IT主導のビジネス価値を提供する上でのクラウドの役割を明確にした戦略により、クラウドのメリットを最大限に引き出します。
IT主導のビジネス価値を提供する上でのクラウドの役割を明確にした戦略により、クラウドのメリットを最大限に引き出します。
クラウド戦略とは、クラウドで「何を」行うのか、そして「なぜ」行うのかを伝えるものです。ガートナーでは、効果的な戦略のベストプラクティスを以下のように検証しています。
クラウド戦略は、クラウド・コンピューティングと組織におけるクラウドの役割に関する視点を簡潔にまとめたものです。クラウド戦略は、10ページから20ページ程度の文書にする必要があります。クラウド戦略は、組織の中期的な企業戦略プランをはじめとする他の戦略計画や、データセンター、セキュリティ、調達などに関するプランと連動させる必要があります。
意思決定を効果的に導くために、クラウド戦略は、事業部門、他の技術部門、オペレーション、財務、法務、調達などの機能の利害関係者を含む、組織全体のサポートとスポンサーシップが必要です。部門横断的なクラウド戦略の策定に成功した組織は、そうでない組織に比べて、クラウドに関するイニシアティブを成功させ、十分な利益を実現できる可能性が高くなります。
部門横断的な戦略を策定するには、まず、組織全体から視点を共有できるさまざまなチームのメンバーで構成されるクラウド戦略の委員会を結成することから始めます。ほとんどの組織では、さまざまなIT部門や機能的な役割を持つメンバーで委員会を構成しています。
クラウド戦略委員会の各メンバーは、組織のポジションによって、戦略の策定やその提唱に果たすべき役割が異なります。例えば、調達、法務、リスク管理は、クラウド移行を評価し、その影響を強調することができます。人事部門は、従業員にクラウドへの移行を売り込み、クラウドのスキル要件を特定して対処することができます。財務部門は、クラウド戦略の財務的な影響を評価し、コスト削減と効率化を承認することができます。
戦略策定プロセスは、クラウド・コンピューティングとビジネスの基準を確立することから始めるべきです。
クラウド・コンピューティングの定義に従い、一貫して使用することで、混乱を生じさせないようにします。米国国立標準技術研究所(NIST)は、ガートナーと同様、クラウド・コンピューティングに関する一連の定義を作成しました。クラウ・ネイティブ、マルチ・クラウド、分散クラウドといった、新しいクラウド・コンピューティング用語は、あまり確立されていません。これらを使用する場合は、その定義を明確にする必要があります。一般的には、できる限り既存の用語を使用する方が良いでしょう。
ビジネス基準とは、トップレベルのビジネス戦略、望まれるビジネス成果、およびビジネス変革のイニシアティブを指します。年次報告書、上級管理職のスピーチ、ビジネス・リーダーとの対話を情報のリソースとします。
次に、クラウド・コンピューティングがビジネス成果やイニシアティブにどのような利益をもたらすか、またはリスクをもたらすかを確認します。コスト削減/効率化、俊敏性/革新性など、既知のビジネス目標という観点から議論を組み立て、クラウド・コンピューティングがそれらの達成に役立つ方法を評価します。
組織固有の問題を検討します。たとえば、次のような質問を検討します。
ビジネスの目標とクラウド・コンピューティングの潜在的なメリットを対応させ、想定される課題を克服する方法を説明することで、基準のセクションをまとめます。
クラウド戦略や投資に関する意思決定にどの原則を使用するかを決定します。一般的なクラウドの原則の例は次の通りです。
「クラウド・ファースト」は誤解されがちです。これは、すべてをクラウド化するという意味ではありません。クラウド・ファーストについては、何かを更新、強化、構築したい場合、パブリック・クラウドを利用するのが既定のアプローチです。また、クラウド・ファーストとは、新しいテクノロジやビジネス・イニシアティブの最初の選択肢としてクラウドを検討すべきだという意味でもあります。
ある原則を正当化する理由を含めることもできます。たとえば、原則の1つに「パブリック・クラウドへのリフト・アンド・シフト移行は最後の手段であるべきだ」というものがある場合、データ・センターの閉鎖によってIT部門が移転先を探す必要があるなどの情状酌量の余地がない限り、一般的に大きな価値をもたらさないことを説明します。
原則には、良好な関係やスキルへの投資など、ベンダー重視の考慮事項も含めることができます。
その他、原則に含まれる考慮事項には、次のようなものがあります:
パブリック・クラウド・プロバイダーからクラウド・サービスを利用する場合と、オンプレミスやその他の場所で機能を構築する場合、または維持し続ける場合を決定する必要があります。IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)のユースケースを区別します。
ブローカーとしての役割を得ようとするシナリオと、サービスを利用し、仲介し、サービスを提供するハイブリッドITオペレーティング・モデルを同時に実現する方法を取り上げます。「ハイブリッド環境のセキュア化、管理、ガバナンスをどのように行うか?」という質疑応答について検討してみましょう。
クラウド・コンピューティングには大きな財務的影響が伴いますが、ITリーダーはその原則を理解し、考慮する必要があります。クラウドに移行すれば必ずコストを削減できるという、クラウドに関する最大の神話を信じてはいけません。その代わりに、コストの透明性、可視性、予算編成、予測可能性などの問題を検討する必要があります。
組織は通常、資本支出(設備投資)ではなく、営業支出(OPEX)からクラウド・コンピューティングの資金を調達します。しかし、すべてをOPEXに変更すると、組織の財務プロファイルが変わる可能性があります。また、IaaSは主にハードウェア・コストと連動しているため、価格は緩やかに下がる傾向にあります(インフレがこれを変えるかもしれません)が、SaaSはサブスクリプション・モデルとして運用されているため、価格は上昇する傾向にあります。財務担当のクラウド担当者を置くことで、これらの意味合いと、それらが自社の原則にどのような影響を与えるかを理解することができます。
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クラウド戦略はワークロードごとに行われるため、各ワークロード(および対応するアプリケーションのグループ)のインベントリを作成し、それらに関する一連の情報を収集する必要があります。
インベントリで収集したい情報の種類には、ワークロードの目標は何か?コスト削減なのか、それとも俊敏性の向上なのか。
以下のような基本的な情報を収集します:
ワークロードやアプリケーションがクラウドに適していると思われる場合は、予測不可能なアプリケーションから使いやすいアプリケーションまで、以下のスペクトルに従ってパフォーマンス特性を分析します。
クラウド戦略とガバナンスを形成する上で、部門を超えた対等なパートナーシップを築くことが重要です。クラウドの導入は組織のあらゆる機能に影響を与えます。
撤退するための戦略とは、クラウドの決定から逃れるために必要な検討事項をまとめたものです。規制当局の中には、クラウドを撤退するにあたって戦略を策定することを義務付けているところもあります。
多くの組織は、クラウド戦略とクラウド導入プランとを混同しています。クラウド戦略が先に策定されるべきであり、クラウド・コンピューティングが組織で果たす役割を文書化するのがクラウド戦略です。クラウド導入プランは、クラウド戦略を実行に移す際に作成されるべきです。
すでにクラウド・コンピューティングを利用している場合、クラウド戦略を策定するのは遅すぎると考えてしまう組織は少なくありません。しかし、組織におけるクラウドの役割を正式に定義するのに遅すぎることはありません。
クラウド戦略を策定しても、すべてをクラウドに移行することを強制しているわけではありません。多くの組織が、あらゆることにクラウド・コンピューティングを使わざるを得なくなることを恐れて、そのために戦略の策定を避けています。
多くの企業がクラウド戦略とデータセンター戦略を混同していますが、この2つは別物です。
多くの組織がクラウド・コンピューティングを導入する理由は、CEO、CIO、または事業部門の責任者が、クラウド・コンピューティングを導入すればコスト削減につながると考えているからです。しかし、クラウド・コンピューティングが必ずしもコスト削減につながるとは限らず、この目的だけでクラウド戦略を策定すべきではありません。
ベンダーのクラウド・サービスにただ従う組織は、真のクラウド戦略策定を行っていないだけでなく、IaaS、PaaS、SaaSといった複数の種類のクラウド・サービスを検討していません。クラウド・コンピューティングを広く捉えれば、すべてのクラウド・サービスを1つのベンダーから調達することはほとんど不可能です。
クラウド戦略をアウトソーシングすることは魅力的に聞こえるかもしれません。しかし、自社独自のクラウド戦略を策定し、組織の戦略プランと整合させる必要があります。
クラウド・ファーストは、より広範な戦略の中であれば、多くの組織にとって優れた原則となります。
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クラウド・コンピューティングとは、スケーラブルで弾力性のあるIT機能を、インターネット・テクノロジを使ってサービスとして提供するコンピューティングの様式です。
クラウド・コンピューティング戦略とは、クラウド・ソリューションを実装する際に使用するベストプラクティス、ツール、サービスを含むように設計されたアクションプランです。クラウド戦略は、クラウドの導入、実装、運用の最適化をサポートします。
クラウド戦略のフレームワークは、クラウドのアーキテクチャ、開発プラン、ガバナンス・モデルの概要を示すものです。