ガートナーの調査では、上級管理職・経営幹部の役職異動は頻繁に行われており、常に4人に1人は新しい役職への移行プロセスにあるという結果が出ています。また、上級管理職・経営幹部の58%は2年以内に再び異動する可能性が高いと回答しており、役職の変更や新しい機会への挑戦が、一回限りではなく、継続的に起こる可能性が高いということも伺えます。
つまり、現在の組織、あるいは他の組織の両方で、経験豊富な上級管理職・経営幹部であれば誰でも、近い将来に転職する可能性が高いことを示唆しています。
新たに上級管理職・経営幹部に任命された際に、新しい役割にスムーズに移行し、直面する課題に効果的に対処できるような体系的なアプローチを4つのステップにてご説明します。
2024年7月29日
要旨
ガートナーの調査では、上級管理職・経営幹部の役職異動は頻繁に行われており、常に4人に1人は新しい役職への移行プロセスにあるという結果が出ています。また、上級管理職・経営幹部の58%は2年以内に再び異動する可能性が高いと回答しており、役職の変更や新しい機会への挑戦が、一回限りではなく、継続的に起こる可能性が高いということも伺えます。
つまり、現在の組織、あるいは他の組織の両方で、経験豊富な上級管理職・経営幹部であれば誰でも、近い将来に転職する可能性が高いことを示唆しています。
ツールキットをダウンロード(英語): How to Get a Fast Start in Your New Executive Role
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しかし、スムーズな移行を実現するには、職務を引き受ける前に、より意識的に準備をする必要があります。効果的な方法として、次のような情報収集やコミュニケーションが考えられます。
個人的なつながりや人脈を生かして知見を集める。自分のネットワークを活用し、会社や業界についての情報を得る
CEOに直接会い、自分のアイデアがどのように受け止められるのかを確認する。自分のビジョンや考え方がCEOのそれとどの程度一致しているかを確認でき、また、CEOの経営スタイルや期待を直接理解する機会にもなり得る
直属の部下となる人たちと話す機会を設けてもらい、業務上のギャップを明らかにし、組織文化的な適合性を判断する。チームとうまく協働できるかを事前に確認する重要な機会となる
取締役会のメンバー1人以上との面会を希望し、ビジョン/リスク/投資について話し合う準備をする。組織の長期的な戦略や方向性をより深く理解する機会となる
同僚となる人たちと話す機会を得て、新しいイニシアティブの可能性について賛同を得るための取り組みを開始する。就任後すぐに変革や新しいプロジェクトを始める際の下地作りとなる
期待に応え、長期的に信頼を得るには、1カ月単位で目に見える結果を出します。主要なステークホルダーが自分のアイデアをどのように受け止めるかを確認し、組織の能力に基づいてプランを調整し、測定可能な結果を出していきます。そのために、30日、60日、90日のマイルストーンを設定し、これらのマイルストーンを、継続的な計画の一部として位置づけます。
1ヶ月単位で具体的な成果を示すことで、組織の信頼を得ながら、より大きな変革や長期的なプロジェクトのための基盤を築くことができます。また、このアプローチは、自身の計画や戦略を段階的にテストし、調整する機会も提供します。これにより、組織の現状や能力に合わせて、より効果的な施策を実行することが可能になります。
新任の上級管理職や経営幹部にとって、この「1ヶ月単位での成果創出」という考え方は、新しい環境での早期の成功と、長期的な影響力の確立の両方を実現するための重要な戦略と捉えることができます。
移行中のリーダーが成功を達成するまでの平均期間は約7ヶ月である。
出典:ガートナー
利用可能な企業リソース:新任の上級管理職や経営幹部は多様な企業のリソースを利用できます。例えば、次のようなものが挙げられます。
設備施設
顧客との関係性
ブランド
人材
テクノロジ など
優先すべき重要な資産:中でも、移行期間中に優先すべき最も重要な資産は、次のような人的リソースと組織的リソースです。
チーム
文化
価値観
スキル
知識
今日のリーダーには、信頼できること、共感力があること、適応力があることが求められています。そうした存在になることで、従業員が職場で自分らしく振る舞うことができ、また意見が尊重されていると感じることができます。新任の上級管理職や経営幹部はにとっては、チームのメンバーがどのような人たちかを理解し、何がモチベーションの源になり、どのようにキャリアを伸ばしたいのかを時間をかけて理解して、これらの情報をプランに反映させることが重要なアクションとなります。
新任の上級管理職や経営幹部にとって、このアプローチは単なる業務上の戦略ではなく、リーダーシップの本質に関わる重要な考え方となります。人的リソースと組織文化を優先することで、より強固な基盤を築き、長期的な成功を実現する可能性が高まります。
上級管理職・経営幹部の82%は、人的資産と組織的資産を、移行を成功させるために最も重要な要素として位置付けている。
出典:ガートナー
前任者がどのような実績を示したかを理解することで、自分の移行がどの程度容易または困難になるかを判断できます。
前任者の状況に応じて、以下の4つのシナリオのいずれかに直面する可能性があります。
シナリオ1:前任者の実績は堅実だったが、際立ってはいなかった (35%)
状況:戦略変更や経済情勢の変化により、組織は迅速な方向転換を必要としています。
対応策:
- 責任と目標を明確に定義する
- ステークホルダーの全体像を理解する
シナリオ2:着任したのは新設のポジションだった (25%)
対応策:
- 業界、組織、チームの力学を迅速に理解する
- 人脈のネットワークやチームを活用して、変更を社内に浸透させ、実行する
シナリオ4:前任者が職責の遂行に完全に失敗した (20%)
対応策:
- 明確なビジョンを創造する
- 新たな関係構築とともに、前任者の成果不足により影響を受けた人たちとの関係修復にも時間を割く
シナリオ4:前任者の実績が卓越しており、象徴的な存在であった (10%)
課題:前任者の残した実績を尊重しつつ、自身の功績を組織に刻み込むのに苦労することが多い
対応策:
- 自分の役割を明確にする
- 新しいアジェンダを正当化し推進するための関係を築く
新任の上級管理職や経営幹部にとって、この「前任者からの学び」というアプローチは、自身の成功だけでなく、組織全体の継続的な発展にも貢献する重要な戦略と言えるでしょう。前任者の状況を冷静に分析し、それを自身の戦略に活かすことで、より効果的なリーダーシップを発揮することができます。
「新しい役職への移行を成功させるために必要な行動は、移行の難易度と前任者のパフォーマンスによって異なります。しかし、どのような場合であっても、職務を受け入れる前にプランを立て、就任後は協調性のある行動を起こし、確実な未来を切り開くためにあらゆる手段を駆使することで、成功に向けて一気に始動できます」
全ての移行にはある程度の課題があるが、現在の役職への移行が非常に困難だった場合、経営幹部は新しい役職を求める可能性が高くなる
現在、上級管理職・経営幹部の移行期間の標準は90〜100日だが、移行中のリーダーが成功を達成するまでにかかる平均は約7ヶ月である
早い段階から情報を収集し、1カ月単位で成果を出し、人的な視点を通じて行動を起こし、前任者の実績を把握することが、移行を円滑にするために役立つアプローチである
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