ゼロトラストとは?今求められるセキュリティ戦略の基本と導入ポイント

ゼロトラストとは、一言で言えば「すべてのアクセスを信頼せず、常に検証する」というセキュリティの考え方です。従来の「社内ネットワーク=安全」という前提は、リモートワークやクラウド活用の普及により通用しなくなっています。

ゼロトラストは、ユーザーやデバイスの身元、状態、接続の文脈を基にアクセスを動的に制御することで、不正侵入や内部脅威に強い環境を実現します。

本記事では、ゼロトラストの定義・特徴からメリット、導入時の課題、具体的な実装方法までをわかりやすく解説します。

2025年11月22日更新

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ゼロトラスト導入の取り組みは、企業や組織内のコミュニケーションの行き違いにより、実現できないことがよくあります。 通常は、ゼロトラスト・アーキテクチャの利点を主要なステークホルダーに効果的に伝えられていないことが原因です。

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  • ゼロトラストの利点を、経営幹部、上級管理職や事業部門のリーダーなどの非IT部門のリーダーに伝える
  • IT部門のリーダーに伝え、同意を得る
  • ITアーキテクトに、ゼロトラストに関する議論に参加してもらう

 

ゼロトラストとは?

ゼロトラスト(Zero Trust)とは、一言で言えば「すべてのアクセスを信頼せず、常に検証する」というセキュリティの考え方です。

「ゼロトラストとは、”何も信用しない”という前提にもとづく考え方」と説明されることがありますが、この理解は行き過ぎとも言えます。正しくは、根拠のない「最初からの信用」はしない(毎回確かめて必要最小限だけ許す)のであって、「何も信用しない」わけではありません。

ゼロトラストは、根拠のある信頼だけを毎回、状況に応じて最小限付与する運用モデルです。侵入そのものを完全に防げなくても、横展開を断ち、業務を止めずにリスクを抑えることにつながります。

つまり、ゼロトラストは従来の暗黙の信頼を排除し、明示的な信頼評価に置き換えます(本記事冒頭の比較表「ゼロトラストと現行のセキュリティ・モデルの違い」参照)。次にゼロトラストの主なポイントを説明します。

明示的な信頼評価

ゼロトラストは「信頼せず、常に検証する(Never Trust, Always Verify)」という原則に基づいています。そのため、ユーザーが企業ネットワークの内側にいるといった場所的条件だけでは信頼を与えず、すべてのアクセス要求について、ユーザーのID、デバイスの健全性、アクセス要求の文脈(時間、場所、デバイスの種類など)など、複数の要素に基づき評価します。この継続的な評価により、信頼は「前提」ではなく、「計算」によって導かれます。

IDとコンテキストを制御要素とするモデル

ゼロトラスト・モデルでは、アクセスの可否はユーザーとデバイスのID、およびその文脈に基づいて判断されます。たとえば、ユーザーは多要素認証(MFA)によって本人確認を行い、使用しているデバイスが所定のセキュリティ基準を満たしていることが条件となります。この仕組みにより、信頼はユーザーの物理的位置から切り離され、ネットワーク内部のユーザーであっても毎回のアクセス要求に対して身元と状況を証明する必要があります。

きめ細かなアクセス制御

ゼロトラストは最小権限の原則を徹底し、ユーザーには業務遂行に必要最低限のアクセス権のみが与えられます。これにより、過剰なアクセス権限が悪用されるリスクが低減されます。コンテキストに基づくアクセス制御により、内部不正やアカウント乗っ取りなどのリスクに対しても高い防御効果を発揮します。

継続的な監視と動的な適応

ゼロトラストでは、ユーザーの行動やアクセスパターンを常時監視します。通常とは異なる行動が検出された場合には、リアルタイムでアクセスを制限または遮断することが可能です。このように、信頼は固定されたものではなく、状況に応じて動的に変化し、それに応じてセキュリティ対策も適応されます。

常に侵害を想定する姿勢

ゼロトラストの重要な前提は「侵害はすでに発生している、あるいはいつでも発生し得る」と考えることです。この前提により、ユーザーがネットワーク内にいるか否かにかかわらず、あらゆるアクセス要求に対して強固なセキュリティ対策が講じられます。すべてのアクセスが潜在的に悪意のあるものと見なされることで、外部からの攻撃だけでなく、内部脅威に対しても強力な防御が実現します。

ゼロトラストは、従来の「暗黙の信頼」に代わり、ID・コンテキスト・行動に基づく継続的な信頼評価を中心とするフレームワークを提供します。これにより、過去の関係性や物理的位置に依存せず、すべてのアクセス要求が精査・検証されることで、不正アクセスやデータ漏洩のリスクが大幅に低減されます。

ゼロトラストの主な特徴

  • 継続的な検証:
    すべてのアクセス要求は、ユーザーID、デバイスの健全性、アクセス要求のコンテキスト(時間・場所・端末種別など)に基づき、リアルタイムで認証・認可されます。

  • 最小権限アクセス:
    ユーザーには業務に必要最小限のアクセス権のみが付与され、過剰な権限や不必要なアクセスを排除します。

  • 動的なポリシー適用:
    ゼロトラストは静的なルールではなく、状況に応じて自動的にポリシーを調整します。異常行動が検知された場合は即座にアクセスを制限可能です。

  • 可視性と分析機能:
    ユーザー行動やネットワークトラフィックの分析機能により、脅威の早期検出と迅速な対応が可能になります。

  • 既存のセキュリティ基盤との統合:
    IAM、EDR、DLPなど、既存のセキュリティソリューションと連携させることで、より強固なセキュリティ体制を構築できます。

なぜゼロトラストが求められるのか?

従来の境界型セキュリティ・モデルの限界

ゼロトラストが注目される背景としては、従来の境界型セキュリティ・モデルの限界が挙げられます。従来の静的で暗黙的な信頼モデルである境界型セキュリティの主要な考え方には次のような点があります。

  • 社内ネットワークの中と外を明確に分ける
  • ファイアウォールで外部からの攻撃を防ぐ
  • 内部にいれば「信頼できる」と暗黙的に仮定

つまり、従来の境界型セキュリティ・モデルでは、社内IPアドレスを持つデバイスは信頼され、一度認証されたユーザーは、その後のアクセスを自由に許可されます。そして、内部システム間の通信は基本的に制限しません。このようなセキュリティでの下では、次のようなセキュリティ・リスクが存在することになります。

  •   内部ネットワークを信頼する前提が攻撃者に悪用される
  •   攻撃者が内部に侵入後、ネットワークを横断的に移動し、脆弱性を見つけ権限を昇格することが可能

また、サイバー攻撃の深刻化もゼロトラストが注目される要因となっています。ランサムウェア攻撃は2008年にほとんど見られなかったのにもかかわらず、2021年には全侵害の25%を占めるようになっています。今でも、データ破壊やデータ窃盗を含む攻撃が増加しています。

「動的で明示的な信頼モデル」であるゼロトラスト・モデル

従来の境界型セキュリティ・モデルと比較して、新しい「動的で明示的な信頼モデル」であるゼロトラスト・モデルには、以下のような特徴があります。

  • 「内部だから安全」という前提を持たない
  •  全てのアクセスを疑わしいものとして扱う
  •  複数の要素を継続的に評価して、その時々で適切なアクセス制御を行う

つまりゼロトラストという考え方では、「信頼は付与するものではなく、常に検証するもの」という考え方に基づいて、アクセスの都度、様々な要素を確認し、状況の変化に応じて信頼レベルを動的に変更します。そのため、ゼロトラストは、現代のビジネス環境(リモートワーク、クラウドサービス、モバイルデバイスの普及など)により適した、より柔軟で堅牢なセキュリティ・モデルとなっています。

ゼロトラストのアプローチは、場所に基づいて自動的に付与される暗黙的なアクセス権を排除しながら、サイバーリスクを軽減するレジリエンス、最新のビジネス機能とハイブリッド・ワークフォース、適切なアクセス方法を可能にする柔軟性をもたらします。

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ゼロトラスト・テクノロジの主な構成要素

1. IDおよびアクセス管理(IAM)

ゼロトラストの基盤となる技術であり、認証済かつ許可されたユーザーのみがリソースにアクセスできるように制御します。多要素認証(MFA)や継続的なID検証機能を備え、ユーザーリスクを動的に評価します。

2. ゼロトラスト・ネットワーク・アクセス(ZTNA)

ZTNAは、アプリケーションやデータへのアクセスを「場所」ではなく「IDとコンテキスト」に基づいて制御する仕組みです。リソースを不可視化し、ネットワーク内の横移動(ラテラル・ムーブメント)を防ぐとともに、最小限のアクセス範囲を確保します。

3. マイクロ・セグメンテーション

ネットワークを細かなセグメントに分割し、各セグメント間のアクセスを厳密に制御することで、攻撃対象領域(アタック・サーフェス)を最小化します。細粒度のポリシー適用により、トラフィックの流れを制御し、内部の拡散を防ぎます。

4. セキュリティ・サービス・エッジ(SSE)

ゼロトラストの基盤となる技術であり、認証済かつ許可されたユーザーのみがリソースにアクセスできるように制御します。多要素認証(MFA)や継続的なID検証機能を備え、ユーザーリスクを動的に評価します。

5. エンドポイント検知と対応(EDR)

EDRは、エンドポイントでの異常行動をリアルタイムで検出し、自動的に対応する技術です。従来の境界型セキュリティでは検知が難しい高度な脅威にも対応します。

6. データ損失防止(DLP)

DLP技術は、データの送信・持ち出しを監視・制御し、機密情報の不正流出を防ぎます。ゼロトラストにおける「常にデータを保護する」という原則と整合します。

ゼロトラストは単なる技術ではなく、複数のテクノロジーと実践を統合した包括的なセキュリティ・フレームワークです。ゼロトラストの原則を導入することで、組織はサイバーリスクへの曝露を大幅に低減し、ハイブリッド環境や高度化する脅威に柔軟かつ強靭に対応できる体制を構築できます。業界を問わず、ゼロトラストの導入は今やセキュリティ戦略の中核となりつつあります。

ゼロトラストの強みと弱みとは?

ゼロトラストは、サイバー脅威のリスクと影響を軽減するための最新のアプローチではありますが、だからといって、組織が抱えるすべてのセキュリティ上の課題を解決できるというわけではありません。

ゼロトラストには次のような技術的な強みと弱みがあります。

ゼロトラストの強み

  • 暗黙的な信頼を、アイデンティティとコンテキストに基づく明示的な信頼に置き換える
  • アクセス可否の判断をリソースの近くで行うことで、組織内での攻撃者やマルウェアの横方向の移動を制限する
  • 移動中のデータのすべてに暗号化を適用することにより、システムの機密性を強化する
  • ユーザー、デバイス、場所に関係なく、一貫性のあるセキュリティ・ポスチャおよびアクセス・ポリシーの適用を推進する。それと同時に、認証レベルをリスク・レベルに見合ったものにすることで、ユーザー・フリクション (ユーザーが経験する摩擦や手間) を最小限に抑える
  • エンティティをリソースに安全に接続する。これにより、安全にユーザーをアプリケーションに接続し、非ユーザーのデバイスからの接続を「許可されたリソース」のみに制限できる
  • リソースを保護するための一貫性のある動的なアプローチを適用する
  • どのユーザーがどのアプリケーションにアクセスしているかを可視化する。これにより、「ジャストインタイム (JIT)」と「ジャストイナフアクセス (JEA)」の原則の遵守が促進される

ゼロトラストの弱み

  • 従業員が抵抗する。つまり、従業員のなかには、過度に制限されるアプローチと感じる人もいる
  • 導入作業の期間が長い
  • 状況判断にミスが起き、ユーザー接続が誤って切断され、ランダムまたは都合の悪いタイミングでアクセスが失われる可能性がある
  • ソフトウェア・サプライチェーン攻撃の阻止、公開アプリケーションの保護、アカウント背後に正しいユーザーがいると100%保証すること、SaaSアプリケーションへのアクセスの全般的な保護、不十分なアクセス・ポリシーに対する修正/補償などには対応しない
  • 自動化と適切なプロセスが根付いていないと、急速に複雑化する可能性がある
  • 重要なアクセスに対して迅速に実行できるように適切に開発された例外プロセスが必要
  • PDP(Policy Decision Point) が単一の制御点であり、侵害される恐れがある
  • 技術的負債が、ゼロトラストの組織全体への導入を妨げる可能性がある

ゼロトラスト導入において考慮すべき点とは?

ゼロトラストとは簡単に言い換えると、安易に信用 (トラスト) すべきではないという考え方です。そのために、継続的に可視化、検証する必要がありますが、それを実現する手法やテクノロジは多岐にわたります。

ゼロトラストを狭い視野のまま進めようとすると、個別視点 (サイロ) に偏り、合理性に欠く取り組みにつながるため、セキュリティを管理するリーダーは常に視野を広げ、最新トレンドを押さえる必要があります。

ゼロトラストの名目を掲げ検討を開始したものの、いつの間にかソリューション導入が目的化してしまう組織も少なくないため、「誰の何が良くなるのか」を念頭に置き、セキュリティの取り組みを進める必要があります。

ゼロトラスト導入には、全体最適や運用効率の最大化の視点が欠かせないため、戦略的なゼロトラストのためのアーキテクチャ(ゼロトラスト・アーキテクチャ)の議論が重要になります (例:サイバーセキュリティ・メッシュ)。そうした全体最適の実現のためには、市場変化を踏まえた実践的な議論として、ベンダーの整理統合の議論や動向もつかんでおく必要があります。

ゼロトラストは、孤立した環境で実装されるべきではないことを念頭におく必要があります。ゼロトラストは、アイデンティティ/アクセス管理 (IAM)、フィッシング防止と意識向上、データセキュリティ、コンプライアンス、セキュリティ運用などのプログラム要素を含む強固なセキュリティ・プログラムを排除する必要もありません。特定のベンダーの実装を評価するのではなく、ゼロトラストを戦略的なプログラム実装の観点からどのように取り組むか、また、ゼロトラストを実現するための将来的な目標に達成するために必要なステップについて理解する必要があります。

ゼロトラスト・アーキテクチャへの移行は、すべての既存テクノロジを置き換えることを意味するわけではなく、多くの既存テクノロジは新たな構成によって、ゼロトラスト・アーキテクチャへの移行をサポートすることができます。

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ゼロトラスト・セキュリティプログラムの実装と運用

ゼロトラスト・セキュリティプログラムの実装と維持に向けた戦略的アプローチ

ゼロトラストの導入と継続的運用には、全社的な視点と段階的な実行計画が求められます。以下は、主要な9つのベストプラクティスです。

1. 明確なゼロトラスト戦略の策定

まず、組織にとって「ゼロトラスト」とは何を意味するのかを定義し、自社のビジネス目標やリスクマネジメント戦略と整合させる必要があります。対象とすべき資産、ユーザーの利用実態、リスクシナリオを明確にすることで、ステークホルダー間での認識を統一し、導入プロセスを円滑に進められます。

2. 重要資産と高リスク領域の優先保護

全体的な適用ではなく、まずはインパクトの大きい業務プロセスや重要資産の保護を優先する「重点適用型アプローチ」が効果的です。限られたリソースを高価値領域に集中させることで、早期に実効性のある成果を得られます。

3. 継続的な評価とポリシーの適応

ゼロトラストは一度導入すれば終わりというものではなく、常に見直しと適応が求められます。脅威環境の変化に対応するため、定期的なリスクアセスメントや監査を実施し、セキュリティポリシーを更新し続ける体制が不可欠です。

4. きめ細やかなアクセス制御の実装

最小権限アクセス・モデルを徹底し、ユーザーには業務遂行に必要な範囲に限定してアクセスを許可します。リアルタイムのリスク評価に基づき、ID・コンテキスト情報を活用した動的なアクセス制御を導入することで、柔軟かつ堅牢なセキュリティを実現します。

5. セキュリティの全体統合

ゼロトラストは単独で機能するものではなく、データ保護、エンドポイント・セキュリティ、ID管理など他のセキュリティ施策と連携させてこそ、効果を最大化できます。全社的なセキュリティ・エコシステムとしての統合設計が求められます。

6. 外部セキュリティ・サービスプロバイダーの活用

ゼロトラストに必要な高度な設計・運用スキルを社内で補完できない場合は、専門性を持つセキュリティ・サービスプロバイダー(SSP)との連携が有効です。初期設計から常時監視、インシデント対応まで、包括的な支援を得ることができます。

7. ユーザー教育とチェンジ・マネジメント

ゼロトラストの実現には、全社的な理解と協力が不可欠です。従業員への教育を通じて、セキュリティ文化を醸成し、「信頼されていない」と感じさせない丁寧な説明が重要です。変革に伴う抵抗を抑え、主体的な参加を促すチェンジ・マネジメントを導入しましょう。

8. 自動化と先進技術の活用

セキュリティ運用の効率化と可視性向上のために、自動化ツールの導入が有効です。機械学習やAIによる異常検知・対応のリアルタイム化により、人的リソースの負担軽減と迅速なリスク対応が可能になります。

9. ガバナンスと責任体制の整備

ゼロトラスト推進のためには、明確な役割分担と責任体制の確立が不可欠です。ゼロトラスト推進部門(ZTCE: Zero Trust Center of Excellence)を設置し、戦略の策定から運用評価まで一貫したガバナンスを実現しましょう。

これらの実践項目を段階的かつ体系的に取り入れることで、ゼロトラスト・セキュリティプログラムは組織のセキュリティ体制を強化し、複雑化する脅威環境に対応する強固な基盤となります。

ガートナーによるゼロトラストの基本原則

企業がゼロトラスト戦略を策定する際には、プロセスを検証し、導くための一連の原則が必要です。しかし世界では、さまざまなゼロトラストの原則が存在する一方で、シンプルで一般的に合意されたゼロトラストの原則がないことに対する不満の声もあります。

ガートナーではセキュリティとリスク管理のリーダーが、組織のゼロトラスト戦略を前進させるために役立つゼロトラストの5つの基本原則を提唱します。

ゼロトラストの基本原則

  1. ゼロトラストはパラダイムである
  2. 敵対的な行為者の存在を想定する
  3. アイデンティティを確立する
  4. アクセス制限
  5. リスク・ベースのアダプティブなアクセス

以下に、それぞれの原則についての目的と考慮点について説明します。企業や組織がゼロトラストのイニシアティブを推進する際には、これらの基本原則を意思決定プロセスに組み込み、ビジネスの安全性を高めるための基盤として活用できます。

1. ゼロトラストはパラダイムである

目的:

ゼロトラストは、アイデンティティとコンテキスト基づいて、暗黙の信頼を、継続的に評価されるリスクと信頼レベルに置き換える。

考慮点:

  • ゼロトラストは、フィッシングやデータセキュリティなどに対応する強固なセキュリティ・プログラムの必要性を排除するものではありません。
  • ビジネスで使用するテクノロジを選択する際には、必要に応じてゼロトラストの原則を適用する必要があります。

2. 敵対的な行為者の存在を想定する

目的:

サイバーセキュリティ・プログラムは、悪意のある行為者がシステムを侵害している、または侵害する可能性があることを想定して計画実行するべきである。これは、受動的な防御から能動的な防御への考え方の転換を意味する。

考慮点:

  • 暗号化の成熟度を高める(暗号化すべき対象とキー管理について考慮する)
  • 顧客管理の暗号鍵 (ユーザーが作成して所有する暗号鍵) を使用して、パブリック・クラウド上のすべての静止データと移動データを暗号化する
  • Windowsユーザーのほとんどから管理者権限を削除する
  • リソースの可視性を高めるための監視ツールを導入する

3. アイデンティティを確立する

目的:

リソースへのアクセスは、ユーザーおよび/またはデバイスのアイデンティティによってのみ決定される。

考慮点:

  • 特権アクセス管理(または最低でも多要素認証)をすべての管理者に実施する
  • 「誰が、いつ、なぜ、何にアクセスすべきか」に関する組織の方針を確立する
  • 入社、異動、退職、アクセス例外処理に関するアイデンティティ・ポリシーを改善する
  • テクノロジを活用し、多要素認証を導入する

4. アクセス制限

目的:

ユーザーまたはシステムは、必要な機能を実行する必要性に基づいてのみリソースにアクセスできるべきである。 リソースの価値に関連するコンテキストに基づいてアクセスを拡張する。

考慮点:

  • アカウントおよびデバイスへのアクセスに必要な標準コンテキストを確立する
  • ワークロードの通信について「デフォルトでは拒否、明示的に許可」モードから移行する
  • 暗黙的な信頼ゾーンとユーザー・アカウントに付与された権利を削減する

5. リスク・ベースのアダプティブなアクセス

目的:

コンテキストから導き出されるリスクに基づいて、ほぼリアルタイムでアクセスを調整する。

考慮点:

  • 複数のテクノロジにわたって、リスクベースのコンテキスト情報を収集する際には、複数のベンダーとの統合が問題となる場合がある
  • コンテキストの増加に基づくリスクの算出には、複数のテクノロジとの統合が必要となる
  • セッション中のリスクを、1回限りのゲートチェックから継続的な評価に変更する
  • ブラックボックス型のリスク分析とアクセスに関する意思決定により、誤検出とトラブルシューティングのリスクが高まるということを理解する

ゼロトラストの明確なロードマップを策定し、組織のリスク・ポスチャを最適化する

明確な戦略と入念な計画なしにゼロトラストを導入した場合、不完全な導入に時間とリソースを浪費し、誤った安心感を生み出す可能性があります。例えば、一般的な障害として、レガシー・テクノロジ、スケーラビリティ、ゼロトラスト・テクノロジの実装における統合と能力のギャップ、組織の抵抗、ビジネス・プロセスへの影響についての考慮が不十分、などが想定されます。特に、組織が「誰が何にアクセスすべきか」の正式な定義を欠き、動的な環境に適応する技術的コントロールを統合していない場合、ゼロトラスト・テクノロジの導入は、運用に多大な負荷をもたらします。

このようなゼロトラスト導入についての課題に取り組むために、ガートナーは、企業や組織の情報セキュリティの最高責任者とそのチームの皆様が、企業や組織が実行可能なゼロトラスト戦略を策定するために必要な知見をご提供いたします。ガートナーの深い専門知識によるガイダンスやツールによって、企業や組織が、重点的なユースケースにわたってリスクに対処するためのゼロトラスト戦略と要件を確立できるようにご支援いたします。

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ゼロトラストの関する情報

サイバーセキュリティとは?サイバー攻撃の種類や対策について
2025年10月3日
ゼロトラストは、組織のネットワーク内部における暗黙の信頼を排除するセキュリティ・パラダイムです。ネットワーク境界内のユーザーやデバイスが信頼できると想定するのではなく、ゼロトラスト・アーキテクチャでは身元とコンテキストに基づいてすべてのアクセス要求を継続的に検証します。

府省庁/地方自治体および公共機関・団体におけるゼロトラスト・セキュリティの導入
2025年6月1日
ゼロトラストの導入に向けてセキュリティの近代化を準備するために、5つの柱を中心とした戦略と実行を解説します。

Gartner、ゼロトラストの最新トレンドを発表
2025年5月8日
Gartnerは、2025年2月に国内の従業員500人以上の組織を対象に実施したユーザー調査において、「『ゼロトラスト』として見直し/強化したセキュリティ領域」を尋ねました。その結果、上位3つに挙げられた対策は、「ネットワーク・セキュリティ (セキュアWebゲートウェイ、CASB、ZTNAなど)」、「ID/アクセス管理 (多要素認証など強固な認証)」、「ID/アクセス管理 (特権管理)」でした。

ゼロトラストについて
よくある質問

ゼロトラストとは、暗黙の信頼を、アイデンティティとコンテキストに基づいて継続的に評価される明示的なリスクと信頼レベルに置き換えるセキュリティ戦略の枠組みです。

ゼロトラストとは、さらに簡単に言い換えると、安易に信用 (トラスト) すべきではないという考え方になります。そのために、継続的に可視化、検証する必要がありますが、それを実現する手法やテクノロジは多岐にわたります。

攻撃は絶えず行われ、そのうちのいくつかは巧妙で侵入に成功すると想定していたたほうが良いでしょう。侵入される可能性があると常に考えておくのが妥当です。100%安全なネットワークは存在しないと言えます。攻撃者が侵入したことを特定し、排除するための対策を準備しておく必要があります。攻撃者を排除するまでの間、被害を最小限に抑えるために、ネットワークをセグメント化しておくことが重要です。

ゼロトラストは組織のネットワーク境界を狭めるのではなく、むしろ境界の概念自体を根本的に変えるアプローチです。従来のセキュリティでは、社内ネットワークと社外を明確に区別し、境界での防御を行っていました。しかし、ゼロトラストでは、物理的なネットワーク境界ではなく、いくつかの要素に基づいて動的にアクセス制御を行います。

例えば、アプリケーションへのアクセスには認証が必要であり、通常はアプリケーション・サーバーで認証が行われ、サーバーへのネットワーク制御は限定的でした。ゼロトラストでは、ネットワーク・レベルのセキュリティ確保が必要であると考えるため、ユーザーは、アプリケーション・サーバーへの接続を許可される前に、身元を証明しなければなりません。これにより、境界がユーザーにまで拡大されます。

ゼロトラストとSASE(サシー)は、いずれも現代の分散型IT環境に対応したセキュリティ強化フレームワークですが、その焦点・構造・実装方法は異なります。以下に両者の定義、特徴、主要な違いを整理します。

 

ゼロトラスト:信頼しないことを前提にしたセキュリティ・モデル
  • 定義:
    ゼロトラストは「決して信頼せず、常に検証する」という原則に基づくセキュリティ・モデルです。ネットワークの内外を問わず、すべてのアクセス要求に対して厳格なID認証とデバイスの検証を要求します。

  • 主要原則:
     - IDベースのセキュリティ: ユーザーIDとデバイスのコンテキストに基づく継続的な認証。
     - 最小権限アクセス: 必要最小限の権限のみを付与し、横方向のアクセスを抑制。
     - 継続的な監視: 利用状況や行動を監視し、異常を検知。

  • 実装:
    オンプレミス、クラウド、ハイブリッドなど、あらゆるインフラ環境に適用可能。IAM(ID・アクセス管理)との統合が前提となります。
 
SASE(Secure Access Service Edge、サシー):ネットワークとセキュリティの統合サービス
  • 定義:
    SASEは、ネットワーク機能(例:SD-WAN)とセキュリティ機能(例:セキュアWebゲートウェイ、ZTNAなど)を統合し、クラウドから提供されるセキュリティ・アーキテクチャです。ユーザーの場所に関係なく、安全にアプリケーションやデータにアクセスできることを目的としています。

  • 主要原則:
     - セキュリティとネットワークの統合: 両機能を一体化し、運用を簡素化。
     - IDとコンテキストに基づくアクセス制御: ユーザーやデバイスの状態に応じてアクセスを制御。
     - クラウドネイティブ・アーキテクチャ: グローバルなスケーラビリティと柔軟性を提供。

  • 実装:
    ベンダーが一元管理するサービスとして提供され、リモートワーカー、支社拠点、クラウド・アプリケーション全体にわたってセキュリティをカバーします。
 
ゼロトラストとSASEの主要な違い:比較表

観点

ゼロトラスト

SASE(サシー)

焦点

IDとコンテキストに基づくリソースアクセスの保護

ネットワークとセキュリティの統合による安全な接続

アーキテクチャ

オンプレミス/クラウド/ハイブリッドで柔軟に構成可能

クラウドベースで一元的に提

実装手法

継続的なID管理とモニタリングが前提

管理負荷を軽減する統合サービス型

主な活用領域

ユーザー・デバイス単位のアクセス制御

支社/リモート/クラウドアクセスの統合管理

共通点

IDベースのアクセス制御、ゼロトラスト原則の適用

ゼロトラスト・ネットワーク・アクセス(ZTNA)を構成要素に含むことが多い

 
まとめ:ゼロトラストとSASEは補完関係にある

ゼロトラストとSASEは対立する概念ではなく、異なる視点からセキュリティを強化する補完的なアプローチです。

  • ゼロトラストはセキュリティの制御モデル(信頼のあり方)を変革し、

  • SASEはセキュリティとネットワークを融合させるクラウドサービスモデルとして、分散環境に適合します。

企業や組織は、自社のインフラ環境やセキュリティ・ニーズに応じて、ゼロトラストとSASEのいずれか、または両方を導入することで、柔軟かつ強靭なセキュリティ体制を構築できます。

ゼロトラスト・セキュリティは、従来型の境界防御モデルからの脱却を図り、すべてのアクセスに対して「決して信頼せず、常に検証する」という原則に基づいた現代的な防御戦略です。中堅・中小企業(MSE)にとっても効果的なアプローチですが、導入には特有の課題と考慮点があります。

 

主要な洞察と導入傾向
 
1. ベンダー主導による導入の増加

多くのMSEでは、ゼロトラストの概念を十分に理解しないまま、ベンダー提案により導入が進行しています。その結果、従来のアクセス管理(IAM)との違いが曖昧になり、導入計画と実装の整合性が取れない事態も見られます。

 
2. 複雑性とリソースの制約
  • 限られたIT予算とセキュリティ専門人材の不足は、ゼロトラスト導入の大きな障壁です。

  • 特にハイブリッド環境やクラウド連携が進む中で、ゼロトラストの技術的複雑性に圧倒されるケースが少なくありません。

 
3. 段階的な導入が鍵

成功しているMSEの多くは、自社の業務課題や優先順位に合わせて段階的に導入を進めています。このアプローチにより、組織内の理解や受容性が高まり、業務への影響を最小限に抑えることが可能です。

 
効果的な導入に向けた推奨アプローチ
 
1.  ビジネスケースの明確化

CIOは、ゼロトラスト導入によって解決される課題と期待される効果を定義し、説得力のあるビジネスケースを構築する必要があります。そのためには、既存のIAM技術とのギャップ分析が有効です。

 
2. ステークホルダーとの連携強化
  • プロジェクト推進に必要な関係者(IT、経営、業務部門)を特定・巻き込み、障壁の除去と現実的な期待値の調整を図ります。

  • IAMの適用範囲と目標を明確に共有することで、全社的な合意形成を促進します。

 
3.  重要資産への優先適用

限られたリソースを最大限に活用するため、まずは高価値資産やクリティカルなアプリケーションを対象に、ゼロトラスト制御を適用します。これにより、効果を可視化しやすく、導入の勢いを加速させることができます。

 
4. 既存技術の再評価と活用
  • 多くのMSEでは、すでにMFA、EDR、ログ管理など、ゼロトラストに資する基盤技術を導入済みです。

  • ゼロからの構築ではなく、既存の資産を統合・拡張する視点が現実的で効果的です。

 
5.  継続的なモニタリングと適応

ゼロトラストは一度導入して終わるものではなく、脅威環境や業務要件の変化に応じて、ポリシーの見直しと最適化を継続的に行う体制が必要です。これにより、セキュリティ・レジリエンスが向上します。

 
まとめ

中堅・中小企業においてゼロトラストを成功裏に導入するには:

  • 段階的な計画と業務ニーズへの適合

  • 社内外ステークホルダーとの合意形成

  • 既存リソースの最大活用

  • 継続的な見直しと改善


    といった、柔軟かつ現実的なアプローチが求められます。ゼロトラストは、MSEにとっても「導入できる戦略」であり、慎重かつ段階的な実行により、ビジネスとセキュリティの両立を実現できます。

ゼロトラスト・アーキテクチャの導入は、セキュリティ強化の有力な手段である一方、総保有コスト(TCO)や運用負荷の増加といった現実的なコストインパクトも伴います。

以下に要点を整理します:

 
1. 総保有コスト(TCO)の上昇
 

ゼロトラスト導入により、新技術の導入や既存システムの機能拡張が必要となるため、TCOが上昇する傾向があります。対象となる主な投資領域は以下の通りです:

  • ID管理(IAM/MFA)の高度化

  • エンドポイントセキュリティ(EDR/XDR)の強化

  • ゼロトラスト・ネットワークアクセス(ZTNA)の導入

  • ログ管理・行動分析の強化(UEBA/SIEM)
 
2. 人員コストの増加
  • 約41%の組織が、ゼロトラスト導入によりスタッフの増員が必要になると回答しています。

特に、アクセス制御・ポリシー管理・運用監視などにおいて、既存チームでは対応しきれないケースが増加しています。

 
3. 管理サイクルの増加
  • 最小権限アクセス(Least Privilege Access) の導入は、ポリシー更新やアクセスレビューの頻度を高めるため、管理工数が増加します。

手動運用に頼ったまま導入を進めると、運用負荷が急増し、全体コストの肥大化を招くリスクがあります。

 
 4. 予算への影響
  • 全体の62%の企業が「ゼロトラスト導入によりコストが増加する」と回答しています。

  • コスト増加の度合いは、導入のスコープ(範囲)と初期設計の明確さに強く依存します。

計画段階での戦略的な整理が不十分な場合、不要な複雑化と非効率を招き、運用コストが跳ね上がる懸念があります。

 
5. コストと効果のバランス
  • ゼロトラストはコスト増を伴いますが、セキュリティインシデントの削減により、長期的には投資対効果が高まる可能性があります。

セキュリティ運用チームの負荷軽減と可視性向上により、効率的な運用体制が構築されるという副次的な効果も期待できます。

 
6. セキュリティ予算における優先順位
  • ゼロトラストは、現在多くの組織で「中程度の優先度」として予算に位置づけられています。

他のセキュリティ施策(例:ランサムウェア対策、クラウドセキュリティ)とのバランスを取りながら段階的に予算化することが求められます。

 
まとめ

ゼロトラストの導入には、以下のコスト要因と予算戦略を考慮すべきです:

 

コスト要因

主な内容

技術投資

IAM、EDR、ZTNA、SIEMなどの新規導入・拡張

人件費

管理・運用に対応するセキュリティ要員の確保

管理負荷

アクセスポリシー運用、ログ監視の強化

計画不備のコスト

不要な複雑化による運用非効率と予算超過

 

計画的なスコープ設計と既存環境の見直しにより、コストの最適化は可能です。
ゼロトラストはコスト増の要因となり得ますが、セキュリティ成熟度の飛躍的向上という長期的価値をもたらす取り組みであることを忘れないようにします。

まとめ

ゼロトラストは、セキュリティ体制の変革を促す有効なモデルですが、導入・維持には戦略的視点と全社的な調整が不可欠です。

また「ゼロトラスト」という言葉がベンダーによって過度にマーケティング的に利用され、定義が曖昧化しています。これにより、企業や組織の意思決定やソリューション選定が混乱し、本質的な導入に結びつかないケースも増えています。

加えて、既存システム(オンプレミス・クラウド・ハイブリッド)への適用は技術的に複雑です。事前に必要機能の精査を行わないまま導入に着手すると、ゼロトラストの状態を継続的に評価・維持するのが困難になります。古い業務アプリケーションやインフラは、最新のセキュリティ要件(例:ZTNA、MFA)に対応していないケースが多く、アーキテクチャ上の隙間を生み出します。これが攻撃対象領域(アタックサーフェス)として残るリスクになります。

このように、企業や組織がゼロトラストの導入において直面する課題はさまざまに想定され、かつゼロトラストの導入には、技術投資、人件費、運用コストが伴います。短期的なROI(投資対効果)が見えづらいため、経営層の支持を得にくい場面もあります。

このような状況下にて、ゼロトラスト導入の成功のカギは「計画性・共感・整合性」です。

ゼロトラスト導入を成功させるには:

  • ビジネス目標と整合した段階的な戦略の策定

  • 関係部門との協働による導入目的の共有と共感形成

  • 既存資産との整合・統合、過度な複雑化の回避

といった要素をバランス良く組み込むことが不可欠です。ゼロトラストは単なる技術導入ではなく、企業文化・プロセス・技術の三位一体によるセキュリティ改革であることを意識する必要があります。

 

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