ガートナーは毎年、数百に及ぶIT戦略文書をレビューしています。その大半は、内容と構造の両面で的を射たものになっていません。原因は、次の5つの間違いに集約されます。
1. 戦略に不適切なコンテンツが含まれている
アーキテクチャ図、予算、ガバナンス・フレームワーク、ベンダー一覧、運用指標。いずれもIT戦略の実行には欠かせませんが、戦略文書に入れると分量が膨らみ、肝心のメッセージ(ITが企業にもたらす価値)が技術的な詳細に埋もれます。
これらが属するのは戦略ではなく、戦略計画です。
2. IT戦略がビジネス戦略と結び付いていない
ビジネス戦略の要約がそもそも欠けているか、あってもITが各要素をどう実現・支援するのかが説明されていない。この曖昧さは、ステークホルダーにつながりを推測させることになります。
その結果は、CIOが説明を求められた場面で、支持の欠如、投資への消極姿勢、抵抗として表れます。
3. 汎用的でIT中心の「柱」で戦略が構成されている
「簡素化」「セキュア」「データ主導」といった柱は、どの企業にも当てはまります。IT内部の視点から立てられているため、望ましいビジネス成果ではなく、テクノロジの変更に焦点が移ります。
柱を中心に構成された戦略は、事実上、戦略ではなく戦略計画にレベルダウンしています。
4. 成果が汎用的、または技術的すぎる
「紙ベースのワークフローをデジタル・ツールに置き換える」といった成果は、総論として同意は得られても、ステークホルダーが積極的に支持できるほど具体的ではありません。技術的に具体的であっても、たとえば「アプリケーションを統合してIT環境を簡素化する」では、そのビジネス・インパクトは伝わりません。
どちらの場合も、ITが企業の成功に対して果たす貢献は不明確なままです。
5. ビジネス・インパクトを測る指標がない
指標がそもそも含まれていないか、システム可用性やネットワーク稼働時間といった運用・技術指標にとどまっている。これはITのビジネス価値を定量化する機会を失うことを意味します。指標がなければ、ITの戦略的な貢献は誤解され、異議を唱えられます。
この差は、実際の数字にも表れています。ガートナーが2026年1月から4月にかけて、2025年度の年間売上高5,000万ドル以上の企業に所属する1,303人を対象に実施した調査*では、AIを複数の事業部門にわたって本格的に展開できている組織は22%にとどまりました。 一方、AI投資のROIを継続的に追跡し、成果の低い施策には再配分または中止の判断を下している高パフォーマンス企業では、AI施策の81%がプラスのリターンを生んでいます。 低パフォーマンス企業では、29%の施策について投資対効果を把握できていません。
ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストでガートナー フェローのティナ・ヌノは、次のように述べています。「ビジネス成果に直接結び付いた厳格な測定基準がなければ、組織はリソースの無駄遣いや期待外れの結果に陥るリスクがあります」
*出典:ガートナー(2026年9月3日発表、2026年1〜4月実施、回答者数1,303人)