メタバースとは何か?どのようにメタバースに取り組むべきかを解説

2023年3月11日

メタバースがもたらす戦略的なビジネス機会を模索する企業が増え始めています。
しかし、メタバースは誕生して間もないテクノロジであり、早期に投資することの財務リスクや評判リスクは、まだ完全には明らかになっていないため、慎重に取り組む必要があります。

ポイント

  • 確立されたメタバースは、現時点では存在しない。今日のメタバースは、仮想世界と物理世界におけるインタラクションのレベルを高めることが期待される複数の新興テクノロジで構成されている
  • メタバースは、デバイスに依存するものでも、単一のベンダーが所有するものでもない。メタバースは、デジタル通貨やNFTによって実現される、独立した1つの仮想経済圏である

  • 機会は急速に生じているが、長期的に見て、どの投資がビジネスに有効かを判断するには時期尚早であるため、特定のメタバースに投資する際には注意が必要である

「メタバース」を巡って過剰な期待が高まっていますが、現時点でメタバースは単一のテクノロジでは成り立っていません。今日のメタバースは複数の新興テクノロジで構成されています。そのため、企業が特定のメタバースに投資する際には注意が必要であり、長期的に見て、どの投資がビジネスに有効かを判断するには時期尚早です。

それでも、メタバース・テクノロジには、仮想世界と物理世界におけるインタラクションのレベルを高めることが期待されており、革新的な新しい機会とビジネスモデルをもたらすと考えられています。実際に、2026年までに、25%の人は、仕事、ショッピング、教育、ソーシャル・メディア、エンタテイメントなどのために、1日1時間以上をメタバースで過ごすようになるとガートナーは予測しています。

ガートナーのアナリストでバイス プレジデントのマーティ・レズニック (Marty Resnick) は、次のように述べています。「先進的なメタバース・テクノロジは、誕生したばかりですが、戦略的な機会を提供するものであり、その潜在的なメリットは仮想世界にとどまりません。メタバースは、物理世界を変えると同時に、物理的な活動を仮想世界へと移送、もしくは拡張します」

メタバースとは何か?

技術的に定義すると、メタバースは、仮想的に拡張された物理的現実とデジタル化された現実の融合によって創り出される集合的な仮想共有空間です。簡単に言うと、メタバースは、インターネットの次の段階として捉えることができます。インターネットは、個人の掲示板や独立したオンライン上の場所として始まり、これらの場所が仮想共有空間のサイトへと発展しました。メタバースも、このような過程を経て進化します。

メタバースは、デバイスに依存するものでも、単一のベンダーが所有するものでもありません。メタバースは、デジタル通貨やNFT (非代替性トークン) によって実現される、独立した1つの仮想経済圏です。

メタバースは組み合わせ型のイノベーションであり、機能させるには複数のテクノロジやトレンドが必要となります。メタバースのトレンドには、仮想現実 (VR)、拡張現実 (AR)、柔軟な働き方、ヘッドマウント・ディスプレイ (HMD)、ARクラウド、モノのインターネット (IoT)、5G、人工知能 (AI)、スペーシャル・コンピューティング (ARクラウド) などが関与します。

戦略的テクノロジ・トレンドとしてのメタバースに関連する4つの重要なイノベーション

  • イノベーション1:Web3

    非中央集権型のWebアプリケーションを開発するための新しいテクノロジ・スタックであり、ユーザーが自らのアイデンティティとデータをコントロールできるようにする。Web3とメタバースは、人または組織の間、あるいは人と組織の組み合わせにおいて、何らかの形態で価値が交換されるコミュニティやエコシステムで互いに補完し合う。

  • イノベーション2:スペーシャル・コンピューティング

    3層のテクノロジ・スタックであり、これを通じてユーザーは物理世界とデジタル世界の交差を体験する。

  • イノベーション3:人のデジタル・ツイン (DToP)

    一意の個人を反映するだけでなく、ほぼリアルタイムで同期されたマルチプレゼンスであり、デジタル空間と物理空間の両方で複数の場所に同時に存在できる。

  • イノベーション4:顧客のデジタル・ツイン (DToC)

    DToPのサブセットであり、顧客の仮想表現を動的に作成して、顧客行動をシミュレーションし、模倣および予測できるよう学習する。顧客には、個人、ペルソナ、グループ、機械を含む。

メタバースを巡るハイプ (過剰な期待) が生じているのはなぜか?

メタバースは大きな注目を集めていますが、それをけん引しているのは、先を争ってメタバース企業への移行を表明しているテクノロジ企業や、人々のデジタル/物理世界の拡張や強化を目的にメタバースを創り出しているテクノロジ企業です。

最終的には、メタバースは継続性、分散性、協働性、相互運用性を備えた機会とビジネスモデルをもたらし、これによって組織はデジタル・ビジネスを拡張できるようになります。しかし既に、個人だけでなく企業にも、以下のようなメタバースの機会が生じています。

  • J.P. Morganは、メタバースにプレゼンスを確立した最初の銀行であり、1兆ドルの市場機会を予測し、仮想不動産に注目している。

  • 自動車販売店は、特定車種の在庫を制限しつつ、スペーシャル・コンピューティング (特にARクラウド) を利用して内装/外装の属性をリアルタイムにデジタルで変化させることで、より多くのオプションを提示している。

  • ゲームを活用して、従業員を実際に危険にさらすことなく、危険への対処方法をトレーニングできる。

  • 金融取引、コンシェルジュ型ショッピングのエクスペリエンス、患者の健康モニタリングなどの領域では、DToCやデジタル・ヒューマンが顧客とやりとりし、支援できる。

  • 仮想ワークスペースを活用して、従業員のエンゲージメント、コラボレーション、つながりを改善できる (ハイブリッド・ワークでは既に、メタバース・テクノロジによる仮想会議が定着している)。

ビジネス/テクノロジ・イノベーション・リーダーが実行すべきアクション

ガートナーのアナリストであるレズニック (前出) は、次のように述べています。「今後1~3年間は、限られた実装環境でメタバースを学び、模索し、準備する時期になります。早期に投資することで、財務や評判に関してどのようなリスクがもたらされるかは明確になっていません。このため、慎重に取り組む必要があります」

現時点では、メタバース・テクノロジを含む戦略を策定する上で、以下のアクションが足掛かりになります。

  • メタバース・テクノロジを活用するデジタル・ビジネスの最適化や、新しいプロダクト/サービス創出の機会を探る

  • 「キラー・アプリ」を探すのではなく、組み合わせ型のイノベーションのパイプラインを通じて、メタバース・プロダクト/ソリューションを構築する

  • メタバースに着想を得た機会を特定するため、価値の高い既存のユースケースを評価する

  • 特定の先進メタバースに投資する際には慎重に取り組む。顧客や従業員のデータを保護するため、先を見越してデータ・ガバナンスやセキュリティ/プライバシー・ポリシーを策定し、企業の評判を保護する

Marty Resnickは、ガートナーのアナリストでバイス プレジデントです。企業のミッション・クリティカルな優先課題に影響を及ぼす未来のディスラプションを主に調査しており、特に、トレンド予測 (Trendspotting) やテクノロジ調査 (Tech Radar) を通じた先進テクノロジや未来的テクノロジの特定/選定/実装に注力しています。

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