データ分析はなぜビジネスにおいて重要なのか?
データ分析の価値を伝えるために必要な6つのステップ

2022年11月21日

データ分析のビジネスにおける重要性や価値を理解してもらうためには、ビジネス成果だけではなく、ステークホルダーへの個人的なインパクトも伝える必要があります。データ分析の価値を伝えるために有効な6つのステップを説明します。

ポイント

  • CDAO (最高データ/アナリティクス責任者) にとって、ステークホルダーの支持を得ることは難題になる可能性がある。

  • CDAO (最高データ/アナリティクス責任者) は、測定可能なビジネス成果を通してD&A (データ/アナリティクス) のビジョンと戦略を「提案」しながら、ステークホルダーからの反対や、変化への抵抗に打ち勝たなくてはならない。

  • この6つのステップから成るアプローチは、ステークホルダーが理解も測定もできない可能性があるテクノロジ/アーキテクチャ/解決策ではなく、「ステークホルダーが価値を置くもの」に焦点を保つ上で役立つ。

どの経営幹部もコストを正当化し、イニシアティブのビジネス価値を実証できるようにすべきです。インフレ、逼迫する労働市場、景気後退の脅威に組織が立ち向かう中では、そうした能力が特に必須となります。

ガートナーのアナリストで、ディスティングイッシュト バイス プレジデントのアラン・ダンカン (Alan D. Duncan) は、次のように述べています。「CDAO (最高データ/アナリティクス責任者) にとって重要なことは、D&Aイニシアティブがビジネス戦略にどのように貢献し、どのように価値をもたらすかを示すことです。曖昧な言葉で『D&Aはより効果的なビジネス意思決定へと促す』と述べるだけでは不十分です。D&Aイニシアティブのバリュー・ストーリーまたは考え方を明確に策定し、SMARTアプローチ (具体的 [Specific] で測定可能 [Measurable] で達成可能 [Achievable] で関連性 [Relevant] があり期限が設定されている [Time-bound]) に従ってビジネス上のベネフィット (便益:効果を貨幣価値で換算したもの) を示します」

ステークホルダーに影響を及ぼすには、望ましいビジネス成果 (なぜ必要なのか) と、対象とするステークホルダーに与える個人的インパクト (誰のためか) を見極め、それを伝える必要があります。

ビジネス・リーダーにデータ分析戦略を提案するために必要な6ステップのアプローチ

この6ステップのアプローチでは、テクノロジとアーキテクチャの要件 (何を含めるか) とソリューションの実装に必要なデリバリ作業 (どのように行うか) ではなく、先述した「なぜ必要なのか」と「誰のためか」に重点を置きます。両方とも、ビジネス上のベネフィットを特定して測定するのがより難しい領域です。

ステップ1:ステークホルダーの心に響く力強いビジョンを掲げる

D&A (データ/アナリティクス) のビジョンと価値は、人を鼓舞するものでなければならず、ステークホルダーの観点に立って作成する必要があります。この関与するグループの心に響くような、前向きで説得力のある望ましい将来像を描きます。そして、プロジェクトの成果物、アウトプット、タスクではなく、アナリティクスでビジネスにもたらすインパクトと成果に注力します。

企業の成果 (自社にどのような利点があるか) と個人/プロフェッショナルの成果 (自分にどのような利点があるか) の両方を向上させることを目指します。前者は、売り上げ増加、市場シェアの拡大、無駄の削減、リスク・インパクトの軽減などが該当し、後者は社内での評判向上、希望する昇進に対する支援、金銭的報酬、仕事の満足度、場合によっては快適な生活などが該当します。

ステップ2:阻害要因を包み隠さず明らかにする

阻害要因、課題、問題、リスクを明示的に特定します。例えば、「現在の技術スタッフは自分たちの地位を守りたいと考えている」「スキルを有する人材が限られていることが、実行する上で障壁になるかもしれない」「D&A (データ/アナリティクス) イニシアティブの予算のオーナーシップを巡る権力闘争がある」といったことです。このような課題の結果として生じるインパクトと、それに対する改善策を示します。

例えば、スキルを有する人材の供給不足が実行上の障壁であるかもしれない場合、既存チームを、必要な技術スキルを持つ新しいリソースと入れ替えると、その過程で組織的な知識が失われ、疑心暗鬼が生じます。これに対する改善策としては、例えば、新規テクノロジを展開する前に、現在のチームに当該テクノロジのトレーニングを行うこと、そして、テクノロジの選定と展開のプロセスに、ビジネスとテクノロジの両チームのメンバーを関与させることが考えられます。

ステップ3:「データ」から「ビジネス成果」までをトレースする解決策を提案する

解決策のアーキテクチャは、実務を行うデリバリ・チームにとって不可欠です。しかし、解決策の設計において、「データを使ってどのようなビジネス上の問いに答えられるか」「見込まれるビジネス側のアクションと測定可能な成果とは」について触れられることはめったにありません。これでは、ビジネス部門のステークホルダーの関心を失う恐れがあります。

D&A (データ/アナリティクス) のビジネスケースでは、解決策の青写真をステークホルダーが理解できるように示し、ステークホルダーの注意を引くとともに、解決に向けた全体的なアプローチを学べるようにする必要があります。ここで重要となるのが、「マーケテクチャ」の視点です。つまり、マーケティングとアーキテクチャの両観点から、情報サプライチェーン全体も捉え、ビジネス部門のステークホルダーにとって重要な言葉で示すことです。

例えば、以下の観点から考えます。

  • 期待されるビジネス成果 (アクションを起こした結果として、どのようなベネフィットが生じるか)

  • 結果生じるビジネス側のアクション (問いに答えられた結果として変わる行動は何か)。

  • ソース・データや各種ビジネス・アプリケーションなどの入力データ (ビジネス上の重要な問いに答えるために、ビジネス・コミュニティはどのデータにアクセスするか)。

ステップ4:ビジネス部門に分かる言葉で、データ分析デリバリのロードマップを提示する

デリバリのためのタスク、活動、相互依存関係のすべてを含む詳細な計画と予定表はデリバリ・チームにとって極めて重要ですが、ビジネス部門の幹部が必要としているのは、簡素化された時系列ロードマップです。ロードマップには、将来像を達成する上で徐々に起こる成果物を示します。その際は、以下のような、経営幹部が自らにとって非常に重要な事柄を明確に理解できるように行います。

  • 何を得られるか。

  • いつ得られるか。

  • 自分にはどのようなインパクトがあるか。

eBook:ロードマップ:データ/アナリティクスの活用でデジタル化による成長を推進

ステップ5:ビジネス・イニシアティブ全般にわたるコスト・ベネフィット分析 (費用便益分析) を要約して示す

上述したように、想定されるベネフィットは、D&A (データ/アナリティクス) との因果関係を明確に特定した上で、具体的で、定量化でき、ステークホルダーにとって望ましいものにする必要があります。D&Aのビジネスケースを売り込む際には、初期投資と継続的なサポート・コスト (総保有コスト:TCO) を、期待される投資収益率 (ROI) の観点から正当化しなければなりません。

ROIとTCOを比較計算するための具体的な財務方法論は多種多様にありますが、ビジネスケースを作成する際の重要な原則には以下があります。

  • ROIを、野心的なビジョン/成果と、ステップ1で確立した当初のビジョンの主要なベネフィットに結び付ける。

  • ビジネスケースでは、未来志向かつ前向きな視点を保ち、イニシアティブ全体で財務上の成果が差し引きでプラスとなるようにする。

  • ビジネス部門のステークホルダーが通常求めるベネフィットはビジネス効果の向上であるが、CFOやCIOは効率化による利益やリスク軽減であるかもしれないことを忘れない。

  • 政府機関や非営利組織などの一部の組織は、非財務的なベネフィットを主たる推進力にしているかもしれないが、その場合でも、その非財務的なベネフィットをSMARTで示すべきである。

ステップ6:D&A (データ/アナリティクス) イニシアティブを始動すべく、即座にネクスト・アクションを実行する

D&A (データ/アナリティクス) イニシアティブを実際に始動するに当たり、即座に着手すべき次のアクション (ネクスト・アクション) を明記します。これが、D&Aのビジネスケースの提案に最後の弾みを与えます。ネクスト・アクションは、「次に何が起こるか」「誰が実行するか」「いつ実行するか」「なぜ必要なのか」という観点から構成します。

趣意書を明快な言葉で明確に作成します。許可を求めるのではなく、「推定承諾話法 (Assumptive Close)」を使って意思決定過程をコントロールし、結論へと導きます。また、責任を受け入れ、CDAOが計画全般をコントロールしているという自信と断固たる意図を示します。

この記事は、2021年9月に発行した記事を更新して、新たな事象、状況、リサーチを反映したものです。

ガートナーのアナリストで、ディスティングイッシュト バイス プレジデントのアラン・ダンカン (Alan D. Duncan) は、データ/アナリティクス (D&A) 戦略および最高データ/アナリティクス責任者(CDAO)を担当しています。主な担当分野は、データ・ドリブン型のビジネス変革、データ・リテラシー、組織文化など。

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/

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