新しいハイテク・プロダクトのプラン策定を検証する5つのステップ

2021年10月1日

テクノロジ・プロダクト・マネージャーは、ハイテク・プロダクトのプラン策定に関して、以下の5つのステップを実行すると、不確実性の中でも意思決定を下すことが可能です。

ハイテク・プロダクトのプラン策定は、不確実性の中で意思決定を下すことが求められる、リスクの高い取り組みです。重要なのは、新しいプロダクトが顧客に受け入れられるかどうかを把握することです。

ハイテク・プロダクトのプラン策定は、アイデアが社内での広範な精査に耐えられると勢いが増す

グローバル市場では、あらゆる企業がさまざまなプロダクトを提供しています。新しいプロダクトのアイデアは、数カ月に及ぶ協議を経て形になるものもあれば、一夜のひらめきで生まれるものもあります。

いずれにしても、興味深いアイデアが生じるとすぐに、「十分な規模の市場があるだろうか」「これは売れるだろうか」と自社のチェックポイントによって評価されます。そして、たいていの場合の回答は「いいえ」であり、そこでプロダクト・チームはアイデア出しの段階に戻ってしまいます。

検証プロセスを開始するためには、新しいプロダクトのアイデアを明確に定義し、以下について把握する必要があります。

  • ターゲットとなる顧客は誰か?
  • 新しいプロダクトによって解決される顧客のニーズは何か?
  • そのプロダクトは何か?何を実行するのか?
  •  顧客に提供される最大の価値は何か?

検証プロセスを通じて、こうした各要素に対する仮説を検証することで、アイデアは改善されていきます。プロダクトのアイデアが、ハイテク・プロダクトのプラン策定プロセスの検証を乗り越えれば、ステークホルダーは市場での成功を確信することができます。

ステップ1:コンセプトを共有する

ハイテク・プロダクトのプラン策定において最もシンプルな最初のステップは、組織の内外でコンセプトを共有することです。この検証に時間や費用をかける必要はありません。

まずは、自らのプロフェッショナル・ネットワークの中で、5人以上にアイデアを売り込むことから始めます。ネットワークを補うために、他のテクノロジ・プロフェッショナルと交流する機会が得られるミートアップなどのイベントに参加するのも一案です。

批判的なフィードバックに耳を傾ける

ポジティブなフィードバックが圧倒的に多いことは、重要でもなければ期待されてもいません。このステップの主な目的は、議論を繰り返しながらアイデアに磨きをかけることにあります。また最大の課題は、批判的なフィードバックに耳を傾けることです。批判的なフィードバックは直接的ではなく、励ましの言葉の奥深くに隠れている場合があります。

プロダクト・マネージャーは、革新的なアイデアに取り組んでいる時には特に、機密保持に配慮し、外部のフィードバックを求めることをためらうかもしれません。しかし、厳格な機密保持は、市場投入時間の優位性を得るために行われるもので、特許出願やM&Aにかかわる場合を除くと、過度に重視する必要はありません。大半のテクノロジ・プロダクトのアイデアに関しては、模倣して最初にリリースできるスキル/リソース/モチベーションを備えている企業は (仮に存在したとしても) それほど多くはないからです。

ステップ2:市場を調査する

コンセプトの共有を通じてプロダクトのアイデアに磨きをかけたら、ハイテク・プロダクトのプラン策定の次のステップに進み、新プロダクトを投入する市場の競争環境を評価します。このステップでは、プロダクトが属することになるカテゴリ、入手可能な代替ソリューション、その代替ソリューションと新プロダクトのアイデアの違いなどを確認することに焦点を絞ります。代替ソリューションの短所を把握することは重要であり、その短所を解消するのか、またどのように解消できるかの判断材料とすることができます。

ハイテク・プロダクトのプラン策定に着手する際には、既に市場に存在する類似の代替プロダクトを探す

このステップにおける最大の課題は、「代替プロダクトは存在しない」「新プロダクトは新たなカテゴリを確立する」と即座に宣言したくなる誘惑を避けることです。顧客が同じビジネス上の問題に対する潜在的な解決策として、別のプロダクトを検討する可能性がある場合は、たとえ新しいアイデアでは異なるテクノロジを使用していたり、機能が大幅に異なっていたりしても、それを代替プロダクトと捉えるべきです。

代替プロダクトが見つからない場合、この段階では、なぜ見つからないのか理解したり、仮説を立てたりすることが重要です。代替プロダクトが存在しない理由を把握することで、アイデアに対する自信を深めることができます。あるいは逆に、そのまま進めるべきか真剣に考え直すきっかけとなる可能性もあります。

ステップ3:顧客にとっての価値を評価する

ステップ2で実施した市場調査で重大な懸念が生じなければ、検証の次なるステップとして、新プロダクトが顧客にもたらし得る、ビジネス価値の評価を開始します。

財務的価値は常に、企業向けソリューションのの購入決定における検討事項です。顧客獲得のいかなる機会においても、購入担当チームの少なくとも一部のメンバーは、この数値を注視しています。この検証ステップは、財務的な観点から見て当該プロダクトが魅力的であるかどうかを確認するための、初期段階のチェックポイントとして必要になります。また、顧客の組織の中で、どのような役割の人が最も大きなメリットを受けるのか (つまり、対価を支払う可能性が高いのかどうか) を確認するためにも必要です。

顧客の大まかなビジネスケースの作成を試みることで、まだ答えの得られていない疑問点を具体化できる

この段階では未知の事項が多いため、顧客の正確なビジネスケースを作成することは困難です。しかし、実際にビジネスケースを作成してみることで、まだ答えの得られていない疑問点を具体化できます。このステップには長い時間をかけるべきではありません。数週間や数カ月単位ではなく、数時間や数日単位で実施すべきです。

このステップにおける最大の課題は、以下の2つです。

  • (「コスト削減」のような一般的な表現ではなく) プロダクトがもたらす具体的な経済的利益を算出する。例えば、「契約社員にかかる費用の削減額」など。
  • プロダクト以外のさまざまな要素を含む、顧客の負担する総コストを算出する。

直接的な競合企業が存在する確立されたカテゴリに向けてプロダクトが計画されている場合、調査が容易なため十分な財務的提案ができます。しかしその効果を見積もることができない場合は、顧客による当該プロダクトの利用方法やビジネス推進要因について、さらなる調査が必要であることを示す警告と捉えるべきです。

顧客の財務的影響を見積もることができないにもかかわらず、プロダクトが新たなカテゴリを創出するものと想定されている場合、プロダクトのアイデアを推進する上でテクノロジばかりに注目が集まり、顧客のニーズを覆い隠している可能性があるため、注意が必要です。

ステップ4:ハイテク・プロダクトのプラン策定の仮説を、ターゲットとなるバイヤーと共に検証する

次のステップは、これまでの仮説を、ターゲットとなるバイヤーと共に検証することです。ターゲットとなるバイヤーとの対話の目的は、プロダクトの事前売り込みではなく、バイヤーのニーズや購買意欲を確認し、理解を深めることにあります。

このステップにおける最大の課題は、適切なターゲットと対話することです。大手プロバイダーのプロダクト・マネージャーであれば、既存顧客を頼りにし、顧客諮問委員会を活用することもできます。プロダクトのアイデアによっては、こうした顧客が新プロダクトのターゲットの対象として適している場合もあれば、そうでない場合もあります。失敗例としては、ターゲットとなる顧客の組織において、プロダクト購入を推進する責務を担っていない従業員との対話をもとに検証することです。この段階では、実際のバイヤーと検証することが重要です。

ポジティブなコメントは励みになりますが、「興味があります」「開発が進んだらまたお知らせください」といったフィードバックで自信を深めることには注意が必要です。潜在的なバイヤーが、当該プロダクトを素晴らしいアイデアだと思っていると聞くだけでは、十分ではありません。

この段階で、ターゲットとなるバイヤーが、目標とする価格を支払う意思と能力があることを検証する

目指す検証レベルは、プロダクトの3人以上の潜在的なバイヤーが、「はい、私にはそのニーズがあり、説明のあったプロダクトに対して、その金額を支払うでしょう」と答えてくれることです。

さらに検証を進めるために、顧客の観点を深く理解しているテクノロジ・アナリストなどに対し、潜在的な顧客を対象とした質問を投げかけるのも良いでしょう。ただし、このような相談は、潜在的な顧客との直接的な対話を補完するもので、その代わりにはなりません。

ステップ5:実用最小限のプロダクトをリリースする

ハイテク・プロダクトのプラン策定がこのステップまで進んだら、プロダクトのアイデアは理論上では、検証済みとなります。つまり課題は存在し、顧客は想定された解決策を受け入れるとことが検証されています。しかし、プロダクトのアイデアの検証において、言葉だけではここまでしか進めません。このステップの目的は、そのアイデアを全面的に採用する前に、顧客が対価を支払う意思と能力を有しており、プロバイダーである自社から購入してくれることを証明する点にあります。

このステップまでは、ほとんど費用をかけずに検証を実施できます。しかし、実用最小限のプロダクト (MVP: Minimum Viable Product) の構築には一般的に、エンジニアリング・チームからの本格的な投資と、MVPを市場に投入するための部門横断的な関与が必要です。通常、投資を正当化するためのビジネスケースは、MVPの構築を始める前に作成します。プロバイダーは自らの組織に関して、ステップ5に着手する前に必要となる、デュー・デリジェンス (事前調査)、財務モデル、承認の適切なレベルを決定する必要があります。

ターゲットとなる顧客にとってMVPが有意義で貴重なものとなるよう、1つ以上のビジネス・モーメント (機会) に沿ってMVPの範囲を計画する

MVPは、当該プロダクトに対して計画されている、すべてのユースケースや機能に対応する必要はありません。しかし、対象とするビジネス・モーメント (機会) 、高品質で差別化されたカスタマー・エクスペリエンスを提供する必要があります。

このステップにおける2つの大きな課題は、第一に、最終プロダクトの単なる未完成バージョンではなく、実行可能なプロダクトであるMVPを構築すること、第二に、勢いだけでアイデアを推進しないことです。

MVPのステップは必要に応じて、新プロダクトに対する需要と顧客の熱意が実証されるまで、手作業で提供されるサービスから、プロダクト化されたオファリングへと段階的に進めることができます。これらが証明されれば、新プロダクトのアイデアに取り組む準備が整います。

ハイテク・プロダクトのプラン策定にはリスクがつきものであるが、適切に実施すれば利益を得られる

新プロダクトの開発と発表にはリスクが伴います。プロダクトの失敗率が高いため、多大なリソースを投じる前に、新プロダクトのアイデアをすべて検証し、市場のタイミングが適切であるか確認する必要があります。

シンプルなステップを通じてアイデアを検証し、開発サイクルの早い段階でプロダクトのビジョンに磨きをかけて改善して、現実のフィードバックに答えきれないアイデアへの無駄な投資を潜在的に回避できます。

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/

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