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2023年5月15日

Gartner、2023年のデータ/アナリティクスのトップ・トレンドを発表

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、2023年のデータ/アナリティクス (D&A) に関するトップ・トレンドを発表しました。D&Aリーダーはこれらのトレンドを指針として活用し、変化を予測し、極度の不確実性を新たなビジネス・チャンスに変えることで、新しい価値の源泉を創出できます (グローバルでは2023年5月9日に発表しています)。

バイス プレジデント アナリストのガレス・ハーシェル (Gareth Herschel) は、次のように述べています。「組織に認められる価値を広範囲に提供する必要性が、これらのD&Aトレンドを後押ししています。最高データ/アナリティクス責任者 (CDAO) やD&Aリーダーは、組織のステークホルダーと協力して、D&Aの活用を促す最適なアプローチを把握する必要があります。換言すれば、人間の心理や価値観を考慮した上で、分析と知見を拡大・向上させることが求められます」

ビジネス・リーダーとITリーダーは、以下のトレンドを自社のD&A戦略に反映させるように取り組むべきです (図1参照)。

図1. 2023年のデータ/アナリティクスのトップ・トレンド

出典:Gartner (2023年5月)

トレンド1:価値の最適化

D&Aリーダーのほとんどは、D&Aが組織に提供する価値を、ビジネス部門が分かる言葉で説明することに苦労しています。組織のデータ、アナリティクス、人工知能 (AI) のポートフォリオから得られる価値を統合的に管理する能力がなければ、その価値を最適化することはできません。その能力には、価値のストーリーテリング、バリュー・ストリーム分析、投資のランク付け/優先順位付け、ビジネス成果の測定などが含まれ、期待される価値を確実に実現できるようにします。

ハーシェルは次のように述べています。「D&Aリーダーは、D&Aイニシアティブと、組織のミッション・クリティカルな優先課題を明確に結び付けるバリュー・ストーリー (ビジネス価値のストーリー) を構築することで、価値を最適化する必要があります」

トレンド2:AIのリスク管理

AIの利用拡大に伴い、企業は倫理的なリスク、トレーニングに用いるデータの汚染、不正検知の回避といった新たなリスクにさらされており、これらのリスクを軽減することが求められています。AIのリスク管理は、単に規制を遵守するだけではありません。ステークホルダーとの間で信頼関係を築き、AIの採用と活用を促すには、効果的なAIガバナンスと責任ある取り組みが不可欠です。

トレンド3:オブザーバビリティ

オブザーバビリティ (可観測性) は、D&Aシステムの振る舞いを理解できるようにすること、およびその振る舞いに関する疑問に答えられるようにすることを指します。

ハーシェルは次のように述べています。「組織はオブザーバビリティによって、成果に影響を与える問題の根本原因を短時間で特定できるようになり、信頼性の高い正確なデータを用いて、費用対効果に優れたビジネス上の意思決定をタイムリーに下せるようになります。D&Aリーダーは、ユーザーのニーズを理解し、それに基づいてデータ・オブザーバビリティのツールを評価して、そのツールが企業エコシステム全体にどのように適合するのか判断する必要があります」

トレンド4:データ共有は不可欠

データ共有の対象は、組織の内部 (部門間または部門内、あるいは子会社との間) だけでなく、外部 (組織のオーナーシップやコントロールが及ばない当事者間または当事者内) をも含みます。組織は「プロダクトとしてのデータ」を作成し、D&A資産を成果物あるいは共有のプロダクトとして共有します。

シニア ディレクター アナリストのケビン・ギャバード (Kevin Gabbard) は、次のように述べています。「組織の外部を含むデータ共有を通じたコラボレーションによって、データ資産を効果的に再利用することもでき、データの持つ価値を高めることができます。組織内外の多様なデータ・ソースにまたがったデータを共有するための単一アーキテクチャとして、データ・ファブリックを設計して採用すべきです」

トレンド5:D&Aのサステナビリティ

企業のESG (環境、社会、ガバナンス) プロジェクトにおいて、D&Aリーダーが分析と知見を提供するだけでは不十分です。D&Aリーダーは、サステナビリティを向上させるために、D&Aのプロセスを最適化するよう努める必要もあります。潜在的なメリットは膨大です。D&AやAIに携わる人々の間では、増大するエネルギー・フットプリント (環境負荷) への意識が高まりつつあります。その結果、(クラウド) データセンターでの再生可能エネルギーの利用、エネルギー効率の高いハードウェアの使用、スモール・データをはじめとする機械学習 (ML) 手法の活用など、さまざまなプラクティスが登場しています。

トレンド6:実用的なデータ・ファブリック

データ・ファブリックは、あらゆる種類のメタデータを活用する、データ管理デザイン・パターンの1つです。データ・ファブリックは、基礎となるデータのセマンティクス (データの持つ意味) を拡充するために、メタデータの状況を継続的に確認していくことによって、人とシステムの両方が役立てられるようなアラートや推奨事項を生成します。これにより、ビジネス・ユーザーはデータを信頼して利用できるようになり、スキル・レベルの低い市民開発者も幅広いデータに対する統合やモデリングができるようになります。

トレンド7:創発的なAI

ChatGPTなどのジェネレーティブAIは、来るべき創発的なAI (※) のトレンドにおける先駆けと言えます。創発的なAIは、拡張性、多能性、適応性という点で、多くの企業の活動に変革をもたらすでしょう。組織は次なるAIの波によって、現在では実現不可能な状況でもAIを適用できるようになります。これによりAIの普及が加速し、重要性が増します。

(※) 創発的なAI:強化学習や連合学習 (Federated Learning)、ジェネレーティブAIといった、AI分野における画期的なイノベーションである。これによって、企業や人類全体の複雑で緊急性の高い課題にAIで対応できるようになる。

トレンド8:コンバージド・エコシステムとコンポーザブル・エコシステム

D&Aのコンバージド・エコシステムは、D&Aプラットフォームのシームレスな統合、ガバナンスの適用、テクノロジの相互運用性を通じて、それが一体的に動作/機能できるような設計とデプロイを行います。エコシステムのコンポーザビリティは、コンポーネントとして構成できるようにアプリケーションとサービスを設計し、それらを組み立て、デプロイすることで実現します。

適切なアーキテクチャを採用することで、D&Aシステムのモジュール性、適合性、柔軟性が高まり、動的に拡張できるようになります。またD&Aシステムの合理化が進み、拡大と変化を続けるビジネス・ニーズに対応するとともに、ビジネス/運営環境の変化に合わせた進化が可能になります。

トレンド9:消費者がクリエーターに

現在、主にBIツールで実装された事前定義済みのダッシュボードに向き合っている時間は、動的に構成される会話型、あるいは組み込み型のユーザー・エクスペリエンスに取って代わられるでしょう。そうなることで、コンテンツ消費者それぞれの常に変化するニーズに対し、柔軟に対応できるようになります。

組み込み型で即時性の高い知見や、会話型のインタラクティブなエクスペリエンスを提供することで、組織におけるアナリティクスの活用と成果の獲得を後押しできます。こうした知見やエクスペリエンスは、コンテンツ消費者が、この先においてコンテンツ・クリエーターとなるために必要不可欠です。

トレンド10:主要な意思決定者は依然として人間である

すべての意思決定を自動化することはできず、またその必要もありません。

ハーシェルは次のように述べています。「意思決定における人間の役割を考慮せずに、意思決定の自動化を推進しようとすると、一貫した目的を見失った組織になってしまいます。それは、正しいデータ・ドリブンな組織とは言えず、結果的にビジネス成果に悪影響を及ぼすかもしれません。データ・リテラシーの向上施策を通じて、データとアナリティクスを人間の意思決定と組み合わせる重要性や価値について、組織全体で理解するようにしなくてはなりません」

シニア ディレクター アナリストの一志 達也は次のように述べています。「ジェネレーティブAIは、D&Aに対しても大きな影響を与えており、この先さらに影響範囲は広がっていくでしょう。恐れるのではなく、正確に理解して倫理的に正しく活用して、革新的な新技術の価値を企業活動に反映する必要があります。そのためには、ガバナンスやリスク管理の徹底は避けられませんし、データ共有やデータ・ファブリックの構築、D&Aプロダクトの開発と資産管理が求められます。何より、AIを使いこなす人間としてリスキリングに取り組み、組織の全体的なリテラシー向上を目指すのがD&Aリーダーに課せられた使命と言えるでしょう」

Gartnerのサービスをご利用のお客様は、リサーチノート「Top Trends in Data and Analytics 2023」(英語) で詳細をご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、こちらよりご参照ください。https://www.gartner.co.jp/ja/products

前出の一志は、来る6月22日(木)、「DX推進組織は次のステージとしてデータ&アナリティクス専任組織を目指せ」と題した無料のウェビナーを担当します。本ウェビナーでは、DX推進組織のリーダーが、日本では設置されることの少ないCDAO (最高データ&アナリティクス責任者) になって、組織の役割をシフトさせる必要性や、日本企業が直面しているデータ・リテラシーの課題と解決策などについて解説します。

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