Newsroom

プレスリリース

2020年2月21日

ガートナー、企業におけるRPAの推進状況に関する調査結果を発表

普及進むも、RPA導入は限定的な業務に限られる                    全社導入の推進拡大には課題あり

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下ガートナー) は、ロボティック・プロセス・オートメーション (RPA) の推進状況に関する調査結果を発表しました。

RPAはこの2~3年、日本市場において高い関心を集めてきました。2018年から2019年にかけては、これまで検証目的や一部業務に限定してRPAを採用してきた企業の多くが、社内の適用範囲を拡大すべく取り組み始めています。日本のRPAはハイプ・サイクルにおける「過度な期待」のピーク期を抜け、幻滅期の底に向かっています (図1参照)。

図1. 幻滅期の底に向かって加速するRPA

RPAを導入する日本企業の割合は年々増加し、2019年8月調査時には47.5%に達しました。しかしながら、RPAへの取り組みが進むにつれ、導入企業はさまざまな課題に直面するようになっています。

ガートナーが2019年5月、RPAを利用中/利用予定の企業に対し、RPAの主な作業内容について尋ねたところ、社内システムからのデータの抽出、データの転記や二次加工などが中心であることが分かりました。一方、業務システムのデータ更新作業や社外向けシステムに関連する作業など、障害発生時に大きな影響を受ける業務へのRPAの適用はいまだ検討段階である企業が多いと考えられます。

同調査において、自社のRPAの推進体制に適するものを3つの選択肢から選ぶよう求めた結果、最も多かったのが「IT部門が取りまとめ、全社で推進体制を標準化」の67%であり、これに「各部署の判断で個別に対応」(21%)、「ツールや研修は全社で標準化、推進は各部署が対応」(12%) が続きました (図2参照)。

図2. RPAの推進体制

 出典:ガートナー (2020年2月)

この結果で注目すべきは、「IT部門が取りまとめ、全社で推進体制を標準化」と回答した企業が6割を超えた点です。これまで日本におけるRPAの導入では、ユーザー部門が自部門の業務効率化を目的として自発的に検討を始め、IT部門を介さずRPAを採用するケースが多く、現在でもこのパターンは珍しくありません。IT部門が導入当初から積極的に関わるのはむしろまれで、個別部門によるRPA導入を後になって知ることが頻繁にありました。

アナリストでシニア ディレクターの阿部 恵史は次のように述べています。「こうした結果が出た理由としては、個々の部門によるRPA導入後、一定の成果を挙げられた段階から、RPAの適用範囲の全社的な拡大を志向する段階へ移った企業が増えていることが考えられます。RPAの利用を全社レベルで拡大するには、ITガバナンスやIT統制の観点から、RPAツールの技術的な機能評価、IT統制のプロセスや仕組みづくり、各種の標準化やガイドラインの策定が必要となるため、ユーザー部門が単独で取り組みを進めるのは困難であり、IT部門の関与が必須となるからです」

同調査では、RPAの推進体制と同様、RPAの開発体制についても3つの選択肢を提示して質問しました。その結果、回答率が最も高かったのは「IT部門が開発」の57%であり、次いで「ユーザー部門が開発」(23%)、「ユーザー部門が外部委託で開発」(20%) となりました (図3参照)。

図3. RPAの開発体制

出典:ガートナー (2020年2月)

「ユーザー部門自ら、業務自動化のためのシナリオ開発が可能なツール」というのが、RPAの当初からの売り文句でした。また、2018年から2019年にかけてガートナーに寄せられたRPA関連の問い合わせのうち、少なく見積もっても7割を超える企業がユーザー部門によるシナリオ開発を検討していました。しかし現実には、「ユーザー部門が開発」を担っている企業は23%にすぎず、ユーザー部門以外がシナリオ開発を行う企業が8割近いという状況が明らかになりました。

ガートナーは、今回の結果の背景には複数の理由があると推察しています。第1に、「一般的な企業のユーザー部門にとって、RPAのシナリオ開発は言われるほど容易ではない」と多くの企業が理解していることが挙げられます。RPAはいわゆるノーコードやローコードと呼ばれるツールに属します。しかし、シナリオを開発するには処理フローの考え方を理解している必要があります。第2に、RPAを安定稼働させるために不可欠なノウハウやスキルの修得が、ユーザー部門にとっては容易ではないということです。第3に、企業として一定のガバナンスを確保するための開発プロセスやガイドラインをユーザー部門のスタッフに理解させるのは、簡単ではありません。これらのことから、IT部門がRPAのシナリオを開発せざるを得ない状況になっていると考えられます。

前出の阿部は次のように述べています。「RPAの適用範囲の拡大は、現場レベルでの業務の可視化や効率化だけでなく、『働き方改革』の下地づくりや、デジタル・トランスフォーメーションに向けた一般社員のITリテラシー向上といった効果につながると期待できます。しかし、これを場当たり的に行うと、技術的負債の顕在化・肥大化を招き、企業の機敏性とガバナンスが中長期的に低下する恐れがあります。RPAの適用拡大を推進する際は、どの部門がそれを主導するのであれ、IT部門は前述したような自分たちにしか担えない役割を果たし、取り組みの成功に向け積極的に関与していくべきです」

ガートナーのサービスをご利用のお客様は、ガートナー・レポート「サーベイ・アナリシス:RPA推進の理想と現実 -導入・拡大への課題」(INF-19-170) および「2020年の展望:RPAによる自動化拡大のチャレンジを見極めよ」(INF-20-24) で関連する内容をご覧いただけます。

ガートナーのサービスについては、こちらをご参照ください。
https://www.gartner.com/jp/products

調査手法

本調査は、2019年5月に、全国の従業員数20人以上のITユーザー企業のシステムの管理者、あるいは購買責任者を対象に実施しました。有効回答企業数は715社でした。

Gartnerについて

Gartner, Inc. (NYSE: IT) は、お客様のミッション・クリティカルな課題について、より優れた意思決定と大きな成果へと導く実行可能かつ客観的な知見を提供します。詳細については下記Webサイトでご覧いただけます。

gartner.com

gartner.co.jp (ガートナージャパン)

報道関係各位からのお問い合わせ先