「AIアーキテクト」とは誰か?その役割とは?

2022年2月20日

企業のリーダーは、堅牢で全社的なAIアーキテクチャの構築をサポートするAIアーキテクトという役割を新たに設けることで課題を克服できます。

要約
  • 人工知能 (AI) のプロジェクト、プロダクト、展開モデルの膨大な多様性と本稼働までの厳しいリードタイム要件が相まって、AIアーキテクトという役割が求められるようになっている。
  • AIアーキテクトは、機械学習 (ML) とAIをエンド・ツー・エンドで結ぶパイプラインを構想し、構築、展開して、運用する。
  • AIアーキテクトは、堅牢で全社的なAIアーキテクチャの構築をサポートし、データ・サイエンティスト、データ・エンジニア、開発者、オペレーション/セキュリティ担当者と連携する。

人工知能 (AI) に関するイニシアティブは、アーキテクチャの選択ミスと、本稼働環境に対する準備態勢およびスケーラビリティの欠如によって頓挫することが多くあります。エンタプライズ・アーキテクチャとテクノロジ・イノベーションのリーダーは、AIアーキテクトという役割を新たに設け、堅牢で全社的なAIアーキテクチャの構築をサポートすることができます。

2023年末までに、ITリーダーの50%は、AIプロジェクトを概念実証 (POC) の段階を経て本稼働環境に引き上げることに苦心するとガートナーでは予測しています。組織は、成功を収める可能性を高めるために、AIアーキテクトを採用して、アーキテクチャ戦略の策定、ワークフローの作成、ツールセットの特定、AIオペレーションの拡張を強化できます。

今すぐダウンロード (英語):Reinforce Your Artificial Intelligence (AI) Ecosystem

AIアーキテクトとは?

ガートナーのアナリストで、ディスティングイッシュト バイス プレジデントのアルン・チャンドラセカラン (Arun Chandrasekaran) は次のように述べています。「AIアーキテクトとは、AIアーキテクチャ戦略のキュレーター兼オーナーです。また、データ・サイエンティスト、データ・エンジニア、開発者、オペレーション (DevOps、DataOps、MLOpsチーム)とビジネス部門のリーダーの橋渡し役を務め、AIイニシアティブのガバナンスとスケーリングを実現します」

AIアーキテクトは、エンタプライズ・アーキテクトやソリューション・アーキテクトといったアーキテクチャに関するほかの役割と密接に関係していますが、広範囲にわたる多様な職務を担当するエンタプライズ・アーキテクチャのチームとは異なり、堅牢で全社的なAIアーキテクチャを構築することに注力しています。

AIアーキテクトの役割とは ?

AIのユースケースや展開モデルは多岐にわたるため、AIアーキテクトには、以下のような 幅広い能力が必要です。

  • データ・サイエンティストをはじめとするAIのプロフェッショナルたちと連携し、ユースケースを特定して試験運用することで、デジタル・トランスフォーメーションへの取り組みを強化する。
    アーキテクチャの設計に加え、ユースケースが実現できるかどうかについてもビジネス・チームと協議し、ビジネス・リーダーのビジョンを、テクノロジを用いて現実的に実装できるものにします。それと同時に、部門間のイニシアティブのずれや非現実的なユースケースに注意を喚起します。
  • 現在および将来の要件に合わせて、テクニカルな実装を調整する。
    ビジネス部門のユーザー、データ・サイエンティスト、セキュリティのプロフェッショナル、データ・エンジニア/アナリスト、ITオペレーションの担当者など、複数のステークホルダーから要件を収集し、それに基づいて、実装すべきプロセスやプロダクトに対応づけます。
  • AIアーキテクチャの定義と、オープンソース/商用ソリューションからの適切なテクノロジの選定において、重要な役割を果たす。
    クラウド、オンプレミス、ハイブリッドなどの展開モデルを選定し、新しいツールと既存のデータ管理/アナリティクス・ツールとの統合性を高める必要があります。
  • データ、モデル、ソフトウェア・エンジニアリング全体にわたり、AIツールとプラクティスの監査を実施し、継続的な改善に重点を置く。
    AIサービスの評価、モデルの再調整のサポート、モデルの再トレーニングのためのフィードバックの仕組みを確保します。
  • セキュリティ/リスク・リーダーと密接に連携し、トレーニング・データの汚染、AIモデルの窃取、敵対的サンプルの使用といった攻撃に対しリスクを予期して排除する。
    これにより、AIの実装に倫理的な要素を組み込み、AIシステムへの信頼を回復します。また、今後の法規制を常に把握し、ベスト・プラクティスに照らして対応します。
     

AIアーキテクトに必要なスキル

AIアーキテクトに必要なスキル | ガートナー

AIアーキテクトには、幅広いスキル・セットが必要ですが、多くの場合、こうしたスキルを短期間で習得するのは困難です。

主なテクニカル・スキル:
  • AIアーキテクチャ/パイプラインのプランニング:MLとDL (ディープ・ラーニング) のワークロードに関するワークフローとパイプライン・アーキテクチャを理解する必要があります。これには、コンポーネントとアーキテクチャのトレードオフについての深い知識が含まれます。こうしたトレードオフは、AIのデータ管理、ガバナンス、モデル構築、展開、本稼働ワークフロー全体に関係します。
  • ソフトウェア・エンジニアリングとDevOpsの原則:これには、Gitツール、コンテナ・ツール、Kubernetesツール、CI/CDといったDevOpsワークフローやツールに関する知識が含まれます。
  • データ・サイエンスと高度なアナリティクス:高度なアナリティクス・ツール (SAS、R、Pythonなど) のほか、応用数学、ML/DLフレームワーク (TensorFlowなど) やML手法 (ランダム・フォレスト、ニューラル・ネットワークなど) に関する知識が重要です。
主なテクニカル以外のスキル:
  • 先見的なリーダーシップ:自社のチェンジ・エージェント (変革推進者) となり、組織がAI主導のマインドセットを取り入れられるようサポートします。AIの限界とリスクを現実的に判断しながら実践的なアプローチを取り、デジタル全般について先見的なリーダーシップを発揮するIT幹部に現実的な状況を提示します。
  • 協調的なマインドセット:AIプラットフォームでビジネス要件とテクニカル要件の両方を確実に満たすために、データ・サイエンティスト、データ・エンジニア、データ・アナリスト、MLエンジニア、その他のアーキテクト、ビジネス部門のリーダー、CxO (テクノロジ系かどうかを問わず) と効果的に連携し、そのメンバー間の関係を調和させる必要があります。

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本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
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