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2020年3月13日

ガートナー、テレワークの本格化に向けて注意すべきポイントを発表

コラボレーションと勤怠管理に焦点を当てたアプリケーションの視点から解説

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下ガートナー) は、テレワークに本格的に取り組もうとする企業が注意すべきポイントについて発表しました。

テレワークは働き方改革の目玉施策として、さらには東京オリンピック開催期間における交通混雑緩和策として多くの企業が取り組んできました。新型コロナウイルス感染症 (COVID-19、以下、新型肺炎) の拡大防止策の1つとして政府がテレワークを推奨したことから、ここにきてますます注目され、特に都市部の企業にとって、テレワークの導入は喫緊の課題となっています。

ガートナーの企業内個人向けの調査では、従業員数2,000人以上の企業に勤務する従業員の8割近く (76%) が、2017年11月の調査時点でテレワークに取り組んでいたというデータもあります。緊急対策の一環として今回一気に実施に踏み切れた大企業が相次いだのは、このように、ある程度下地が整っていたためと考えられます。とはいえテレワーク制度を導入している大企業の中には、実際の運用に尻込みするところも見られ、ガートナーにもテレワークの運用や勤怠管理の実施方法などについての問い合わせが寄せられています。

アナリストでバイス プレジデントの志賀 嘉津士は次のように述べています。「テレワークは単にアプリケーションを導入して使うだけでは不十分です。ビジネス文化や習慣、マネジメント層の意識改革も求められ、一朝一夕に成功するものではありません。このような緊急時にこそ、企業はテレワークの本質を理解し、いかにすればスムーズに実施できるかを考える必要があります」

ガートナーは、コラボレーションと勤怠管理というアプリケーションの観点から、CIOやアプリケーション・リーダーに対し、主にオフィス・ワーカー向けにテレワークを推進する際の注意点を以下に解説します。

自社のテレワークの準備態勢がどのレベルにあるかをチェックし、無理のない適用範囲 (対象者) を設定する

新型肺炎の感染拡大を防ぐ上では、スピード感を持って一気に進めることが重要ですが、「何とかなるだろう」と強引に進めてしまうと、業務が滞る恐れがあります。企業の担当者は、まずはオフィス・ワーカーの業務内容によるテレワークへの移行難易度を理解した上で、自社の準備状況に鑑み、適用範囲 (対象者) を設定することが肝要です。ガートナーでは、テレワークの実施段階を、6つのレベルに分けています (図1参照)。2019年4月に働き方改革関連法が大企業を対象に施行されて以降、多くの企業がテレワークを採用していますが、最も多く見られるのはレベル1に相当する企業です。

図1. テレワークにおける実施段階 (モデル例)

志賀は次のように述べています。「企業が緊急措置としてテレワークを導入する場合は、必ずしも平常時のように難易度の低いものから難しいものへと時間をかけて進める必要はありません。準備が整っている部門や拠点であれば、ハイレベルな施策を早期に実施することも可能です。全社一律に、準備が整うまで石橋を叩いて渡るようなアプローチではなく、個々の対象ごとに状況やリスクを評価し、可能なところから速やかに着手することを考慮すべきです」

これまでテレワークを導入してきた企業で生じた問題と、それらの回避策を知り、自社で発生し得るトラブルに備える

国内企業のテレワークへの取り組みがうまくいかなかった要因として、ガートナーでは以下の5つの課題を挙げています。

課題1. 資料が自宅から閲覧できない

従業員が必要なタイミングで必要な資料を閲覧できる環境は、緊急事態であってもすぐに構築できるものではありません。テレワークを本格的に進めるには、早急に優先順位を設け、必要な文書からデジタル化したり、この機会にペーパーレスを推進したりするなど、継続的に取り組む姿勢が求められます。自社のセキュリティ・ポリシーの運用状況を確認し、場合によっては、緊急措置として期間を限定した弾力的な運用も視野に入れるべきでしょう。

課題2. ビデオ会議の品質が安定しない

ビデオ会議システムを利用してテレワークを始めても、画面が乱れる、音声が途切れる、ハウリングで聞き取りにくい、といった不安定な状況では、人は集中力を維持できなくなります。複数拠点間で会議を行う場合に不安定になるという事例も報告されています。当座の対策としては、Webカメラをオフにして音声や資料共有の通信帯域を優先させること、音声のみ電話回線を利用することなどが考えられます。将来的には、企業ネットワークの通信容量の見直しや、品質面で実績・定評のあるツールの精査をすべきです。

課題3. コラボレーション・ツールの使い方が分からない

テレワークのインフラや制度をしっかりと整備しても、ITリテラシーの問題が落とし穴になることはよくあります。従業員のITリテラシーの向上は、企業の競争力に直結する要因であり、企業には恒常的に取り組むことが求められます。今回のような緊急時には、IT部門のヘルプデスクに問い合わせが集中することも想定されます。こうした事態を防ぐために、組織内でITに詳しい人、特定のシステムに詳しい人などをあらかじめ特定しておき、簡単な使い方などは組織内で完結するような態勢を取ることが望ましいでしょう。併せて、FAQを用意してポータルに掲載したり、E-Learningやオンライン説明会などを通じて、ツールの効果的な使い方を学ぶ機会を広く提供したりすることも有益です。

課題4. 勤務時間を正確に把握できない

2019年の法改正に伴う労務管理の厳格化によって、裁量労働制の対象者についても、健康管理の観点から「みなし労働時間」の状況を客観的な方法で把握することが義務付けられました。現在、紙の出勤簿、タイムカード、ICカードなど、オフィスへの出勤を前提にした勤怠管理を行っている企業は、何らかの代替手段を検討して、適切な勤怠管理を行う必要があります。比較的短期間で利用を開始できるツールとしては、さまざまな勤務形態に対応し、ネットワークにつながっていればモバイル端末やPCから利用でき、利用者の増減に柔軟に対応できるクラウド型の勤怠管理ツールが挙げられます。また、監視と利便性のバランスを取ることの難しさはありますが、さまざまなプレゼンス管理機能を提供する関連ツールを導入し、勤怠データの証跡として活用することも考えられます。

課題5. 現場の従業員がシャドーITの利用を拡大してしまう

これは平常時でも見られますが、従業員が個人的に利用しているLINEなどのチャット型ツールを業務に利用する、いわゆるシャドーITの問題があります。平常時には原則禁止としている場合でも、緊急時にはITリーダーが運用面での注意事項を従業員に発することで、急場をしのいで利用することも考えられます。また、新型肺炎を契機にした「テレワーク特需」を受けて、さまざまなベンダーが一定期間のフリートライアルなどのキャンペーンを打っています。IT部門は、こうした情報をいち早く押さえ、ツールの利用可否、推奨ツールの提示、利用時の注意点などについて社内に向けて積極的に発信し、シャドーITがやみくもに広がらないように注意を払うことが重要です。

志賀は次のように述べています。「これらの課題は一朝一夕に解決できるものではなく、抜本的に解消するためには、長期的に取り組まざるを得ません。しかし、今後も今回のような緊急事態が発生することは十分に考えられます。テレワークは、今回の感染症対策だけでなく、大型台風、大震災、その他災害時における事業継続の観点からも必要であり、これを契機に取り組みをより強固なものへと進化させていくべきです」

ガートナーのサービスをご利用のお客様は、ガートナー・レポート「テレワークの本格化に向けてワークプレース環境を整えるには」(APP-20-25) で詳細をご覧いただけます。

ガートナーのサービスについては、こちらをご参照ください。
https://www.gartner.com/jp/products

 

※本文に一部誤りがございましたので、発表時のものより修正しました (4月1日)

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