ビジネスにおいて「アダプティブAI」を重視すべき理由とは?

学習/適応し続けるアダプティブAIの価値についての考察

2023年1月29日

ガートナーによる2023年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドのひとつ「アダプティブAI」。

2026年までに、アダプティブAIシステムを構築/管理するためにAIエンジニアリングのプラクティスを取り入れた企業は、AIモデルの継続的な運用において、数的にも時間的にも競合他社を少なくとも25%上回るパフォーマンスを実現する、とガートナーは予想しています。

ポイント

  • アダプティブAIは、実世界の状況の変化に適応することで、より優れた、より迅速なユーザー・エクスペリエンスを創出する
  • 意思決定能力と柔軟性の向上は、意思決定インテリジェンス機能を導入することで実現する
  • ITリーダーは、状況に応じて学習し動作を変えることができるアダプティブAIシステムを構築するために、さまざまなプロセスをリエンジニアリングする必要がある

アダプティブな人工知能 (AI) は、従来のAIシステムとは異なり、自身のプログラム・コードを修正できます。この能力により、プログラム・コードが最初に記述された時点では把握/予見されていなかった実世界の変化に適応します。アダプティブAIを活用して適応性とレジリエンスを設計に組み込んでいる組織は、混乱に対してより迅速かつ効果的に対応できるようになります。

ガートナーのアナリストでディスティングイッシュト バイス プレジデントのエリック・ブレテヌー (Erick Brethenoux) は、次のように述べています。「最近の医療危機や気候変動で多くの企業が学んだように、柔軟性と適応性が今や極めて重要です。アダプティブAIシステムの目的は、継続的なモデルの再トレーニングや他のメカニズムの適用によって、ランタイム環境や開発環境で適応/学習することです。これによって、変化への適応力やレジリエンスが高まります」

2026年までに、アダプティブAIシステムを構築/管理するためにAIエンジニアリングのプラクティスを取り入れた企業は、AIモデルの継続的な運用において、数的にも時間的にも競合他社を少なくとも25%上回るパフォーマンスを実現する、とガートナーは予想しています。

アダプティブAIがビジネスにおいて重要な理由

アダプティブAIでは、一連のメソッド (エージェント・ベースの設計) とAI手法 (強化学習) を組み合わせて、システムが自らの学習方法や振る舞いを調整し、本番環境での実際の状況変化に適応できるようにします。

人間や機械の過去の経験やランタイム環境内から行動パターンを学習することで、結果を改善してデリバリを迅速化します。例えば、米国陸軍/空軍は、学習者個人の強みと弱みに合わせた訓練を提供する学習システムを構築しました。このシステムは、何を教え、いつテストし、どのように進捗を測定するかを判断します。このシステムは、個人教師のように機能し、指導内容を学習者に応じて調整します。

どの企業にとっても意思決定は極めて重要ですが、その取り組みはますます複雑化しており、意思決定インテリジェンス・システムの自律性の向上が求められるようになるでしょう。しかし、アダプティブAIシステムでは、意思決定を自動化するためにプロセスのリエンジニアリングが必要になります。これは、既存のプロセス・アーキテクチャに大きな影響を与える可能性があります。また、ビジネス・ステークホルダーは、AIが倫理的に利用されるようにし、法規制を遵守する必要があります。

アダプティブAIシステムを実装するには、ビジネス部門、IT部門、サポート部門から代表者を集めます。ユースケースを特定し、テクノロジに関する知見を提供し、ソーシングとリソース調達の影響を明らかにします。アダプティブAIシステムを構築するためには、少なくとも、ビジネス・ステークホルダーがデータ/アナリティクス、AI、ソフトウェア・エンジニアリングの担当者と連携する必要があります。AIエンジニアリングは、アダプティブAIアーキテクチャの構築と継続的な運用化において重大な役割を果たします。

最終的には、適応性の高いシステムは新しい方法でのビジネスを可能にし、意思決定のサイロ化を打破する新しいビジネスモデルやプロダクト、サービス、チャネルへの扉を開きます。

アダプティブAIの導入手順

AIエンジニアリングは、プロセス・レベルで実装、継続的な運用、変更管理の基盤となるコンポーネントを提供することで、アダプティブAIシステムを実現します。しかし、アダプティブAIを導入するには、AIエンジニアリングの変更管理に関する取り組みを大幅に強化する必要があります。この原則に関連する機能を多少変更するだけでは、目的を達成することはできません。

アダプティブAIに向けたシステムのリエンジニアリングは、従業員、ビジネス、テクノロジ・パートナーに大きな影響を及ぼします。これは、一夜にして実現するものではありません。

最初に、アダプティブAIシステムの基盤を構築します。そのために、継続的なインテリジェンス設計パターンとイベント・ストリーム能力により、現在のAI実装環境を補完し、最終的には、エージェント・ベースの手法に移行して、システムのコンポーネントの自律性を高めます。

また、ビジネス・ユーザーが容易にAIを導入できるようにし、アダプティブAIシステムの管理をサポートします。そのためには、継続的に運用されるシステムを通じて明確で測定可能なビジネス指標を採用し、意思決定フレームワークを信頼できるものにします。

Erick Brethenouxは、ガートナー リサーチのアナリストでディスティングイッシュト バイス プレジデントであり、機械学習、人工知能、応用コグニティブ・コンピューティングを専門としています。成長の原動力として高度なアナリティクスを活用するための戦略、組織、テクノロジについて組織を支援しています。

関連コンテンツ

eBook:2023年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド

Webinar:2023年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/

ビジネスを成功に導くガートナーのサービス

ガートナーのエキスパートから提供する、確かな知見、戦略的アドバイス、実践的ツールにより、ミッション・クリティカルなビジネス課題の解決を支援します。

Get Smarter

Gartner Webinars

Gartner Webinars

ガートナーのエキスパートから、さまざまな分野における最新の知見をご紹介

ガートナー コンファレンス

ニュースレター「Gartner News」へご登録ください

「Gartner News」はITの各分野を幅広くカバーした「皆様のビジネスとITを成功に導く情報」をお届けいたします。

ご登録のEメールアドレス宛てに、最新リサーチ情報、コンファレンス開催情報などをお届けいたします。

Gartner Articles

さらに Gartner Articles を表示する

ガートナーのリサーチ・サービスについてのお問い合わせ