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2017年10月26日

ガートナー、2018年の戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10を発表

『Gartner Symposium/ITxpo 2017』 (10/31~11/2、東京・高輪) において、業界のトップ・トレンドを明らかに

米国フロリダ州オーランド発 - 2017年10月4日- ガートナーは、企業や組織にとって戦略的な重要性を持つと考えられるテクノロジ・トレンドのトップ10を発表しました。これは、世界各国で開催している『Gartner Symposium/ITxpo』において明らかにされています。

ガートナーは、テクノロジが出現したばかりの状態を脱し、幅広く利用され、より大きなインパクトをもたらす状態に入り、大きな破壊的可能性を持つようになったトレンドや、今後5年間で重要な転換点に達する、変動性が高く、急成長しているトレンドを、「戦略的テクノロジ・トレンド」と呼んでいます。

ガートナーのバイス プレジデント 兼 ガートナーフェローのデイヴィッド・カーリー (David Cearley) は次のように述べています。「ガートナーの2018年の戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10は、いずれもインテリジェント・デジタル・メッシュに関係しています。インテリジェント・デジタル・メッシュは、将来のデジタル・ビジネスおよびエコシステムの土台となるものです。ITリーダーは、自社の革新戦略においてこれらのテクノロジ・トレンドを考慮しなければなりません。さもなければ、こうしたトレンドを視野に入れている他社に後れを取る恐れがあります」

以下で説明する戦略的テクノロジ・トレンドの最初の3つでは、人工知能 (AI) と機械学習について、これらが事実上あらゆるものに浸透しつつある現状と、テクノロジ・プロバイダーにとって今後5年間の主戦場になるという見通しを考察します。その次に示す4つのトレンドでは、デジタルの世界と物理的な世界を融合させ、デジタル面を強化したイマーシブ (没入型) 環境を構築することに焦点を当てています。最後の3つは、人や企業、デバイス、コンテンツ、サービス間で拡大するつながりを活用した、デジタル・ビジネス成果の創出に言及したものです。

2018年に注目すべき戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10は、次のとおりです。

AIファウンデーション
少なくとも2020年までは、学習し、適応し、自律的に行動する可能性を持つシステムを構築することが、テクノロジ・ベンダーにとっての主要な目標となるでしょう。AIを使いこなし、意思決定の強化、ビジネスモデルとエコシステムの改革、カスタマー・エクスペリエンスの再構築を行う能力が、2025年まで、デジタル・イニシアティブの成果を拡大させます。

前出のカーリーは、次のように述べています。「AIの手法は急速に進化しつつあるため、企業や組織は、こうした手法を活用するスキル、プロセス、ツールに多額の投資を行って、AI強化型のシステムを構築しなければなりません。投資対象となる分野には、データの前処理、インテグレーション、アルゴリズムとトレーニング・メソドロジの選択、モデルの作成なども含まれます。データ・サイエンティストや開発者、ビジネス・プロセス・オーナーといった複数の関係者の協業が必要になるでしょう」

インテリジェントなアプリとアナリティクス
今後数年間にわたり、事実上すべてのアプリ、アプリケーションおよびサービスは、一定レベルのAIを実装するようになります。こうしたアプリの中には、AIと機械学習なしには実現しない、インテリジェント性が顕著なものもあるでしょう。それ以外のアプリは、AIを目立たない形で活用し、インテリジェンスを背後で提供します。インテリジェントなアプリは、人とシステムをつなぐ新しいインテリジェントな中間レイヤを形成して、仕事の本質やワークプレースの構造を変革する可能性を秘めています。 

カーリーは、次のように述べています。「単に人間の代用としてではなく、人間の活動を拡張、増大させる手段としてインテリジェントなアプリを捉え、その可能性を探らなければなりません。拡張アナリティクスは、特に戦略的な成長分野です。同テクノロジは、機械学習の使用を通じ、データの前処理や知見の発見、さらには広範なビジネス・ユーザー、オペレーショナル・ワーカー、市民データ・サイエンティストとの知見の共有を自動化します」

AIは、ERPを含む、広大なソフトウェア/サービス市場における次の主戦場となっています。パッケージ・ソフトウェアとサービスのプロバイダーは、高度なアナリティクス、インテリジェントなプロセス、先進的なユーザー・エクスペリエンスなどを売り文句にした新製品において、実際にはAIをどのように使用してビジネス価値を付加しようとしているのか、要点を明らかにすべきです。

インテリジェントなモノ
インテリジェントなモノとは、従来の固定的なプログラミング・モデルを実行するばかりでなく、AIを活用して高度な振る舞いをするとともに、周囲の環境および人とより自然にやりとりする物理的なモノを指します。AIは、新しいインテリジェントなモノ (自律走行車やロボット、ドローンなど) の発展を後押ししながら、同時に多くの既存のモノ (モノのインターネット [IoT] に接続された消費者向けシステムや産業システムなど) に対し、強化された機能を提供しています。

カーリーは、次のように述べています。「現在、コントロールされた環境 (例えば農業や鉱業) における自律走行車の利用は、インテリジェントなモノが関わる領域の中で急成長している分野です。2022年までには、一般道とは明確に区別され、管理下に置かれたごく一部の道路を自律走行車が走ることもあるでしょう。しかし、自律走行車を一般的に利用する際は、テクノロジの不測のエラーに備え、運転席に人間が座ることが求められる可能性が高いと思われます。少なくとも今後5年間は、ドライバーを必要とする半自律的な走行が優勢であり続けると考えられます。その間、メーカーは本テクノロジをさらに厳格にテストし、規制や法的な問題、未知のものに対する許容という文化的な問題など、テクノロジ以外の問題に対処するようになるでしょう」 

デジタル・ツイン
デジタル・ツインとは、現実世界の実体やシステムをデジタルで表現したものを指します。デジタル・ツインは、IoTプロジェクトのコンテキストにおいて今後3~5年間にわたり特に有望であると考えられ、したがって今日、大きな関心が本テクノロジに寄せられています。適切に設計された資産のデジタル・ツインは、企業の意思決定を大幅に改善する可能性があります。こうしたデジタル・ツインは、現実世界で対応する対象物と結び付けられ、モノやシステムの状態の把握、変化への対応、オペレーションの改善、価値の付加などに用いられます。企業や組織は、まずは単純な形でデジタル・ツインを導入し、その後、適切なデータを収集および可視化する能力を向上させたり、適切なアナリティクスとルールを適用したり、ビジネス目標に効果的に対応させたりするなど、時間とともに利用法を進化させていくでしょう。

カーリーは、次のように述べています。「この世界のほぼすべての側面をデジタルで表現したものが、現実世界でそれに対応するものと動的に結び付けられる、またはデジタルで表現したもの同士が動的に結び付く現象が、時間の経過に伴い増えていきます。ここにAIベースの機能が取り込まれることで、高度なシミュレーション、オペレーション、分析が可能になります。都市計画担当者、デジタル・マーケティング担当者、医療従事者、産業計画担当者は、デジタル・ツインによる統合的な世界への長期的な移行から、恩恵を受けるでしょう」

クラウドとエッジ
エッジ・コンピューティングとは、情報の処理およびコンテンツの収集と配布が、情報のソースに近い場所で行われるコンピューティング・トポロジを表します。エッジ・コンピューティングは、接続性および遅延に関する課題や、帯域の制約を解消すべく、エッジ部に多数の機能を実装した分散型モデルの一種といえます。企業は、インフラストラクチャ・アーキテクチャの中でも特に重要なIoTコンポーネントに、エッジ・デザイン・パターンを適用する必要があります。

多くの人がクラウドとエッジは競合するアプローチであると考えていますが、クラウドは、柔軟に拡張できる技術的機能をサービスとして提供するコンピューティング・スタイルの1つであり、本来、一元化されたモデルを要件とするものではありません。

カーリーは、次のように述べています。「クラウドとエッジを互いに補完するコンセプトとして捉えた場合、まずクラウドは、サービス指向のモデル、一元的なコントロール、調整の仕組みを作り出すためのコンピューティング・スタイルの1つと言うことができます。一方のエッジは、クラウド・サービスのさまざまな側面を、分断的な、または分散型のプロセスで実行する、デリバリ・スタイルの1つです」

会話型プラットフォーム
会話型プラットフォームは、人間がデジタルの世界とやりとりする方法について、次の大きなパラダイム・シフトを促すでしょう。相手の意図を解釈する作業は、ユーザーの代わりにコンピュータが担うようになります。会話型プラットフォームは、ユーザーから質問や命令を受け取り、何らかの機能を実行したり、コンテンツを提示したり、さらには情報を求めたりすることで応答します。今後数年間にわたって、会話型ユーザー・インタフェースは、ユーザー・インタラクションにおける主な設計目標になり、専用ハードウェアやコアOS機能、プラットフォーム、アプリケーションに提供されるでしょう。

カーリーは、次のように述べています。「会話型プラットフォームは、言語や基本的なユーザーの意図を理解するという点においては転機を迎えましたが、まだ十分な水準には達していません。会話型プラットフォームは、ユーザーが高度に構造化された形でコミュニケーションを取らなければならず、これがしばしばストレスになるという課題に直面しています。会話型プラットフォームにおいて主な差別化要因となるのは、安定した会話モデルとAPIでしょう。また、複雑な結果を提供するため、外部サービスにアクセスし、同サービスを呼び出し、調整するのに使用されるイベント・モデルも差別化要因となり得ます」

イマーシブ・エクスペリエンス
会話型ユーザー・インタフェースによって、人間がデジタルの世界をコントロールする方法が変化しつつあるのと同時に、仮想現実 (VR)、拡張現実 (AR)、複合現実 (MR) を通じ、人がデジタルの世界をどう捉え、そうした世界とどのようにやりとりするかが変わろうとしています。VRとARの市場はいまだ青年期にあり、断片化しています。こうしたテクノロジへの関心は高く、結果として多くの目新しいVRアプリケーションが登場していますが、ビデオ・ゲームや360度体感ビデオといった高度な娯楽以外では、真の商業的価値をほぼ生み出していません。目に見える形でビジネス・メリットを生むために、企業は、VRとARを応用できる、具体的で現実世界に即したシナリオを検証して、従業員の生産性を高め、設計やトレーニング、視覚化のプロセスを強化しなければなりません。 

イマーシブ・エクスペリエンスを実現する上で最適と目されるMRは、ARとVR両方の技術的機能を融合させて拡張する、イマーシブ・テクノロジの1つです。MRは、ユーザー各自の世界の見え方や、世界とのやりとりの仕方にぴったりと合うようインタフェースを最適化する、魅力的なテクノロジを提供します。MRは、現実世界と仮想世界の切れ目を意識させず、あたかもつながっているかのように見せるものであり、VR/AR用のヘッドマウント・ディスプレイ (HMD)、スマートフォンおよびタブレット・ベースのAR、また環境センサなどがこれを実現します。MRは、人がデジタルの世界をどのように捉え、そうした世界とどのようにやりとりするのかといった範囲を示します。

ブロックチェーン
ブロックチェーンは、デジタル通貨のインフラストラクチャから、デジタル・トランスフォーメーションのプラットフォームへと進化しつつあります。ブロックチェーン・テクノロジは、現在の一元化されたトランザクションおよび記録管理のメカニズムからの急転換を促し、既存の企業とスタートアップ企業の両方に、破壊的なデジタル・ビジネスの基盤を提供します。ブロックチェーンは、そもそもは金融サービス業界を中心にハイプが巻き起こったものでしたが、行政や医療、製造、メディア配信、身元確認、土地登記、サプライチェーンといった多くの分野に適用できる可能性があります。ブロックチェーンは長期にわたって有望なテクノロジであり、間違いなく破壊的な変革をもたらすと考えられますが、今はまだ現実が可能性に追いついていない状態で、大半の関連テクノロジは今後2~3年間は成熟しないでしょう。

イベント駆動型モデル
デジタル・ビジネスの中心となるのは、企業が新たなデジタル・ビジネスの機会をいつでも察知し、そうした機会を活用する準備ができているという概念です。デジタルで記録できるあらゆるものが、ビジネス・イベントとなり得ます。ビジネス・イベントは、購買発注の完了や航空機の着陸など、記録可能な状態または状態の変化を発見したことを示しています。イベント・ブローカやIoT、クラウド・コンピューティング、ブロックチェーン、インメモリ・データ管理、AIなどを使用することで、ビジネス・イベントをより早期に検出し、極めて詳細に分析することが可能になります。ただし、文化的な変化やリーダーシップの変化を伴わないテクノロジだけでは、イベント駆動型モデルの価値を完全に引き出すことはできません。デジタル・ビジネスには、イベント・シンキング (イベントに基づく考え方) を持ったITリーダー、プランナー、アーキテクトが必要になります。

継続的でアダプティブなリスク/トラスト
高度な標的型攻撃が蔓延する世界において、デジタル・ビジネス・イニシアティブをセキュアに実現するためには、セキュリティおよびリスク管理のリーダーが「継続的でアダプティブなリスク/トラストのアセスメント (Continuous Adaptive Risk and Trust Assessment: CARTA)」アプローチを採用し、状況に即した対応を取って、リスクおよび信頼に基づく意思決定をリアルタイムに行えるようにする必要があります。セキュリティ・インフラストラクチャは、あらゆる場所において適応性を有し、デジタル・ビジネスと同じスピード感のセキュリティをもたらす機会を利用し、リスクを管理しなければなりません。

企業は、CARTAアプローチの一環として、開発と運用の間の障壁をDevOpsツール/プロセスで乗り越えるのと同様に、セキュリティ・チームとアプリケーション・チームの間の障壁を乗り越える必要があります。情報セキュリティ・アーキテクトは、複数のポイントのセキュリティ・テストを、コラボレーティブな方法でDevOpsワークフローに統合しなければなりません。コラボレーティブな方法とは、開発者にとって透明性が高く、DevOpsのチームワーク、俊敏性、スピードと、アジャイル開発環境を維持し、「DevSecOps」を提供するものです。CARTAは、例えばディセプション・テクノロジの手法を利用して、ランタイムに適用することも可能です。仮想化やソフトウェア・デファインド・ネットワーキング (SDN) といったテクノロジの進化によって、ネットワーク・ベースのディセプションにおける基本コンポーネントである「アダプティブ・ハニーポット」を展開、管理、監視することが容易になりました。

来週10月31日より、東京 (グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール) で開催される『Gartner Symposium/ITxpo 2017』では、本内容の解説をはじめ、ガートナーの国内外のアナリストやコンサルタントが、デジタル・ビジネスとデジタル・テクノロジについて幅広い提言を行います。本内容については11月1日午前8時からの講演「2018年の戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10」(20A) で詳しく解説します。

『Gartner Symposium/ITxpo 2017』の詳細については、下記のWebサイトをご覧ください。
http://gartner.co.jp/symposium/ 

また、ガートナーのサービスをご利用のお客様は、本内容の詳細を「Top Strategic Technology Trends for 2018」でご覧いただけます。各テクノロジ・トレンドについては、Smarter With Gartnerの記事「Gartner Top 10 Strategic TechnologyTrends for 2018」でも解説しています。 

【海外発プレスリリース】
本資料は、ガートナーが海外で発表したプレスリリースを一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含めガートナーが英文で発表したリリースは、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/en/newsroom/

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