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プレスリリース

2020年12月7日

ガートナー、「企業のデジタル化をリードしているIT部門は約2割」との調査結果を発表

顧客価値に注力してデジタル化をリードし、IT部門の価値を高めるべき

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下 ガートナー) は、企業のデジタル化をリードしているIT部門は約2割しか存在しないとの調査結果を発表しました。ガートナーが2020年11月17~19日にバーチャルで開催した「Gartner IT Symposium/Xpo 2020」において、アナリストでシニア ディレクターの片山 博之が、講演「CEOに1ページで見せるIT部門の価値:2021年バージョン」の中で紹介しました。

ガートナーが2020年6月に国内の年商1,000億円以上の企業のCIOやITリーダーを対象に実施した調査において、「自社のデジタル化にIT部門はどのように関与していますか」と尋ねたところ、「関与しており、取り組みをリードしている」と回答した割合は23%でした。一方、「関与しているが、取り組みのリードはしていない」と回答した割合は40%、「関与していない/分からない」と回答した割合は37%であり、約8割の企業では、IT部門が自社のデジタル化を推進する旗振り役になっていないことが明らかになりました (図1参照)。

図1. 日本企業におけるデジタル化へのIT部門の関与の状況

出典:ガートナー (2020年12月)

講演を行った片山は、IT部門の価値を高める行動について次のように述べています。「従来IT部門が求められてきた『ビジネス部門の要求どおりにITを構築する』『コストとリスクにだけ注力することで全体最適を実現する』ことは、IT部門としてのタスクとしては重要とはいえ、経営トップからすれば当たり前な行動といえます。一方、『働き方改革をサポートする』『ビジネスの効率化や拡張をサポートする』『デジタル化のサポートをする』、さらに上流の企業全体のデジタル化をリードしていけば、IT部門の価値をより高めることにつながります」

IT部門が「経営トップにとっての価値」を高めていくためには、ビジネス価値や顧客価値に注力してデジタル化をリードしていくことが求められます。片山は具体的に以下の6つのポイントを挙げています。

システムを止めない:従来のIT部門ではシステムを止めないことが目標となっています。一方、価値の高いIT部門は、システムを止めないことは当たり前と考えて行動しています。経営トップにとってシステムは止まらないのが前提です。

「ビジネスからの要求待ち」から「ビジネスに自ら提案」:従来の「ビジネスからの要求待ち」の姿勢に加えて、自ら提案する姿勢が必要です。IT部門はビジネス・パートナーとして、ビジネスの内容を理解し、業務をより効率化する追加機能を提案することが求められます。特に部門横断のプロセスを最も理解するのはIT部門であることから、この領域での提案は価値を高めます。

「コストとリスクに注力」から「コストとリスクと価値に注力」:従来はコストとリスクにのみ注力していましたが、今後は、コストとリスクに加え、価値にも注力することが重要です。コスト削減では価値を考えずに削減にフォーカスすることが多いです。コスト最適化では削減したコストをより価値の高い投資に向けていくことを検討します。その上でIT部門には、ビジネス・パートナーの価値を高めることへの注力が求められます。ITで価値を高めるにはビジネス価値ツリーの活用も有効です。ここでは、ITによる効果をさらに高めるためのビジネス施策とセットで考える必要があります。

「リモートワークのサポート」から「働き方改革のリード役」:新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の影響によって、「リモートワークのサポート」はある程度実現しました。一方、これからは働き方改革をリードすることが重要です。経営トップ、人事、IT部門が働き方改革を進める必要性は高く、日本の企業においては依然として改善の余地がある状況です。IT部門にとっても、行うべきことはたくさんあります。

「失敗をしてはいけない」から「失敗から学ぶ」:デジタル化には、既存のビジネスを最適化して効率化を進める「デジタルによるビジネス最適化」と、新しい商品やビジネス・モデルを創造する「デジタルによるビジネス変革」の2つの領域があります。従来のIT部門は、「デジタルによるビジネス最適化」において、失敗しないように計画を立て、プロセスどおりに実行するという組織文化でした。一方、「デジタルによるビジネス変革」においては、「失敗から学ぶ」という姿勢が求められます。失敗からヒントを見つけて改善する、失敗を恐れない考え方が必要です。

「プロジェクト中心管理」から「プロダクト中心管理」:ビジネスの要求を受けてから対応する「プロジェクト中心管理」では、請負契約のように、計画を立て、計画どおりに実行します。ITのKPI (性能、正確性、可用性) に注力し、完成したらチームは解散となります。一方の「プロダクト中心管理」は顧客価値に着目します。ビジネスとITが一体になりプロダクト・チームとして行動します。定義されたプロセスはなく、ビジネス環境や顧客ニーズの変化などの継続的な変化に俊敏に対応します。ITのKPIよりも、顧客価値、ビジネスKPI、金額的成果に注力し、ビジネスとITの混成チームが、プロダクト・チームとして (解散せず) 継続的に改善していくことが求められます。

片山は、次のようにも述べています。「ガートナーが接するCIOの方々からは、IT部門の活動の価値を経営トップにどのように見せればよいか、という問い合わせを多く受けます。まずは、経営トップにとって当たり前の領域であるにもかかわらず重大インシデントが多かったり可用性が低かったりするならば、できるだけ早くこの領域の改善を進めます。既にこの領域で目標レベルを達成しているならば、次に注力すべきは、顧客価値の増大となります。IT部門がこの顧客価値を高める活動に注力し、それを実現できれば、経営トップにとってのIT部門の価値は一気に高まります。そのためには、こうした活動を経営トップに対してどのような指標を使って分かりやすく見せるか、ということが重要になります」

ガートナーは11月17~19日、「Gartner IT Symposium/Xpo 2020」をバーチャル (オンライン) で開催しました。Gartner IT Symposium/Xpo 2020は、CIOをはじめとするITリーダーが、自社のリーダーシップ、テクノロジ、経営戦略の各アプローチを改めて見直す場です。複雑で混沌とした状況において、これまでの常識や前提を捨て去り、これからの新たな可能性を追求し、現実的なビジネス課題の解決と、将来にわたる組織の成功に欠かせない知見やアドバイスを提供しました。ガートナーのエキスパートによる講演を中心に、2021年2月17日まで引き続きオンデマンドで配信中です (一部、オンデマンド配信がない講演もあります)。本プレスリリースに関連した内容は、前出の片山が「CEOに1ページで見せるIT部門の価値:2021年バージョン」(11月17日、11:00~11:30) と題した講演で解説しました。コンファレンスのニュースや最新情報はTwitterでもご覧いただけます (#GartnerSYM)。

ガートナーのサービスについては、こちらをご参照ください。
https://www.gartner.com/jp/products

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