インダストリ・クラウド・プラットフォームとは何か？

インダストリ・クラウド・プラットフォームは、ソフトウェア、プラットフォーム、サービスとしてのインフラストラクチャ (IaaS) の機能を組み合わせて、業界に特化したソリューションを提供します。この業界別ソリューションは、主としてパブリック・クラウド・サービスをベースとしますが、これによって企業は、関連セグメントのビジネス、データ、コンプライアンスなどに関する特定のニーズに対し、アジリティ (俊敏性) の高い方法でワークロードを管理し変更を加速できるようになります。

ガートナーのアナリストであるグレガー・ペトリ (Gregor Petri) は、次のように述べています。「インダストリ・クラウド・プラットフォーム (ICP) は、実質的にクラウド・プラットフォームをビジネス・プラットフォームに転換します。これによって、既存のテクノロジ・イノベーション・ツールをビジネス・イノベーション・ツールとして活用できるようになります。つまり、事前定義された一回限りの業界別SaaSソリューションではなく、業界固有のビジネス・ケイパビリティ・パッケージのカタログに支えられた、モジュール型のコンポーザブル・プラットフォームとしての役割を果たします」

ガートナーが北米と欧州の企業を対象に最近実施した調査によると、回答者の約39％がインダストリ・クラウド・プラットフォームの採用に着手しており、14%が試験的導入を実施しています。さらに、約17%が2026年までに導入することを検討しています。全体として、概念としてのインダストリ・クラウド・プラットフォームに馴染みのある回答者の大多数が、業界別クラウド・プラットフォームを採用しているか、または採用する可能性があることになります。

ガートナーは、2027年までに企業の70%以上が、インダストリ・クラウド・プラットフォームを利用してビジネス・イニシアティブを加速するようになると予想しています (2023年の調査では15%未満)。

インダストリ・クラウド・プラットフォームは、適応性と関連性の高い業界別ソリューションを通じて企業に価値をもたらすという点において、注目すべき最新のトレンドです。クラウド・インフラストラクチャやプラットフォーム・テクノロジの初期ユーザーの枠を超えて、ビジネス部門の利用者に明確にアピールすることで、クラウドの採用を大幅に加速させています。

企業は、インダストリ・クラウド・プラットフォームを利用することで、業界のプロセスやアプリケーションに素早く対応できます。ガートナーの2022年のCIOとテクノロジ・エグゼクティブのアジェンダで示すように、コンポーザビリティは、パフォーマンスの向上と変化への対応力強化の両面を支援する重要な要素です。しかし、このアプローチは、インダストリ・クラウド・プラットフォーム自体の効率的な構築においても重要です。さらに、モジュール型のコンポーザブルなアプローチのため、パートナー企業はマーケットプレースやアプリ・ストアを通じて付加価値の高い機能を提供しやすくなります。クラウド・プロバイダーだけでなく、独立したソフトウェア・ベンダーやシステム・インテグレーターが参加し、インダストリ・クラウド・エコシステムが拡充されることは、インダストリ・クラウド・プラットフォームの価値を高める上で有効です。このように包括的でありながらモジュール型のアプローチであるため、業界間においても互いに技術的イノベーションやビジネス・イノベーションをより容易かつ迅速に取り入れることができます。

GovCloudのような、コピー／分割され個別の維持が必要なコミュニティ・クラウドとは異なり、インダストリ・クラウドは業界に関連する基盤プラットフォーム機能をユーザーに一括で提供します。

インダストリ・クラウド・プラットフォームは、ビジネス・ケイパビリティ・パッケージ、業界を意識したデータ・ファブリック、コンポーザブルなツールなどの革新的テクノロジ／アプローチを用いて、従来のクラウドの枠にとどまらない付加価値をもたらします。

インダストリ・クラウドの潜在力を最大限に引き出すには、「エコシステム・クラウド」と呼ぶことができるようなクラウドへと進化させる必要があります。企業は、調達、流通、決済処理、さらに研究開発やイノベーションといった共有の (ビジネス) プロセスに参加することで、このエコシステムを活用できます。しかし、そうした価値を得るには、インダストリ・クラウド・プラットフォームを利用する企業において、IT部門とビジネス部門の両方で幅広いステークホルダーが関与する必要があります。

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
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