2026年11月5日
2026年11月5日
Gartner IT Symposium/Xpo (11月4~6日に開催) において、AIが組織、政府機関、社会に及ぼす影響をアナリストが解説
ビジネスおよびテクノロジのインサイトを提供するガートナージャパン株式会社 (以下Gartner) は、2027年以降の重要な戦略的展望を発表しました。重要な戦略的展望は、「ロボットの遍在」「コストから価値へ」「未知の未知」「バーナー (即応/破壊型) ビジネス」という4つのカテゴリに分類されます。
開催中のGartner IT Symposium/Xpoにおいて、ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀忠明は次のように述べました。「公共サービスからソフトウェア、エネルギー、ワークフォース・モデルに至るまで、今日私たちが当たり前のように利用しているシステムの多くは、今後10年間でAIによって根本的に変革されていくでしょう。最も成功する組織とは、イノベーションと責任のバランスを取り、AI主導の世界がもたらす機会と想定外の結果の両方に対処するために必要な能力を構築できる組織です」
Gartner IT Symposium/Xpoのステージで解説するアナリストの亦賀 忠明
テクノロジおよびビジネスのリーダーは、以下の重要な展望が2027年以降の自社の戦略や投資にどのような影響を及ぼすかを評価する必要があります (図1参照)。
出典:Gartner (2026年11月)
2030年までに、グローバル企業に雇用されている現場ワーカーの80%は、フィジカルAIシステムの支援を受けるようになる
フィジカルAIとは、ロボット、ドローン、自律走行車、その他のエンボディド・システム (物理的な実体を持つシステム) といったテクノロジを通じて、AIを物理世界へと拡張するものです。そうしたシステムは、周囲の環境を感知し、相互作用し、影響を及ぼします。既に多くの業界では、安全性の向上、反復的かつ危険な作業の自動化、オペレーション上のインサイトの獲得のため、フィジカルAIを利用し始めています。Gartnerは組織に対し、拡張性の高いプラットフォーム、堅牢なガバナンスの枠組み、フィジカルAIシステムを効果的に導入/管理するために必要なスキルや能力への投資を通じて、安全を最優先にした戦略的なアプローチを取るよう推奨しています。
2030年までに、個人、企業、政府機関が作成した100億以上の自律エージェントによって、公共サービスが機能不全に陥る
エージェント型AIは、公共サービスへの需要を大幅に増加させるでしょう。これは、自律エージェントが利用者に代わってサービスの利用機会を特定し、受給要件を判断し、申請手続きを行えるようになり、人間の手間が最小限に抑えられるためです。申請、請求、手続きの急増は、政府機関のシステムや業務に負担をかけ、本人確認、信頼性、説明責任に対するより強固なアプローチが求められ、さらに業務処理を迅速かつ確実化する必要に迫られるようになります。Gartnerは政府機関に対し、デジタル・インフラストラクチャの近代化、検証機能の強化、AIを介したやり取りの増加を見越した計画を策定し、変化に備えるよう推奨しています。
2030年までに、外部公開のAIを運用している組織の80%では、コスト枯渇攻撃を受け、AIコストが過度に膨れ上がる
外部公開のAIが台頭する中、悪意のある攻撃者がAIの過度な利用を意図的に引き起こして運用コストを膨らませる、「コスト枯渇攻撃」と呼ばれる新たなサイバーセキュリティ・リスクが生じています。顧客向けアプリケーションへのAIの組み込みが進むにつれて、トークン消費量やAI利用パターンを、コスト管理とセキュリティの両面から考慮する必要が生じます。Gartnerは組織に対し、AIトークンのコストをサイバーセキュリティの指標および対象として捉え、コスト重視のセキュリティ・コントロールを導入し、すべてのAIテクノロジを対象とする監視とカバナンスを拡充するよう推奨しています。
2029年までに、AIを導入する組織の60%は、AIの総コストを価値や利益にひも付けて管理する専任組織を設置する
エージェント型AIの導入拡大に伴って、コストが急速に膨らみ、支出とビジネス価値の結び付きが見えにくくなっているため、トークン消費の管理がビジネス上の優先課題となりつつあります。コスト効率と価値創出のバランスを図るために、AIの利用パターンに対する可視性を高め、ガバナンスを強化する必要があります。Gartnerは組織に対し、AIへの投資を測定可能なリターンへと確実につなげるために、明確なガバナンス、トークン割り当て、監視体制を導入するとともに、トークン消費をビジネス価値指標に直接連動させるよう推奨しています。
2028年までに、Fortune Global 500企業の60%は、AI FinOpsの管理を推論処理に組み込み、コスト・ガバナンスを事後報告からリアルタイムの最適化へと転換させる
AIツールやエージェント型ワークフローが拡大する中、AI支出の予測や管理がますます困難になり、事後的なコスト報告からリアルタイムのAI FinOpsガバナンスへと移行が進んでいます。AIが運用コストに占める割合が大きくなるにつれ、利益率を維持して価値を最大化するために、タスク単位のコストやトークン効率の測定がますます重視されるようになります。Gartnerは組織に対し、実行時のコスト管理を導入し、推論経路上のテレメトリを展開するとともに、コスト・ガバナンスをAIプラットフォーム/アプリケーションの中核的な要件として位置付けるよう推奨しています。
2030年までに、企業が保有する10兆ドル規模のエネルギーにより、Global 2000企業が想定外の電力供給事業者となり、送電網やAIデータセンターへの販売を通じて電力業界を再編していく
AIやデータセンターの電力需要が急増する中、電力の供給不足がAIの導入・拡大を制約する可能性が高まっています。こうした事態を回避するため、企業は電力会社からの調達に加え、自ら発電・蓄電設備を保有し、必要な電力を安定的に確保する動きを強めると予測されます。さらに、一部の企業は余剰電力を電力市場やAIデータセンターに販売することで、新たな電力供給者となる可能性があります。Gartnerは、AIをビジネスの競争構造を変える戦略的なゲームチェンジャーとして利用する企業に対し、エネルギー管理プラットフォームへの投資、電力データと業務データの統合、電力供給の安定確保や電力市場への参入に必要な管理体制とインフラストラクチャの整備を推奨しています。
2030年までに、Global 500企業の80%は、CIO (またはCAIO) を「責任あるAI」のエビデンス管理責任者に任命するようになる
AIが重要な業務プロセスや意思決定に組み込まれるにつれ、AIが何を判断・実行したのかを把握し、その結果に対する責任を明確にすることが求められています。これに伴い、テクノロジ・リーダーには、AIの利用状況や判断・実行の履歴を把握し、ガバナンス上のルールが適切に守られていることを検証する役割が一層求められます。Gartnerは組織に対し、AIの判断・実行履歴、承認記録、統制状況などのデジタル証拠を適切に管理できる能力を評価し、AIの行動とその結果に対する責任の所在を明確にするよう推奨しています。
2030年までに、保険コスト削減に向けたAI賠償責任保険の引受基準厳格化により、規制当局ではなく保険会社がAIガバナンスを主導するようになる
AIエージェントの普及によって、AIガバナンスには、従来のポリシーやアクセス制御などに加え、AIの自律的な判断や実行を継続的に監視・制御する「オペレーショナル・ガバナンス」が求められるようになっています。AIのリスクや賠償責任に対する懸念が高まる中、保険会社はAI賠償責任保険の引受条件などを通じて、企業により厳格なリスク管理や統制の実効性を求め、AIガバナンスの実務に影響を与えると予測されます。Gartnerは組織に対し、イノベーションと説明責任を両立するため、AIガバナンス・テクノロジを導入し、実際の運用環境で統制の有効性を継続的に検証するとともに、AIの実行時にも適切に監視・制御できる体制を確立するよう推奨しています。
2029年までに、Global 500企業の25%は、コンポーネント化されたAI搭載サービスを生み出し続け、先行企業の成功を見極めてから、素早く追随するファスト・フォロワー戦略を無力化する圧倒的な競争優位性を築く
AIネイティブの競合企業が、顧客ニーズに応じて柔軟に変更・拡張できるサービスを次々と投入する中、既存企業もイノベーションを加速することが求められています。特に、AI機能、データ、業務機能などを再利用可能なコンポーネントとして組み合わせ、新たなサービスを迅速かつ継続的に提供する能力が競争力を左右します。こうした競争優位性を築くには、AIへの投資だけでなく、データ基盤、ガバナンス、人材などの強化も欠かせません。
Gartnerは組織に対し、AIを活用した顧客向けイノベーションを優先し、データ/アナリティクス能力を強化するとともに、新たな価値の源泉を継続的に創出できる適応力のある人材を育成するよう推奨しています。
2029年までに、新規アプリケーションの80%が意図的に使い捨てられるもの (使用期間が1年未満) となり、ソフトウェア・ライフサイクルに革命がもたらされる
AIによってアプリケーション開発のハードルが大幅に下がり、業務部門の従業員が、その場のニーズに応じて一時的なアプリケーションを自ら作成・利用するケースが増えると予測されます。一方、こうしたアプリケーションが急増することで、IT部門がその存在や利用状況を十分に把握できず、セキュリティ、コンプライアンス、データ管理などのリスクが高まる可能性があります。特に、重要な意思決定に関与したり、機密データにアクセスしたりする場合には、適切な統制が必要です。Gartnerは組織に対し、アプリケーションの重要度やリスクに応じたガバナンスを整備するとともに、自動化されたレジストリ (登録・管理台帳) によって業務部門が作成したアプリケーションを把握・管理し、AIが生成したアプリケーションやAIエージェントの実行履歴などを適切に保存できるよう、記録保存ポリシーを見直すことを推奨しています。
Gartnerは、組織の経営幹部およびテクノロジ・プロバイダーにとって欠かせないパートナーとして、AI戦略の実行による重要なビジネス課題の解決を支援します。Gartnerのインサイトは独立性と客観性に基づいており、お客様が確信を持って意思決定を行い、AIの可能性を最大限に引き出すことを可能にします。経営層のお客様は、自社におけるAI活用の方向性を見極めるため、Gartner独自のAIツールAskGartnerを活用しています。Gartnerは、2,500人以上のビジネスおよびテクノロジ領域のアナリストによるインサイト、6,000本を超えるリサーチ、ならびに4,000件以上のAIユースケースおよびケーススタディを有し、AIにおける世界的なインサイトを提供しています。詳細はこちらをご覧ください。
Gartner IT Symposium/Xpo (11月4~6日に横浜で開催中) では、CIOやITリーダーが、自社組織における変革の推進者となり、AIを活用してデジタル・トランスフォーメーションを成功に導くための知見を学びます。コンファレンスに関するニュースや最新情報は、XやLinkedInで#GartnerSYMを使用してフォローいただくか、ニュースルームよりご覧いただけます。
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