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2019年11月13日

ガートナー、2020年の戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10を発表

「Gartner IT Symposium/Xpo 2019」(11月12~14日、港区高輪) において、 業界のトップ・トレンドを明らかに

米国フロリダ州オーランド発 - 2019年10月21日-ガートナーは、企業や組織にとって重要なインパクトを持つ「戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10」の2020年版を発表しました。

ガートナーは、テクノロジが出現したばかりの状態を脱し、幅広く利用され、より大きなインパクトをもたらす状態に入り、大きな破壊的可能性を持つようになったトレンドや、今後5年間で重要な転換点に達する、変動性が高く、急成長しているトレンドを、「戦略的テクノロジ・トレンド」と呼んでいます。

ディスティングイッシュト バイスプレジデントのデイヴィッド・カーリー (David Cearley) は次のように述べています。「2020年の戦略的テクノロジ・トレンドでは、People-Centric (人中心) のスマート・スペースという視点から、重要なインパクトを体系化して評価しています。人をテクノロジ戦略の中心に据えることで、テクノロジが顧客、従業員、ビジネス・パートナー、社会などにいかにインパクトを及ぼすかという、テクノロジの極めて重要な側面が浮き彫りになります」

カーリーは次のように続けています。「スマート・スペースはPeople-Centricの考え方に基づくものであり、オープン性、接続性、調和、インテリジェンスがますます高まっているエコシステムにおいて、人と、テクノロジによって実現されるシステムがやりとりする環境を指します。人、プロセス、サービス、モノを含む複数の要素がスマート・スペースで組み合わさり、よりイマーシブかつインタラクティブな、自動化されたエクスペリエンスを創出します」

2020年に注目すべき戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10は、次のとおりです。

ハイパーオートメーション

ハイパーオートメーションは、複数の機械学習 (ML)、パッケージ・ソフトウェア、自動化ツールなどを組み合わせて一連の仕事を実行する概念と実装です。ここでは、ツールセットの幅広さだけを議論するのではなく、自動化のあらゆる手順 (発見、分析、設計、自動化、測定、モニタリング、再評価) を考える必要があります。すなわち、ハイパーオートメーションでは、自動化メカニズムの範囲や、そうしたメカニズムがどのように相互に関連し、それらをどのように組み合わせて調整できるかを理解することが重要です。

このトレンドは、ロボティック・プロセス・オートメーション (RPA) から始まっています。しかし、RPAだけではハイパーオートメーションとはいえません。ハイパーオートメーションでは、ツールの組み合わせによって、人がタスクに関与している部分を模倣できるよう支援することが必要になります。

マルチエクスペリエンス

2028年末まで、ユーザー・エクスペリエンスは、ユーザーがデジタル世界をどのように知覚し、デジタル世界とどのようにやりとりするかという点で、大きな変化を遂げるでしょう。実際、会話型プラットフォームによって、人がデジタル世界とやりとりする方法が変化しつつあると同時に、仮想現実 (VR)、拡張現実 (AR)、複合現実 (MR) によって、人がデジタル世界を知覚する方法も変化しています。こうして知覚とやりとりの両方のモデルが変化すると、多感覚かつマルチモーダルな未来のエクスペリエンスが実現します。

バイスプレジデントのブライアン・バーク (Brian Burke) は次のように述べています。「今後は、『テクノロジに関するリテラシーを備えた人』のモデルから、『人に関するリテラシーを備えたテクノロジ』のモデルへと変化します。相手の意図を解釈する作業は、ユーザーに代わってコンピュータが担うようになるでしょう。人間の多くの感覚を使ってユーザーとコミュニケーションを取る能力は、微妙な違いのある情報を提供できる豊かな環境を実現します」

専門性の民主化

民主化では、技術的な専門性 (MLやアプリケーション開発など) またはビジネス分野の専門性 (セールス・プロセスや経済分析など) といった専門家でなければ難しい分野に、より簡単にアクセスできるようにすることに重点が置かれます。劇的に簡素化されたエクスペリエンスを通じて、広範で高コストなトレーニングを受けていない人にもそうしたアクセスを提供することが民主化の目標とされています。民主化の例としては、市民アクセス (市民データ・サイエンティストや市民インテグレーターなど)、市民開発とノー・コード・モデルの進化が挙げられます。

2023年末までに、民主化トレンドの4つの主要な側面が加速するとガートナーは予測しています。具体的には、データとアナリティクスの民主化 (データ・サイエンティストを対象とするツールから、専門の開発者コミュニティを対象とするツールへの拡大)、開発の民主化 (カスタム開発されたアプリケーションでの人工知能 [AI] ツールの活用)、設計の民主化 (アプリケーション開発の追加機能を自動化してロー・コード開発やノー・コードのトレンドを拡大することによる、市民開発者の強化)、知識の民主化 (IT部門以外のプロフェッショナルがツールやエキスパート・システムにアクセスすることによる、自らの専門知識やトレーニングの範囲を超えた専門スキルの活用と応用) の4つです。

ヒューマン・オーグメンテーション (人間の拡張)

ヒューマン・オーグメンテーションでは、人の体験に欠かせない身体と認知に関する要素を改善するためにテクノロジを利用する方法を模索します。身体の拡張では、ウェアラブル・デバイスなどのテクノロジ要素を身体に装着または移植することで本来の身体能力を変化させ、人を強化します。認知の拡張は、従来のコンピュータ・システム上で情報にアクセスしてアプリケーションを活用したり、スマート・スペースで新しいマルチエクスペリエンス・インタフェースを利用したりすることで実現します。今後10年間で、人が個人の強化を模索するにつれて、身体と認知のヒューマン・オーグメンテーションは高度化し、普及が進むでしょう。これによって新たな「コンシューマライゼーション」効果が生じ、従業員が個人の強化や拡張を通じて職場環境の改善を図るようになります。

透明性とトレーサビリティ

個人情報が貴重であるという消費者の意識が向上し、企業や組織には、そのコントロールがいっそう求められるようになっています。企業や組織は、個人情報の管理とセキュリティに関するリスクの高まりを認識しており、政府機関は対応を確実なものとするために厳格な法令を施行しています。透明性とトレーサビリティは、こうしたデジタル倫理とプライバシーのニーズへの対応に不可欠な要素です。

透明性とトレーサビリティとは、幅広い姿勢、行動、支援テクノロジ、プラクティスを指します。それらの目的は、規制要件に対応し、AIなどの高度なテクノロジの利用に対する倫理的なアプローチを維持し、企業への信頼を回復させることです。企業や組織が透明で信頼できるプラクティスを構築するためには、(1) AI/ML、(2) 個人情報のプライバシー/オーナーシップ/コントロール、(3) 倫理に沿った設計という3つの領域に焦点を絞る必要があります。

エッジ機能の拡張

エッジ・コンピューティングとは、情報の処理およびコンテンツの収集と配信が、情報の発生源やリポジトリ、消費者に近い場所で行われるコンピューティング・トポロジを指します。トラフィックの流れや情報の処理をローカル側に維持しようとするものであり、その狙いは、遅延の低減、エッジ機能の活用、エッジにおける自律性の向上にあります。

バークは次のように述べています。「現在エッジ・コンピューティングが注目されている主な理由は、製造や小売といった特定の業界において、モノのインターネット (IoT) システムにより、組み込みIoT環境に非接続型機能や分散型機能を提供する必要があるためです。しかし、コンピューティング・リソースの高度化と特殊化、およびデータ・ストレージの増大によってエッジ機能が拡張されるにつれ、ほぼすべての業界やユースケースにおいてエッジ・コンピューティングが重要になるでしょう。ロボット、ドローン、自律走行車、オペレーション・システムなどの複雑なエッジ・デバイスが、このシフトを加速させるでしょう」  

分散型クラウド

分散型クラウドは、パブリック・クラウド・サービスをさまざまな場所に分散させ、サービスの提供者であるパブリック・クラウド・プロバイダーがそのオペレーション、ガバナンス、アップデート、進化に関する責任を負うというものです。これは、大半のパブリック・クラウド・サービスで採用されている一元化モデルからの大幅な転換を意味し、クラウド・コンピューティングの新時代をもたらします。

自律的なモノ

自律的なモノとは、これまで人間が担ってきた機能を、AIを利用して自動化する物理デバイスを指します。最も分かりやすい形態としては、ロボット、ドローン、自律走行車/自律航行船および自律型機器が挙げられます。自律的なモノは、固定的なプログラミング・モデルによる自動化をはるかに上回る機能を提供し、AIを活用して周囲の環境や人とより自然にやりとりする高度な振る舞いを実現します。テクノロジ機能が向上し、規制による認可が進み、社会で受け入れられるようになるにつれて、コントロールされていない公共スペースでの自律的なモノの展開が増加するでしょう。

バークは次のように述べています。「自律的なモノが増えると、インテリジェントなモノは、単独型からスワーム (群れ) を形成する協調型へとシフトしていくことが予測されます。協調型では、人から独立して、または人間の操作によって、複数のデバイスが連携します。例えば、協調型の組立プロセスでは、異機種のロボットが稼働できます。また、宅配市場で最も効果的なソリューションとして考えられるのは、配送地域への荷物の輸送に自律走行車を使用することです。車両に搭載されたロボットやドローンが、配達先に荷物を配達できます」

実用的なブロックチェーン

ブロックチェーンは、ビジネス・エコシステム全体にわたって信頼を構築して透明性をもたらし、価値交換を実現することで、各種の業界を再構築すると見込まれています。また、コストを削減し、決済時間を短縮し、キャッシュフローを改善する可能性を秘めています。資産をその起点まで追跡できるため、偽物に置き換えられる可能性が大幅に減少します。資産の追跡は、ほかの分野においても有益です。例えば、サプライチェーン全体にわたって食品を追跡して汚染源を特定しやすくしたり、個々のパーツを追跡して製品リコールの際に役立てたりできます。また、ブロックチェーンは、アイデンティティ管理においても力を発揮する可能性があります。スマート・コントラクトをプログラミングしてブロックチェーンに組み込み、商品を受領したら支払い処理が行われるなど、イベントをアクションのトリガーとすることができます。

バークは次のように述べています。「企業に導入するにはブロックチェーンは十分に成熟していません。その理由は、拡張性と相互運用性に欠けるなど、さまざまな技術的課題があるためです。こうした課題はあるものの、ブロックチェーンはディスラプション (破壊) や売り上げの創出につながる可能性が高いことから、企業や組織は近い将来に積極的に採用する予定がない場合でも、ブロックチェーンの検討を始めるべきです」

AIのセキュリティ

AIおよびMLは、今後も、幅広いユースケースにわたって人の意思決定を強化するために適用されます。これによって、ハイパーオートメーションを可能にし、自律的なモノを活用する大きな機会がもたらされ、ビジネス・トランスフォーメーションが実現します。その一方で、IoT、クラウド・コンピューティング、マイクロサービス、スマート・スペースにおける高度なコネクテッド・システムによる潜在的な攻撃ポイントの大幅な増加に伴い、セキュリティ・チームやリスク・マネジメントのリーダーは新しい重大な課題に直面します。セキュリティおよびリスク・マネジメントのリーダーは、AI搭載システムの保護、AIを活用したセキュリティ対策の強化、攻撃者によるAIの悪用を見越した対応という3つの主要分野に重点を置く必要があります。

ガートナーのサービスをご利用のお客様は、「Top 10 Strategic Technology Trends for 2020」で詳細をご覧いただけます。

ガートナーのサービスについては、こちらをご参照ください。
https://www.gartner.com/jp/products

CIOをはじめとするITリーダーが一堂に会する世界で最も重要なコンファレンス「Gartner IT Symposium/Xpo 2019」では、先進テクノロジに関するさらなる分析を紹介いたします。ITリーダーは、本コンファレンスに参加することにより、ビジネス課題の解決とオペレーションの効率化を目的としたIT活用法についての知見を得られます。コンファレンスのニュースと最新情報は、Twitterでご覧いただけます (#GartnerSYM)。

「Gartner IT Symposium/Xpo」の開催日時と場所は以下のとおりです。

2019年11月11~14日:インド、ゴア
2019年11月12~14日:日本、東京
2020年3月2~4日:アラブ首長国連邦、ドバイ
2020年5月11~14日:カナダ、トロント

日本では、11月12~14日に「Gartner IT Symposium/Xpo 2019」をグランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール (港区高輪) において開催しています。本プレスリリースに関連した内容は前出のカーリーが、「2020年の戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10」(13日 9:05~9:50、22F) で解説しました。14日にはオープンシアター・セッションでも抜粋して紹介します (14:50~15:10、OT34)。日本でのニュースや最新情報は、ガートナーのTwitterでもご覧いただけます。

【海外発プレスリリース】
本資料は、ガートナーが海外で発信したプレスリリースを一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含めガートナーが英文で発表したリリースは、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/en/newsroom/

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