デジタル・サステナビリティとは何か、またそれはESG目標の推進にどう役立つのか

2021年12月23日

組織のESG (環境、社会、ガバナンス) 目標を達成するには、サステナビリティ (持続可能性) 戦略のどこで、どのようにデジタルを適用するかの判断が鍵になります。

ガートナーのアナリストでシニア ディレクターのアーポ・マーカネン (Aapo Markkanen) は、開催されたウェビナーで「もしインターネットが国家であったら、その電力使用量は、中国、米国に次いで、世界第3位でしょう」と上級経営陣たちに向け、改めて伝えました。では、サステナビリティにおけるデジタルの役割とはどういうものでしょうか。

同ウェビナーでアーポ・マーカネンと共にプレゼンテーションを行ったアナリストでディスティングイッシュト バイス プレジデントのクリスティン・モイヤー (Kristin Moyer) と、アナリストでバイス プレジデントのベッティーナ・トラッツライアン (Bettina Tratz-Ryan) は、「今後テクノロジをどの程度活用するかは、企業の持続可能なビジネス戦略に左右されます」と述べています。

デジタル・インフラストラクチャ/サービスが、サステナビリティに極めて大きなマイナスの影響を及ぼす可能性があることは明らかです (世界の温室効果ガス総排出量の3.7%はインターネットによるものです)。しかし一方で、デジタルは戦略の中核に据えられればサステナビリティの推進力にもなり得ます。

2つのシンプルな例を考えてみましょう。

  1. スマート・ビルディングは、重大な環境問題に対するテクノロジ・ソリューションです。この場合、ソリューションを構成するモノのインターネット (IoT) や人工知能 (AI) などは、企業の不動産による二酸化炭素排出量の削減に役立ちます。
  2. データ管理/アナリティクスは、既存の社会的セーフティ・ネットの強化に不可欠です。これがないと、潜在的受益者をすべて特定し、接触し、サービスを提供することはできないでしょう。

問題の解決や既存ソリューションの強化のために、テクノロジをどこで、どのように使用するかの判断が、持続可能なビジネス戦略を成功させる鍵となります。では、どこから始めたらよいでしょうか。

持続可能なビジネス戦略に関する補完的な知見については、ガートナーのリソースセンター (英語) でご確認いただけます。

デジタルをサステナビリティに適用する

まず、自社の戦略にとって何が重要であるかを評価することが大切です。気候変動や生物多様性から、人権、健康の公平性、デジタル倫理に至るまで、多くの問題が考えられます。鍵となるのは、それぞれの問題がステークホルダーやビジネスにどのような影響を及ぼすかを把握して、取り組みの優先順位を付けるようにすることです。

しかし、単純な問題は1つとしてないため、新しい考え方と新たなデジタル投資が必要になります。前出のマーカネンは次のように述べています。「そのような熱意を見せることなくサステナビリティを向上させようとしても、うまくいかないでしょう」

デジタル・サステナビリティでは、情報テクノロジ (IT)、オペレーショナル・テクノロジ (OT)、エンジニアリング・テクノロジ (ET) に加え、非技術的なイノベーションを活用しながら、問題特化型の一連のソリューションを用いて、重要な各問題に対応することが求められます。

例えば、サステナビリティ目標の1つとしてサーキュラー・エコノミー (循環型経済:既存のマテリアルやプロダクトの再利用、修理、改修、リサイクルをできるだけ促進するモデル) を掲げている場合、次のようなソリューションが考えられます。

  • ITとOT:ブロックチェーンでマテリアルの起点を追跡する。また、廃棄物交換を行い、業界横断的な循環を促進する
  • エンジニアリング・テクノロジ:材料科学でプロダクトの寿命を伸ばし、リサイクル率を向上させ、アップグレードしやすくする
  • 非技術的なイノベーション:マーケティング戦略を転換し、リサイクル製品やサービス・ベースの収益源に対する顧客行動を変化させる

コーポレート・サステナビリティのための変革の担い手となる

デジタル・サステナビリティへの共通認識を幹部リーダー間で深めることにより、必要なテクノロジをどのように開発し、活用するかの優先順位を付けやすくなります。CIOをはじめとするITリーダーは、コーポレート・サステナビリティの取り組みに寄与する一方で、ITインフラストラクチャ/サービス自体のサステナビリティに関連するESG目標も達成しなければなりません。

より効果的な目標達成を促進するアクションとして、以下の4つが挙げられます。

No. 1:特定のIT領域に対処する

エネルギー効率、E-Waste (電気電子機器廃棄物)、取引のペーパーレス化、材料効率 (利用率、容量)、サプライチェーンの主要5領域に重点を置きます。サステナブルなIT (グリーンIT) の評価には、クラウド利用率、動力管理、従業員1人当たりのデバイス数などのパラメータを用います。

No. 2:重要な問題について整理する

他の上級経営陣と協力して共同での取り組みを推進し、重要度の高い問題について整理します。その際、デジタル・サステナビリティのタクソノミ (分類法) を使用して、説明責任を確立します。以下に例を挙げます。

  • IT部門は、デジタル・テクノロジ、作業者の安全性、透明性について責を負う
  • プロダクト部門は、ビジネスモデルのデジタル倫理とサステナビリティについて責を負う
  • サプライチェーン部門は、二酸化炭素排出量と責任ある調達について責を負う
  • 人事部は、作業者の安全性とダイバーシティ/エクイティ/インクルージョン (DEI) について責を負う
  • マーケティング部門は、環境正義とコミュニティへのエンゲージメントについて責を負う

サステナビリティの「責任者」がいるからといって、結果が保証されるわけではありません。あらゆる職務領域の改革に情熱をもって専念できる経営幹部が必要です。

No. 3:重大な問題に対処するためのデジタル・テクノロジを特定し、適用する

以下に例を挙げます。

  • 包装廃棄物:再利用可能な輸送用梱包材から、場所や状態などのデータを提供できます。また、マテリアルズ・インフォマティクス (情報科学の手法を応用して新材料や新素材を効率的に探索する取り組み) では、包装を削減する方法を特定することが可能です。
  • 持続可能な調達:ウェアラブル・デバイスは、健康に問題のある従業員を検知し、注意するよう通知できます。また、地理空間データは、水や野生生物に脅威を与えるプロジェクトかどうかを判断できます。
  • プロダクトの透明性:センサやRFID (微小チップと近距離無線による識別・管理) タグは、プロダクトの起点まで追跡できます。また、サーキュラー・エコノミー・プラットフォームは、プロダクトの改修時期を知らせることができます。
  • プロダクト・ライフサイクル管理:IoTと人工知能は、予防的保守が必要なことを示すことができます。また、あらゆる場所で接続できることで、リモート診断が可能になります。
No. 4:データと進捗をリアルタイムで追跡する

ESGデータ・プラットフォームを確立して、オペレーションおよびバリューチェーン全体からESG関連データを収集し分析します。分析ツール、報告ツール、ビジネス・アプリケーション・ツールをデリバリして、必要なハインドサイト (事後考察)、インサイト (洞察)、フォーサイト (先見的洞察) を生み出せるようにします。

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/

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