2025年5月12日

Gartner、アプリケーション戦略の策定が日本企業にとって喫緊の課題であるとの見解を発表

ガートナー アプリケーション・イノベーション & ビジネス・ソリューション サミット (6月18~19日) においてIT部門が取り組むべき重要課題をアナリストが解説

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、アプリケーション戦略の策定が日本企業にとって喫緊の課題であるとの見解を発表しました。

Gartnerが2024年9月に従業員数1,000人以上の国内企業で業務アプリケーションの意思決定に関与する企業内個人を対象に実施した調査によると、組織でのIT部門の位置付けや取り組み姿勢の違いが、導入済みの業務アプリケーションによるビジネス成果の獲得に明確な違いを生み出していることが明らかになっています。

ビジネス成果を得られている企業には、成果を得られていない企業と比べて以下のような特徴が見られます。

  • ITに対する経営層からの理解が得られており組織の事業において重要な存在と位置付けられている
  • 経営層やユーザー部門、ベンダーなど、ステークホルダーからの信頼が厚い
  • 経営戦略や中期経営計画を反映しようとし、対話によって理解を深めるなどの努力をしている
  • IT業務環境の意志決定に経営戦略を反映している

バイス プレジデント アナリストの本好 宏次は次のように述べています。「ビジネス戦略とアプリケーション戦略の整合性の確保は、アプリケーション組織における最優先事項ですが、Gartnerに寄せられる問い合わせから、そもそも日本では、ほとんどの企業が体系的なアプリケーション戦略を策定していないと推測されます。ユーザー部門の関係者も巻き込みつつ、ビジネス戦略と整合性の取れたアプリケーション戦略を用意し、確実にビジネス成果へとつなげていくことは、多くのアプリケーション/ソフトウェア・エンジニアリング・リーダーにとって喫緊の課題といえます」

Gartnerは、アプリケーション/ソフトウェア・エンジニアリング・リーダーがアプリケーション戦略を策定するための4つのステップを提示しています。

ステップ1:アプリケーションの役割・価値を示す戦略原則を定める

戦略の方向性を示し、組織が重視する戦略上の価値を表すルールやガイドラインとして働く原則はあらゆる戦略の必須要素です。戦略の定義と実行には、利害や価値観の異なる多くの関係者の意思決定と行動が伴います。その企業に固有で有効な戦略原則を策定するには、アジリティ、コスト、ガバナンスなど考慮すべき事項やKPIのうち、何を重視し、何を見送るかを明確にする必要があります。同時に、見送ったことでもたらされるトレードオフを受け入れる姿勢も示すことも重要です。

ステップ2:アプリケーションの「健康診断」を実施する

アプリケーションがビジネスと技術のニーズを満たすには、アプリケーション・ポートフォリオの定期的な検証が求められます。アプリケーション・ポートフォリオの健全性をチェックするために、GartnerはTIMEフレームワーク (Tolerate [許容]/Invest [投資]/Eliminate [廃棄]/Migrate [移行]) を活用し、ビジネス、技術、コストの観点にひも付く指標に基づいて各アプリケーションの適合性を評価することを推奨しています。その際は、IT部門の関係者に加え、ユーザー部門の関係者も交えて、どのアプリケーションを優先的に見直しの対象にすべきかについて、合意形成を図ることが重要です。

ステップ3:ビジネス・ケイパビリティの「仕分け」を行う

ビジネス・ケイパビリティとは、組織のビジネスモデルにおける価値提案やミッションを実現し、顧客に提供するために行うべきことを、アクション指向で分類したものです。Gartnerでは、ビジネス・ケイパビリティとそれにひも付くアプリケーション機能を、ビジネス活動における位置付けと変化のペースに合わせて3つのレイヤに分類し、メリハリの利いた仕分けを行うことを推奨しています (図1参照)。

図1. Gartnerのペース・レイヤ・アプリケーション戦略
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出典:Gartner (2025年5月)

本好は次のように述べています。「ビジネス・ケイパビリティの仕分けでは、『これは差別化につながる独自性の高い機能か』ではなく、『これは差別化につながる独自性の高い機能として発展させるべきか』という未来を見据えた視点で議論をすることがポイントです」

ステップ4:誰もが直感的に理解できる簡潔なアプリケーション戦略をまとめる

戦略はできるだけ簡潔 (例えば、スライド1ページ) にまとめ、時間が限られている経営陣をはじめとするステークホルダーにも、全体像を理解しやすい形で伝えることが重要です。アプリケーション/ソフトウェア・エンジニアリング・リーダーは、戦略に含めるべきポイントを特定することに注力すべきです。その際、いきなり完璧なものを作ろうとせず、関係者との合意形成を進めるためのコミュニケーション・ツールと捉えて、ビジネス戦略やニーズの変化に応じて、アプリケーション戦略を柔軟に進化し続けることが重要です。

本好は次のように述べています。「アプリケーション/ソフトウェア・エンジニアリング・リーダーには、相互に連携して動くアプリケーション群の複雑なポートフォリオを管理し、自社のビジネスに合わせて最適化するという任務が課せられています。今後、クラウド・サービスや組み込み型のAIが増加する中、業務アプリケーションの全体感を見失いがちな傾向が強まっていくと予想されます。誰にとっても分かりやすく、簡潔で力強いアプリケーション戦略を作ることが企業にとって非常に重要です」

Gartnerのサービスをご利用のお客様は、リサーチノート「クイック・アンサー:効果的なアプリケーション戦略の作り方」で詳細をご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、こちらよりご参照ください。https://www.gartner.co.jp/ja/products

日本のITエグゼクティブ向けのニュースや最新情報は、GartnerのXLinkedInFacebookでも案内しています。最新のプレスリリースや記事、ウェビナー情報については、ニュースルームよりご参照ください。

ガートナー アプリケーション・イノベーション & ビジネス・ソリューション サミットについて

Gartnerは来る6月18~19日に「ガートナー アプリケーション・イノベーション & ビジネス・ソリューション サミット」(会場:ウェスティンホテル東京) を開催します。本サミットでは、「未来の礎:人とテクノロジを結び付け価値をもたらす」をテーマに、アプリケーション/ソフトウェア・エンジニアリング・リーダー向けに最新の知見やアドバイスを提供します。コンファレンスのニュースと最新情報は、XLinkedInFacebookでご覧いただけます (#GartnerAPPS)。

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