データ/アナリティクスとは?

データ/アナリティクスとは、あらゆるデータ利用をサポートするためのデータ管理方法であり、また意思決定、ビジネス・プロセス、成果の向上を推進するためのデータ分析方法を指します。これには、ビジネスにおける新たなリスク、課題、および機会の発見をするためのデータ分析が含まれます。

ビジネスにおけるデータ/アナリティクス の役割とは?

データ/アナリティクスがビジネスにおいて特に重要な理由は、あらゆるタイプの意思決定(マクロ、ミクロ、リアルタイム、循環型、戦略、戦術、運用)の成果を向上できる点にあります。さらにデータ/アナリティクスによって、ビジネス・リーダーが考えもしなかったような、新たな疑問や革新的な解決策、そして機会を明らかにすることができます。

進歩的な組織は、多様な方法でデータを使用しています。よりスマートなビジネス上の意思決定を行うためには、多くの場合、自らの管轄外のデータも活用しなければなりません。

データ/アナリティクスはデジタル戦略やデジタル・トランスフォーメーションを促す要因でもあり、変化の速い複雑なビジネス環境において、より迅速/正確/適切な意思決定を可能にします。

意思決定を行うのは、個人 (見込み客が製品やサービスの購入を検討している場合など) および組織のチーム (顧客や市民への最適なサービス提供方法を決める場合など) です。したがってデジタル戦略では、こうした意思決定の成果とインパクトを向上させるために、データを介してよりスマートな質問を投げかけることが重要になります。

データ・ドリブンな意思決定とは、データを活用して、意思決定プロセスの改善方法を明らかにすることです。意思決定モデルという考え方にもつながり、処方的アナリティクス手法のアウトプットによって、どのアクションを行うべきかを特定します。分析モデルにはほかにも、記述的アナリティクス、診断的アナリティクス、予測的アナリティクスがあり (「主なアナリティクス手法とは?」参照)、多様な意思決定を支援することができます。

注目すべき点として、意思決定はアクションを促しますが、アクションを行うべきではないタイミングも同様に判断できます。

進歩的な組織は、データ・ドリブンな企業のビジョンを描き、ビジネス成果を定量化して伝達し、データを原動力とするビジネス変革を促すことで、データ/アナリティクスをビジネス戦略やデジタル・トランスフォーメーション (DX) に組み込んでいます (「データ/アナリティクス戦略の主な要素とは?」参照)。

ガートナーのアナリストでディスティングイッシュト バイス プレジデントのマイク・ローリングス (Mike Rollings)による、最新のデータ/アナリティクス戦略の基礎について、そしてデータ・ドリブンなビジネス戦略を策定する際に活用すべきベストプラクティスについての説明をご覧いただけます。セッションはこちらをご覧ください

ビジネスにおけるデータ/アナリティクスのユースケースとは?

組織が高度なアナリティクスを用いてビジネスの問題に取り組むケースが増えていますが、問題の性質や複雑さに応じて、予測分析のコンポーネントに予測/予想/シミュレーションを使用するのかどうか、どのように使用するのかが決まります (「高度なアナリティクスとは?」および「主なアナリティクス手法とは?」参照)。

デジタル・ビジネスの規模を拡大することによって、特に意思決定が複雑になっていくため、データ・サイエンスやより高度な手法を組み合わせる必要があります。組織は、予測能力と処方能力を組み合わせることで、要件や制約の変化に速やかに対処できます。

以下に、予想/シミュレーションという予測能力と、処方能力を組み合わせる事例を示します。

  • リスク軽減措置を促す所定のルールと組み合わせて、外科手術中の感染リスクを予測する
  • サプライチェーン全体にわたる需要の変化にプロアクティブに対応するために、最適化と組み合わせて、製品の受注量を予測する。ただし、不正確または「ダーティ」な可能性のある履歴データに依存しない
  • リスクに基づいて顧客をマイクロセグメントに分割するシミュレーションと最適化を組み合わせて、複数のシナリオを速やかに検討し、それぞれに最適な対応戦略を特定する

データ/アナリティクスは、さまざまなタイプの意思決定に対して、それぞれ異なる方法で使用されます。幹部リーダーがビジネスに関してより効果的な意思決定を行うには、いつ、どのような理由で、人間による意思決定をデータ/アナリティクスやAIの力で補完すべきかを知る必要があります。

ガートナーのアナリストでディスティングイッシュト バイス プレジデントのリタ・サラム (Rita Sallam)による、データ/アナリティクスの価値を最適化し、ビジネス・イニシアティブに沿ったデータ/アナリティクス・プログラムの特定、優先順位、選定を行う方法についての説明をご覧いただけます。セッションはこちらをご覧ください

データ/アナリティクス戦略の主な要素とは?

各組織にとって、データ/アナリティクスとは何を意味するのか、そして、その機会を捉えるためにどのようなイニシアティブ (プロジェクト) や予算が必要かを定義することが重要です。

データ/アナリティクスの戦略的プランニングの主なステップは、以下のとおりです。

  • 組織の使命と目標から始める
  • データ/アナリティクスがこれらの目標にもたらす戦略的インパクトを特定する
  • データ/アナリティクスの目標を用いてビジネス目標を実現するために、アクションの優先順位を設定する
  • データ/アナリティクスの戦略的ロードマップを作成する
  • 一貫性のある最新のオペレーティング・モデルによって、そのロードマップ (すなわちプロジェクト、プログラム、プロダクト) を実装する

また、データ/アナリティクスのための企業オペレーティング・モデルには、データ/アナリティクス戦略の実行に必要となる、データ・エコシステム、アーキテクチャ、組織的デリバリ・アプローチのギャップを解消することも求められます。

データ・リテラシーとは?

ガートナーはデータ・リテラシーを、「置かれた環境や状況の中で、データを読み、書き、伝える能力」と定義しています。このためには、データのソースと構造、適用するアナリティクスの方法と手法を理解し、ユースケース、アプリケーション、得られた価値を記述する能力が必要になります。「すべての従業員をデータ・サイエンティストとしてトレーニングすべき」と主張しているように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。ビジネスの観点からデータ・リテラシーを要約すると、「ビジネス・リーダーが身の回りのデータに関して、よりスマートな質問ができるよう支援するプログラム」となるかもしれません。

組織内のデータ・リテラシーを高めることは、テクノロジの問題ではなく、組織文化や変更管理の問題です。データ/アナリティクスはビジネスのあらゆる側面やコミュニティ、さらには私たちのプライベートにまで、かつてないほど浸透しています。関連する言語でコミュニケーションを図る能力、すなわちデータ・リテラシーを身に付けることは、組織が成功を収める上でますます重要になっています。しかしながら、こうした持続的で有意義な変化を起こすには、人々が新しいスキルや行動を学ぶ必要があります。

組織のベスト・プラクティスとしては、データ/アナリティクス戦略における変更管理の部分を重視してエネルギーと労力を注ぎ、リーダーシップやチェンジ・エージェント (変革推進者) を活用し、データ・リテラシー (「スキル」すなわち「適性」) と組織文化 (「意欲」すなわち「態度」) の両方に対応することが挙げられます。データ・リテラシーを高めるにはまず、リーダーが態度を示す必要があります。例えばCIOや最高データ責任者 (CDO)は、財務 (通常はビジネス・インテリジェンス [BI]) のリーダーや人事組織 (育成とトレーニング) と協力してデータ・リテラシー・プログラムを導入し、データ/アナリティクスを適応/採用するためのツールを各部門のリーダーに提供します。

総合的なデータ・リテラシー・プログラムの一環として、データ・ストーリーテリングを採用し、肯定的でインパクトの大きいステークホルダーの関与を促すことができます。データ・ストーリーテリングでは、データと知見をデータ・ドリブンなストーリーに組み込む入念な手法を用いて、共有されるデータをステークホルダーが容易に解釈し、理解し、対応できるようにします。

データ/アナリティクス・ガバナンスとは?

データ/アナリティクス・ガバナンス (多くの組織は「情報ガバナンス」と称している) では、意思決定権と説明責任を指定して、組織が情報資産の評価、作成、保存、アクセス、分析、消費、保持、廃棄を試みる際に適切な行動ができるようにしています。データ/アナリティクス・ガバナンスを全般的なビジネス戦略と結び付け、組織のステークホルダーから不可欠と見なされるデータ/アナリティクス資産に根付かせることが重要になります。

データ/アナリティクス・ガバナンスには、確実で信頼性の高いミッション・クリティカルなデータを企業全体に供給する、人 (方針を定める幹部、意思決定者、ビジネス部門のデータ/アナリティクススチュワードなど)、プロセス (データ/アナリティクスアーキテクチャ/エンジニアリング・プロセス、意思決定プロセスなど)、テクノロジ (マスタ・データ管理ハブなど) が含まれます。

注目すべき点として、ガバナンスは当初は規制コンプライアンスにのみ焦点を絞っていましたが、現在は最大のビジネス・インパクトが得られる最小限のデータの統制へと進化および拡大しています。つまりデータ/アナリティクス・ガバナンスは、組織を保護する「守りの能力」と共に、ビジネス価値を高める「攻めの能力」も備えるまでに成長しています。

データ/アナリティクス・ガバナンスを効果的に実践するには、企業全体のガバナンスとビジネス領域のガバナンスのバランスを図ることが求められますが、そのためには標準化された企業アプローチを用いて、ビジネス・リーダーを十分に関与させることが必要になります。データ/アナリティクス・ガバナンスは孤立して存在するわけではなく、データ/アナリティクス戦略から手がかりを得る必要があります。データ/アナリティクス資産/イニシアティブを、ビジネスやステークホルダーの価値と結び付ける、具体的で測定可能な指標 (特定の市場分野における顧客維持率や、エコシステム・パートナー経由での収益の割合など) を組み込むことで、明確なビジネス成果に言及します。

データ/アナリティクス・テクノロジの将来は?

データ担当グループはかつてアナリティクス・チームと分離しており、それぞれが別々に管理されていましたが、以前はまったく別であった両テクノロジの市場は、さまざまな方法で重なりつつあります。例えばデータ管理プラットフォームには、機能を高速化するためにアナリティクス (特にML) が組み込まれるケースが増えています。

アナリティクスとBIのプラットフォームではデータ・サイエンス機能が向上しており、データ/アナリティクス・ガバナンスなどのケースで新たなプラットフォームが登場しています。またクラウド・サービス・プロバイダーが、こうしたすべてのサービスが使用されるインフラストラクチャ・プラットフォームへの支配を強めていることから、さらに別形態の複雑さが加わっています。

データ/アナリティクス/AI市場にわたる従来型のプラットフォームが、データ/アナリティクスのユースケースの増加に対応するのは容易ではないため、組織は既存のオンプレミス・ソリューションの高額な総保有コストと、リソースの増加や新しい機能 (自然言語クエリ、テキスト・マイニング、半構造化/非構造化データ分析など) の必要性のバランスを図る必要があります。

つまりデータ/アナリティクスの将来に向けて組織に求められるのは、コンポーザブルな拡張データ管理/アナリティクス・アーキテクチャに投資し、高度なアナリティクスをサポートすることです。最新のデータ/アナリティクスシステム/テクノロジには多くの場合、以下が含まれています。

データ管理システム

  • マスタ・データ管理 (MDM) とは、企業が保有する、公式かつ共有のマスタ・データ資産について、ビジネス部門とIT部門が連携して統一性/正確性/スチュワードシップ/ガバナンス/セマンティックの一貫性/説明責任を確保するために、テクノロジを活用したビジネス規律を指します。

  • データ・ハブは、データの共有とガバナンスの実現にフォーカスしています。データの生成元と利用者は、データ・ハブを通じて相互につながり、効果的なデータ共有を実現するためにガバナンスのコントロールと共通のモデルが適用されます。MDMは、マスタ・データのみにフォーカスするデータ・ハブです。データ・カタログがガバナンス領域に進出するケースが増えているため、これもデータ (およびアナリティクス) ハブになりつつあります。

  • データセンターはサーバを物理的に収容します (サーバやクラウドに格納されるデータ構造である、ウェアハウスとは異なります)。データセンターの未来は、ワークロードがクラウドに移される度合いに左右されます。こうした移行に関する意思決定は、ビジネス上のメリットに基づいて下す必要があります。

  • データ・ウェアハウスは、詳細なトランザクション・データ (場合によってはほかのタイプのデータ) を収集するエンドポイントを提供します。これは、価値が十分に確立されたデータの予測可能な分析、すなわち企業内の多くのユーザーに拡張できる、事前定義された反復可能な既知の分析をサポートします。

  • データ・レイクは、未精査のデータ (変換や品質保証が限定的で、固有のガバナンスを伴う、ネイティブ形式のデータ) を収集し、ユーザーが高度にインタラクティブな方法で探索/分析できるようにします。データ・レイクは、データ・ウェアハウスなど他の記録システムに取って代わるものではなく、大きな価値を備えているかもしれない未精査のデータを保存することで、記録システムを補完します。データ・レイクに最適な領域は、純粋な検出、データ・サイエンス、反復的なイノベーションです。

データ・ファブリック

データ・ファブリックは、異種混在のデータ・ソース全体に拡張されたデータ統合/共有を実現する、新しいデータ管理設計です。組織のデータ統合インフラストラクチャを簡素化し、拡張性の高いアーキテクチャを構築する設計の選択肢として、ますます人気が高まっています。

データ・ファブリックはいったん幅広く導入されると、手動によるデータ統合タスクを大幅に削減し、データ統合設計やデリバリを拡張 (場合によっては完全に自動化) できます。しかし、データ・ファブリックはまだ新しい設計概念であり、データ・ファブリックをまとめるために必要な成熟したコンポーネントをすべて、統合的に提供しているベンダーは存在しません。組織は最終的には、前掲のテクノロジを始めとする最新の能力 (アクティブなメタデータ管理など) を用いて、自らデータ・ファブリックを開発するか決める必要があります。

また、データ・ファブリックを構成しているテクノロジ・コンポーネントの成熟度はさまざまであるため、組織はユースケースの進化に合わせて、コンポーザブルなテクノロジ・コンポーネントを慎重に組み合わせる必要があります。

クラウドにおけるデータ/アナリティクス

従来型のデータ/アナリティクスプラットフォームで、複雑さを増すアナリティクスに対処するのは容易ではなく、オンプレミス・ソリューションの総保有コストは、環境の複雑化とリソース/メンテナンスの増加によって上昇を続けています。これに対してクラウドのデータ/アナリティクスは、新しいサービス、シンプルさ、アジリティを通じてデータの近代化に対処し、より多くの価値と能力をもたらします。また、エンド・ツー・エンドのデプロイをサポートするには、新しいタイプのアナリティクス (ストリーミング・アナリティクスなど)、専門的なデータ・ストア、よりセルフサービスに適したツールが必要になります。

クラウド・デプロイでは、ハイブリッドであれ、マルチクラウドであれ、インタークラウドであれ、多くのデータ/アナリティクスコンポーネントについて考慮する必要があります。例えば、データの取り込み、データ統合、データ・モデリング、データの最適化、データ・セキュリティ、データ品質、データ・ガバナンス、管理レポート、データ・サイエンス、MLなどです。

高度なアナリティクスとは?

高度なアナリティクスでは、従来のビジネス・インテリジェンス (BI) アプローチでは発見できないような知見を得るために、洗練された定量法を使用します。これは、予測的手法、処方的手法、そして人工知能 (MLなど) を用いた手法にわたっています。つまり、以下のように要約されます。

  • アナリティクスおよびBIは、基本的または従来型の方法を通じて、知見、レポート、ダッシュボードを作り出すことを指す

  • 高度なアナリティクスは、データ・サイエンスと機械学習テクノロジを使用して、予測的/処方的モデルをサポートすることを指す

理由は違えども、両者はあらゆる組織にとって有益ですが、市場全体は変化し続けています。テクノロジは、従来のように個別に進化したアナリティクスにフォーカスするのではなく、コンポーザブルになりつつあり、セルフサービス機能を望むビジネスの役割から、プログラミングやエンジニアリングを目指す高度なアナリティクスの役割に至るまで、さまざまな役割とペルソナを中心に編成されています。

拡張アナリティクスではML/AI手法を用いて、アナリティクスから知見を引き出し、消費し、共有する方法を変革します。拡張アナリティクスには自然言語処理と対話型インタフェースが含まれているため、ユーザーは高度なスキルがなくても、データや知見を扱えるようになります。

幹部リーダーは高度なアナリティクスによって、タイムリーかつ革新的な方法で、より複雑で難しい質問を投げかけ、回答できるようになります。洗練された賢明なメカニズムを用いて問題を解決 (イベントの解釈、意思決定の支援と自動化、アクション実行) することで、より優れた意思決定の基盤をもたらします。

高度なアナリティクスでは、従来型のアナリティクスよりも多様なデータ・タイプ/ソースを活用でき、場合によってはまったく新しいデータの創出も可能になるため、厳格なデータ・ガバナンス戦略と、必要となるインフラストラクチャ/テクノロジの計画が求められます。例えば、非構造化データを未加工の形式で管理するために、データ・レイクを活用できます (「データ/アナリティクス・テクノロジの将来は?」参照)。

高度なアナリティクスによって、データ/アナリティクスリーダーがデータ/アナリティクスの成熟化と活用を促す機会が拡大し、組織におけるスマートなビジネス上の意思決定と、成果の向上を推進できます。この機会をつかむには、データ/アナリティクス戦略とオペレーティング・モデルの、現状および望ましい将来像を評価することが欠かせません。

主なアナリティクス手法とは?

データはあらゆる組織で幅広く使用されています。すべてのデータがアナリティクスに使用されるわけではありませんが、データなしでアナリティクスを行うことは不可能です。データやそのすべてのユースケース、および当該データの分析に必要なテクノロジは、幅広く存在します。組織やベンダーごとに、「データ&アナリティクス」(または「データ・アナリティクス」) という言葉の用法が異なるのは、このためです。

「データ」と言及される場合、例えばビジネス・アプリケーション/システム (コア・バンキング、エンタプライズ・リソース・プランニング、顧客サービスなど) における、データの業務上の用途が含まれているはずです。「アナリティクス」(「データ・アナリティクス」と呼ばれる場合もある) は、トランザクションの発生後など下流で行われることの多い、データ分析のユースケースを指します。

前述のように、アナリティクスは以下の4つの手法で構成されています。

記述的アナリティクス

ビジネス・インテリジェンス (BI) ツール、データの可視化、ダッシュボードを用いて、「何が起こったか」あるいは「何が起こっているか」という問いに答えます。例えば調達部門は、「前四半期に商品Xにいくら支払ったか」「商品Yの最大のサプライヤーは誰か」といった問いに答えることができます。

診断的アナリティクス

「なぜXが起こったか」という問いに答えるために、深く掘り下げるデータマイニング能力を必要とします。例えば営業リーダーは診断を用いて、ノルマを順調に達成しそうな営業担当者の行動を特定できます。

予測的アナリティクス

一般的には発生確率を扱い、長期にわたる一連の成果の予測や、考え得る複数の成果に関連する不確実性の特定 (すなわちシミュレーション) に使用できます。予測的アナリティクスは、「何を期待すべきか」を明らかにし、「発生する確率が高いことは何か」という問いに対応します。しかし、「それに対して何をすべきか」というような問いには答えられません。

予測的アナリティクスは、予測的モデリング、回帰分析、予測、多変量解析、パターン・マッチング、機械学習 (ML) を活用します。

処方的アナリティクス

成果を達成するため、または成果に影響を及ぼすために最適な方法を推定し、アクションを促すことを目的とします。予測的アナリティクスと組み合わせることで、予測的な知見を自然に活用して拡張し、「何をすべきか」「所定の成果を達成するには何ができるか」といった問いに対応できます。

処方的アナリティクスには、ルール・ベースのアプローチ (構造的な方法で既知の知識を組み込む) と最適化手法 (オペレーション・リサーチ・グループによって従来使用されていた方法) の両方が含まれ、実行可能なアクション・プランを生成するために、制約内で最適な成果を目指します。処方的アナリティクスは、グラフ分析、シミュレーション、複合イベント処理、レコメンデーション・エンジンといった手法を活用します (「高度なアナリティクスとは?」参照)。

予測能力と処方能力を組み合わせることは、多くの場合、ビジネスの問題を解決し、よりスマートな意思決定を下すための重要な第一歩となります。さまざまなアナリティクス・タイプの潜在的ユースケースを理解することは、組織が本当の意味でデータ・ドリブンとなるために必要な役割、コンピテンシ、インフラストラクチャ、テクノロジを特定するために不可欠です。これは特に、4つの主なアナリティクス・タイプが、人工知能 (AI) による拡張と融合する場合に当てはまります。

「ビッグ・データ」とは?

ビッグ・データ」という用語は、大容量、高速、多種など極端な条件のデータを表現するために、数十年前から用いられています。しかし、ビジネスにとってのビッグ・データ時代の特徴は、そのリスクと機会にあります。つまりデータ・トラフィックの急増 (特にインターネットの利用やコンピューティング能力の進化に伴うもの) は、意思決定を向上させる知見の豊富な源泉をもたらし、同時にビッグ・データの保管、管理、分析方法に関して組織に課題を突き付けています。

組織の大半は、ビッグ・データからビジネス・インテリジェンスを引き出す方法を見つけ出していますが、幅広い多様なコンテンツ (音声、動画、画像資産を含む) を大規模に管理して分析することに苦心している組織も多々あります。これは特に、データ・ソースの領域が拡大/変化し、高度なアナリティクスにより知見へのニーズが高まる中で顕著になっています。

進歩的な組織はもはや、管理、ガバナンス、知見の抽出の取り組みに関してビッグ・データとそれ以外を区別しておらず、すべてを単にデータとして扱っています。その代わり、新しい種類のデータや分析を活用し、多様なデータの組み合わせにおける関係を検出して、ビジネス上の意思決定、プロセス、成果を改善しようと積極的に取り組んでいます。

例えばシンセティック (合成) データは、実データに対してサンプリング手法を生成したり、モデルとプロセスがやりとりしてまったく新しいデータを創出する (データを現実世界から直接取り込むのではない) シミュレーション・シナリオを作成したりすることで活用されています。これが最も役に立つケースは、MLの基盤となっているデータセットに、ビジネス・ユーザーが (ごくわずかな可能性でも) 発生し得ると知っている、例外状況が含まれていない場合です。こうしたデータは依然として、MLモデルのトレーニングの支援に必要となります。

世界的なパンデミックなどのビジネスの破壊的変化も、幅広いユースケースにわたってより多くのデータ・タイプを使用する必要性を促しています (これは特に、将来の意思決定の基盤としては、従来のビッグ・データはあまり適切ではないと証明されているためです)。データ・ソーシング、データ品質、バイアス、プライバシー保護に関する懸念も、ビッグ・データの収集に影響を及ぼしており、その結果として「スモール・データ」および「ワイド・データ」と呼ばれる新しいアプローチが登場しています。

ワイド・データのアプローチによって、大小さまざまなデータ・ソースのデータ・アナリティクスが可能になり、相乗効果が得られます。こうしたデータ・ソースには、高度に組織化された主に定量的な (構造化) データと、定性的な (非構造化) データの双方が含まれます。スモール・データのアプローチでは、幅広い分析手法を用いて有益な知見を生成しますが、これはより少ないデータでも可能です。

ガートナーでは現在、スモール・データワイド・データ、ビッグ・データ (要するにあらゆる種類のデータ) をまとめて説明するために、Xアナリティクスという用語を使用しています。しかし2025年までに、70%の組織は、利用可能なデータをより効果的に活用するために、ビッグ・データからスモール/ワイド・データへの重点移行を余儀なくされるとガートナーでは予測しています。これは、必要なボリュームを減らしたり、多様な非構造化データ・ソースからより多くの価値を引き出したりすることで実現します (「高度なアナリティクスとは?」参照)。

データ・アナリティクスの進化についてのこうした予測が、重要な戦略的プランニングの仮説事項をもたらし、データ/アナリティクスのビジョンとデリバリを強化します。

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