と変化対応力を高めます。価値の低い作業の削減、ワークフローの整合、AIを活用したリスキリングなど、IT能力の進化と戦略目標の一致を後押しします。

5. 戦略ロードマップの策定

上位計画(何を、いつ、どう進めるか)を可視化し、経営層の合意を得るためのツールです。事業環境の評価、戦略アクションの定義、依存関係の管理を通じて実行リスクを抑えます。優先度の変化に合わせて更新する「生きた文書」として扱います。

6. ITアウトソーシングのガバナンス・フレームワーク

ベンダーとの関係管理、運用管理、需要管理のプロセスを整備し、事業目標とIT目標の整合を保ちます。サービス提供者の評価/管理を体系化し、戦略的なIT計画の実効性を高めます。

7. 複数年の財務計画

単年度予算にとどまらず、中長期でITコストと事業成果の関係を見通します。年をまたぐ投資配分や総保有コストの把握により、企業の長期目標に沿った支出管理を可能にします。

8. 製品およびサービス変革フレームワーク

機会評価、ビジネスケース作成、経営合意の獲得といった段階を踏み、テクノロジ投資を企業戦略に沿わせます。IT戦略と連動させることで、価値創出までの道筋を明確にします。

IT戦略は3つの段階で組み立てる

準備から経営層の承認まで、8〜12週間が目安です。組織の規模と複雑さによって変わります。

段階

期間

何をするか

1. 状況の把握

1〜2週間

内外の環境要因を洗い出し、IT戦略に影響する事項を評価する

2. 方向性の設定

2〜4週間

事業戦略を明確化し、IT戦略と整合させるための基本原則を定める

3. アクションの定義

4〜8週間

ビジネス能力(ケイパビリティ)のギャップを特定し、それを埋めるIT施策を設計する

ここまでが策定です。実行はこの後に続き、変革をすでに進めている組織で12〜24カ月、ゼロから始める場合は36カ月かかることもあります。実行期間は、戦略の複雑さや組織の準備状況によって大きく変わります。

この3段階を踏むことで、ビジネス戦略の各要素がITによってどう支援されるかをステークホルダーが確認でき、IT戦略が正しいという確信につながります。

IT戦略を成功に導くためのポイントと注意点

IT戦略を実現させ成功するためのポイント

IT戦略を実現するには、いくつかの重要な要素を計画的に進めることが重要です。主なポイントは次のとおりです。

1. 責任者とガバナンスの明確化

誰がIT戦略の「オーナー」かを定め、説明責任と意思決定を支える体制を用意します。戦略の実行を監督する専門チームや委員会を設置し、事業目標との整合を常に確認します。

2. 事業ニーズの把握と目標の一致

全社的なニーズ分析を行い、IT戦略が組織の目標に合致するよう設計します。部門横断で利害関係者を巻き込み、合意とコミットメントを得ます。

3. 実行計画の具体化

実行に向けた計画を詳細に作ります。タイムライン、必要リソース、主要マイルストーンを整理し、戦略目標から具体施策へつなぐロードマップを明確にします。

4. パイロット検証で有効性を確認

本格展開の前に小規模で試行し、課題やリスクを早期に洗い出します。技術が要件を満たすか、現場で使えるかを事前に確かめます。

5. チェンジマネジメントとトレーニング

IT戦略の実現にはチェンジマネジメントが重要です。社内のITユーザーに十分な教育と支援を提供し、新しい仕組みやプロセスへの移行をスムーズにします。

6. 継続的なモニタリングと見直し

IT戦略は固定ではなく「生きている文書」であるべきです。KPIや現場のフィードバックに基づいて、定期的に点検し、必要に応じて修正します。

4つの視点からIT戦略を定期的に見直す

視点

チェックポイント

現行本文に挙げられている確認事項

1. 戦略の有効性

戦略はまだ有効か?

市場環境の急激な変化/新技術の台頭/競合他社の動向/規制環境の変更

2. 実行計画の適切性

実行計画はまだ有効か?

スケジュールの加速や減速の必要性/リソース配分の見直し/優先順位の変更

3. 戦略の実効性

戦略は機能しているか?

期待された効果が出ているか/企業パフォーマンスの改善につながっているか/想定したメリットが実現できているか

4. 実行の正確性

計画は正しく実行されているか?

各マイルストーンは計画通りに達成されているか/品質は確保できているか/予算は適切に使用されているか

前の2つは計画そのものを問い、後ろの2つは実行を問います。4つを分けて確認することで、「うまくいっていない」という漠然とした認識を、戦略を変えるべきなのか実行を変えるべきなのかという判断に変えられます。

IT戦略の実行を確実にするための留意点

1. 1ページの要約で戦略づくりを終えない

要約はコミュニケーションの道具であって、戦略計画そのものではありません。詳細な計画を先に作り、そのあとで要約します。順序が逆になると、実行の段階で計画の欠落が表面化します。

2. 戦略を固定した文書として扱わない

「一度公開したら1年は変えない」という運用は、環境の変化に対応する力を戦略から奪います。事業の優先順位、外部環境、実行から得られた学び、新しい技術の進展。これらに応じて見直す「生きた文書」として扱ってください。

3. 策定の段階からステークホルダーを巻き込む

完成してから説明すると、反発と当事者意識の欠如に直面します。協業は成果物の質を上げるだけでなく、理解と支持そのものを作ります。

4. 事業環境のスキャンを仕組みにする

年に一度の見直しでは、戦略は少しずつ現実からずれていきます。外部(市場、規制、競争環境)、社内(経営の優先順位、変革プログラム)、IT固有(セキュリティ脅威、技術的負債)を、環境の安定度に応じて四半期から月次で見ます。

※外部環境の参考:2026年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドハイプ・サイクル

実践例として、月に一度15分、CIOと事業部門のパートナーが短時間のレビューを置く方法があります。能力の変化、直近の優先順位、成功指標の3点だけを確認し、大きな変更があったときだけ別途時間を取って計画を更新します。

IT戦略に関するよくある質問(FAQ)

IT戦略とDX戦略の違いは何ですか?

IT戦略は、既存の事業を支えるITリソースをどう管理し最適化するかに主眼を置きます。DX戦略は、デジタル技術によって価値提供の方法や事業の進め方そのものを変えることを目的とします。両者は対立するものではなく、DX戦略の実現可能性はIT戦略が支える基盤に依存します。

比較表で違いを確認する


IT戦略の策定から実行までの一般的な期間は?

IT戦略そのものは3〜5年を対象とした中長期の計画として策定し、それを12〜24カ月のIT戦略計画と、より短期のオペレーション計画に分解します。策定の作業自体は数週間から数カ月で完了しますが、戦略は一度作って終わりではなく、実行計画は四半期ごと、戦略本体は年次で見直すことが前提です。


 IT戦略とIT戦略計画は何が違いますか?

IT戦略は、ビジネス戦略を実現・支援するためにITが提供するビジネス成果を特定する文書で、多くの場合3〜5年を対象とします。IT戦略計画は、その成果をどのように提供するかを記述する文書で、通常12〜24カ月を対象とします。アーキテクチャ図、アプリケーション・ポートフォリオ、ロードマップ、ベンダーの詳細といった内容は、戦略ではなく戦略計画に含めるべきものです。


IT戦略に含めるべき構成要素は何ですか?

一般的には、事業戦略との整合、戦略的な方向性と原則、重点施策と成果指標、置かれている状況の理解、そして長期的な意思決定の枠組みの5つで構成します。重要なのは、IT戦略が「何を提供するか」を示す文書であり、「どのように提供するか」は戦略計画に分けて記述することです。


IT戦略でよくある間違いは何ですか?

ガートナーが毎年レビューしているIT戦略文書に共通するのは、次の5つです。戦略に不適切なコンテンツが含まれていること、ビジネス戦略との結び付きが説明されていないこと、汎用的でIT中心の柱で構成されていること、成果が汎用的または技術的すぎること、そしてビジネス・インパクトを測る指標がないこと。いずれも戦略の中身以前に、文書の内容と構造の問題です。

5つの間違いをそれぞれ詳しく見る


IT戦略は誰が策定すべきですか?

策定を主導するのはCIOおよびIT部門ですが、事業部門の責任者と経営企画を初期段階から巻き込むことが前提です。IT戦略は社内の誰もが読んで理解できる非技術的な文書であるべきで、ステークホルダーの支持を得るには、ビジネス戦略との明確で明示的な整合性が必要になります。


IT戦略は中期経営計画とどう接続しますか?

IT戦略は中期経営計画から独立して立てるものではなく、経営計画が掲げる事業目標を、ITが果たすべき機能(ビジネス・ケイパビリティ)に翻訳したものとして位置づけます。経営計画の各目標に対して、必要な能力、現状とのギャップ、それを埋める施策の順に辿れる状態にしておくと、IT投資を事業の言葉で説明できます。

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ガートナーと共に実現する優れたIT戦略の策定と実行

不確実性が高い今、完璧な計画を一度に策定するより「小さく始めて学びを反映する」ことが成功の近道となります。事業目標との整合、優先順位づけ、パイロット、そして改善のループを回し、KPIとガバナンスで着実に前進させることが重要です。ガートナーでは、状況に合ったフレームワーク選定やロードマップ設計のご相談も承ります。詳細や事例にご関心があれば、ぜひお問い合わせください

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