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2020年4月3日

ガートナー、新型コロナウイルス感染症への対応としてCIOがすぐに行動すべき項目を発表

目前の危機回避策とともに、中長期的なリスク回避と企業成長を視野に入れて推進すべき

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下ガートナー) は、新型コロナウイルス感染症への対応として企業のCIOがすぐに行動に移すべき項目を発表しました。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、世界中の企業が影響を受け始めています。グローバル企業のCIOは、情報収集、事業継続計画 (BCP)/ディザスタ・リカバリ (DR) の展開、そして従業員に対するリモートワーク環境の提供に追われています。これに対し、日本企業の対応には、好意的に見れば冷静さが、厳しく評価すればリスクに対する感度の低さが見受けられます。

ディスティングイッシュト バイス プレジデントでガートナー フェローの足立 祐子は次のように述べています。「日本のCIOは、一層のスピード感をもって迅速な対応を進めるべきときです。日々の目前の課題を解決することはもちろん重要ですが、CIOは戦略的なリーダーの一員であることを意識し、今までにない強力なリーダーシップを発揮しなければなりません。特にグローバルIT部門を率いるグローバルCIOは、各拠点が置かれた状況の変化を把握しつつ、さまざまなシナリオに備えた施策を打ち出すことで、先行きが読めないパンデミックによる悪影響を最小限に抑え、困難を乗り越えることができるでしょう」

「IT戦略/ガバナンス」「IT投資」「IT人材/組織」の観点から、想定される影響とCIOが取るべき対応を以下に解説します。

IT戦略/ガバナンス

多くの日本企業は、非常事態に対する事業継続管理 (BCM) プログラムの準備が不完全なために、企業全体として適切な対応を取れていません。また、IT部門としても緊急時のガバナンスを検討していないため対応が遅れたり、リモートワークの環境を整備できていなかったりするという課題に直面しています。また、日本企業の中には、今回のパンデミックがIT戦略やIT部門の活動にどのような影響を及ぼすのかまったく見えていないため、IT戦略などはそのままにし、パンデミックが収まってから修正をかける予定にしているところも多く見られます。

アナリストでバイス プレジデントの藤原 恒夫は次のように述べています。「まずはCEOを含め必要な関係者を巻き込んで、非常事態に対する危機管理計画とBCMプログラムの準備および再点検を行い、対応を開始することが重要です。また、リモートワークについて言うと、今回のパンデミックは、日本でもデジタル・ホーム・オフィスの設置を促進することになります。システム環境を整えると同時に、勤務場所、勤務時間や勤務形態に関して柔軟な選択肢を提供した上で、人事規定の内容を再確認し、政府の方針発表を注視しつつ、運用ルールを必要に応じて追加または緩和することが求められます」

IT投資

リモートワークを可能にするためのIT環境 (インフラ、セキュリティ、アプリケーション、操作教育など) を構築するには、コストが発生します。これらは計画外のIT環境整備になるため、計画していたIT施策が延期されたり、通常業務が阻害されたりすることになります。企業業績への影響が明確になったときには、新規IT投資の予算削減や配分の変更を余儀なくされるでしょう。全体の予算枠が小さくなる中で、IT投資の優先順位付けはより厳格になり、投資収益率 (ROI) が明確な投資や、不可避な投資が優先され、価値があまり明確になっていない投資施策は延期または中止を強いられることになるとガートナーはみています。

アナリストでシニア ディレクターの片山 博之は次のように述べています。「新規IT投資施策に関しては、投資案件の予算枠を、将来のビジネス拡大向けと、既存ビジネスの拡張向けとで分けて管理することが重要です。ここで留意すべき点は、将来のビジネス拡大のための概念実証 (POC) の予算枠は減らさざるを得なくても、実験をゼロにしてはならない点です。また、既存ビジネス拡張向けの投資案件については、ビジネス効果を明確にするために利用部門との協力体制を強化することが必要です。新規IT投資の予算削減や配分の変更には、投資効果の明確化、コストの可視化、リスク評価などを進めて、先手を打って対応することが求められます。継続的に支出される維持費の削減については、ベンダーとの価格交渉やサービスの利用停止など、すぐに取り組みやすいコスト削減策と、1年以内に実行する削減策とに分けて管理するとよいでしょう」

IT人材/組織

IT部門では、パンデミック対応による物理的負荷と精神的ストレスが急増し、業務の混乱や業務品質およびメンバーのモチベーションの低下を引き起こす可能性があるとガートナーはみています。リモートワークの迅速な展開においては、中間管理職がボトルネックとなるケースもあります。ガートナーがアジア太平洋地域の人事担当者向けに実施した調査では、現行のマネジメント手法を適用できないリモートワークに拒否感を覚えたり、自身のマネジメント能力に対する自信のなさなどの問題を抱えたりしている中間管理職が多く存在していることが明らかになっています。

前出の足立は次のように述べています。「CIOはIT部門の主要な意思決定者が感染する場合も想定し、業務のバックアップ体制の確立と最適化を行う必要があります。同時に、規定およびプロセスの変更、一元的な情報提供の場としてのポータル・サイトなどの整備、メンバーの精神的ストレスに配慮したコミュニケーションの実施を強化することが求められます。IT部門はパンデミックに伴う対応の中心を担うことから、メンバーの身体的および精神的な負担は計り知れません。IT部門の業務の中には、リモートワークが適用できないものも多く存在します。リモートワークができないメンバーや責任感の強いメンバーがストレスを抱え込まないよう、人事部門と連携し、サポート体制を確立することが肝要です。IT部門のメンバーは企業の一員であると同時に、それぞれの家族の一員です。CIOは、それぞれの状況に適した働き方ができるように支援していくことが重要です」

ガートナーは、CIOが看過しがちな項目に適切に対応できているか、直ちに自己評価を実施するためのチェックリストを作成しています (図1参照)。

図1. CIOのチェックリスト

足立は次のように述べています。「日本企業は度重なる災害を力強く乗り越えてきました。今は、より強靭なITを実現すべく、リモートワークの可能性を追求し、手を緩めずに働き方改革やビジネスモデル変革を進めていくときです。特に、リモートワークについては、今後の感染拡大の展開や政府の対応に即応できるよう、積極的に推進すべきです。そして、より適応力の高いIT戦略への転換を図り、状況の変化に即して短期間で戦略の修正案を出せるようにしておくことが求められます」

ガートナーのサービスをご利用のお客様は、ガートナー・レポート「新型コロナウイルス感染症対応:CIOのチェックリスト」(ITM-20-11) で詳細をご覧いただけます。また、先日実施したウェビナーでは、アドバイザリでバイスプレジデントの松本 良之が、「事業継続管理:パンデミックに備える」と題して、パンデミックへの備え、危機管理ソリューション、データとアナリティクスの力に関する10のステップについて解説しています。オンデマンドでも視聴いただけます。

ガートナーのサービスについては、こちらをご参照ください。
https://www.gartner.com/jp/products

新型コロナウイルスの急速な感染拡大と世界的な影響による事業の停滞・中断に備える組織の態勢づくりについては、ガートナーの特設サイト「Gartner coronavirus resource center」で詳細をご覧いただけます。こちらでは、無料のレポートやウェビナーをご案内しており、ガートナーのお客様以外でも閲覧可能です。

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