2026年9月15日
2026年9月15日
9割超がIT調達でも地政学リスク検証の必要性を認識、最大の懸念は「事業継続」
ビジネスおよびテクノロジのインサイトを提供するガートナージャパン株式会社 (以下Gartner) は、IT調達における地政学リスクに関する見解を発表しました。Gartnerの調査から、国内企業のビジネス・リーダーの多くがIT調達において地政学リスクの影響を検証する必要性を認識していることに加え、コスト増以上に事業継続への影響を強く懸念していることが明らかになりました。
Gartnerが2026年3月に国内のビジネス・リーダー399人を対象に実施した調査によると、「可能な限り広い範囲のIT調達において地政学リスクの影響を検証すべき」と回答した割合は66.4%、「一部のIT調達において検証すべき」と回答した割合は25.6%でした。両者を合わせると、90%以上の回答者がIT調達における地政学リスクの検証が必要であると考えていることが浮き彫りになりました。
一方、IT調達において最も検証すべき地政学リスクとして挙げられたのは、「事業継続」(55.3%) で、「コスト増」(25.9%) を大きく上回りました。企業は物価上昇や為替変動によるコストへの影響だけでなく、クラウド・サービスやソフトウェアの供給停止、サービス品質の低下などが自社の事業継続に及ぼす影響をより強く懸念していることが明らかになりました (図1参照)。
出典:Gartner (2026年9月)
IT調達においても地政学リスクへの対応が新たな経営課題に
近年、世界各地で衝突や緊張の高まりが続く中、その影響はエネルギーやサプライチェーンにとどまらず、企業のIT調達にも及んでいます。AIの活用拡大やデジタル化の進展により、クラウド・サービスやソフトウェアは企業活動を支える重要な基盤となっており、ITサービスの継続性や安定供給に対する経営層の関心は高まっています。
地政学リスクの高まりは、世界的なインフレや為替変動によるITコスト上昇だけでなく、グローバルに分散したサービス提供体制への影響、さらには各国・地域で進むデータ保護規制やAI関連法制の複雑化など、さまざまな側面から企業のIT調達に影響を与えます。
クラウドおよびソフトウェアが最優先の検証対象
本調査で地政学リスクの影響を優先的に検証すべき調達対象について尋ねたところ、「クラウド」または「ソフトウェア」と回答した割合は合計で65.8%に達しました。企業の基幹業務は、顧客向けサービスがクラウド環境を前提に構築されるケースが増えており、これらのサービスへの影響は事業継続に直結します。
バイス プレジデント アナリストの海老名 剛は次のように述べています。「限られたリソースで地政学リスクへの対策を進める場合、まずクラウド・サービスやソフトウェア調達を優先対象とし、そこで確立したリスク管理の方針を他のIT調達領域へ展開していくことが重要です」
事業継続、コスト増、コンプライアンスの3つのリスクを総合的に管理する
IT調達における地政学リスクへの対応として、Gartnerは「受容」「低減」「回避」「移転」の4つから成る「リスク管理の4原則」を適用することを推奨しています。Gartnerは、地政学リスクを単一の問題として捉えるのではなく、「事業継続」「コスト増」「コンプライアンス」の3つの観点から総合的に管理する必要があると見ています。
事業継続のリスクについては、ベンダーのデータセンターやサービス提供拠点がどこに所在しているのかを把握し、有事の際の復旧時間やバックアップ体制を確認することが求められます。代替サービスや代替ベンダーの候補を事前に検討しておくだけでなく、取り戻すことができるデータの範囲や、データ移行を支援するサービスとツールの目途をつけることで、サービス停止や品質低下による事業への影響を最小限に抑えることができます。
コスト増のリスクについては、世界的なインフレや為替変動を背景に、クラウド利用料やソフトウェア保守費用の上昇が今後も継続するとの前提を置くべきです。その上で物価上昇や為替変動の影響を踏まえた予算計画を策定し、「必要十分」な調達を徹底することを推奨しています。ベンダーによる価格改定の要因の把握も重要です。物価上昇、為替変動、割引ルールの改定、価格モデルの変更といった各要因について、個別に交渉する時間を確保する必要もあります。
コンプライアンスのリスクについては、各国・地域におけるデータ保護法やAI関連規制の変化を継続的に監視し、自社およびベンダー双方の対応状況を評価する必要があります。特に、重要データやAI機能を活用するクラウド・サービスやソフトウェアについては、法令遵守やガバナンスの責任がベンダーだけでなく顧客企業にも問われます。法律や規制について、これまで以上に慎重な評価が求められます。
海老名は次のように述べています。「今後のIT調達においては、価格だけではなく、サービス提供体制や法規制対応も含めた総合的な評価を行うことが重要です。企業のIT調達はこれまで、価格を中心に評価されることが一般的でした。しかし、地政学リスクの高まりにより、コスト増だけでなく、事業継続やコンプライアンスへの影響も無視できなくなっています。国内企業は外資系ベンダーからのIT調達が活発であり、企業規模を問わず、海外拠点も増加傾向にあります。地政学リスクは、もはや一部のグローバル企業だけの課題ではありません。地政学リスクを新たなIT調達の評価軸として取り入れることが、今後のレジリエントな企業経営につながります」
Gartnerは、2028年までに、締結されるクラウド契約の70%では、地政学リスクがコストや品質に及ぼす影響が事前に検証されるとみています。
Gartnerのサービスをご利用のお客様は、IT調達では地政学リスクをどこまで織り込むべきかならびに地政学リスクに対峙するIT調達の多面的アプローチで関連する内容をご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、こちらよりご参照ください。https://www.gartner.co.jp/ja/products
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