Web3.0 (Web3) とは何か?Web2.0 との違いとは?ビジネスに付加価値をもたらすテクノロジとは

2022年3月21日

今後10年間は、企業においてWeb3.0 (Web3) がWeb 2.0に取って代わることはないでしょう。しかし、より小さい権限で、より自動化されたビジネスを遂行する世界については、今から話し始めることができます。

ポイント

  • Web3.0 (Web3) では、ピア・ツー・ピアのインタラクションが、ネットワークを介した新世代の商取引や社会の核となる。それにより、情報や価値の流れを主に管理していた中央集権型プラットフォーム/サーバや、中央集約的な権限は利用されなくなる。
  •  Web3.0 (Web3) は、ブロックチェーンに対応した新しいビジネスモデルやソーシャル/ゲーミング・ネットワークを有効活用するアプリケーションを通じて、最初は大企業にメリットをもたらすだろう。
  • ビジネス/ITエグゼクティブが最初にとるべきステップは、Web3.0 (Web3) とWeb 2.0との主な違い、Web3.0 (Web3) の初期のユースケース、関連テクノロジを理解することである。

「Web3.0 (Web3)」という言葉を広めたのは、Ethereum共同設立者のGavin Wood氏です。彼は「中央集権的な構造を長期にわたって社会的に維持することはできない」*と主張しています。「Web3」や「Web3.0」とも呼ばれるWeb3.0 (Web3)では、Web 2.0 の中央集約的な権限や、大手検索エンジン/ソーシャル・メディア・プラットフォームなどの「ゲートキーパー (監視人)」が不要になり、そのような機能も廃止されます。

*出典元 (英語): Why We Need Web3.0 medium.com

ガートナーのアナリストでディスティングイッシュト バイス プレジデントのアビバ・リタン (Avivah Litan) は、次のように述べています。「Web3.0 (Web3) の数々のイノベーションは、インターネットを新たな領域へと導き、これまでは実現不可能と思われていたアプリケーションを生み出すでしょう。しかし、規模、顧客サービス、顧客保護の点では、依然として、Web 2.0 の方が優れています。Web3.0 (Web3) には、顧客保護の欠如、セキュリティ上の新たな脅威、中央集約的なコントロールへの揺り戻しといったリスクが潜んでいるため、組織は Web 2.0 アプリケーションを置き換える前に、ガバナンスとリスク・マネジメントを強化する必要があります」

エキスパートによるウェビナーを視聴 (英語):The Opportunities and Challenges Surrounding Blockchain

Web3.0 (Web3) がこれまでと違うのはなぜか?

Web3.0 (Web3) が魅力的なのは、中央集権型プラットフォームや仲介者を介することなく、ピア・ツー・ピアのインタラクションが可能になるためです。


ガートナーのアナリストでディスティングイッシュト バイス プレジデントのウィット・アンドリュース (Whit Andrews) は、次のように述べています。「Web (1.0) の背後にあった考え方は『誰でも情報を発信できるようにする』であり、Web 2.0では『読み手が書き手にもなる』となりました。Web3.0 (Web3) では、Webのユーザーすべてに自律的能力とコントロールする権利を付与しようとしています」

Web3.0 (Web3) は、非中央集権型 (分散型) ブロックチェーン・ベースのテクノロジ・スタックを利用して、新しいビジネスモデルやソーシャル・モデルを実現します。ユーザーは、自分のデータ、アイデンティティ、コンテンツ、アルゴリズムを所有し、さらにプロトコルのトークンや暗号通貨を所有することで「株主」として関与します。このように所有権がユーザーに移ることにより、大手テクノロジ企業や政府機関など中央集権型のWeb 2.0「ゲートキーパー」から権力や資金が離れていきます。

トークンや暗号通貨が、Web3.0 (Web3) のビジネスモデルや経済性の原動力となります。これが、例えば、新しいメタバース・アプリケーションにおける非代替性トークン (NFT) の収益化などに関連する新たなビジネス機会を支えます。

「メタバース」と「Web3.0 (Web3)」はよく混同されますが、実際のところ、この2つの言葉は関連性があるものの、まったく異なる概念を表しています。メタバースは、デジタル・ネイティブの世界を進化させたビジョンを示すものであり、そこでは仕事や交流など、あらゆるタイプの活動に時間を費やすことができます。一方、Web3.0 (Web3) は、メタバースや、メタバースが実現する新しいコミュニティや経済活動の一部を構築するのに使用できる分散型プロトコルとテクノロジ・スタックを提供するものです。

今すぐダウンロード (英語):2021-2023 Emerging Technology Roadmap

Web3.0 (Web3) のユースケース

既存のWeb3.0 (Web3) アプリケーションのビジネスでの利用は限定的ですが、パブリック・アプリケーションは人気を集めています。そうしたアプリケーションには、分散型金融 (DeFi)、NFT、Play-to-Earnゲーム、コミュニティ主宰の非中央集権型自律組織 (DAO) などがあります。以下に例を挙げます。

  • DeFiプロトコル (AaveやMakerDAOなど) は、スマート・コントラクトにより運営される貸付/借入サービスを可能にする。スマート・コントラクトによって仲介者が排除されるため、リスクは大幅に高くなるが、より高い利回りと利益率を実現する。
  • NFTを使用したPlay-to-Earnゲームは、ユーザーが収入を得る手段を提供する。ゲームの収益を、恵まれないユーザーを対象とした奨学金の資金として活用するNPOも登場している。
  • アーティストなどのコンテンツ・クリエイターは、NFTスマート・コントラクトを使用して作品を販売している。これにより、例えばアート作品の販売時には、仲介者ではなく、アーティストが自ら設定した契約条項に基づいて、支払いを受けられる。

古くからある業界におけるWeb3.0 (Web3) の成功例はわずかです。また、大企業は、Web3.0 (Web3) へ移行するために、デジタル・エコシステムの他の参加者と共同で使用しているアプリケーションのガバナンス/監視/制御を譲渡することに腰が重い可能性があります。それでも大半の組織は、信頼を最小限に抑えたコンピューティングと新しいビジネスモデル/機会の実現を約束しているのがWeb3.0 (Web3) だけであることから、最終的にはそうしたメリットを得られるWeb3.0  (Web3) のアプリケーションやプロセスの実装を求めるようになるでしょう。

有効なプロトコルとテクノロジ

Web3.0 (Web3) に関連し、進化を続け、付加価値をもたらすプロトコルやテクノロジには、以下のものがあります。

  • オンチェーン・スマート・コントラクトに統合された、プライバシー保護と信頼性に優れたオフチェーン・コンピューティング
  •  分離したブロックチェーン間で資産を容易に移動できるようにするクロスチェーンの相互運用性
  •  開発者によるポータブル・アプリケーションの実装を容易にするミドルウェア抽象化レイヤ
  •  EthereumやBitcoinなど、プライマリ・ベースレベル (レイヤ1) のブロックチェーンからコンピューティングの負荷を取り除く、拡張性の高いソリューション
  • ブロックチェーンにリンクしたオフチェーン・データのための永続的でセキュアな分散型ストレージ・システム
  • その他のテクノロジ (機密情報を保護するゼロ知識証明のようなプライバシー保護プロトコル、NFTにインテリジェンスを注入する人工知能 [AI] モデルなど)

Web 2.0とWeb3.0 (Web3) の比較

プロトコル関連

Web 2.0

Web3.0 (Web3)

信頼モデル

中央集権型のサービス、サーバ、ソフトウェア

それらの背後にいる企業を信頼する

非中央集権型 (分散型)。ピア・ツー・ピア。権限が集約されていない。単一障害点がない

信頼が最小限 — 分散型プロトコルを信頼する

ガバナンス

巨大デジタル企業に権力が集中する

非中央集権型自律組織 (DAO)。ガバナンスはステークホルダー (ガバナンス・トークン・ホルダー) に分散される

ビジネスモデル

巨大デジタル企業とサービス・プロバイダーが顧客データを所有し、それを利用して収入を得る

ブロックチェーン・ネットワークが、トランザクション・バリデーター (取引の検証者) に作業対価を支払う

ゲーム理論を使用して、トランザクションの完全性を維持する

コンテンツ

動的。ユーザーが生成

ソース・コンテンツは複製可能

ユーザーが所有。Web 2.0サービスから切り離される

ユーザー参加型
モデル

ユーザー・データと引き換えに、無料サービスを獲得

サービスやソフトウェアの実行に対して、仲介者に支払いが行われる

ユーザーがデータやコンテンツを所有し、収益化できる


支払いは、ブロックチェーンのトランザクション・バリデーターに直接行われる

ユーザー・インタフェース

Web

ソーシャル・ネットワーク

モバイル・アプリ

分散型アプリ (dApps)

中央集権型マーケットプレース/サービス

ユーザー認証方法

ユーザーID

パスワード

その他の認証

ブロックチェーン上にある所有者のレコードへのアクセスを解禁する秘密鍵。秘密鍵は、自己ホスト型ウォレットやサードパーティ・ウォレットに格納可能

財務システム

中央の銀行などの金融機関やネットワークによって、中央で一括管理される

スマート・コントラクト (基本的には「if-then-else」スクリプト) およびブロックチェーン・プロトコルによって運用される

中央集約的なコントロールはない。また、支払いの必要な仲介機関も介在しない

通貨

中央で一元管理された政府保証の通貨 (銀行やストアドバリュー・アカウント・プロバイダーが管理する通貨など)

 

分散型ブロックチェーンに組み込まれた暗号通貨


ユーザー自身が銀行としての役割を務めるが、中央集権型の取引所に委託することも可能

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