IT主導でビジネス価値を提供するために、クラウドの役割を明確にした戦略を策定し、クラウドのメリットを最大限に引き出します。
クラウド・コンピューティングとは、スケーラブルかつ弾力性のあるITによる能力を、インターネット技術を利用し、サービスとして提供するコンピューティング・スタイルのことです。
クラウド・コンピューティングというキーワードが世に登場したのは2006年ですが、15年以上が経過した今も、クラウド・コンピューティングはITの主要な力であり続けています。
ハイブリッド・クラウドやマルチクラウド、エッジ、分散クラウドといった方向にクラウドが進化する中、ユーザーもベンダーも、クラウド・コンピューティングを再定義する必要が出てきています。
クラウドをビジネスに導入するためには、適切な計画と戦略が必要であり、現状の課題や目標に応じて最適なクラウド戦略を構築することが成功の鍵となります。 クラウドのビジネスにおけるメリットとして、以下のようなポイントがあります。
デジタル・ビジネスの成果実現する上で、パブリック・クラウドは重要な役割を担います。デジタル・ビジネスにおけるパブリック・クラウドの役割としては、以下のようなポイントがあります。
クラウド戦略を策定するためには、「何を行うのか」そして「なぜ行うのか」を明確にする必要があります。クラウドを実装する計画については「どのように行うのか」というポイントが重要になります。
クラウド・コンピューティングを採用する前に、包括的なクラウド戦略を策定しておくことが最善だと言えますが、実際のところ、多くの組織がクラウドに関する経験を積んだ後で、クラウド戦略の策定に取りかかっています。ただし、できるだけ早い段階でクラウド戦略を確立すれば、より多くの問題を回避できる可能性が高まります。
クラウド戦略は、スピード、レジリエンス、俊敏性といったビジネス成果を実現できるように最適化されるべきです。また、クラウド戦略をうまく進めるためには、データ、セキュリティ、ガバナンス、アーキテクチャに関する戦略との整合性も見ていく必要があります。
次にクラウド戦略策定のために重要なポイントを取り上げます。
まず、以下の企業ビジネス戦略の優先課題について、クラウド戦略でどのように対応できるかを検討します。
戦略とイノベーション:クラウド・サービスは、ビジネス課題の解決やイノベーションの推進にどのように役立つのか
ガバナンスとセキュリティ:クラウドは、実装に関するさまざまな要件やリスク・プロファイルに対応が可能であり、柔軟で適応性のあるガバナンスの枠組みを実現できるか
結集と移行:クラウドは、デジタル・トランスフォーメーションなどの企業の取り組みをどのように支援できるか
クラウドのモデル、アーキテクチャ、サービス・プロバイダーは、運用モデルを構成する重要な要素であり、現在および将来のクラウド戦略をサポートできるという観点から選定する必要があります。クラウド戦略の一環として、能力、信頼性、俊敏性、自動化、効率、コスト最適化に関して、どのような主要な成果を期待できるかを検討します。「クラウド・コンピューティングとクラウド・サービスの主な種類とは?」の章を参照。
クラウド戦略は、その戦略を実行し進化させる準備ができているかどうかを見直すプロセスが必要です。例えば、クラウドのセンター・オブ・エクセレンスを率いるチーフ・クラウド・アーキテクトが必要かどうかを検討する必要もあるでしょう。パブリック・クラウドに移行する場合は、必要に応じて新しい人材の採用や現在の従業員のスキルアップを推進することで、クラウドに関するスキル不足を解消するようにします。
「クラウド・ネイティブ」という用語が広く使われるようになりましたが、クラウドの特性を最適に活用することを目指すアプローチや考え方を指します。クラウド戦略やデジタル・トランスフォーメーション (DX) の取り組みでは、クラウド・ネイティブを重要な基準や原則の1つとして採用することが増えています。
クラウドの中核的な特性に一致する部分が多ければ多いほど、クラウド・ネイティブとみなされるようになり、クラウド・ネイティブの成果が実現される可能性が高くなります。クラウド・ネイティブは、アプローチ方法や考え方だけでなく、アーキテクチャ、インフラストラクチャ、アプリケーション、オペレーションにも適用されます。
従来型の組織では、ほとんどのアプリケーションはオンプレミス環境でホストされます。そのため、パブリック・クラウドは一種のアウトソーシングの形態と言えます。どのアプリケーション/ワークロードをどこに移行するかは、移行対象となるアプリケーションやワークロードの重要度に応じて判断します。クラウド・コンピューティングの導入により、パブリック・クラウド、プライベート・クラウド、ハイブリッド・クラウドなどの異なるクラウド・タイプを選択し、クラウド管理プラットフォームやクラウド・サービスを利用することができます。
クラウド・タイプとクラウド・サービスについてのさらなる詳細は、以下の通りです。
プライベート・クラウド:オンプレミスで展開されるクラウドであるため、コストがかかり、管理が難しくなる。ただし、セキュリティ、ビジネス・ガバナンス、規制コンプライアンスの要件を満たすために環境を直接管理する必要があるケースでは、好まれることがある
パブリック・クラウド:最新ワークロード向けの主要アーキテクチャとして利用が拡大しており、パブリック・クラウドに対するエンドユーザーの支出が急増している。しかし、クラウドへの移行でコスト面での予測についての誤算が起こりやすく、継続的なクラウド利用へのコストが膨らむことがある
ハイブリッド・クラウド:パブリック・クラウドとプライベート・クラウドを組み合わせ、社内外のクラウド・サービスを混在させて使用/管理するモデル
マルチクラウド:複数のクラウド・コンピューティング・ベンダーを併用するモデル。現在は、単一のプロバイダーでワークロードに対応するのが一般的だが、30%の組織は今後、補助的に別のプロバイダーを利用して、アプリケーション・ポートフォリオの一部を分散させるようになると見込まれる
分散クラウド・コンピューティング:クラウド・サービスの物理的な場所を定義に組み入れる最初のクラウド・モデル。パッケージ化されたハイブリッド・サービスでは、パブリック・クラウド・サービス (多くの場合、必要なハードウェアとソフトウェアを含む) を物理的に複数の場所に分散させることで、ハイブリッド・クラウドとプライベート・クラウドのニーズに対応しつつ、従来のパブリック・クラウド利用の利点を維持する
インダストリ・クラウド:基盤となるクラウド・サービスを活用して、業種に特化したビジネス能力や技術的能力を提供する。「完備されたプロダクト」としてのカスタマー・エクスペリエンスを提供するクラウドであり、俊敏性のためにコンポーザブルなアプローチを採用している場合もある
ソブリン・クラウド:クラウド・サービスが提供される管轄区域外の国/地域から (法的な) 干渉を受けることがないように隔離され、機能的/技術的な面で国際的な主要クラウド・プラットフォームと競争できる (あるいは、そうしたプラットフォームに基づく) クラウド・プラットフォームを指す
サービスとしてのインフラストラクチャ (IaaS):従量課金ベースで、クラウドでワークロードを実行するために必要なインフラストラクチャへのアクセスを提供する。物理的なデータセンターを置き換える場合などに利用される。2021年には、全世界のIaaS型パブリック・クラウド・サービス市場は41%成長した。ただし、Amazon、Microsoft、Alibaba、Google、Huaweiの5社だけで、市場全体の80%以上を占めている。 これらの主要プロバイダーは「ハイパースケーラー」と呼ばれ、数千台の物理サーバと数百万台の仮想マシンにインフラストラクチャを分散させることで、需要に応じてより俊敏にサービスを増減できる。その一方で、市場で支配的な立場にあるため、クラウドの停止、重要インフラストラクチャにおける役割、影響力に対する社会的な懸念といったリスクを生む可能性がある
サービスとしてのプラットフォーム (PaaS):開発から保守までのアプリケーション・ライフサイクル全体に必要なクラウド・インフラストラクチャをリースで提供する。一般的な例としては、Google App EngineやAWS Elastic Beanstalkなどがある
サービスとしてのソフトウェア (SaaS):サブスクリプション・ベースで、SaaSプロバイダーがホストするクラウド・サービスをリースで提供する。エンタプライズ・リソース・プランニング (ERP) 内の人的資本管理 (HCM)、電子メール/コラボレーション、調達/ソーシング、顧客関係管理 (CRM)、ITサービス管理など、機能別の重要なワークロードをSaaSに移行することが可能である
前例のないほどの複雑さと変化の速度が加速している状況で、自社のクラウド戦略に最適な運用モデルとサービス・プロバイダーとのパートナーシップが求められています。
クラウド管理は複雑な領域であり、現時点では、どのベンダーも主要クラウド・プロバイダーすべてに対応する包括的な機能を提供していません。クラウド管理ツールを利用することで、ハイブリッド/マルチクラウドのサービスやリソースを管理できるようになります。クラウド管理プラットフォーム (CMP) は、アーキテクチャ自体の管理を統合します。
ガートナーでは、クラウド管理ツール市場は約15億ドルの規模であり、2025年まで20%の年平均成長率 (CAGR) で拡大すると推定しています。クラウド管理ツールの主要ユースケースと、各ユースケースでの主なクラウド管理機能を以下に紹介します。
クラウドのプロビジョニングとオーケストレーション:クラウドのリソースのプロビジョニング/デプロビジョニング/変更を自動化する。ユーザーは、プロビジョニングとオーケストレーションを管理できる
クラウド・サービス・ブローカ:クラウドの利用者とプロバイダー間のインタラクションを管理する。ユーザーは、サービスの支援、モニタリングと観察、プロビジョニングとオーケストレーションを管理できる
クラウド・ガバナンス:クラウド活動のベスト・プラクティスを遵守するため、ポリシーとコントロールを適用する。ユーザーは、アイデンティティ、セキュリティ、ガバナンスを管理できる
クラウド・リソース管理:クラウド資産全体を管理する (コストの追跡、クラウド・リソースの最適化など)。ユーザーは、インベントリと分類、コスト管理とリソース最適化、移行/バックアップ/ディザスタ・リカバリ (DR) を管理できる
ツールの調達や運用は、中央集権的なIT組織 (I&O、クラウドのセンター・オブ・エクセレンス、プラットフォーム・エンジニアリング/オペレーションなど) が担う場合も、特定のビジネス部門内で行われる場合もあります。また、オンプレミスや、顧客のパブリック・クラウド・アカウントで展開されるほか、SaaSサービスとして購入されるケースもあります。
ツールは以下の機能を提供します。
一貫したビュー:クラウド環境全体にわたるビューを得られる
モジュール性:必要な機能のみを使用して対価を支払うことができる
SaaSのオプション:オンプレミスでの展開が不要になる
人工知能 (AI) や機械学習 (ML) の効果的な活用:必要に応じて利用できる
以下のようなオファリングがあります。
クラウド管理プラットフォーム (CMP):パブリック、プライベート、ハイブリッドのクラウド環境の管理を提供する統合プロダクト。この分野のベンダーは、多機能なツールをバンドルして提供している。しかし、その多くは当初提供していたプロダクトの範囲を狭め、IT資産管理、プロビジョニングといった特定領域に焦点を当てるようになりつつある。ガートナーの顧客企業の多くは、広範な機能を持つCMPを導入するのではなく、ネイティブ・ツールを活用したり、機能を限定したクラウド管理ツールを活用したりすることを選んでいる
サードパーティのポイント・ツール:多くの場合に、単一のプロダクトや機能に関連する、狭義の機能領域に焦点を当てたものとなる。現在は、ガバナンス・ツールが最も需要の高いユースケースとなっており、多くのベンダーがこの領域に注力してブランディングを行っている。クラウドに限定しない領域の関連ツール (ITSM、インフラストラクチャ監視、アプリケーション・パフォーマンス監視 [APM]、バックアップなど) のベンダーは、クラウド管理の要件をサポートするためのオファリングを拡大している
クラウド・プロバイダーのオファリング:ハイパースケールのクラウド・プロバイダーが提供するものであり、企業にとっての魅力を高めるため、外部に公開されるツールを強化する方向へと進化している。こうした動きには、クラウド・ベンダーとサードパーティ・ソリューション・プロバイダーの間で競争が激化している状況が示唆され、クラウド・プロバイダーが全体的な価値提案で特に使いやすさに力を入れていると見られる
クラウド移行とは、アプリケーションやワークロードの場所を移すための計画と実行のプロセスを指します。オンプレミスのインフラストラクチャから外部のクラウド・サービスへの移動、または異なる外部クラウド・サービス間での移動になります。
「リフト・アンド・シフト方式でアプリケーションをIaaSに移せば済む」という考え方は、クラウド移行には通用しません。アプリケーションの多くは、クラウド・ネイティブの特性を生かすことが技術的に容易でなく、いずれにしてもビジネス・ニーズの変化に対応していないため、移行する価値はありません。多くの場合に、SaaSアプリケーションで置き換えるか、またはクラウド・ネイティブのPaaSで再構築するといった方法で対応すべきです 。「クラウド・コンピューティングとクラウド・サービスの主な種類とは?」もご参照ください。
ワークロードをパブリック・クラウドに移行する場合、ガートナーでは大まかに以下の5つの方法を定義しています。
リホスト:「リフト・アンド・シフト」方式でアプリケーションを現在の物理環境または仮想環境からクラウド・プラットフォームに移す。アプリケーションとランタイム環境には、できるだけ変更を加えない
リバイス:アプリケーションの「リフト・アンド・シフト」と「調整」により、パブリック・クラウドでの管理をより安全かつ容易にし、コストを削減できるようにする
リアーキテクト:クラウドに最適化されたアーキテクチャを実現するため、クラウド・ネイティブの機能を活用して、アプリケーションを大幅に変更またはリファクタリングする。
リビルド:アプリケーションをゼロから構築して、クラウドに最適化する。中核となるビジネス・ロジックやアルゴリズムは保持しつつ、レガシーのコードを排除し、クラウド・プラットフォーム/サービス上に再構築する
リプレース:アプリケーションをサードパーティのSaaSで置き換え、要件を満たすようにSaaS環境を構成または拡張し、(必要に応じて) レガシーのデータを新しい環境に移行する
以下の6つのステップにより、首尾よくクラウド移行を実現できます。
クラウド移行プログラムを計画する。アプリケーションをパブリック・クラウドに移行する必要性を検証し、参加者が各自の責任、プロジェクトのスケジュール、期待される成果を理解していることを確認する
パブリック・クラウド移行のビジネスケースを作成する。クラウド戦略とIT戦略に基づいて、クラウド移行プログラムの目標を決定する。それぞれの目標について、成功の評価指標を定義する。評価指標は、リーダーシップに関連し、的確かつ実用的であり、ビジネス用語で明確に表現する必要がある
アプリケーションの評価プロセスを設定する。クラウド移行チームを結成し、アプリケーションを選択するための採用プロセスを設定する。移行プログラムの目標に基づいて、クラウドに適合するアプリケーションかどうかを評価する基準を決定する
各アプリケーションの移行方法を決定し、移行カレンダーを作成する。クラウドのホスティング対象に選んだ各アプリケーションについて、クラウドへの移行方法を決定する。アプリケーションを移行する順序、所有者、スケジュールを明確化して、移行カレンダーを作成する
移行計画を作成し、共有する。移行計画を文書化し、移行の順序、スケジュール、ワークフローへの影響について主要ステークホルダーに共有する
クラウド移行プログラムの効果を追跡する。事前に設定した成功の評価指標とユーザーからのフィードバックを追跡して、クラウド移行プログラムの効果を検証する
クラウド移行のコストについても、現実的に見積もる必要があります。コスト超過を回避し、移行を成功させるためには、このような計画が非常に重要となります 。次の章「クラウドのコストをコントロールするには?」もご参照ください。
クラウドについて慎重にコスト管理を行わないと、パブリック・クラウドのコストが急速にコントロール不能に陥る危険があります。
ガートナーの調査では、突然コストが急増して「驚いた」経験があると回答した企業は77%に上りました。また、インフラストラクチャとオペレーション (I&O) のリーダーのうち、クラウドの支出を適切に管理している自信があると回答した割合は、わずか22%にとどまっています。
クラウドの予期せぬコストが発生すると、さまざまな問題を引き起こします。毎月の支出が膨れ上がって投資収益率 (ROI) が悪化する、短期的なコスト急増によって重要プロジェクトが中断する、コストの変動が不規則なために緊急の予算調整を迫られるといった事態に陥ることもあります。
従来のデータセンターと同じようにクラウドのコストを管理できないのは、従量課金ベースで利用コストが計算され、請求されるためです。したがって、コストはクラウドの利用パターンによって大きく左右されます。利用パターンの変動は、必ずしも予期できるものではありません。ビジネス活動の変化、非効率な構成やスクリプトのミスなどの人為的エラー、さらには外部からの悪意ある攻撃によるリソース使用の急増などによって起こることもあります。
クラウドにかかるコストのレジリエンスを高めるには、以下の3つのテクニックに注力します。
クラウドにかかるコストの影響を受けやすい部分を明確にする。ビジネスの活動やアプリケーション別にコストを分類し、クラウドの予期せぬコスト上昇による影響を受けやすい領域をビジネス部門と一緒に特定する
クラウド・モニタリングに「コストのオブザーバビリティ」機能を追加する。クラウドのコストのオブザーバビリティ機能とは、クラウドのログに記録されたシステム・イベントに基づいて、コストや財務的影響を正確に推測する能力を指す
コスト・インシデント対応プランを策定する。プレッシャーがある中で迅速に対処するための実践的な行動を定める。使わずに済めば越したことはないが、緊急時の対応手順として作成しておく必要がある。そのため、現実的なシナリオに焦点を当てたシンプルかつ規範的な内容でなければならない。また、検証と保守が必要となる
それぞれの移行方法 (「クラウド移行とは?」参照) は、コストのタイプや発生時期といった面でプロファイルが異なります。このため、性急なアプリの評価や隠れたコストなど、クラウド移行コストが見積もりから逸脱する理由は数多くあります。計画から監督、残留 (回収不能コスト) まで、一連の重要な活動について、コストの見積もりと監視を確実に行う必要があります。
クラウド移行やクラウド運用を外部に委託する場合は、契約範囲に含まれない潜在的コストに注意すべきです。ベンダーは、こうした範囲外の活動がいずれ発生することを承知しており、プロジェクトが始まってから追加請求することで、収益を上乗せしようとする場合があります。
「後から追加」されることの多い例としては、以下のようなタスクがあります。
ミッション・クリティカルなシステムの「ライブ移行」に伴う追加作業
自動化テンプレートやスクリプトといった運用ランブックの作成/改良
バックアップ/ディザスタ・リカバリ・プロセスの実装
規制遵守の標準を満たすための特殊な構成の設定
データベース、アプリケーションPaaS環境、または移行したアプリケーション自体の保守に必要とされる、システム管理業務の「IaaSレベル以上」への拡大
回避策や代替ベンダーを特定していない場合であっても、上記に挙げたような暫定的コストの見積もりも網羅し、包括的なクラウド移行コストの見積もりを作成するように考慮する必要があります。
クラウド・セキュリティとは、クラウド・コンピューティングのセキュリティ、コンプライアンスといった利用上のリスクをコントロールするためのプロセス、メカニズム、サービスを指します。クラウド戦略の初期段階から、ガバナンス、コンプライアンス、プライバシーを含めたセキュリティに取り組む必要があります。
セキュリティに対する意識は大きく変化しています。パブリック・クラウドは当初、安全性に問題があると広く考えられていました。しかし現在は、パブリック・クラウド・プロバイダーに過剰な信頼を寄せる組織も見受けられます。プロバイダーが何を保護し、何を保護しないのかを理解することが重要です。
例えば、仮想マシン、ストレージ、ネットワークなどのIaaSサービスは保護される一方で、ホスティング対象となるアプリケーションやデータは保護されないといったことがあります。その場合、IaaSに配置するデータのセキュリティを確保するのは、顧客自身の責任となります。つまり、クラウド自体は安全であっても、顧客がクラウドを安全に利用しないケースが多いということです。セキュリティは共有の責任であり、役割と責任を詳細に明確化することが、クラウドを安全に使用する上で非常に重要となります。
クラウド・セキュリティは、情報セキュリティ・テクノロジ/サービス市場で最も急成長しているセグメントであり、特にリモートワークやデジタル・ビジネス・アクセラレーションをサポートするイノベーションに関心が集まっています。クラウド・セキュリティの先進テクノロジの中でも、特に重要なのは、セキュア・アクセス・サービス・エッジ (SASE) とセキュリティ・サービス・エッジ (SSE) です。
クラウドに移行するビジネス活動は、ワークロードだけではありません。オンプレミスに保持しなければならないデータも残っているかもしれませんが、データベース管理システム (DMBS) の展開とイノベーションは、「クラウド・ファースト」または「クラウド・オンリー」で行われることが多くなってきています。
クラウド・データ管理のアーキテクチャには、以下の選択肢があります。
オンプレミスからクラウドへ:「Ground to Cloud」とも呼ばれ、オンプレミスとクラウドの両方の環境にコンポーネントを置く (ハイブリッド・クラウド、分散クラウド)。2つの環境間で発生するアクティブなデータ管理 (「アクティブ」タイプ) と、通常はデータが断続的に環境間で行き来する「オンデマンド」のインタラクションの両方を含む
マルチクラウド:アプリケーションは論理的に分離されたままだが、複数のクラウドに配置される。アーキテクチャの観点では、「オンデマンド」タイプの管理とほぼ同じである
インタークラウド:データが複数のクラウドに分散して配置され、結束力のある論理的なアプリケーションの一部として積極的に管理される。複数のクラウドからのデータをアプリケーションが統合する。アーキテクチャの観点では、「アクティブ」タイプの管理とほぼ同じである
データとアナリティクスのリーダーは、分散した多様な導入環境にわたるデータ管理でリスクとメリットのバランスを取る必要があります。
例えば、現在ほとんどのクラウド・プロバイダーは、自社のクラウドからのデータ転送に対して課金していますが、クラウドに入るデータには課金していません。つまり、クラウドから出るデータ、またはクラウド間のデータ移動が大量に発生するアプリケーション・アーキテクチャは、財務的にはクラウドに向いていない可能性があります。
このため、特定のクラウド・プロバイダーを利用することで必然的に発生する財務的影響を理解するとともに、アプリケーションのトポロジがクラウドの機能とデータ・フローの要件に適合するように対策を講じることが重要です。
クラウド・コンピューティングの新しいトレンドを受けて、クラウドのオファリングと能力の幅は拡張し続けています。
ガートナーでは、2021年には17%未満だったパブリック・クラウドへの支出が、2026年には企業のIT支出全体の45%を超えると予測しています。
クラウドの未来には、以下の分野も関係します。
通信サービス:消費者向け固定通信サービス、消費者向けモバイル・サービス、企業向け固定通信サービス、企業向けモバイル・サービスを含む。例えば、新しいクラウド・オプションや、低軌道 (LEO)/中軌道 (MEO) を含む非静止軌道 (NGSO) の衛星コンステレーション、新しい5G R16/R17の能力によって、クラウドがより広く、より深く行き渡って利用されるようになる
関連するテクノロジやデバイス:例えば、エッジ・インフラストラクチャによって、処理とストレージ容量の配置場所がエンドユーザーに限りなく近づき、モバイル・デバイスの普及が促進される
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