Newsroom

プレスリリース

2023年6月13日

Gartner、ローコード開発ツールの採用を成功させるために実践すべき7つのベスト・プラクティスを発表

「ガートナー アプリケーション・イノベーション&ビジネス・ソリューション サミット」(6月13~14日) において、アプリケーション/ソフトウェアに関する最新トレンドと指針を解説

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、本日から開催している「ガートナー アプリケーション・イノベーション&ビジネス・ソリューション サミット」において、ローコード開発ツール (ローコード・アプリケーション・プラットフォーム:LCAP) の採用を成功させるために実践すべきベスト・プラクティスを発表しました。

ローコード開発テクノロジに対する全世界の支出は、2026年までに445億ドルまで拡大するとGartnerは予測しています。これは、ローコードを利用するテクノロジ全体の数字であり、ローコード開発ツールはその中でも最も大きい割合を占めています。

シニア ディレクター アナリストの飯島 公彦は次のように述べています。「ローコード開発ツールは、業務やIT上の課題を解決すべく多くの企業で検討され、導入が進んでいる一方で、ローコード・ツールの誤用/過剰使用の増大、セキュリティ・リスクの増大、アプリ開発のスキル不足の拡大、アプリケーションの無秩序な増加をはじめとした、さまざまな問題点が指摘されています」

アプリケーションソフトウェア・エンジニアリング・リーダーが、組織内でのローコード開発ツール (LCAP) の採用を成功させるために実践すべきベスト・プラクティスは次の7つになります。

1:LCAPの利用戦略を策定する

Gartnerに寄せられる問い合わせでは、LCAPをなんでも開発できると捉えて手組用の開発ツールや言語と同じように取り扱い、適用内容を明確に考えていないケースが散見されます。その結果として、実現したい内容にマッチしていないツールを選択するケースが多く見られます。

LCAPの活用に当たっては、利用戦略を策定することが重要です。ローコードのユースケースとローコード・テクノロジを特定し、整合させて、どこで、どのように活用するか、どのような場合には使用すべきではないかを明確にすることで、ミスマッチを避けることができるようになります。

2:試験運用や概念実証 (POC) を実施して、LCAPを評価する

多くの企業が、LCAPツールの開発機能に着目しているものの、コーディング以外の機能 (例:テスト、デプロイ、統合など) をどのようなスキル・レベルの人が使うのか、成果物をどのように共有・流通させ管理するか、また、何をどのようにガバナンスできるのか、といった観点での評価が不足しているように見受けられます。その結果、開発機能は要件に合致していたものの、運用の際にこんなはずではなかったという局面が多発し、それを埋めるために想定外の追加作業やそれに伴う費用が必要になるというケースが見られます。

こうした事態を避けるために、試験運用や概念実証 (POC) の内容について慎重に検討し、確実に実施することが重要です。組織で試験運用やPOCを実施し、LCAPが開発者のペルソナやユースケースに適合しているかを確認すると同時に、ガバナンス機能を判断したり、搭載機能の有効性を判断したりすることが可能になります。

3:LCAP支援チームを設置し、市民開発者をサポートする

多くの企業では、LCAPを使えば簡単にアプリケーションが早く作れるようになると考え、実際、そうした成果が実証されつつあります。一方、市民開発者は、LCAPを使う際に、使い勝手や実現したいことに対する技術面の不足など、さまざまな障壁に遭遇します。そうした障壁は、市民開発者の意欲を削ぐだけでなく、適切なLCAPの利用の妨げになり、適用の拡大や浸透・定着の妨げにもつながります。

LCAP支援チームを設置し、技術面でのサポートを提供することで、市民開発者がLCAP利用の早い段階から成功体験を積み重ねることが可能になります。その結果、市民開発者にとって使いやすいLCAPや開発・デリバリ環境に仕立て上げることができ、それがさらにLCAPの活発な利用促進につながります。

4:適応型ガバナンス・フレームワークを適用する

多くの企業では、「ガバナンスは全体に対して均一に適用する」という発想が無意識のうちに定着してしまっているように見受けられます。適用対象、範囲、重要度、利用者、もしくは複雑度に応じて適用ゾーンを分割し、それぞれに最適なガバナンスを策定する必要があります。

個人やグループ・レベルでの簡単なアプリケーションは、市民開発の主たる適用ゾーンとし、全社レベルのアプリケーション、複雑なアーキテクチャやシステム連携、高度な非機能要件の設計やテクノロジ知見などが必要となるアプリケーションは、IT部門が主として担当するゾーンに設定します。この2つの中間に位置するようなアプリケーションは、IT部門とユーザー側がフュージョン・チームとして密なコミュニケーションをとりながら構築を進めるゾーンに設定します。

IT部門とユーザー部門の役割分担や、ガバナンスの在り方を最適化し、可視化するのが、適応型ガバナンス・フレームワークの考え方です。これにより、アプリケーションを適切なゾーンに割り当てた上で、一貫性を保つべき事項や必ず守るべき事項を特定し、市民開発の意欲や適用の浸透・定着の阻害要因とならないよう、かつ、企業にとってのリスクにならないよう、バランスをとることが可能になります。

5:アプリケーションのオーナーシップを適切に設定する

LCAPにより、多様なユースケースに応じて多様なアプリケーションが開発できるようになってきており、部門・全社レベルや基幹系などの重要で複雑なアプリケーションにも、LCAPを適用することで、開発のリソース不足を補うことができる場合があります。また、簡単なもの、あるいは、ユーザー個人/グループごとの細かい開発要件に基づくアプリケーションについては、個人やグループにアプリケーション開発・保守のオーナーシップを持たせることで、IT部門のリソースを現在以上に圧迫しないようにすることができます。最初は個人レベルの簡単なアプリケーションであっても要件の追加や適用範囲の拡大により、その重要度が増し、複雑で高度なアプリケーションに進化することもあります。そのような場合には、オーナーシップを個人からグループ、部門、ひいてはIT部門へと移管することが望ましいケースも見られます。

アプリケーションのオーナーシップは、アプリケーションの特性やその変化に応じて適切に設定される必要があります。これにより、適切なアプリケーション運用やライフサイクル管理が行えるようになり、IT部門の適切なリソース配置やスキル向上の機会の拡大に寄与することになります。

6:実践コミュニティ (CoP) を利用して、エンゲージメントを生み出し、スケール感のあるサポートを提供する

市民開発者の適用範囲や規模が拡大するにつれて、開発の数も増え内容も多様化し、スキルの高低も広がります。こうした中、IT部門だけできめ細かなサポートをタイムリーに提供し続けるには限界があります。そこで、市民開発者間で、日々、それぞれの知見を共有しあうという発想が注目されています。市民開発者自身が、ローコード開発のプラクティスを提供・共有し、相互扶助を行うコミュニティ (CoP) を積極的に構築・拡大し、運営していくことで、LCAPを利用しやすい環境や文化を醸成することが可能になります。

7:スキルの育成や維持のために適切な時間を設ける

LCAPを使ったアプリケーション開発は、コーディングが楽になる、もしくは不要になりますが、アプリケーション開発であることに変わりはありません。つまり、業務上の解決すべき問題を正しく特定し、それに対する正しい解決方法を見出し、正しいアプリケーションを設計・実装・テスト・リリース・改善するアプリケーション開発のライフサイクルが必要です。必要なスキルをすべて獲得するのは、容易ではありません。個々人が目指すゴール、スキル・レベル、ペースならびに状況に応じて、きめ細かく、かつ継続的に取り組む必要があります。

LCAPのスキル育成や維持は、決しておろそかにせず、拙速な取り組みは避け、十分な時間をかけるようにすべきです。これにより、開発の質、効率が向上し、サポートの層も厚くなり、質も向上します。結果的に、IT部門にとっての負荷軽減になり、リソース不足やスキル不足の解決が促進されることになります。

飯島は次のように述べています。「企業は、包括的なローコード開発プラクティスを実装し、サポートしない限り、生産性の向上やリソース不足の緩和といったローコード・テクノロジのメリットを完全に享受することはできません。組織においてLCAPの採用を成功させるためには、LCAPの利用戦略を策定し、社内に正しく伝えていくことが重要であり、こうした取り組みには、企業の経営陣や上層部の理解と支持が不可欠です。LCAPによる成果が十分得られていない企業では、上述のプラクティスのどれか、場合によってはすべてが欠けているか、適切に規定されていないとみています。アプリケーション/ソフトウェア・エンジニアリング・リーダーは、解決すべきビジネス課題や実現したいビジネス目標の達成に向け、LCAPから最大限の成果を引き出せるよう、上述した7つのベスト・プラクティスを確実に実行すべきです」

Gartnerのサービスをご利用のお客様は、リサーチノート「Quick Answer: How Can I Help Citizen Developers Be Successful With a Low-Code Application Platform?」および「ローコードを最大限に活用するために実践すべきこと:Gartnerトレンド・インサイト・レポート」で詳細をご覧いただけます。市場予測については、「予測分析:ローコード開発テクノロジ (世界市場)」をご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、以下よりご参照ください。https://www.gartner.co.jp/ja/products

本日より2日間にわたって開催しているガートナー アプリケーション・イノベーション&ビジネス・ソリューション サミットでは、アプリケーション戦略、ソフトウェア・エンジニアリングのリーダーシップ、API戦略、開発プラットフォーム、先進テクノロジなどに関する最新の知見を提供しています。コンファレンスのニュースと最新情報は、Twitterでご覧いただけます (#GartnerAPPS)。

日本のITエグゼクティブ向けのニュースや最新情報は、GartnerのTwitterFacebookでも案内しています。最新のプレスリリースや記事、ウェビナー情報については、こちらよりご参照ください。

Gartnerについて

Gartner, Inc. (NYSE: IT) は、お客様のミッション・クリティカルな課題について、より優れた意思決定と大きな成果へと導く実行可能かつ客観的な知見を提供します。詳細については下記Webサイトでご覧いただけます。

gartner.com

gartner.co.jp (ガートナージャパン)

報道関係各位からのお問い合わせ先