注目すべき先進テクノロジが明らかに!ガートナーの「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2022年」

2022年9月4日

メタバース、NFT、Web3を含む先進テクノロジの最新の位置付けが明らかに!
ガートナーのハイプ・サイクルで取り上げた2022年の先進テクノロジは、①「イマーシブ・エクスペリエンスの進化と拡大」②「人工知能 (AI) 自動化の加速」③「テクノロジストによるデリバリの最適化」という3つのテーマに分類できます。

ポイント

  • ガートナーの「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2022年」では、競争力のある差別化と効率化を強化する、25の押さえておくべきイノベーションを取り上げている。
  • 2年という短さで「主流の採用」に達するイノベーションはごく少数であり、多くは10年以上かかる。
  • 誕生したばかりのテクノロジの導入には、大きなリスクを伴う場合があるが、アーリー・アダプター (早期採用者) は、大きな先行者メリットを得られる可能性がある。

ガートナーの「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2022年」では、エンタプライズ・アーキテクチャとテクノロジ・イノベーションのリーダーを支援することを目的として、25の押さえておくべき先進テクノロジを特定しています。これらの先進テクノロジは、以下の3のテーマに分類されます。

  • イマーシブ・エクスペリエンスの進化と拡大
  • 人工知能 (AI) 自動化の加速
  • テクノロジストによるデリバリの最適化 

これらの先進テクノロジは今後2~10年にわたってビジネスと社会に大きなインパクトを与えることが予想されますが、特にCIOをはじめとするITリーダーが、デジタル・ビジネス・トランスフォーメーションを達成できるようにするものです。

先進テクノロジとは本質的に破壊的なものであり、それらがもたらす競争力は、まだよく知られていないか、証明されていません。この機会をつかむには、その潜在的なユースケースと、テクノロジが「主流の採用」に達するまでの道のりを理解することが極めて重要です。「主流の採用」に達するまでの年数は、短いもので2年、長いもので10年以上を要する可能性があります。

アナリストでバイス プレジデントのメリッサ・デイヴィス (Melissa Davis) は、次のように述べています。「これらのテクノロジは、いずれも初期段階のものです。一部はまだ誕生したばかりで、どのように進化するかが不確実であり、そうしたテクノロジの導入には、大きなリスクを伴う場合があります。一方で、アーリー・アダプター (早期採用者) には大きな先行者メリットをもたらす可能性があります。その意味において、これらはガートナーの戦略的テクノロジのトップ・トレンドとは異なります」

2022年以降に考えるべき、ハイプ・サイクルの3つのテーマ

ガートナーの「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2022年」では、先進テクノロジを取り上げ、2,000を超えるテクノロジや適用済みフレームワークから主要な知見を抽出し、潜在能力が高いものを簡潔にまとめています。大半のテクノロジには複数のユースケースがありますが、エンタプライズ・アーキテクチャとテクノロジ・イノベーションのリーダーは、組織に最大のメリットをもたらす可能性があるテクノロジを優先すべきです (また、ターゲットとするユースケースでのテクノロジの実現可能性を実証する、概念実証 (POC) プロジェクトを始動する必要があります)。

以下では、2022年の一連の先進テクノロジを分類する3つのテーマについて、詳しく解説します。

テーマ1:イマーシブ・エクスペリエンスの進化と拡大

このテーマに分類されるテクノロジのメリットは、個人が自身のアイデンティティとデータに対する自らのコントロールを強化し、自らのエクスペリエンスの範囲を広げて、デジタル通貨と統合が可能なバーチャルな場とエコシステムにまで入り込めることです。また、企業は、新たな方法で顧客にリーチし、収益源を強化または新規開拓できるようになります。

顧客のデジタル・ツイン (DToC) は、顧客の仮想表現を動的に作成して、顧客行動をシミュレーションし、模倣および予測できるよう学習します。この結果を生かしてカスタマー・エクスペリエンス (CX) を修正および強化するとともに、新たなデジタル化の取り組み、プロダクト、サービス、機会をサポートできます。DToCが「主流の採用」に達するまでには5〜10年かかりますが、組織に変革をもたらすテクノロジになります。

「イマーシブ・エクスペリエンス」において極めて重要なテクノロジとして、以下があります。

  • 分散型アイデンティティ (DCI):ある主体 (通常は人間のユーザー) が、ブロックチェーンや他の分散型台帳テクノロジ (DLT) といったテクノロジをデジタル・ウォレットと一緒に活用することで、自身のデジタル・アイデンティティをコントロールできるようにします。
  • デジタル・ヒューマン:人間の特徴、性格、知識、考え方の一部を持つ、AI主導のインタラクティブな表現です。
  • インターナル・タレント・マーケットプレース:内部の従業員や、場合によっては非正規労働者プールと、タイムボックスを設定したプロジェクトやさまざまな仕事の機会を、リクルーターを介さずにマッチングします。
  • メタバース:仮想的に拡張された物理的現実とデジタル化された現実の融合によって創り出される集合的な仮想共有空間です。メタバースには継続性があり、拡張されたイマーシブ・エクスペリエンスをもたらします。
  • NFT (非代替性トークン):プログラム可能なブロックチェーン・ベースの一意のデジタル・アイテムであり、デジタル資産の所有権を公に証明するものです。例えば、デジタル・アート/音楽のほか、住宅/自動車/文書のようなトークン化された物理資産もあります。
  • スーパーアプリ:モジュール化されたマイクロアプリをデリバリするためのプラットフォームとして構築される、コンポジット・モバイル・アプリです。ユーザーはこれを有効化し、アプリ・エクスペリエンスをパーソナライズすることができます。
  • Web3:ユーザーが自らのアイデンティティとデータをコントロールできるようにする、非中央集権型のWebアプリケーションを開発するための新しいテクノロジ・スタックです。

テーマ2:人工知能 (AI) 自動化の加速

AI導入を拡大することは、プロダクト、サービス、ソリューションの進化にとって不可欠です。換言すれば、AIモデルの開発とトレーニングにAIを適用し、このAIモデルをプロダクト、サービス、ソリューションのデリバリのためにデプロイすることで、専門AIモデルの作成を加速するということです。結果として、予測/意思決定の精度向上や、期待される成果実現までの時間短縮をもたらします。また、人間の役割は、消費者、評価者、監督者としての役割にさらに重点が置かれるようになります。

加速されたAI自動化の一例であるオートノミック・システムは、限定領域のタスクを実行する自己管理型の物理システム/ソフトウェア・システムです。自律性、学習、仲介という3つの基本特性を有しています。従来のAI手法でビジネスの適応性、柔軟性、俊敏性を達成できない場合、オートノミック・システムがそれらの実装を支援できる可能性があります。オートノミック・システムが「主流の採用」に達するまでには5〜10年かかりますが、組織に変革をもたらすテクノロジになります。

「人工知能 (AI) 自動化の加速」において極めて重要なテクノロジとして、以下があります。

  • コーザルAI:相関に基づく予測モデルを超え、アクションをより効果的に処方してより自律的に行動できるAIシステムにするために、因果関係を特定して活用します。
  • ファウンデーション・モデル:トランスフォーマー・アーキテクチャをベースとしたモデルであり、大規模言語モデルがその一例です。周囲にある単語の文脈の中で、単語の順序を重視しながら文字列の数値表現を計算する、一種のディープ・ニューラル・ネットワーク・アーキテクチャを体現したものです。
  • ジェネレーティブ・デザインAI:AI拡張型設計とも呼ばれ、AI、機械学習 (ML)、自然言語処理 (NLP) のテクノロジを使って、デジタル・プロダクトのユーザー・フロー、画面設計、コンテンツ、プレゼンテーション層コードを自動的に生成および開発するものです。
  • 機械学習コード生成:このツールには、プロフェッショナル向けの開発者統合開発環境 (IDE) に組み込むクラウド・ホスト型MLモデルがあります。これは、自然言語での記述か部分的なコード片のいずれかに基づいてコードを提案する拡張機能です。

テーマ3:テクノロジストによるデリバリの最適化

デリバリの最適化に関連するテクノロジは、デジタル・ビジネスの構築における主要な構成要素である、プロダクト/サービス/ソリューションの構築者コミュニティ (フュージョン・チームなど) と、そこで使用されるプラットフォームを重視するものです。これは、テクノロジストにフィードバックと知見をもたらし、プロダクト/サービス/ソリューションのデリバリを最適化および加速するほか、ビジネス・オペレーションの持続可能性を高めます。

クラウド・データ・エコシステムは、テクノロジストによるデリバリの最適化の好例です。探索的データ・サイエンスから本番運用データウェアハウスの作成まで、幅広いデータ・ワークロードを巧みにサポートする、まとまりのあるデータ管理環境を提供します。そして、デリバリを合理化し、デプロイ/最適化/保守を容易に遂行できるようにする包括的な機能を提供します。クラウド・データ・エコシステムが「主流の採用」に達するまでには2〜5年かかり、ユーザーにとって非常に有益なテクノロジになります。

「テクノロジストによるデリバリの最適化」において極めて重要なテクノロジとして、以下があります。

  • 拡張FinOps:AIと機械学習 (ML) プラクティスを適用して、(1) 俊敏性、(2) 継続的インテグレーション/継続的デプロイ、(3) 財務ガバナンス/予算編成/コスト最適化の取り組みへのエンドユーザー・フィードバックという従来のDevOpsの概念を自動化します。
  • クラウド・サステナビリティ:クラウド・サービスの使用によって、経済/環境/社会システムの中で持続可能性のメリットを達成するものです。
  • コンピュテーショナル・ストレージ (CS):ホストの処理を、CPUのメイン・メモリからストレージ・デバイスにオフロードするものです。
  • サイバーセキュリティ・メッシュ・アーキテクチャ (CSMA):全体的なセキュリティ効果を改善する、コンポーザブルな分散型セキュリティ・コントロールのアーキテクチャを設計する最新のアプローチです。
  • データ可観測性:組織のデータ環境、データ・パイプライン、データ・インフラストラクチャを継続的にモニタリング、追跡、アラート作成、分析、インシデント解決することで、その健全性を把握する能力です。
  • 動的リスク・ガバナンス (DRG):リスク・マネジメントの役割と責任を定義するという極めて重要なタスクに対する新しいアプローチです。リスク・ガバナンスをリスクごとに適切にカスタマイズし、組織がリスク・マネジメントの向上とリスク・アシュアランス・コストの削減を図れるようにします。
  • インダストリ・クラウド・プラットフォーム:SaaS、PaaS (サービスとしてのプラットフォーム)、IaaS (サービスとしてのインフラストラクチャ) の基本クラウド・サービスを活用して、特定の業界に業界関連のビジネス/テクノロジ・ケイパビリティ・パッケージをホール・プロダクトとして提供するものです。
  • 実用最小限のアーキテクチャ (MVA):プロダクト・チームが、プロダクトのタイムリーな開発と反復におけるコンプライアンスを確保するために使う、標準化されたフレームワークです。
  • オブザーバビリティ駆動型開発 (ODD):システムを観測できるように設計することで、システムの状態や挙動をきめ細かく可視化およびコンテキスト化するソフトウェア・エンジニアリング・プラクティスです。
  • オープン・テレメトリ:ソフトウェアのためのオープンソース計測/可観測フレームワークの実装を記述およびサポートする、仕様、ツール、アプリケーション・プログラミング・インタフェース (API)、ソフトウェア開発キット (SDK) の集合体です。
  • プラットフォーム・エンジニアリング:ソフトウェアのデリバリとライフサイクル管理を目的としたセルフサービス型内部開発者プラットフォーム (IDP) の構築と運用に関する専門分野です。

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/

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