ガートナーのアナリストでプリンシパルの中尾 晃政は次のように述べています。「企業はこれまで、コスト削減、効率化、人員補完による余力創出を目的としてアウトソーシングを活用してきました。しかしながら、期待した成果が見いだせないか、あるいは、長期にわたるアウトソーシングによって『パートナー依存』に陥っている現状が見て取れます。企業におけるアウトソーシングの需要は今後も増える傾向にあり、IT支出に占める比率も拡大すると予想されます。IT部門が人材不足の課題を解決できない状況は続くと考えられます」
委託先であるITベンダーにおいては、大手プレーヤーの市場支配が定常化し、重要顧客の「囲い込み」も加速しています。ITベンダーは、デジタル・トランスフォーメーションへの注力度に温度差があり、大手ITベンダーであっても決して全方位の施策に長けているわけではありません。そのため、企業が推進したい施策内容による人材スキルの差や不足が生じる可能性があります。
IT部門は限られたリソースを前提に最適なソーシング・オプションを選択すべき
ユーザー企業は今後もリソースが限られていることを前提にしたIT施策を遂行するために、社外のパートナーを広く捉え、その能力を可能な限り活用する必要があります。企業のデジタル・トランスフォーメーションの推進には、多様なパートナーの能力を最大限活用するソーシング戦略は不可欠です。そのため、IT部門には、デジタル・トランスフォーメーションに対する「姿勢」を明確にすることが求められます。企業においてデジタル化を推進している中心組織はIT部門以外のビジネス部門であることが多く見受けられますが、IT部門は企業のデジタル化にどのように対処していくのか、その立ち位置を明確に打ち出すことが重要です。ソーシング戦略の遂行においては、これまでのように要件や課題が明確になった取り組み (モード1) だけでなく、失敗してもそこから学習していくイノベーション活動に近い取り組み (モード2) も実施していかなければなりません。これら2つの取り組みを進めていくためには、モード1とモード2に切り分ける、あるいは、それらを併用する「バイモーダル」なソーシング戦略を志向する必要があります。
ガートナーが実施したサーベイの結果では、企業のリソース不足が叫ばれる中、今後の外部委託範囲については、「設計・開発・実装」と「運用・保守」だけでなく、上流工程である「戦略・企画立案」においても、増やしていく意向が見られます (図2参照)。