2026年11月4日
2026年11月4日
Gartner IT Symposium/Xpo 2026 (11月4~6日) において、業界のトレンドを明らかに
ビジネスおよびテクノロジのインサイトを提供するガートナージャパン株式会社 (以下Gartner) は、2027年に企業や組織にとって重要なインパクトを持つ「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」を発表しました。
本日から金曜日まで開催中のGartner IT Symposium/Xpoの講演において、バイス プレジデント アナリストの池田 武史が解説しました。
Gartner IT Symposium/Xpoのステージで解説するアナリストの池田 武史
池田は次のように述べています。「現在生じているAIを取り巻く深刻な摩擦は、アーキテクチャの統制が欠如した状態でAIシステムが稼働している点にあります。人間によるレビューが追い付かない速さでソフトウェアが生成され、管理されていない認証情報への経路が作り出され、プロセスがシングル・ベンダーによる独占状態に依存している状況が生じています。組織は、こうした構造的なリスクを防ぐために、モデルの能力を受動的に観察する立場から脱却し、組織、人間、マシンの境界を能動的に設計する立場へと転換する必要があります。企業や組織のテクノロジ・リーダーにとってのチャレンジは、より信頼できる、安全で堅牢なAIを駆使した環境を確立することであり、今回のトップ・トレンドはその実現に大きな役割を果たすものです」
2027年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドは、次のとおりです (図1参照)。
出典:Gartner (2026年11月)
大規模定量モデル (Large Quantitative Models: LQM)
数値計算のタスクに汎用な言語モデルを適用すると、確率論的な推測が行われるため、アウトプットには精度やコンプライアンスに関する重大なリスクが生じます。定量データの処理や分析向けに設計されたモジュール型のハイブリッド・ニューラル・ネットワーク・アーキテクチャである大規模定量モデル (LQM) へ移行することで、意思決定の在り方を事後対応型のトラブルシューティングから、先を見越したシミュレーションへと転換できます。
この厳格なアプローチにより、これまでにないビジネス・アジリティが実現され、金融や医療といった規制の厳しい業界でも自律的な予測処理を安全に導入できるようになるとGartnerはみています。
音声推論モデル (Speech Reasoning Models)
音声推論モデルとは、音声データをテキスト化することなく直接推論処理し、会話全体のコンテキストや意図を追跡しながら次のアクションを判断する音声AIシステムです。
音声は依然として企業にとって最もやりとりの多いチャネルですが、過去10年にわたる顧客サポートの自動化への関心は高まっている一方で、企業での導入に求められる精度、スピード、解決率を十分には実現できていません。音声推論モデルは、そのギャップを大規模に解消し、複雑で高度な判断を伴う会話の自動化を実現可能にします。
ワールド・モデル (World Models)
ワールド・モデルは、「物理法則第一」へのパラダイム・シフトを確立し、マシンが空間、時間、因果関係を理解できるようにします。これにより自律エージェントは、実行前に将来起こりうる状態をシミュレーションして結果を予測し、自らのアクションがもたらす影響を理解できるようになります。ロボティクス、自律走行車、空間コンピューティングへの投資の急増が、この最先端テクノロジの進化を後押ししています。
AIコンテキスト・プラットフォーム (AI Context Platform)
AIコンテキスト・プラットフォームは、エージェント型AIに対して、インプットを解釈し、意思決定を行い、ビジネス目標に沿って行動するために必要なコンテキスト知識を提供します。
専用のコンテキスト・レイヤがなければ、エージェントへの過剰な権限付与、コンプライアンス違反、信頼性の低下、トークンの過剰消費など、深刻なオペレーション・リスクに直面することになります。
2027年までに、AI-Readyデータにおいてセマンティクスを優先する組織は、エージェント型AIの精度を最大80%向上させ、コストを最大60%削減するとGartnerは予測しています。
エージェント・コーディング・ハーネス (Agent Coding Harness)
AIコーディング・エージェント・ハーネスは、ソフトウェア開発ライフサイクル全体で自律型開発エージェントの振る舞いを統制するクローズド・ループ型の制御システムです。専用のハーネスがなければ、開発者はマシンのアウトプットを手作業で検証するために時間を費やさざるを得ません。結果として、ガバナンスに多大なコストがかかるという逆転現象が起こり、生産性向上の効果が完全に帳消しになります。
AIエージェントのアイデンティティ (AI Agent Identity)
AIエージェントは独立してタスクを実行し、複数の人間に代わって行動することから、新たなIDとアクセス制御を必要とします。例えば、ジャスト・イン・タイムのアクセスに対応できないレガシー・システムのように、固定的な認証情報や共有アカウントを利用するシステムでは、AIエージェントに過剰な権限が与えられたり、権限が不要になった後もアクセスが継続したりするリスクがあります。すなわち、AIエージェントの自律的な行動が拡大する中、こうした権限の管理不足によって新たなセキュリティ上の問題を引き起こします。
2028年までに、企業のセキュリティ侵害の25%が、管理されていないマシンの権限やレガシーな認証情報の取り扱いに起因するAIエージェントの不正利用によるものになるとGartnerは予測しています。
AIエージェントの権限を適切に管理するためには、エージェント自身の識別に加え、誰から権限を委任され、何を目的として、どこまで実行できるかを制御する必要があります。これには、動的なアイデンティティ管理と、ポリシーに基づくアクセス制御、実行時の認可などを組み合わせることが求められます。また、エージェントの行動を追跡可能にすることで、不正利用の防止と説明責任の確保につなげることができます。
自律型エクスポージャ修復 (Autonomous Exposure Remediation)
自律型エクスポージャ修復 (AER) とは、AI手法と自動化を組み合わせ、企業全体のデジタル資産に存在するセキュリティ脆弱性の発見、優先順位付け、修復を行う統合的な機能群です。このシステムは、パッチや仮想パッチを自動的にテストし、本番環境に適用します。
ソブリン・テック (Sovereign Tech)
ソブリン・テック (Sovereign Tech) とは、主要なプロバイダーへの依存から離脱するための現実的な戦略を実現できるよう技術的/法的に設計されたハードウェア、ソフトウェア、データベース、AIモデルを指します。こうしたテクノロジは、永続的に利用可能な状態を保つことで、ベンダー・ロックインを防ぎ、全面的な業務継続性を確保します。
2030年までに、米国以外の組織の75%以上がデジタル主権戦略を採用し、地政学的リスクやベンダー・ロックインのリスクを軽減するために重要なワークロードを移行させるとGartnerは予測しています。
使い捨てアプリケーション (Disposable Applications)
使い捨てアプリケーションとは、特定のビジネス目的が達成された場合や、その目的が意義を失った場合に、意図的に廃止されるよう設計された専用ソフトウェア・アプリケーションを指します。
使い捨てアプリケーションへの移行は、ソフトウェアの調達、設計、予算策定の在り方を根本的に変え、アプリケーション・ポートフォリオを長期的なレガシー投資ではなく、動的なシステムへと転換させます。
サービスとしてのウェットウェア (Wetware as a Service: WaaS)
従来のシリコン製コンピュータ・ハードウェアは、環境負荷やエネルギー需要が持続不可能であることから、企業向けAIを無制限に拡張することはできません。サービスとしてのウェットウェア (WaaS) は、生体システムや合成生物学的システムにクラウド・ベースのリモート・アクセスを提供し、コンピューティングに利用できるようにする新たなオペレーション・モデルです。こうしたホスト型の有機プロセッサは、生化学ネットワークが持つ生来の可塑性を活用し、極めて高いエネルギー効率で複雑なアルゴリズムを実行します。
2027年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドでは、今後5年間にCIOやIT/ハイテク・リーダーにとって顕著なディスラプションと機会をもたらすトレンドにスポットライトを当てています。Gartnerのサービスをご利用のお客様はスペシャル・レポートTop Strategic Technology Trends for 2027 (英語) で詳細をご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、こちらよりご参照ください。https://www.gartner.co.jp/ja/products
Gartnerは、組織の経営幹部およびテクノロジ・プロバイダーにとって欠かせないパートナーとして、AI戦略の実行による重要なビジネス課題の解決を支援します。Gartnerのインサイトは独立性と客観性に基づいており、お客様が確信を持って意思決定を行い、AIの可能性を最大限に引き出すことを可能にします。経営層のお客様は、自社におけるAI活用の方向性を見極めるため、Gartner独自のAIツールAskGartnerを活用しています。Gartnerは、2,500人以上のビジネスおよびテクノロジ領域のアナリストによるインサイト、6,000本を超えるリサーチ、ならびに4,000件以上のAIユースケースおよびケーススタディを有し、AIにおける世界的なインサイトを提供しています。詳細はこちらをご覧ください。
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